
銃の安全装置(セイフティ/セーフティー)の解除方法と仕組みについて解説します。
※銃の各部名称について知りたい方は以下のリンク先の記事をご覧ください。
セイフティとは?
銃には大きく分けて「自動的に機能する内蔵安全装置(インターナル・セイフティ)」と、「手動操作によって機能するマニュアルセイフティ(エクスターナル・セイフティ)」が存在します。

内蔵安全装置は、トリガーを引くと解除されるトリガーセイフティや、マガジンを挿入すると解除されるマガジンセイフティなどがあり、これらは射手の意思と関係なく自動的に作動することで誤射や暴発を防ぎ、銃の安全性を高めています。
しかし、手動操作が必要なマニュアルセイフティでは、射手が意識的に解除しなければトリガーを引いても発射されません。
今回解説するセイフティは、こうしたマニュアルセイフティを対象としています。
セイフティ(セイフティレバー)の場所と機能の傾向
銃のセイフティの場所と機能は銃のモデルによって異なりますが、ある程度の傾向があります。

銃の弾(弾薬/カートリッジ)の底にはプライマー(雷管)が配置されており、プライマーをファイアリングピン(撃針/ストライカー)で叩くと撃発し、装薬の燃焼により発生した高圧ガスにより弾頭が発射されます。
トリガーを引くとシアーがハンマーを解放し、解放されたハンマーの打撃力がファイアリングピンを介して撃発。あるいは、解放されたストライカーが直接プライマーを叩いて撃発する構造です。
つまり、トリガー、シアー、ハンマー、ストライカー、ファイアリングピンといったパーツの動きを止めると発射できない状態になります。
このことから、セイフティはトリガーやハンマーの近くに配置されていることが多いと言えます。
フレームやレシーバーに備わったピボット・セイフティ

セイフティの構造を確認すると、多くの銃にはピボット(旋回軸)を利用して作動するピボット・セイフティが備わっているのが確認できます。
こうしたセイフティはレバーを回転させることでオン・オフを切り替えます。
以下はフレームやレシーバーに備わったピボット・セイフティの例です。
コルト 1911


1911ピストルは親指で操作するセイフティ(サムセイフティ)がフレーム左側に備わっています。(※モデルによっては両側に備わっています)
セイフティを押し上げるとオンになり、スライドの後退とハンマーの動きを阻止します。

セイフティを押し下げるとセイフティが解除されハンマーが可動できる状態になり、発射準備完了です。
FN ファイブセブン

FN ファイブセブンのセイフティはトリガーの上に配置されています。

上下に可動するレバーによってトリガーの動きを阻止する構造です。

トリガーの上にあるレバーを押し下げて45度回転させるとセイフティが解除されます。
ルガーP08


ルガーP08のセイフティはフレーム左側に備わっており、シアーの動きを阻止する構造です。

セイフティレバーを前方向へ動かすとシアーが可動できる状態となり、発射準備完了です。
レミントン 700


レミントン700のセイフティはボルトハンドルの後ろに位置し、前後に動くレバーによってセイフティのオン・オフを切り替えます。
レバーを前へ倒すとシアーの動きを阻害し、セイフティがオンになります。

レバーを後ろへ下げるとセイフティが解除されます。
ミルコーMGL


グレネードランチャーのミルコーMGLは、セイフティを押し上げるとハンマーの動きが阻害され、セイフティがオンになります。

レバーを下げるとセイフティが解除されます。
マキシム


第一次世界大戦で活躍したマキシム・マシンガンのセイフティはシンプルな構造です。
中央のトリガーを親指で前方へ押すと発射される構造ですが、トリガーの動きを直接阻害することで機能します。

セイフティを上へ跳ね上げるとセイフティがオフとなり、トリガーが前進可能な状態となります。
スライドに備わったピボット・セイフティ
ベレッタ 92FS


ベレッタ92FSのセイフティはハンマーとファイアリングピンの接触を断つ構造で、スライドに備わっています。
ワルサーP38やワルサーPPKなどと同様に、セイフティレバーが水平状態になっていると発射可能です。

セイフティレバーを押し下げるとセイフティがオンになり、ファイアリングピンとの接続が分断されると同時にトリガーとシアーの接触を断ちます。
ベレッタ92FSではセイフティレバーがデコッキングレバーを兼用しており、ハンマーが起こされた状態でレバーを押し下げるとハンマーが落ちてレスト状態になりますが、ファイアリングピンと接触しないため発射されません。
マカロフ


マカロフはベレッタ92FSなどとは逆の操作方法になります。
セイフティレバーを押し上げるとハンマーがデコックされ、セイフティがオンになります。
セイフティがオンの位置でハンマーが落ちますが、ファイアリングピンに打撃を与える前に停止するため撃発に至りません。

セイフティレバーを押し下げるとセイフティが解除され、発射可能状態になります。
西側諸国と共産圏の銃器設計の違いには要注意です。
180度回転させるピボット・セイフティ
南部十四年式

南部十四年式は「火」と「安」の刻印があり、レバーを「火」に回すと発射可能状態、「安」に回すとセイフティ・オンです。

内部構造はトリガーからストライカーに繋がる長いシアーが接続され、セイフティはシアーの動きを止めて発射を阻止します。

レバーを前方に180度回転させるとセイフティが解除されます。
K98


K98はセイフティレバーがストライカーの前進を阻害する構造のセイフティです。
レバーを右側へ倒すとセイフティ・オンです。

レバーを左側へ180度回転させるとセイフティが解除されます。
PKM


PKMはトリガーの左側にセイフティレバーが備わっており、シアーの動きを阻害する構造です。

レバーを前方へ180度回転させるとセイフティが解除されます。
DShk


DShkのセイフティはトリガーとシアーの間に位置するトリガーレバーの動きを妨げる構造です。
レバーを180度前方に回すとセイフティ・オン、後方に回すとオフになります。
セレクターで操作するピボット・セイフティ
アサルトライフルやサブマシンガンなど、フルオート射撃が可能なモデルではセレクターレバーを操作することにより、セイフティや射撃モードを切り替える設計が多く見られます。
H&K MP5


H&K社は記号表現によって視覚的に分かりやすい表示のセレクターが利用されています。
この画像のレシーバーでは、フルオート、3点バースト、セミオート、セイフティを切り替え可能で、セイフティの位置は白で色分けされています。

もちろんドイツ語表記のS、E、Fで表記されたレシーバーもあり、以下の意味があります。
- S (Sicher) – セイフ(安全)
- E (Einzelfeuer) – シングルファイア/セミオート(単発)
- F (Feuerstoss) – ファイア(バースト、またはフルオート)
セレクターレバーがセイフの位置に入るとトリガーの動きが阻害され、トリガーが引けなくなります。
AR15 / M4

AR15はセレクターレバーを回転させて発射モードを選択します。
セレクターレバーがセイフの位置にあるとき、トリガーの動きが阻害されトリガーが引けなくなります。

モデルによって構造が異なり、「セイフ、セミオート、フルオート」の他に、「セイフ、セミオート、バースト」「セイフ、セミオート」など、発射モードの違いによって表記が異なりますが、セイフティの位置は一貫してセレクターを後ろ方向へ回転させてオンにします。
発射の際は、親指でレバーを押し下げるとセイフティが解除され、発射可能状態となります。
また、AR15はハンマーが落ちている状態(コックされていない状態)ではセレクターレバーをセイフの位置に入れることができない構造です。
チャージングハンドルを引いてハンマーが起きた状態になると、セレクターレバーをセイフの位置に回すことができます。
(※HK416など、モデルによってはハンマーが起きていない状態でもセレクターをセイフの位置に入れることが可能です)
AK47


AK47はセレクターレバーが最上部にあるとき、トリガーの動きを阻害し、セイフティがオンになります。

セイフの位置からセレクターレバーを1段下げるとフルオート、最下部まで下げるとセミオートになります。
H&K G36


H&K G36のセレクターはMP5とは上下逆さ表記になっています。(モデルによって表記位置が異なります)
モデルやバージョンの違いによって「セイフ、セミオート」や「S、E、F表記」などが存在しますが、いずれもセレクターレバーを押し下げるとセイフティが解除されます。
構造はMP5と同様に、セレクターレバーの位置でトリガーを動きを阻害します。
水平方向に回転するピボット・セイフティ
FN P90


FN P90やFN F2000は、トリガーの下に水平方向に回転するセレクタースイッチが備わっています。

上図はトリガーの右側です。
セレクターを左へ回転させるとトリガーが後退不可な状態となり、セイフティがオンになります。

セレクターを右へ回転させるとトリガーを引いて発射可能な状態になります。
トリガーガード内のピボット・セイフティ
FAMAS F1/G2

フランス軍で採用されているFAMASは、トリガーガード内にセレクターレバーが配置されています。

セレクターレバーを後方へ回すとトリガーが固定されてセイフティがオンになり、同時にトリガーを引く指を入れるスペースも無くなります。

FAMASのセイフティを解除するには、セレクターレバーを左右のどちらかの方向へ回転させる必要があります。
セレクターレバーを右へ回転させるとセミオートになります。

反対に、レバーを左へ回すとフルオートになります。
FAMASはバースト射撃も可能ですが、フルオートとバーストの切り替えは、トリガーガード内のレバーがフルオートの位置にあるとき、ストック下方に備わっているレバーを180度回転させて行います。
ひとつのセレクターレバーで発射モードを切り替えるモデルが多い中、FAMASは2つのレバーを操作する珍しい設計です。
M14


M14はトリガーガード内のセイフティーレバーによりトリガーの動きを妨げます。
レバーが後退しているときセイフティがオンになります。

レバーを前進させるとセイフティが解除されます。
クロスボルト・セイフティ
棒状のボルトが貫通している構造のセイフティを「クロスボルト・セイフティ」と呼びます。
右側から左側へ向かって押し込むとセイフティが解除される設計が多いですが、逆の場合もあります。
右利きの射手がトリガーを引く指(人差し指)で押して解除、または親指で押して解除することを前提とした設計です。
ステアーAUG


上図はトリガーを後方から見ています。
ステアーAUGにはトリガー後方にクロスボルトセイフティが備わっています。
このセイフティはトリガーの後退を阻害し、トリガーが引けない状態になります。

セイフティを右から左に向かって押し込むとトリガーが後退可能となり、セイフティが解除されます。
レミントン 870


レミントン870はトリガーの後方にクロスボルトセイフティが備わっています。
左から右へ押し込むとセイフティがオンになり、右から左へ押し込むと解除されます。
M240


M240マシンガンはトリガー後方に備わったクロスボルトセイフティによりシアーを動きを阻害します。
操作方法はステアーAUGやレミントン870とは逆です。
右から左へ向かって押すとセイフティがオンになります。

右利きの射手が使用したとき、グリップを保持する手の親指で左から右へ押してセイフティを解除する設計です。
スライド・セイフティ
モスバーグ 500


モスバーグ500のセイフティは前後にスライドさせて動作します。
トリガーとセイフティの間に距離がありますが、トリガーの動きを阻害する構造です。
前方へスライドさせるとオフ、後退させるとオンになります。
レシーバー上部に配置されたスライドセイフティはクロスボルトセイフティとは対照的に、利き手を選ばず左右どちらでも親指で操作しやすく、目視確認が容易な設計です。
MAC10

MAC10は銃の左側にセミフルを切り替えるセレクターが配置され、右側にセイフティが配置されています。

トリガーの前方にスライドセイフティが備わっており、後方へスライドさせるとシアーの下降を阻害しセイフティがオンになります。

前方へスライドさせるとセイフティが解除され、発射可能状態となります。
その他のセイフティ
MP38/40


MP40はチャージングハンドル(コッキングレバー)をレシーバー上のスリットに引っ掛けるとボルトが前進不可となり、セイフティがオンの状態になります。

チャージングハンドルをスリットから外すと発射可能な状態となります。

MP40にはもうひとつの安全装置があり、ボルトが前進した状態でチャージングハンドルを内側に向かって押し込むとボルトが後退できない状態になります。
この安全装置は、銃を落下させた際にボルトの自重によりボルトが後退することで起こる暴発を防止します。
発射可能な状態にするには、チャージングハンドルを銃の外側へ向かって引っ張り、さらに後方へ引いて完了です。
モシンナガン


モシンナガンはストライカーの後部にノブがあり、ノブを後方へ引きながら左回転させるとストライカーが前進できない状態となり、セイフティ・オンになります。

ノブを後方へ引きながら右へ回転させるとセイフティが解除されます。
PTRD41


PTRD41のストライカー後部は鉤状になっています。
指を引っ掛けて後方に引きながら左回転させるとストライカーが前進できない状態となり、セイフティがオンになります。

後方に引きながら右へ回転させるとセイフティが解除されます。
追加されたセイフティ
銃はモデルによってはマニュアル・セイフティが備わっていません。
しかし、マニュアル・セイフティが備わっていないモデルにマニュアル・セイフティが追加されることもあります。

グロックはマニュアル・セイフティが備わっていませんが、グロック用の親指で操作するサムセイフティも存在します。
こうした追加のマニュアル・セイフティはグロックに限らず、トカレフ、S&W、SIGなどのピストルでも見られます。

トカレフTT33にはマニュアル・セイフティが備わっていません。
しかし、トカレフTT33のコピーである旧ユーゴスラビア製M57にはサムセイフティが追加されています。

また、同じくトカレフのコピーであるポーランド製PW WZ33には、トリガーの近くにマニュアルセイフティが追加されています。