以下のご質問をいただきました。
州の銃の法律に関して警察や銃協会に問い合わせてもたらい回しで全く情報を得られませんでした。
私はネバダ州在住で安全確保の為に家に銃を所持しています。
私が知りたいのは、他人が(顔見知りであってもなくても)私の住まいの敷地内に不法侵入した場合、どのような条件が揃えば、私が発砲して相手を殺してしまっても無罪になりますか?
例えば、敷地内に侵入した時点で相手が銃を所持していなくても発砲して構わない、あるいは住居に侵入、相手が銃口を向けた時のみの発砲に関して無罪なのか。そして顔見知りであってもなくても他人であれば良いのか、など。
法律は州や地域によって異なります。
しかし、少なくとも襲ってくる相手がナイフや銃などの武器を所持している場合は、発砲しても罪に問われない可能性が高くなります。
不法侵入者を射殺してしまった場合、様々な条件から有罪無罪が判断されます。
どのような条件が揃えば無罪となるのかは、具体的な当時の状況の他、州や地域によっても異なります。
そのため、「これさえ守れば無罪」とは一概に言えません。
そこで今回は、全米を対象とした無罪となる可能性が高い最低限の発砲の条件を解説したいと思います。
各地域の詳しい法律については、警察やNRAではなく、州の弁護士や司法局(Attorney General)へお問い合わせください。
合法的に発砲するための5つの条件
リーサルフォース(相手を死に至らしめる力)、つまり「銃」を使用して良い条件には、以下の5つの条件が重要になります。
- Innocence(潔白)
- Imminence(切迫)
- Avoidability(回避)
- Proportionality(比例/つりあい)
- Reasonableness(合理性)
これらの条件をクリアしている場合、仮に銃で相手を死傷させても無罪になる可能性が高いといえます。
Innocence(潔白)
まずは、あなたが法的に無実の人間であることです。
あなた自身が不法侵入者ではなく、合法的に現場に存在し、法を犯していないことが条件になります。
当たり前のことですが、あなた自身が違法行為を行っているときに相手に向かって銃を使用すると犯罪です。
Imminence(切迫)
現在進行形で切迫した脅威を受けている状況にあるか?
銃を使用する瞬間がこの条件に合う必要があります。
強盗が銃を所持してあなたを襲おうとしているとき、これは切迫した状況といえます。
時間に余裕があり、脅威から逃げることが可能なら逃げましょう。
Avoidability(回避)
アメリカでは州によって法律が異なり、全米50州のうち14州で銃を使用する前に「回避行動」を必要とされます。
つまり、銃を使用する前に「銃を使用しない努力」をしたかが問われます。
銃を使用せずに回避する方法を模索しても他に回避する方法が無く、使用せざるを得ない状況であった場合は発砲しても合法と判断されやすいといえます。
「脅威を感じたら即射殺OK」というわけではありません。
その場から逃げることが可能なら、銃を使用せずに逃げる必要があります。
Proportionality(比例/つりあい)
相手の攻撃と自分の攻撃がつりあう必要があります。
相手があなたを平手打ちしたとき、お返しに相手に向かって銃を撃つのは違法性を問われます。
相手が致命傷を与えられる武器を使用しようとしているとき、初めてあなたは相手に銃を使用することが可能です。
Reasonableness(合理性)
状況を俯瞰して見たとき、銃を使用する行為に合理性があるかが問われます。
どう考えても、誰が同じ状況に陥っても銃を使用する以外に方法がないと考えられる場合、銃を使用しても無罪となる可能性が高いといえます。
銃を使用できるのは自分や第三者の命を守るために限定されます。
もし銃を使用せずに回避できるなら、回避するのが賢明です。
可能なら警察(911)への通報が先決
警察への通報ができないほど自分の生死に危険が迫っている状況を除き、まず最初に行うことは警察への通報です。
警察への通報は録音され証拠として残ります。
たとえ発砲に至った場合でも、警察が録音した証拠が生死の危機にあった状況の証拠となり得ます。
ただ気を付けたいのは、嘘をついたり、話をオーバーに盛るのはNGです。
何が起きているか事実のみを伝える必要があります。
通報内容に虚偽が含まれていると法的に不利になる可能性があります。
州によって異なる法律
城の原則
アメリカでは「城の原則(Castle doctrine)」があり、自宅敷地内や車内において侵入者に対し武器(デッドリーフォース)を使用し死傷させても罪に問われない場合があります。
これは訪問者を撃って良いということではなく、侵入者が武器を所持してあなたを脅したとき、あなたにその場から逃げる義務はなく、その場で自衛することができるというものです。
しかし、城の原則の有無は州や地域によって異なるため、同じ対応をしても州によっては罪に問われる場合と問われない場合があります。
ここでベストな対処法は、その場から逃げるか、あるいは電話を持って部屋に立てこもり、警察に通報することです。
もし家族が居て時間に余裕があれば、家族を誘導し鍵のある部屋に立てこもります。
そして、安全な場所で警察の到着を待ちます。
銃を手に自宅内をサーチするのは危険なので避けます。
もし、逃げたり立てこもる時間的余裕がなく、強盗が銃や刃物で武装し、なおかつ襲い掛かってきたり身の危険を感じれば発砲可能です。
州や地域によって法律が異なりますが、条件が揃った場合に正当防衛が認められる可能性が高くなります。
スタンド・ユア・グラウンド法(Stand your ground)
城の原則と似た法律にスタンド・ユア・グラウンド法があります。
これは法的に存在して良い場所において、暴力犯罪に対して致死性のある武器を使用することができることを定めた法律です。
州によっては誘拐やレイプに対し、銃を使用して対抗することができます。
しかし反対に、法的に「退却義務」を定めた州もあり、必ずしも銃を使用できるわけではありません。
これは州によって異なり、どのような犯罪に対して銃が使用できるのか、または銃を使用せずに退却する義務があるのかといった対応が異なります。
もしアメリカで銃で自衛したいと考えている方は、ご自分の州がどちらの法律を施行しているかを知っておく必要があるでしょう。
過剰防衛に注意
自己防衛には状況判断が重要です。
相手に平手打ちをされたからといって発砲できません。
相手に自分を殺したり重大な傷害を負わせる能力があるのかを見極めるのが重要です。
例えば、武器を持たない老人がプロレスラーを襲った場合、プロレスラーは老人に発砲することはできません。
一方、老人が銃や刃物を所持してプロレスラーに襲いかかった場合、プロレスラーはこの老人に発砲することができます。
また、逃げる相手に対して銃で威嚇したり発砲することは避けます。
また、「殺してやる」といった脅迫の言葉に対しても発砲することはできません。
発砲することになったら・・・
相手が武器を持っているのを確認し回避できない状況で射殺に至る場合、できるだけ正面から仕留めるのが理想です。
逃げる強盗を追いかけて撃ったり、倒れた相手に向かって撃つのは過剰防衛と取られるため避けるべきでしょう。
どのような状況であっても相手を背中から撃てば不利になる可能性があり、逃げる強盗を追いかけて射殺し罪に問われた事例が存在します。
また、強盗が無力化したら直ぐに警察へ通報します。
ただ、侵入者の親族に逆恨みされる可能性もあり、リスクは残ります。
銃を所持しない
警察到着時に銃を所持しないでください。
到着した警官は誰が犯人かわからないため、あなたが銃を所持していたら警官はあなたを撃つかもしれません。
銃はホルスターやガンケースなどに収めてから警察に対応します。
また、落ち着いて素早い動きをせずに、警官に両手を見せて武器を所持していないことを相手に認識させます。
事実、警官に犯人だと見間違われて撃たれた事例があるため要注意です。
不用意に警官に近づかないよう距離を取ってください。
発砲のリスク
映画では主人公が悪人を射殺したところで警察が到着し一件落着となります。
しかし、現実社会でも同じ結果になるとは限りません。
銃大国とはいえ米国は法治国家なので、警察から質問を受けるだけの場合もあれば、一方で正当防衛だったとしても警察の裁量次第で拘束される場合もあります。
拘束されると数時間~48時間拘置され、場合によっては裁判を受けることもあります。
注意したいのは、「手錠を掛けられる=有罪」ではありません。
手錠を掛けられ拘束されても事実関係が確認されれば解放される場合もあります。
また、事件現場となった自宅は鑑識捜査等で数日から数週間立ち入れない場合もあります。
これは自分や家族にとっても非常に大きなストレスとなるため、発砲には覚悟が必要です。
しかしながら、自分や家族の命の重さと比較すれば、良い結果であると言えるでしょう。
その他の発砲のリスクとして、逮捕されると所有している銃器すべてが没収される場合があります。
すべての捜査が終わり正当防衛が認められたら銃を取り戻すことができますが、返ってきた銃にサビが浮いていても保証されません。
また、もしCCWの許可(銃の携帯許可証)を持っている場合、再申請が必要になる可能性があります。
黙秘は可能。でも・・・
発砲し警察が到着した際、後の裁判で不利にならないよう当事者には警察の質問を拒否する権利が与えられています。
いわゆる「Fifth Amendment」と呼ばれるもので、弁護士が到着するまで黙秘できます。
また、「Six Amendment」は警察の質問に答える際に弁護士に立ち会ってもらえる権利を保障しています。
しかし基本的には警察の指示に従い、敵対するような非協力的な態度は避けましょう。
正直に対応しないと怪しまれて拘束される場合があります。
あなたに落ち度がない限り、真摯に対応すれば問題ありません。
裁判にて不利な条件
相手が顔見知りで普段から口論していたといった目撃証言があれば、不利となる可能性があります。
また、自宅内に殺人に関する本(ミリタリー関係、スナイパートレーニング関連、セルフディフェンス関連)を所有していたり、所有している銃のトリガープルを軽くしているなど改良が施されている場合は、「トリガーハッピー」や「ブラッド・サースティー(血に飢えた人物)」として不利な印象を与える場合があります。
まとめ
銃を使用する際には状況を見極めることが重要です。
銃を使用できるのは自分や第三者の命を守るときに限られます。
本当に銃を使用する必要があるのか?
銃を使用せずに回避する方法はないのか?
緊急時ほど冷静な判断が必要です。
最後までお読みいただきありがとうございます。
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