
弾薬の構造について解説します。
弾はどんな構造でどうやって発射されるのか?

カートリッジ(弾薬/実包)は、弾頭(弾丸)、ケース(薬莢)、パウダー(火薬 / 装薬)、プライマー(雷管)で構成されています。
銃のファイアリングピン(撃針)が弾薬のプライマー(雷管)を叩くと、プライマー内部の火薬が燃焼します。この火薬は圧力が加わると燃焼する火薬(起爆薬)です。
プライマーの火薬が燃焼すると、薬莢内のフラッシュホール(伝火孔)と呼ばれる小さな穴を火花や燃焼ガスが通過し、パウダー(火薬 / 装薬)に引火して激しく燃焼します。
パウダーが燃焼を始めると、発生した燃焼ガスにより内部圧力(腔圧)が高まり、弾頭が押し出されてバレル(銃身)の中で加速し発射されます。

ケース(薬莢)の厚みは先端が薄く、後部は厚くなっています。
発射時には膨張してチャンバー(薬室)に密着することで高圧ガスが後方へ漏れるのを防ぎます。使用されるパウダーは銃や弾の種類によって燃焼速度が異なり、燃焼速度を調節することで耐圧の限界を超えることを防ぎ、安全かつ最良のパフォーマンスを生み出します。
図ではパウダーがびっしり詰まっているように見えますが、実際はエアスペースと呼ばれる空洞のスペースがあります。内部に酸素があるため、水中であっても十分に燃焼します。エアスペースが占める割合は、拳銃弾では多めで、ライフル弾では少なめの傾向があります。
参考動画:GECO Hexagon
センターファイアーとリムファイアー

メタルカートリッジ(金属製薬莢)が発明されるまでは弾丸と火薬を別々に銃に装填したり、紙製薬莢を使用し、着火には火縄、火打石、キャップ火薬(パーカッションキャップ)、ピンファイア等々を使用していました。
しかし現在では圧力が加わると燃焼する火薬を着火薬として利用するカートリッジが使用されており、それは大きく分けてセンターファイアー・カートリッジ(1860年~現在)とリムファイアー・カートリッジ(1857年~現在)の二種類があります。
センターファイアー・カートリッジ

プライマーがケースの底の中央(センター)に配置された弾薬です。
肉厚のケースを持つのでパワーのあるカートリッジに使用でき、雑に扱っても暴発しにくいメリットがあります。
リムファイアー・カートリッジ

ファイアリングピン(撃針)がリム(薬莢底部の周囲)を叩くことで撃発する弾薬です。
リムの内部には圧力が加わると燃焼する火薬がリング状に配置されています。
相対的にリムファイアー・カートリッジはセンターファイアー・カートリッジより不発率が高いのですが、製造コストが安いことから小口径の弾薬やスポーツ用に広く採用されています。
リムの種類

リムの種類は、リムド、リムレス、ベルテッド、セミリムド、リベイテッドがあります。
リムド
リボルバーやショットガンに多く使用されており、歴史の古いケース形状です。
リムファイアー・カートリッジはリムドケースが使用されます。
小さなリムファイアー・カートリッジでは、バレル内径(口径)とケース直径が同じものが多く、これらの弾はヒールド・ブレットと呼ばれています。
リムレス
ケースとリムが同じ直径です。
現代軍用銃など、オートマチック(自動式銃)のピストルやライフルで現在最も広く流通しているタイプです。
ベルテッド
ハイパワーライフルなどに使用され、高圧になるとケースの後部に圧力が掛かり裂けやすくなるため、これを防止するためにケースの壁(ケースウォール)に厚みを持たせて補強されています。しかし実際には補強しなくても殆ど問題ないため、現在ではマイナーなカートリッジです。
ベルテッドケースが発明された1920年に.375H&Hという弾薬に採用され、他の弾薬メーカーもベルテッドを採用しました。
採用された目的には、類似サイズの通常弾とマグナム弾が存在し、通常弾を使用する銃に誤ってマグナム弾を装填すると破裂事故に繋がるため、誤用を防ぐためにマグナム・カートリッジにベルテッドを採用した経緯があります。
セミリムド
ケースの直径より僅かにリムの直径が大きくなっています。
ボックス・マガジン(箱型の弾倉)が流行を始めた頃、当時一般的だったリムドカートリッジではスムーズな装填が難しい(マガジンの中でリムが引っ掛かる)ことから発明されたカートリッジです。
.32AUTOや.38スーパーなどに採用され、日本では三十年式小銃で使用されていました。
特にダブルカラムマガジン(複列弾倉)で問題が起こりやすいデザインです。
リベイテッド
ケースの直径より小さな直径のリムを持ちます。
銃のボルトなど機関部の大きさを最小限に抑えつつ、できるだけ大きなケース容量を使用するために発明されました。
現在でも.41AEや.50AE、.50GIなどで採用されていますが、流通量は多くありません。
プライマー(雷管)の構造

画像は9x19mm弾のケース(薬莢)と分解したプライマー(雷管)です。
プライマーは火薬、カップ、アンビル(発火金)で構成されており、プライマーはケースの底の穴(プライマーポケット)に入っています。
カップの底には火薬が入り、その上に湿気から火薬を守る可燃性シート(フォイル・ペーパー等)が敷かれ、その上にアンビルが収まっています。
撃発時にはファイアリングピン(撃針)がカップを凹ませ、火薬がアンビルの先端に押し付けられて燃焼します。
アンビルの形状は、足が3本のものや、2本のものがあります。
ショットシェル(ショットガンの弾)では板状のアンビルがよく使用されます。
ボクサーとベルダン

プライマーの火薬の燃焼ガスは、プライマーポケットの奥に開いた穴(フラッシュホール)を通ってパウダー(装薬)に引火することで弾が発射されます。
一般的にフラッシュホールの数は1つだけで、これはボクサー(ボクサータイプ/ボクサープライマー)と呼ばれています。
一方、フラッシュホールが2つあるものはベルダン(ベルダンタイプ/ベルダンプライマー)と呼ばれます。
ボクサーはリローディング(薬莢の再利用)時に使用済みプライマーを抜きとりやすいというメリットがあります。
(※ベルダンはプライマーの抜き取りが困難なので一般的ではありませんが、ケースを水で満たして水圧を利用して抜き取る方法もあります)

ベルダンは1866年3月にアメリカのハイラム・ベルダンによって特許が取得され、ボクサーは1866年10月にイギリスのエドワード・ボクサーによって特許が取得されました。
ベルダンのアンビルはケースと一体化していますが、ボクサーのアンビルはケースやカップから独立し、別パーツとなっています。
また興味深いことに、アメリカ人が発明したベルダンプライマーはイギリスで広く流通し、イギリス人が発明したボクサープライマーはアメリカで広く流通した歴史があります。
日本では戦前からベルダンプライマーを採用していましたが、戦後(自衛隊)はボクサープライマーを採用しています。
プライマー(雷管)の大きさ

プライマーの大きさは使用するケースの大きさによって異なります。
9x19mm弾では直径4.45mmのプライマーが使用され、.50BMG弾では直径8mmのプライマーが使用されています。
使用するパウダーの粒の形状や大きさにより燃焼速度が異なるため、同じサイズのケースであっても通常弾とマグナム弾では異なる種類のプライマーが使用されます。
プライマーを変更すると腔圧に影響し、ライフル弾ではフラッシュホールと対面するケースのショルダー角度等によって燃焼効率や腔圧が変化しますが、サイズや種類の異なるプライマーの使用は不発のリスクがあります。

小さな弾薬はプライマーを使用できるスペースがないため、リムファイアー・カートリッジが使用されます。
ケースの底面周囲にあるリムの中にリング状に圧力で発火する火薬があり、銃のファイアリングピン(撃針)でリムを叩いて凹ませると火薬が燃焼し、リム内の火薬がパウダーに引火して弾が発射されます。
拳銃弾(ピストルやリボルバーの弾)

左から.45ACP, 9x19mm, .357マグナムです。
見た目はよく似たパウダーですが、それぞれ異なる量や燃焼速度が設定されています。(同じ場合もあります)
パウダーは粒の大きさや形状によって燃焼速度が異なり、粒が小さいと燃焼速度が速く、逆に大きいと遅くなります。
速い燃焼速度のパウダーは拳銃などバレルの短い銃で使用され、一方、遅い燃焼速度のパウダーはライフルなどバレルの長い銃で使用されます。
拳銃用パウダー | ライフル用パウダー | |
パウダーの形状 | 燃焼しやすい | 燃焼しにくい |
パウダーの粒の大きさ(傾向) | 小さい | 大きい |
燃焼速度 | 速い | 遅い |
銃身内が高圧になるまでの時間 | 速い | 遅い |
拳銃弾のパウダーをライフル弾に使用すると燃焼速度の違いにより急激に内部が高圧となり、チャンバー(薬室)やバレルが耐えられずに破裂や破断を起こす可能性があります。
※パウダーの形状や特徴については、ページの最後に触れます。
ライフル弾

.223レミントン(ライフル弾)のパウダー。
ライフル弾のパウダーは拳銃弾用と比較すると、よりゆっくり長く燃焼します。
ライフルは銃身が長く弾速も高速であるため、短い銃身のハンドガンよりも時間を掛けて加速させる必要があります。
また同じライフル弾のパウダーでも、使用する弾頭重量によって燃焼速度の異なるパウダーが必要となることがあるため注意が必要です。
一般的に、使用する弾頭が重いほど、より遅い燃焼速度のパウダーが使用されます。
ショットシェル

ショットガンの弾はショットシェルと呼ばれます。
厳密には、散弾をショットと呼び、ケース(薬莢)をシェルと呼びますが、それら一体となったものをショットシェルと呼びます。(ケースをショットシェルと呼ぶこともあります。)
散弾(ショット)は金属カートリッジのように弾をケース(シェル)に固定できないので、シェルの先端を内側へ折り込んで散弾を保持しています。

古いショットシェルには金属や紙のケースもありますが、その場合は先端を内側へ巻き込んで口を細くし、カードと呼ばれる円形の板をフタにしていました。

ショットシェル(ショットガンの弾)もピストルやライフルと同じ原理ですが、散弾(複数の弾)を効率よく発射するために パウダー(火薬)と弾の間にワッド(wad) / ワッズ(wads)と呼ばれる緩衝パーツが含まれています。
また、上図のように散弾(ショット)を包み込む形状のワッドはショット・カップ(Shot Cup)とも呼ばれます。
ワッドは弾と一緒に発射され、概ね15メートル程度飛んで落下します。
至近距離ではワッドも高速なので、人体や獲物に命中するとワッドの痕が皮膚に残ることがあります。
使用するパウダーは拳銃用と同じ燃焼速度のものが使用されるのが一般的ですが、ショットガン専用のパウダーも存在します。
使用するパウダーの種類は口径や弾頭重量などで左右されるので一定ではありません。

ショットシェルはショットガンだけでなく、ピストルやリボルバーにも専用のショットシェルが存在します。
パウダー(装薬)の形状と燃焼速度

銃器用火薬(装薬/発射薬/推進薬)は、煙が少ないスモークレスパウダー(無煙火薬)と、火薬の誕生時から存在するブラックパウダー(黒色火薬)の二種類が存在します。
1846年に最初のスモークレスパウダーが発明されて以降、様々な改良が加えられて現在に至りますが、昔のブラックパウダーとは異なり、現代のスモークレスパウダーは粒の形状や大きさがより厳しく管理されています。
火薬は粒が大きいと燃焼速度が遅く、小さいと燃焼速度が速くなります。ブラックパウダーが使用されていた時代は、大小の粒が混ざり合い、大きな粒も外部の衝撃によって割れることで燃焼速度が速くなったりと安定しませんでした。
これはスモークレスパウダーでも同じで、朝鮮戦争では一部粗悪なパウダーが使用され、寒冷地で粘性を失ったパウダーが脆くなり、衝撃で粒が細かくなったことでブローニングM2マシンガンが発砲と同時に破裂する事故が発生しています。
(※ブラックパウダーは粒が細かくなっても爆轟が起き難い火薬ですが、スモークレスパウダーの場合は爆轟を起こしやすくなり、推進薬ではなく爆薬と化すため注意が必要です)
下図は現在の一般的なスモークレスパウダーの形状を表しており、主に以下の形状に分類されます。火薬の粒の大きさにより燃焼速度が変化するように、その火薬をどのような形状で成形するかによっても燃焼速度が変化します。
遅燃性(スロー・バーニング)か速燃性(ファスト・バーニング)かは、粒の大きさと形状の他、不揮発性溶剤や添加剤を加えて粘性を持たせ、表面処理する等、処理方法によって異なっています。
(※パウダーの色が黒いのは、静電気防止のため黒鉛で表面をコーティングしているためです)

ディスク
円盤状で燃焼速度が速いタイプ。
主にハンドガンやショットガンで使用される。
パーフォレイテッド・ディスク/ホール・ディスク
ディスクの穴開きバージョン。
穴を空けることで燃焼速度がより速くなる。
ロッド
円柱形のパウダー。
燃焼速度が遅く、バレルの長いライフルに使用される。
チューブ
ロッドの穴開きバージョン。
ロッドより燃焼速度が速く、ライフルに使用される。
ボール
球形のパウダー。
大きさによってハンドガン、ショットガン、ライフルで使用でき、大量生産しやすく、現代の軍用ライフル弾で多く使用されている。
ラメル/スクエア
四角にカットされたパウダー。
古くからライフルに使用されるが、現在では相対的に一般的ではない。
スモークレスパウダー(無煙火薬)の種類

現在のスモークレスパウダーの種類には、シングルベース、ダブルベース、トリプルベースがあります。
ベースとは基剤のことで、それぞれ含まれる成分が異なります。
シングルベース
- ニトロセルロースの1種類が使用されている
- ニトロセルロースにエチルアルコール等の溶剤を加えて柔らかくすることで様々な形状に成形可能
- ニトロセルロースは分解しやすいので、安定剤を追加して生成される
- 遅燃性で、5.56NATO弾などライフル弾に使用される
ダブルベース
- ニトロセルロースにニトログリセリンを加えたもの
- シングルベースより10%性能が向上している
- ニトロセルロースに液状ニトログリセリンや添加剤を加えて柔らかくすることで様々な形状に成形可能
- 発生ガスが少なく燃焼温度が高いため、バレルの寿命に悪影響があり、相対的に汚れやすい
- 瞬発力のあるパワーを出せやすく、ハンドガンやショットガン、迫撃砲、ロケットなど、バレル(銃身)が短い銃器や、重い弾を撃ちだすために使用される
トリプルベース
- ニトロセルロースとニトログリセリンに、ニトログアジニンを加えたもの
- ダブルベースより10%性能が向上している
- 燃焼温度が低く、ガスの量が多いため戦車砲などの大口径の砲に使用される
- シングルベースやダブルベースと比較すると発生する煙の量が多い
黒色火薬(ブラックパウダー)の成分

前漢の第7代皇帝「武帝」(紀元前141~87年)が不老不死の薬の発見を命じ、錬丹術が発展しました。
錬丹術とは不老不死の薬を作る術であり、この過程で硝石の燃焼や、硝石、硫黄、木炭が混ざることで激しい燃焼が起こることが発見されています。
850年頃に書かれた道教の経典「真元妙道要路」では火薬が原因で火事になったことが触れられており、火薬の危険性を知らせる記述が火薬発明を示す根拠となりました。
しかし142年に書かれた「周易参同契」では火薬の反応とみられる記述があり、2~3世紀に火薬が存在したとも見られています。
日本では硫黄と木炭は入手可能なものの、硝石が採掘できないため輸入もされていましたが、「古土法」や「硝石丘法」を利用し、軒下の土、ヨモギ、糞尿などから塩硝を抽出することで火薬の自国生産が可能でした。
銃砲で使用される黒色火薬の成分は、硝石(硝酸カリウム)75%、硫黄10%、木炭15%が一般的です。
硝石と硫黄の割合や粒の大きさを変えることで燃焼速度が変化します。
燃焼速度が遅ければ導火線に使用でき、反対に燃焼速度が速ければ爆弾など爆発物に使用可能です。
1040年に書かれた中国(北宋)の兵書「武経総要」では、火薬や毒ガスの製法について記述され、硝石の割合を増やすことで爆発力が向上することが知られていました。
また中世イギリスの哲学者ロジャー・ベーコンは、1242年に執筆した書物「偉大なる自然的魔術」にて、「硝石7に対し、ハシバミの小枝5、硫黄5の割合をもって、その技術を知る者は、雷鳴を呼び破壊を招くことも可なり」と記しています。
(彼は黒魔術容疑でパリの僧院で蟄居を命ぜられる不幸がありました)
黒色火薬の調合方法や製法は文献や時代で違いが見られ、1884年にスモークレスパウダー(無煙火薬)が発明されるまで少なくとも千年以上かけて改良を重ねて発展したことが分かります。