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22口径の.22LR弾は護身用として使える? 知っておくべき欠点を解説

22LR弾

.22ロングライフル(.22LR)弾は、その扱いやすさや経済性から、レクリエーション目的の射撃や小動物の狩猟、射撃トレーニングなど幅広い用途で人気があります。

しかし、護身用としては一般的に推奨されません。

なぜ、人気のある.22LR弾が護身用としては疑問視されるのでしょうか?

この記事では、.22LR弾がディフェンス用途で推奨されない理由を詳しく解説します。

.22LRとは?

.22LRの特性

ルガーMK4ピストル
ルガーMK4ピストル 画像出典:Ruger

.22LR弾は、「反動が小さく撃ちやすい」「命中率が高い」「銃声が比較的小さい」「低価格」「流通量が多く入手しやすい」といった特徴から、初心者から上級者まで幅広く利用されています。

レクリエーション射撃、小動物狩猟、害虫(害獣)駆除に最適で、ボーイスカウトや軍の訓練でも基本的な射撃技術を教えるために使用されます。

多くのハンドガンメーカーが.22LR用のコンバージョンキット※を提供しており、高価な9mmや.45ACP弾を使用する銃を安価に射撃できるようになります。

屋内射撃場で強力な弾薬の使用が禁止されている場合にも、これらのキットは人気です。

.22LR用のコンバージョンキットとは、既存のセンターファイア方式の弾薬(例:9mmや.45ACPなど)を使用する銃で.22LR弾で撃てるようにするための交換部品セットです。

以下のような利点があります。

  • 安価な.22LR弾で練習が可能
  • 反動が小さく、初心者にも扱いやすい
  • 銃本体の基本操作(トリガーやグリップなど)は変わらないため、トレーニングに有効

多くの場合、バレル、スライド、マガジンなどを交換するだけで使用でき、元の口径に戻すのも容易です。

グロック、1911、AR-15などに対応する製品が代表的です。

.22LRの主なスペックは以下の通りです。

項目内容
弾丸の直径.223 インチ (5.7 mm)
ケースの種類リムドカートリッジ(ストレートケース)
弾頭重量20 ~ 60 グレイン (1.3 ~ 3.9 g)
銃口初速575 ~ 1,750 fps (175 ~ 533 m/秒)
マズルエナジー45 ~ 183 ft-lbf (装填量により異なる)
最大有効射程距離最大 150 ヤード (小動物狩猟時の最大推奨距離)

.22LR弾はメーカーやブランドによって多様な種類があり、弾頭重量は20〜60グレイン、弾速は575〜1,750フィート毎秒と幅広いです。

一般的に50発入りや100発入りの箱で販売され、中には500発入りや5,000発入りのケース販売もあります。

年間生産量は推定で20〜25億発に達し、アメリカではそのうち10億発以上が.22LRとされています。

.22LRの歴史

22LR画像

.22ロングライフル弾(.22LR)は、1887年にアメリカのJ.スティーブンス・アームズ&ツール・カンパニー社が開発しました。

それまでの.22 BBキャップ弾(1845年)、.22ショート弾(1857年)、.22ロング弾(1871年)をベースに開発され、全長の延長により装薬量が増え、性能が向上。

これにより、1880年から1935年まで製造されていた.22エクストラロング弾は姿を消しました。

年代開発されたカートリッジ
1845年.22 BB キャップ
1857年.22 ショート
1871年.22 ロング
1887年.22 ロングライフル

.22LRの種類

22LR画像
画像出典: Wikipedia

.22LRには、用途に応じて様々な種類が存在します。

種類説明
スタンダード
(標準弾)
標的射撃や練習用など一般向け
ハイベロシティー
(高速弾)
1,200fpsを超える弾速で、狩猟や長距離射撃に適している
ウルトラベロシティー
(超高速弾)
1,400fpsを超える弾速で、通常は軽量弾を使用
サブソニック弾
(亜音速弾)
サプレッサー用として利用される低速弾で、騒音の原因となるソニックブームを発生しない
マッチグレード射撃競技用に精密に製造された弾薬

2021年には、「Federal Punch .22 LR」と「Winchester Silvertip .22 LR」という2種類のセルフディフェンスに特化した.22 LR弾が登場しました。

Federal Punch .22 LRは、貫通力を重視した設計で、ニッケルジャケットとフラットノーズ弾頭が特徴です。

ショートバレルからでもFBIの基準(バリスティックゼラチン※で12インチの貫通)を満たすよう設計されています。

Winchester Silvertip .22 LRは、分裂型ホローポイント弾頭を採用しており、命中時に弾頭が4つに分裂し、3つの破片が創傷路を作り出し、基部のコアが貫通力を発揮する設計です。

アメリカの銃器雑誌「アメリカンライフルマン誌」では、これらの実射テストを行い、Federal Punchで不発が見られたものの、Winchester Silvertipでは不発はなかったと報告しています。

結論として、「.22 LRはセルフディフェンスにおいて弾道性能が最高ではないものの、現代の技術と個人の状況(反動に敏感な人や初心者)によっては、有効な選択肢となり得る」と同誌は記事は締めくくっています。

バリスティックゼラチン画像
バリスティックゼラチン 画像出典:Armorpiercer, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons

バリスティックゼラチンとは、人体の筋肉組織を模した人工的な試験用素材で、銃弾の貫通力や創傷効果を評価するために使われます。

ゼラチンブロック(通常10%濃度)で構成され、弾丸の侵入深度・変形・弾道を再現性高く観察できることから、FBIや弾薬メーカーが弾道試験に用いています。

なぜ.22LR弾はセルフディフェンスに不向きなのか

貫通力の不足

セルフディフェンス用(護身用)弾薬として有効であるためには、FBIが定めた基準として、バリスティックゼラチンにおいて最低でも12インチ(約30cm)の貫通が必要です。

これは1986年のマイアミ銃撃事件※の教訓に基づいており、貫通力不足がFBI捜査官の命に関わる結果となったためです。

しかし、一部を除く一般的な.22LR弾はこの基準を満たすことがほとんどありません。

1986年のマイアミ銃撃事件は、FBI捜査官と重武装の犯人2名との間で起きた銃撃戦で、FBI側に2名の死者と5名の負傷者を出した事件です。

FBI捜査官が発砲した9mm弾が犯人の腕を貫通したものの、体幹部の致命的な部位に届かず、犯人がその後も戦闘を続けてFBI側に致命的な被害を与えたことが問題視されました。

この事件を受けてFBIは、ディフェンス用弾薬には12インチ以上の貫通力が必要とする基準を設け、より強力で信頼性の高い弾薬(例:.40S&W)の導入を進めることとなりました。

一部を除き通常の.22LR弾はバリスティックゼラチンで6〜10インチ程度しか貫通せず、これは衣服や骨、その他の障害物を通過した後に、弾が重要臓器に到達しない可能性が高いことを意味します。

弾速が遅い場合、ホローポイント弾でも弾頭が適切に拡張せず、貫通力が高まる一方で、ストッピングパワー(対象を無力化する力)※に必要な「弾頭の拡張」と「貫通力」の両方を確保することが難しいという問題もあります。

ストッピングパワーとは、弾丸が目標(主に人間や動物)を即座に行動不能にする能力を指す概念です。

「何発で、どれだけ早く相手を止められるか」に関係し、貫通力・弾頭の拡張・運動エネルギー・命中部位などが影響します。

高いストッピングパワーを持つ弾薬は、防衛や狩猟用途において重視されます。

障害物を貫通する性能の低さ

セルフディフェンスの場面では、衣類や車のドア、壁材などを貫通しなければならないことがあります。

特にショートバレルハンドガンから発射した場合や鋼板、合板、自動車ガラスなどの障害物を貫通する場合、ほとんどの従来型.22LR弾薬は、FBIの最低貫通基準である12インチを安定して満たすことができません。

.22LRは弾頭重量とエネルギーが低いため、中間障害物を挟むと十分な貫通力を発揮できないことが多いです。

以下はアメリカンライフルマン誌で行われたFederal Punch .22LRの実射テストの結果です。

Federal Punchは.22LR弾のなかでも貫通力の高い弾薬です。

バリスティックゼラチンと障害物を組み合わせた場合の貫通力を計測し、FBI基準の「12インチ貫通」を達成したかを見ています。

試験条件   Federal Punch .22LR
貫通力テスト結果
基準達成
(12インチ貫通)
ゼラチンのみ13.75インチ      達成
厚手の衣類  12.75~13インチ    達成
壁板     不十分        未達成
合板     不十分        未達成
自動車のガラス 貫通失敗       未達成
参考:.22 LR For Self Defense: Ammunition Test & Comparison | An Official Journal Of The NRA
テスト項目Federal Punch .22 LRWinchester Silvertip .22 LR
弾頭重量29グレイン37グレイン
弾頭構造ニッケルジャケット付き鉛芯
フラットノーズ
メッキ加工セグメントホローポイント
設計意図貫通力重視
(FBI基準12インチ)
着弾時に4分割
(3つの花弁で初期創傷管、基部で貫通)
銃身2インチでの公称初速1070 fps
実測平均初速
S&W Model 43C (1.875インチ)
1196 fps1008 fps
銃身3.5インチでの公称初速1080 fps
7ヤードでの精度
(S&W Model 43C)
2インチ弱の5発集弾1.5インチ弱の5発集弾
信頼性50発あたり平均1回の不発不発なし
水ボトル貫通テスト結果3つの水ボトルを貫通、4つ目で停止最初の水ボトルで分裂、基部は3つ目で停止
水ボトルテスト結果
(弾頭の状態)
無傷
ライフリングの痕跡のみ
ホローポイントが分裂
基部(約26グレイン)は原型を留める
メーカー希望小売価格 (50発)10.99ドル9.99ドル
参考:.22 LR For Self Defense: Ammunition Test & Comparison | An Official Journal Of The NRA

.22LRは第二次世界大戦中には静音性から諜報機関で使用され、戦後はイスラエル航空保安官がテロ対策に使用するなど、軍や法執行機関での採用実績もあります。

銃の画像
アメリカン180 画像出典:tactical-life.com

かつて1960~1970年代のアメリカの法執行機関では、.22LRのサブマシンガンを制式採用していた時代もありました。

しかし、ストッピングパワー不足や不発が問題視されたほか、当時、多くの法執行機関が9mmや.45ACPなどの弾薬で統一しつつあり、.22LR専用の火器は補給管理上の無駄が大きく、運用コストの観点からも廃止対象となりました。

銃の画像
イスラエル軍スナイパーとルガー10/22 画像出典:rugertalk.com

イスラエルの治安部隊は.22LRのルガー10/22を暴徒鎮圧用などに利用していますが、こうした例は多くありません。

運動エネルギーとストッピングパワーの低さ

.22LR弾は、標準的なセルフディフェンス用弾薬と比較して、はるかに低い運動エネルギーしか持ちません。

一般的な.22LR弾のマズルエナジーはおおよそ45~183フィートポンド(ft-lbf)程度です。

一方で、以下に示す代表的なディフェンス用弾薬ははるかに高いエネルギーを持っています。

  • 9mm: 335~400 ft-lbf
  • .40 S&W: 400~525 ft-lbf
  • .45 ACP: 350~405 ft-lbf
弾薬弾頭重量
(gr)
初速
(fps)
マズルエナジー
(ft-lbf)
.22 LR36~40575 ~ 1,75045~183
.25 ACP35~50750~81564~66
.32 ACP60~73900~1,050129~162
.380 ACP90~95950~1,000190~200
9mmルガー115~1471,000~1,200335~400
.40 S&W155~1801,000~1,180400~525
.45 ACP185~230830~950350~405
10mm Auto155~2001,100~1,300500~750
.357マグナム125~1581,300~1,500500~700
.44マグナム180~3001,350~1,500900~1,200
※数値は一般的な弾薬の目安です。個別の弾薬によってはこの数値の範囲外になります。

このエネルギー差は、事実上3〜4倍の制止力の差に繋がります。

エネルギーが低いため、.22LR弾は永久創腔(弾が通った後に残る傷跡)も小さく、一時的な空洞も最小限であるため、迅速な無力化を達成しにくいのです。

これはCCIの.22LRホローポイント弾が護身用として有効か?を検証した動画です。

この動画からわかるポイントは、.22LRほどの軽量弾頭で小口径では弾速が遅いと弾頭が拡張しないことがあるという問題点です。

同じ弾をピストルとライフルで撃ち比べた結果、ピストルを使用した場合では弾速が足りず拡張(マッシュルーミング)しないため、着弾後の抵抗が小さいため貫通力が高くなります。

一方、ライフルを使用すると弾速が高まるため着弾時に拡張が起こり、ピストルから発射される場合と比較して貫通力が低くなります。

本来、高いストッピングパワーを得るには「弾頭の拡張」と「貫通力」の両方が必要となりますが、.22LRのような軽量弾では限界があります。

銃創路の狭さ

.22LR弾の直径は約0.22インチ(5.6mm)と、他の自セルフディフェンス用口径に比べて明らかに小さいです。

例えば、9mm(0.355インチ)や.40 S&W(0.400インチ)などの弾丸は、より広い永久空洞(永久創腔)を形成し、重要な組織や血管を損傷する可能性が高まります。

小さな銃創路は、精確に命中しても致命的な部位を外してしまうリスクが高まります。

銃創が体内で形成する空洞には、以下の2種類があります。

  • 一時的空洞(Temporary cavity)
    • 弾丸が高速で通過する際、衝撃波と圧力により周囲組織が急激に押し広げられてできる一時的な空洞です。
    • 組織は元に戻りますが、伸展限界を超えると損傷が残ります。
  • 永久空洞(Permanent cavity)
    • 弾丸が直接破壊・切断した組織によって形成される、実際に残る空洞です。
    • これが銃創路(創傷チャネル)であり、致命傷や出血の主原因となります。

この2つは、弾丸の速度や径、組織の種類によって大きさや影響が異なります。

護身用においてターゲットとなる攻撃者を行動不能にする目的があるため、神経、臓器、血管にダメージを与えたり、流血によって血圧を低下させる効果がある弾薬が必要です。

.22LR(5.56mm)と9mmを比較したとき、.22LRで9mmより多く出血させるには、1発だけでなく2発3発と、「多くの穴を空ける」ことで達成できます。

.22LRのような軽量弾頭と低圧な弾薬の組み合わせは反動が小さいため、速射しやすく、速射時でも命中率が高くなる傾向があります。

このメリットを活して短時間に多くの弾を命中させることが可能なら、総合的に有効なストッピングパワーが期待できますが、これは9mmなど他の弾薬でも実現可能です。

リムファイア方式による信頼性の問題

.22LR弾はリムファイア式(縁打ち式)を採用しており、セルフディフェンス用に一般的なセンターファイア式(中心打ち式)に比べて信頼性が劣ります。

リムファイアカートリッジイラスト画像

リムファイアカートリッジとは、薬莢(ケース)の底部周囲に撃発用の装薬が仕込まれている弾薬です。

撃発時には、リム(縁)を撃針で叩くことで発火し、メインの火薬に着火します。

構造がシンプルで製造コストが低いため、小口径弾(例:.22LR)に多く用いられています。

ただし、大口径ではケース強度の問題から使用されません。

リムファイアカートリッジは製造のばらつきや設計の特性上、不発の確率が1〜5%と高くなる傾向があります。

対して、品質の高いセンターファイアカートリッジでは不発率は1%以下です。

セルフディフェンスにおいては、1回の不発が命取りになる可能性があります。

リムファイア設計では以下のような問題が発生しやすくなります。

  • ファイアリングピン(撃針)が適切に当たらない
  • プライマー(雷管)成分の劣化
  • 湿気や温度など環境要因の影響
スタームルガーmk2

さらに、.22LRで利用されるリムドケースは、ケースのリム径が大きいためマガジン内で引っ掛かりやすく、ジャムを起こしやすい傾向があります。

そのためオートピストルとの相性が悪く、作動の信頼性が劣ります(リボルバーやシングルショットピストルではこの問題はありません)。

筆者
筆者

私はアメリカで.22LR弾を使用するルガーMK512ピストルを所有していましたが、「不発が多い」という点だけで護身用として推奨できないと感じました。これは銃の問題ではなく、弾薬の構造的な特性です。.22LRに限らず、リムファイアカートリッジに命を託すのはリスクがあります。

心理的停止と物理的停止の違い

セルフディフェンス射撃の多くでは、「心理的停止」が主な要因となることがあります。

これは、撃たれた者が恐怖やショックによって攻撃を中止する現象ですが、身体的な無力化とは異なります。

.22LR弾は、ある種の統計では高い停止率を示すことがありますが、それは物理的損傷によるものではなく、主に心理的反応によるものと考えられています。

もし攻撃者が心理的に動揺しなければ、.22LR弾では攻撃を止めるには不十分な物理的効果しか発揮できないリスクがあります

場合によっては、1発被弾した攻撃者が激高し、より攻撃的になる事例も報告されています。

脳や脊髄などの中枢神経系に.22LR弾が命中した場合は「一発で終了」する可能性もありますが、ストレス状況下で精確に命中させるのは容易ではありません。

.22LRを護身用として選択するアイディアとして、「攻撃者を無力化する」のではなく、「攻撃者を追い払う」があります。

1発の.22LRだけでは致命傷となる部位に命中しない限り、行動不能に陥る確率が低いため、攻撃者に逃走能力を残しておけます。

実際、この使い方を目的に.22LRを護身用として選択している人もいます。

しかし、これはすべてケースバイケースです。

2発3発と続けて被弾することで戦意喪失し逃走する事例もあれば、逆に攻撃者の体力が続く限り倒れるまで攻撃を続け、被害者が危険な状況に陥った事例もあります。

口径の違いによる死亡率

ボストン警察の2010年から2014年のデータを用いた研究「銃の口径と犯罪暴行における銃創による死亡確率との関連性」では、口径差が死亡の可能性に影響を与えるかどうかが調査されました。

口径と死亡率の相関については、銃撃による死亡率は、使用された銃器の口径が大きくなるにつれて著しく増加することが判明しています。

この研究は、より大きな口径のハンドガンによる銃撃は、たとえより継続的または正確でなくとも、より致命的であるという結論を出しています。

口径カテゴリオッズ比
(死亡対非死亡)
小口径(.22、.25、.32等)1.00(基準)
中口径(.38、.380、9mm等)2.25
大口径(.357マグナム、.40、.44マグナム、.45、10mm等)4.54
引用元:Boston市警察の発砲事案(2010–2014年)の分析結果より (pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)

オッズ比は「死亡 vs 非死亡」の比率を示しており、小口径と比較して、中口径は死亡リスクが約2.25倍、大口径は約4.54倍に上昇することを示しています。

総対象511件(死亡220件・非死亡291件)のうち、口径が特定できたのは367件で、上記カテゴリ分類による分析が行われました。

参考:The Association of Firearm Caliber With Likelihood of Death From Gunshot Injury in Criminal Assaults – PMC

専門家の見解

弾道学の専門家や警察関係者の多くは、セルフディフェンス目的で.22LR弾の使用を推奨していません。

FBIが定めた弾薬性能基準でも、.22LRは明確に除外されており、最低限の性能要件を満たせないことが理由です。

The .22 isn’t reliable enough for personal defense… The combination of ancient priming technology, and a tendency of the bullet to be loose in the case, make the .22 LR unsuited for serious use

.22は個人防衛には信頼性が十分でない…古い雷管技術と弾頭が薬莢内で緩い傾向の組み合わせが、.22LRをシリアスな用途には不適にしている。

Is the .22 LR Suitable for Defense? – The Shooter’s Log

Most will immediately tell you it’s not [advisable or sufficient for life-saving duties]. Some will allow its use for the elderly, poorly trained or those weak of arm and hand.

ほとんどの人は即座に、命を守る任務には適さないと言うだろう。高齢者、訓練不足者、腕力や握力の弱い者には許容する人もいるが。

The .22 LR For Self Defense: Good, Bad Or Crazy? – Gun Digest

「どんな銃でもないよりはマシ」という意見もありますが、.22LR弾よりも他に効果的な選択肢が存在する以上、あえて選ぶ必要性は乏しいといえます。

貫通力の不足、エネルギーの低さ、狭い銃創路、信頼性の問題、障害物に対する弱さなど、数多くの欠点がセルフディフェンス用途に不適であることを示しています。

セルフディフェンス用の銃を選ぶ際には、9mm、.38スペシャル、.40 S&Wといった、十分な実績と性能基準を満たす実用的な弾薬を用いることが、専門家の間で広く推奨されています。

懸念・評価基準.22LRの性能専門家の評価
信頼性低い(リムファイア不発、給弾不良)不適
ストッピングパワー低い(貫通が浅い)不適
致死性致命傷は可能だが確実性に欠ける効果低
反動・コントロール極めて小さい、扱いやすい必要なら唯一の利点
最適用途訓練、小動物狩猟自己防衛には不適

まとめ

.22ロングライフル(.22LR)弾は、1887年に開発された歴史ある弾薬で、反動が小さく扱いやすい、命中率が高い、銃声が小さい、安価、入手しやすいといった特徴から、レクリエーション射撃、小動物狩猟、射撃訓練などで広く利用されています。

しかし、護身用としては一般的に推奨されません

護身用弾薬には、標的を迅速かつ確実に無力化する能力が求められますが、.22LR弾には以下の点で課題があります。

  • 貫通力の不足
    • FBIの基準では人体組織を模したバリスティックゼラチンで最低12インチ(約30cm)の貫通が必要とされていますが、一般的な.22LR弾は6〜10インチ程度しか貫通しません。
    • 衣服や骨などの障害物を通過した後、重要臓器に到達しない可能性が高いことを意味します。
  • 運動エネルギーとストッピングパワーの低さ
    • .22LR弾のマズルエナジー(銃口初速での運動エネルギー)は45〜183ft-lbfと、9mm(335〜400ft-lbf)や.40 S&W(400〜525ft-lbf)などの護身用弾薬と比較してはるかに低いです。
    • このエネルギー差は、迅速な無力化を達成しにくい原因となります。
  • 銃創路の狭さ
    • .22LR弾の直径は約0.22インチ(5.6mm)と小さく、他の口径(9mmは約0.355インチ)に比べて形成される永続的空洞(弾丸が直接破壊した組織によって残る穴)が狭いです。
    • 精確に命中しても致命的な部位を外してしまうリスクが高まります。
  • リムファイア方式による信頼性の問題
    • .22LR弾はリムファイアを採用しており、不発の確率が1〜5%と、センターファイア方式の弾薬に比べて高い傾向があります。
    • 護身の状況では、1回の不発が致命的となる可能性があります。
    • リムドケースの特性上、オートピストルではジャム(弾詰まり)を起こしやすい問題もあります。
  • 物理的停止能力の限界
    • 護身射撃では、撃たれた者が恐怖やショックで攻撃を中止する「心理的停止」が起こることもありますが、.22LR弾では「物理的停止」(身体的な無力化)を確実に引き起こす十分な効果を発揮できません。
    • 攻撃者が心理的に動揺しない場合、攻撃を止めるには不十分な効果しか期待できないことがあります。
  • 障害物貫通性能の低さ
    • 衣類、車のドア、壁材などの中間障害物に対して、.22LR弾は弾かれたり、大きくエネルギーを失ったりする傾向があります。

弾道学の専門家や警察関係者は、これらの理由から護身目的で.22LR弾の使用を推奨していません。

護身用には、9mm、.38スペシャル、.40 S&Wといった、十分な実績と性能基準を満たす弾薬を選ぶことが広く推奨されています。