
アメリカでは推定2,700~3,070万丁のAR-15ライフルが流通しています。
Nintendo Switchの国内販売台数が2,089万台であることと比較すると、AR-15の人気ぶりは凄まじいです。
AR-15プラットフォームは、狩猟、スポーツ射撃、競技、ホームディフェンスに広く使用されており、使用弾薬は標準の.223/5.56以外にも数十種類の異なる口径に対応できます。
とはいえ、なぜこれほどまでにAR-15の人気が高いのでしょうか?
本記事では、AR-15の以下の点について詳しく解説します。
AR-15とは、アメリカで開発されたライフルで、主に民間市場向けに販売されている銃器です。
1950年代にユージン・ストーナーがアーマライト社で開発し、その後コルト社が商業化しました。

AR-15は見た目が軍用のM16ライフルと非常によく似ていますが、M16がフルオート(連射)機能を持つのに対し、AR-15はセミオート(1回の引き金操作で1発)のみで構成されています。
この違いにより、AR-15は米国の法律下では民間所有が許可されています(ただし、一部の地域で許可を得てフルオートモデルのAR-15を所有することも可能)。
また、AR-15はモジュール構造を持ち、バレルやストック、ハンドガードなどの部品交換が容易で、狩猟・競技・自衛など多目的に使用されていることが特徴です。
項目 | 説明 |
---|---|
開発目的 | 軍用の軽量自動小銃として設計(フルオート機能あり) |
初期設計者 | ユージン・ストーナー(アーマライト社) |
軍用モデル | M16(AR-15を基に改良・採用) |
民間モデル | セミオートのみのAR-15 |
- なぜこんなに売れる?AR-15の圧倒的な人気を支える理由
- AR-15のよくある誤解と事実
- AR-15の歴史
- 信頼と実績:AR-15ライフル 主要メーカー15社
- エアロ・プレシジョン(Aero Precision)
- アーマライト(Armalite)
- BCM(Bravo Company)
- コルト(COLT)
- ダニエル・ディフェンス(Daniel Defense)
- FNハースタル(FN Herstal)
- H&K (Heckler & Koch)
- ラルータクティカル(LaRue Tactical)
- LMT (LEWIS MACHINE & TOOL)
- LWRC (Land Warfare Resources Corporation)
- ノベスキ(Noveske Rifleworks)
- POF (Patriot Ordnance Factory)
- RRA (ROCK RIVER ARMS)
- スタームルガー(STURM RUGER)
- ウィンダム・ウェポンリー(Windham Weaponry)
- まとめ
なぜこんなに売れる?AR-15の圧倒的な人気を支える理由

AR-15の驚異的な人気は、さまざまな層のアメリカ人にとって魅力的な複数の要因が絡み合った結果といえます。
以下にAR-15が人気の理由を解説します。
モジュール性と高精度

ホームディフェンスからスポーツ、狩猟まで

カスタマイズの自由度

直感的な操作とシンプルなメンテナンス性

市場を動かす戦略と文化

銃規制議論

アメリカで銃規制が困難な理由は、以下の要因があります。
これらすべてが複雑に絡み合っており、政治・文化・制度の三位一体的な構造が銃規制を困難にしています。
AR-15の人気は、実用的な利点、文化的・象徴的な意味、経済的な入手しやすさ、そして強力なコミュニティ支援が複合的に作用した結果です。
多用途で信頼性が高く、カスタマイズも自由自在な特徴と、アメリカの銃文化における象徴性が重なり、多くのアメリカ人に支持されています。
AR-15のよくある誤解と事実

AR-15ライフルは、アーマライト社のAR-15設計に基づいた構造とパーツ互換性を持つセミオートマチックライフルのプラットフォームを指します。
以下のような設計的・構造的条件を満たすことが、「AR-15」として定義されるための基準となります。
AR-15とは、アーマライト社の設計に基づき、AR-15系ロアレシーバーと内部構造を持ち、部品の互換性とモジュール性を備えたセミオートライフルの総称であり、見た目や使用目的ではなく、設計基盤と部品規格によって定義されます。
- Q「AR」は「アサルトライフル」または「オートマチックライフル」を意味する?
- A
AR-15の「AR」は「アーマライト・ライフル」の略であり、1950年代にこの設計を最初に開発した会社にちなんで名付けられました。
アーマライト社は、1959年にコルト社に設計を売却する前に、AR-15を最初に製造したメーカーです。
- QAR-15はフルオートマチック・マシンガン?
- A
民間用のAR-15はセミオートマチックライフルであり、引き金を1回引くごとに1発のみ発射されます。
M16やM4のような軍用モデルとは異なり、民間用のAR-15にはセレクティブファイア機能がなく、セミオートマチックモードとフルオートマチックモードを切り替えることはできません。
民間用のAR-15は1960年代から入手可能であり、フルオート射撃に必要な部品は備わっていません。
セミオートマチックAR-15をフルオートに改造することは連邦法上の重罪であり、最高10年の懲役と最高25万ドルの罰金が科せられます。
アメリカでフルオート射撃が可能なAR-15の合法所持は、以下の条件や手続きを経た場合に可能です。
- QAR-15は高威力?
- A
.223レミントン弾(または5.56×45mm NATO弾)を使用する標準的なAR-15は、狩猟で利用されるライフル全体の威力のなかでは下限に位置します。
一般的な55グレインの.223レミントン弾は、約1,250 ft-lbfのエネルギーを発生させますが、これは以下と比較すると低いです。
弾薬 マズルエナジー
(ft-lbf).30-06 スプリングフィールド 2,920 .270 ウィンチェスター 2,700+ 12ゲージ スラッグ 2,487 .30-30 レバーアクション 2,500 一部の州では、中型から大型の獲物には不十分と判断されるため、.223口径のAR-15での鹿狩りを禁止しています。
ただし、AR-15プラットフォームは、部品の交換により標準の.223/5.56よりも強力な口径に対応できます。
AR-15は以下の口径(弾薬)に対応します。
弾薬名 弾頭径
(mm)主な用途 5.56×45mm NATO 5.70 軍用、民間(標準) .223 レミントン 5.70 狩猟、競技、民間 .300 AAC ブラックアウト 7.82 サプレッサー運用、近距離 7.62×39mm(AK弾) 7.92 狩猟、タクティカル 6.5 グレンデル 6.71 中距離精密射撃 6.8mm SPC 7.00 軍用試験、狩猟 .22 ロングライフル(.22LR) 5.60 訓練、娯楽 .458 SOCOM 11.63 大物狩猟 .50 Beowulf 12.70 バリア貫通、近距離制圧 9×19mm パラベラム 9.01 PCC(ピストルキャリバーカービン) .45 ACP 11.43 PCC、サプレッサー運用 5.7×28mm FN 5.70 高速小口径、低反動 .224 Valkyrie 5.70 長距離精密射撃 ※口径や用途により、バッファー、ボルトキャリアグループ(BCG)、マガジン、ガスシステムも変更が必要になる場合があります。
- Q銃犯罪のほとんどはAR-15が原因?
- A
銃犯罪で最も多く使用されているのはライフルではなく、ハンドガン(拳銃)です。
FBIの統計によると、2019年に銃を使用した殺人事件の62%でハンドガンが使用されました。
研究によると、アサルトウェポン※が犯罪で使用される割合は2〜12%に過ぎず、ほとんどの推定では7%未満とされています。
2007年から2017年の間に、年間約1,700人がナイフや鋭利な物で殺害されており、これはあらゆる種類のライフルを合わせた数のほぼ4倍です。
「凶器」の割合では、「素手」はライフルの2倍の頻度で殺人事件に使用されています。
しかし、ライフル全体の使用頻度は低いものの、AR-15型ライフルはいくつかの注目度の高い銃乱射事件に関与しています。
※参考:FBI — Expanded Homicide Data Table 8
アサルトウェポン(Assault Weapon)とは、軍用スタイルの特徴を持つ民間用半自動銃を指す、政治的・法的な用語です。
以下のような特徴を1つ以上備える半自動銃が「アサルトウェポン」と見なされる場合があります(定義は州法や法令によって異なります):
この言葉は軍用の「アサルトライフル(例:M16)」とは異なり、法的・政治的文脈で使われる曖昧な定義であり、技術的な分類ではありません。
- QAR-15は信頼性が低く、常にクリーニングが必要?
- A
信頼できるメーカーのAR-15は、適切にメンテナンスされていれば非常に信頼性が高いです。
定期的なクリーニングと潤滑が必要ですが、AR-15は潤滑以外の最小限のメンテナンスで10,000発以上発射可能であることが報告されています。
ベトナム戦争初期の軍用M16に関連する信頼性の問題は、主に弾薬の問題と、ライフルが「セルフクリーニング(自己清掃)」するといった誤った認識によるものでした。
これらの問題は、現代では解決されています。
- QAR-15をフルオートに改造するのは簡単?
- A
AR-15をフルオートに改造するには、大幅な内部改造と規制された特殊な部品が必要です。
これにはボルトキャリアグループ、トリガー機構を含む複数の内部部品の交換や改造、およびオートシアーの追加が含まれます。
改造装置(「スイッチ」、「オートシアー」)の所持は、銃器が付属していなくても、最高10年の懲役刑が科せられます。ATFは過去5年間で31,000個以上の機関銃改造装置を押収しています。
アメリカで民間人がフルオートのAR-15を合法的に所有する唯一の方法は、1986年以前に登録された個体(非常に数が少なく、価格は数万ドル以上が一般的)をForm 4の申請で譲渡購入することです。それ以外は、SOTライセンスを取得して業務目的で所持する方法しかありません。
AR-15の歴史

AR-15は、1950年代にユージン・ストーナーがアーマライト社で開発した小口径ライフルです。
当初は軍用として設計され、1959年にコルト社に製造権が売却されました。
その後、アメリカ軍に「M16」として正式採用され、ベトナム戦争で実戦投入されました。
AR-15という名称は本来「アーマライト・ライフル」を意味し、現在では民間向けの半自動ライフルを指す総称として使われています。
1990年代には連邦法により一時規制されましたが、2004年の規制終了後に市場が急拡大し、現在ではアメリカ国内で最も流通しているライフルとなっています。
軽量・高精度・拡張性に優れ、多数のメーカーが製造しており、狩猟・競技・自衛用として幅広く普及しています。一方で、政治的・社会的議論の中心となることも多い銃です。
AR-15ライフルは、1950年代の軍事技術から進化を続け、最も人気の高い民間用ライフルへと成長しました。
起源と初期開発 (1954~1959)
AR-15の歴史は、1922年インディアナ州に生まれた工作技術者・銃器設計者のユージン・モリソン・ストーナーに始まります。
第二次世界大戦中に海兵隊で航空兵器の専門家として従事したストーナーは、その後工作技術者として働き、1954年にアーマライトに主任技術者として入社しました。
アーマライトは1954年、フェアチャイルド社の傘下で軽量軍用ライフルの開発を目的に設立された部門でした。
AR-10の誕生
ストーナーが1955~56年に開発したAR-10は、直線的なバレルとストックの配置、アルミとフェノール合成材の軽量構造、ガス作動方式など、画期的な設計を導入した7.62×51mm NATOバトルライフルでした。
しかし、同時期の他のライフルと比較して1ポンド(約450g)軽量であったものの、M14として採用されたスプリングフィールドT44E4に敗れました。
AR-15の誕生
1957年、より小口径の.223レミントン弾に対応するように設計を縮小したAR-15が誕生しました。
ここでの「AR」は「アーマライト・ライフル(ArmaLite Rifle)」の略で、「アサルトライフル」や「オートマチックライフル」ではありません。
AR-10の革新的設計を維持しつつ、軽量弾薬の利点である携行弾数の増加を享受できるモデルでした。
ストーナーが1956年に開発したディレクト・インピンジメント式ガス作動システムも搭載され、後のARプラットフォームの特徴となりました。
軍用採用とベトナム時代 (1959~1975)
コルトへの権利譲渡
アーマライトは資金や量産能力の限界から、1959年にAR-10・AR-15両設計の権利をコルト社に売却しました。
コルトはチャージングハンドルをハンドル下からレシーバー後部へ移動させるなどの改良を実施しました。
軍での試験と採用
1960年代初頭、米陸軍はM1ガーランドやM14の後継を求めてAR-15の試験を実施。
当初はM14支持の声が強かったものの、国防高等研究計画局(ARPA)から高評価報告があり、マクナマラ国防長官が1963年1月にAR-15の採用を決断しました。
1963年12月には「M16」と改称され、1964年に正式配備されました。
M14の10ポンド(約4.5kg)に対し、M16は7.4ポンド(約3.36kg)と軽量で、5.56×45mm弾の高初速はベトナム戦争のジャングルに適していました。
ベトナム戦争での問題
M16はベトナムでの初期運用で信頼性に重大な問題を抱えていました。
原因は以下の通りです。
これらを受けて議会が調査を行い、1969年にM16A1が登場。
クロムメッキの復活やメンテ手順の整備により、信頼性が飛躍的に改善されました。
民間市場への展開 (1963~1990年代)
初期の民間販売
コルトは1963年に民間および法執行機関向けにAR-15商標でセミオート版を販売開始しました。
1959年にはマレーシア連邦や英国などに民間向けのフルオートおよびセミオート両仕様が輸出されていました。
1964年には.223口径/20インチバレルで5連マグ付きの「Colt AR-15 Sporter」が発売され、精度と信頼性を維持しつつ一般向けに提供されました。
特許失効と市場の拡大
1977年、コルトのAR-15設計特許が失効し、他社によるAR-15互換ライフルの製造が可能になりました。
これにより民間モデルが多様化し、「AR-15」が同モデルの総称として広く浸透しました。
連邦法規制と市場への影響 (1994~2004)
連邦アサルトウェポン禁止法
1994年に制定された連邦アサルトウェポン禁止法は、多くのセミオートAR-15モデルの製造・譲渡を制限し、10発以上のマガジンを禁止しました。
しかし新規製造品でのみ適用され(既存銃は合法)、設計変更による準拠モデルも製造が許可されました。
1990年にはコルトが3万6,000丁のみを国内向けに生産したにとどまります。
禁止終了後の爆発的成長
2004年に禁止法が失効し、AR-15市場は急成長します。
1990年代後半の年間生産数10万丁未満から、2015年には100万丁超へと飛躍的に増加しました。
現代の支配的地位 (2004~現在)
生産と市場規模
AR-15市場は現在数十億ドル規模に成長。
市場価値は約50億ドルと評価され、2033年には70億ドルに達すると見込まれています。
1990年から2020年までに米国で製造・輸入されたAR-15およびAKスタイルのライフルは、合計2,440万丁を超え、2020年には過去最高の280万丁が生産されました。
製造体制の多様化
現在、アメリカには大手から小規模専門メーカーまで数十社が参入しており、価格帯やブランドごとの多様性が際立っています。
技術の進化
近年のAR-15は以下のような技術革新が進んでいます:
業界の課題と対応
2019年にコルトは「市場の飽和」を理由に一時民間モデル生産を停止しましたが、2020年5月にはコロナ禍による需要増加を受けて生産を再開しました。
銃乱射事件を受けた政治的圧力や小売店(例:Dick’s Sporting Goods)の販売制限はあるものの、需要は根強く、政治環境によって供給・販売が左右されます。
文化的・政治的意義
AR-15は単なる銃器を超え、文化・政治の象徴となりました。
NRAは「アメリカのライフル」として広報し、第二修正や自己防衛、愛国心の象徴として支持層に訴えています。
また、業界では2009年に近代スポーティングライフル(modern sporting rifle)という用語で再定義し、民間用途を強調する広報戦略が功を奏しました。
年代 | 出来事 |
---|---|
1922年 | ユージン・ストーナー誕生(後のAR-15設計者) |
1954年 | ストーナーがアーマライト社の主任技術者に就任 |
1955~56年 | 7.62mm口径のAR-10が開発されるが、軍採用には至らず |
1957年 | AR-10を小口径化したAR-15が開発される(.223口径) |
1959年 | アーマライトがAR-15の権利をコルト社に売却 |
1963年1月 | 国防長官マクナマラの命令で、AR-15が米軍に正式採用決定 |
1963年12月 | 軍用モデルが「M16」として再命名される |
1964年 | M16がベトナム戦争で初実戦投入/コルトが民間向けAR-15販売開始 |
1965~68年 | ベトナムでM16が頻繁に作動不良(装薬変更・クリーニングキットの不足等) |
1969年 | 改良型のM16A1が登場、クロムメッキやメンテナンス性改善 |
1977年 | コルトのAR-15設計特許が失効、他社が類似モデルを製造開始 |
1994~2004年 | 連邦アサルトウェポン禁止法により、AR-15の新規製造・販売に制限 |
2004年 | 禁止法の失効により、AR-15市場が急拡大 |
2015年 | 年間生産数が100万丁を突破 |
2019年 | コルトが「市場飽和」を理由に民間向けAR-15の生産を一時停止 |
2020年 | 新型コロナの影響で需要回復、コルトが民間向け生産を再開 |
2022年 | AR-15系ライフルの流通数が全米で2440万丁以上に到達 |
2023年以降 | 年間数十万丁規模で生産が継続。市場規模は70億ドル規模に成長 |
信頼と実績:AR-15ライフル 主要メーカー15社
エアロ・プレシジョン(Aero Precision)

エアロ・プレシジョン社はワシントン州タコマで1994年から創業しているメーカーです。
「エアロ」の名の通り、元々はボーイング社と取引のある航空宇宙産業関連企業でしたが、次第にライフルパーツ・メーカーへと事業を転換し成長しました。
基本的にパーツ製造がメインでレシーバーやハンドガード類などを製造しており、カタログ上のコンプリートガン(完成品の銃)のラインナップは少ないといえます。
ロアレシーバーのマグウェルは通常より少し広めにとられています。
アーマライト(Armalite)

ライフル界で知らない人はいないであろう有名企業のアーマライト社は、1954年創業のライフルメーカーです。
チーフデザイナーでありAR15の生みの親であるユージン・ストーナーによって、AR1からAR18まで数多くのライフルが生み出されました。
ちなみに「AR15」の「AR」は、「アーマライト・ライフル」の略称です。
カリフォルニア州ハリウッドで創業したアーマライト社は1983年にフィリピンのエリスコ・ツール・マニュファクチュアリング(Elisco Tool Manufacturing)に売却されましたが、1996年にアメリカのマーク・ウェストロムが買収し、2013年にはストラテジック・アーモリー・コープス(SAC)に売却。そして現在は 2018年からアリゾナ州フェニックスに本拠地を置き、AR15やAR10をベースとしてライフルを製造しています。
またコンプリートアッパー(アッパー一式)やパーツ類も供給しています。
BCM(Bravo Company)

ブラボーカンパニー社(BCM)は2003年のイラク戦争から帰還した海兵隊員によりウィスコンシン州ハートランドに創設されたライフルパーツメーカーです。
スポーツ用から軍用まで幅広いターゲット層を持ちます。
コンプリートガンも製造していますが、主にレシーバー等のパーツ開発製造に力を入れています。
またオープンソースのKeyModシステムレイルの他、ポリマー製KeyModレイル(PKMR)も開発しています。
コルト(COLT)

コルト社は1855年創業の歴史あるガンメーカーであり、軍と契約しているメジャーなメーカーです。
ビジネス的には軍との契約切れやハンドガンの売上不振から倒産の危機を何とか生き延びている状態ですが、最近のコルト社製ライフルは以前よりクオリティが向上していると言われています。
しかし細かい点を挙げると、ストックのキャッスルナットをか締めて回らなくするなど分解が面倒になっていたりします。
ダニエル・ディフェンス(Daniel Defense)

ダニエルディフェンス社は創業者のマーティー・ダニエルによって2000年にジョージア州ブラッククリークで創業されたライフルパーツメーカーです。
コンプリートガンの他、レイルシステムで有名なメーカーで、アメリカ特殊作戦軍(SOCOM)でも同社の製品が採用されています。
多種多様な口径バリエーションやモデルを揃えているため一言で特徴を挙げるのは難しいのですが、強いて言えば「精度も価格も高い」という高級志向です。
FNハースタル(FN Herstal)

FNハースタル社はベルギー東部のハースタルで1889年に創業されたガンメーカーです。
FNというと、ブローニングマシンガン、SCAR、FAL、P90などが思い起こされますが、AR15も製造しています。
現在ではAR15をFN15シリーズとして販売しており、ピストルからライフルまで幅広くカバーしています。
また、軍用のM4/M16と同規格の民間用AR15としては、コルトやFNのミルスペックモデル(コレクターモデル)が最も軍用に近いスペックのモデルとなります。
H&K (Heckler & Koch)

H&K社は1949年にドイツのオベンドルフで創業されたメーカーです。
(創業当時は警察向けのガンパーツの他、電化製品や自転車のパーツも製造していました)
現在では説明の必要がないほど有名なH&Kですが、AR15モデルでは軍用のHK416の他、民間用MR556シリーズを製造しており、HK416は自衛隊を含む世界各国の軍や警察で採用されています。
ファイアリングピン・ブロック・セイフティが備わっているため、他社AR15とは互換性のないパーツが含まれています。
ラルータクティカル(LaRue Tactical)

ラルータクティカル社は創業者のマーク・ラルーによって1980年にテキサス州で創業されたガンメーカーです。
射撃競技界でも高精度ライフルで有名なメーカーであり、7.62mm口径バリエーションも充実していますが、ライフル以外にスコープマウントリングなどの光学機器関連アクセサリー類が豊富です。
またPredatOBRを始めとする、QDレバーを操作して簡単にハンドガードを取り外すことができるAR15を製造している点もユニークです。
ブラボーカンパニーやダニエルディフェンスは20年弱の歴史ですが、ラルータクティカルは40年の歴史と蓄積された技術があり、カスタマーサービスの評判も高いです。
出荷前には3発の実射テストを行っており、1MOA(100ヤードで1.047インチ)内に集弾しなければ出荷されないという徹底した品質管理が行われています。
マーク・ラルー曰く、「あなたがハッピーでなければ私たちもハッピーではない( “If you ain’t happy, then we ain’t happy”)」
LMT (LEWIS MACHINE & TOOL)

LMT社(ルイス・マシン&ツール)は創業者のカール・ルイスによって1980年にイリノイ州に創業されたガンメーカーです。(オリンピック陸上金メダリストのカール・ルイスとは別人です)
軍を顧客とするメーカーで、英軍(L129A1)やニュージーランド軍(MARS-L)に同社のライフルが採用されていますが、民間向けのAR15も製造しています。
同社製品の特徴のひとつとしては、LMTが特許を持っているLMTエンハンスドボルトとボルトキャリアが挙げられます。
通常のエキストラクターよりも幅広のため排莢の信頼性が向上し、ボルトキャリアのガスポートの穴が3つあるため、外観から判別しやすいといえます。
追加されたガスポートによってガスの排出速度が向上していますが、10インチバレルでは作動に不具合が生じやすいため銃身長に注意が必要です。
また、アッパーレシーバーとハンドガードレイルを一体化させ、アルミ合金から削り出した「モノリシック・レイル・プラットフォーム(MRP)」を開発し、ゼロを失いにくい高い精度のレシーバーを製造しています。
これはレシーバーとレイルが一体化しているため使用可能なバレルもLMTオリジナルですが、レイルの先から挿し込んで横からレンチでボルトを締めるだけというシンプルな構造になっており、異なる銃身長のバレルを簡単に交換して楽しめます。
ただ、このレシーバーだけで一般的なAR15が購入できてしまう価格なので、コストに見合うかどうかは考え方によります。
LWRC (Land Warfare Resources Corporation)

LWRC社は1999年にバージニア州スプリングフィールドで創業されたガンメーカーです。
ランド・ウォーフェア・リソーシーズ・コーポレーションを直訳すると「陸戦力会社(?)」という物々しい企業名ですが、2008年にLWRCへと社名を変更しました。
主にショートストローク・ガスピストン方式のAR15や関連パーツを製造しており、5.56mm、7.62mm、6.8SPCなどの口径バリエーションを扱っていますが、H&K UMPのマガジンを使用するショートリコイル.45ACP サブマシンガン風ピストル(LWRC SMG-45)も製造しています。
ノベスキ(Noveske Rifleworks)

ノベスキ・ライフルワークス社は創業者のジョン・ノベスキによって2001年にオレゴン州で創業されたライフルメーカーです。
2000~3000ドル前後の高級なライフルが多いですが、その性能やクオリティの高さから多くのファンが存在します。(競合他社よりも品質管理と検品に時間とコストを掛けていると言われています)
ジョン・ノベスキは「KX3フラッシュハイダー」や、サプレッサー使用時の作動を確実にする「スイッチブロック(ガスブロック)システム」を開発し高く評価されましたが、2013年に交通事故により36歳の若さで亡くなりました。
当時アメリカのネット上で「ジョンは事故ではなく殺された」というデマが流れて騒ぎになりました。
このデマが流れた理由には次の背景があります。
ジョン・ノベスキの死後、アメリカのガンコミュニティー界では「ジョンの家族を応援しよう」という動きがありつつ、現在もノベスキ・ライフルワークスは経営を続けています。
POF (Patriot Ordnance Factory)

POF社は2002年にアリゾナ州フェニックスで創業されたライフルメーカーです。
POFのAR15には様々なアイディアが取り込まれています。
作動方式はピストンとDI方式の両方がラインナップされていますが、ピストン方式ではレイルを分解することなくピストンを抜き取ってクリーニング可能であったり、ボルトリリース、マガジンリリース、セレクターはいずれもアンビで、ロアレシーバーにはフィンガーレストの溝が備わっている他、薬室に掘られた溝によってケースの張り付きを防いでいます。
またレシーバーとトップレイルがスライド式でゼロを維持する設計の他、レイルトップの一部を取り外して大口径スコープをローマウントで装着可能ですし、ヒートシンクバレルナットによる冷却機能、ボルトキャリアにローラーカムピン装備、その他POFレボリューションモデルでは従来の.223/5.56mm規格サイズのボルトキャリアグループで.308winを使用可能なモデル等、差別化された様々な商品を展開しています。
またオートライフル以外にも、ストレートプルのボルトアクションAR15も製造しています。
RRA (ROCK RIVER ARMS)

ロック・リバー・アームズ社(RRA)は創業者のマーク・ラーソン(スプリングフィールドアーモリー社から独立)とチャック・ラーソンの兄弟により1996年にイリノイ州コロナで創設されたガンメーカーであり、主に1911ピストルとAR15ライフルを製造しています。
RRAのAR15ライフル(LAR15)は優秀さが認められ、FBI(連邦捜査局)やDEA(麻薬取締局)で採用されるなど、法執行機関でも実績があります。
パーツも販売していますが、コンプリートガンの種類も豊富で、AK47でお馴染み7.62x39mmモデルの他、多くのAR15メーカーでマグプル・ピストルグリップが採用されるなか、RRAではホーグ・ラバー・ピストルグリップを多く採用しています。
スタームルガー(STURM RUGER)

スターム・ルガー社は1949年にコネチカット州サウスポートで創業されたガンメーカーです。
現在ではアメリカで最も多く銃器を製造販売している大企業であり、ピストル、リボルバー、ライフル、ショットガンなど、取り扱う銃器は多種多様です。
ピストルやリボルバーの売り上げはS&Wが勝りますが、ルガーはライフルの売り上げが大きく、特に.22LRライフルのシェアは独占状態です。(それでもルガーのピストルはグロックの約3倍売れています)
そんなルガーも2014年からAR556(5.56mmNATO)のモデル名でAR15を製造しており、800~1000ドル前後の価格帯で比較的安価にAR15を販売しています。
ウィンダム・ウェポンリー(Windham Weaponry)

ウィンダム・ウェポンリー社は創業者のリチャード・ダイクによって2011年メイン州ウィンダムに創業されたライフルメーカーです。
リチャード・ダイクは1976年にブッシュマスター社を買収し長年経営していましたが、2006年にサーベラス・キャピタル・マネジメントに売却され、フリーダムグループ傘下となりました。(フリーダムグループはDPMS、ダコタアームズ、レミントン、パラUSAなど、数々のガンメーカーを保有しています)
そして2011年、メイン州の工場を閉鎖しニューヨークに移転することになった際、リチャード・ダイクによってメイン州の工場を利用して新たにウィンダム・ウェポンリー社が創設されました。
ウィンダム・ウェポンリー社はブッシュマスター社で働いていたガンスミス達によってスタートしており、ある意味ウィンダム・ウェポンリー社のライフルは、かつてのブッシュマスター社製ライフルとも言えます。
ウィンダム・ウェポンリー社では口径バリエーションに.223/5.56mm、.308/7.62mm、.300ブラックアウト、6.5mmクリードモア、.450ブッシュマスター、.224ヴァルキリーなどがある他、9mmパラベラムのピストルカービンAR15等、豊富に取り揃えています。
また、木製ストック&ハンドガードのAR15や、M16A1やM16A2のセミオート版AR15など、個性的なモデルがラインナップされています。
出荷前に10発実射して作動確認を行っていますが、ラルー・タクティカル社のようなアキュラシーテストは行っていないようです。
まとめ
この記事では、アメリカで非常に人気のあるAR-15ライフルの製造メーカーに焦点を当て、人気の理由と主要なメーカーについて解説しました。
AR-15が人気の理由
AR-15の誤解
AR-15の歴史
AR-15の主要メーカー例
メーカー例 | 特徴 |
---|---|
エアロ・プレシジョン (Aero Precision) | 航空宇宙産業から転換したパーツ製造に強いメーカー。 |
アーマライト (Armalite) | 「AR」の語源であり、AR-15の生みの親ユージン・ストーナーが所属した歴史あるメーカー。 |
BCM (Bravo Company) | イラク戦争帰還兵が創業したパーツメーカーで、KeyModシステムでも知られている。 |
コルト (COLT) | 軍との契約実績を持つ歴史ある大手メーカー。 |
ダニエル・ディフェンス (Daniel Defense) | 特殊作戦軍にも採用されるレールシステムで有名な高級志向メーカー。 |
FNハースタル (FN Herstal) | ベルギーの世界的銃器メーカーで、軍用M4/M16と同規格の民間AR15(FN15シリーズ)を製造。 |
H&K (Heckler & Koch) | ドイツの有名メーカーで、軍用HK416の民間用モデルMR556を製造。 |
ラルータクティカル (LaRue Tactical) | 高精度ライフルと光学アクセサリーに定評があり、品質管理が徹底されている。 |
LMT (LEWIS MACHINE & TOOL) | 英軍やニュージーランド軍に採用実績があり、独自技術が特徴。 |
LWRC (Land Warfare Resources Corporation) | ショートストローク・ガスピストン方式のAR15や関連パーツを製造。 |
ノベスキ (Noveske Rifleworks) | 高品質・高価格帯のライフルが特徴。 KX3フラッシュハイダーやスイッチブロックが有名。 |
POF (Patriot Ordnance Factory) | ピストン式とDI方式を展開し、独自構造を多数備える。 |
RRA (ROCK RIVER ARMS) | FBIやDEAに採用実績がある。1911ピストルとAR15ライフルを製造。 |
スタームルガー (STURM RUGER) | 米国最大級の銃器メーカー。 比較的手頃なAR15(AR556)を提供。 |
ウィンダム・ウェポンリー (Windham Weaponry) | 元ブッシュマスター社の創業者らによるメーカー。 多様な口径と個性的なモデルを展開。 |