元Navy SEALスナイパーのクリスカイル(Chris Kyle)がテキサス州のシューティングレンジで射殺されました。
イラク戦争に従軍し160人の殺害記録(自己申告は255人)を持ち、2100ヤードの距離で狙撃を成功させた彼は「ラマディーの悪魔(The Devil of Ramadi)」と呼ばれたアメリカンヒーローでした。
まさか米国内で殺害されることになるとは驚きました。
カイルはCraft Internationalでタクティカルシューティングインストラクターとして射撃場を利用しており、現場もその射撃場です。
ご冥福をお祈りします。
この記事では事件の経緯と詳細についてお伝えします。
なぜ「アメリカンスナイパー」クリスカイルは殺された?
2013年2月2日、元Navy SEALスナイパーのクリス・カイルと、その友人であるチャド・リトルフィールドが、テキサス州の射撃場にて元海兵隊員エディー・レイ・ルースによって射殺されました。
クリスカイルの経歴
- 本名:クリストファー・スコット・カイル
- 出身:1974年4月8日、テキサス州オデッサ
- 死没:2013年2月2日(享年38)、テキサス州イーラス郡
- 所属:アメリカ海軍 (1999年-2009年)
- 階級:上級下士官 (特殊戦技兵、元情報員)
- 部隊:アメリカ海軍 シールズ、SEAL TEAM 3
- 戦歴:イラク戦争 (2003年侵攻、ファルージャの戦い、ナシリアの戦い、第二次ファルージャの戦い、第二次ラマディの戦い、2008年イラク春季戦闘、サドルシティ包囲戦)
- 勲章:シルバー・スター勲章、ブロンズ・スター勲章 (3個)、海軍殊勲章
- 家族:妻タヤ・カイル (2002年結婚)、子供2人
- 著書:アメリカン・スナイパー (2012年)、アメリカン・ガン (2013年)
- 戦場での主な使用武器:Mk 11 7.62mmNATOスナイパーライフル、Mk 12 5.56mm マークスマンライフル、レミントン 700/300 ライフル (Mk13 Mod 1)、その他.338 ラプアマグナムを使用する複数のライフル
犠牲者
クリス・カイル(1974年4月8日 – 2013年2月2日)当時38歳
チャド・リトルフィールド(1977年2月11日 – 2013年2月2日)当時35歳
加害者
- 本名:エディ・レイ・ルース(事件当時25歳)
- 出身:1987年9月30日、テキサス州ランカスター
- 軍歴:13歳から海兵隊への入隊を志し、高校卒業後、海兵隊に入隊。
- 2007年9月、バグダッド近くの基地に配属。看守と武器修理に従事 (6ヶ月)
- 2010年1月、ハイチへの人道支援任務に参加
- 2011年7月、名誉除隊
- 病状:2011年7月下旬、退役軍人病院で心的外傷後ストレス障害と診断され、薬物療法として抗精神病薬と抗うつ薬が処方。幻聴や被害妄想に悩んでおり、自殺をほのめかすこともあった。
時系列
- 2001年~ルースの少年時代
2001年9月11日、当時13歳だったルースはテレビでアメリカ同時多発テロ事件を目の当たりにし、「将来は軍隊に入りたい」と父親に告げた。そして高校卒業後にアメリカ海兵隊に入隊。
- 2011年~ルースがPTSDを患う
2007年イラク派遣や2010年ハイチ大地震の救援活動を経験したルースは2011年に海兵隊除隊後、PTSD(心的外傷後ストレス障害)を診断された。しかし、ルースは入院治療を拒否し、薬の服用も止めた。
- 2013年~クリスカイルに助けを求める
ルースの母親は、PTSDに苦しむ息子を救うため、カイルにセラピーを依頼。(ルースの母親が勤める小学校にカイルの子供が通っており、ルースとカイルは同じ高校の卒業生だった)
カイルはルースと会いセラピーを開始。 - 2013年~事件発生
2013年2月2日、カイルとリトルフィールドはルースを射撃場に連れて行き射撃訓練を実施(カイルは射撃場がルースの治療に役立つと考えていた)。そしてルースがカイルとリトルフィールドを射殺し逃走。
- 2013年~逃走
ルースはタコベルでブリトーを購入後、姉の家へ向かい、姉にこの日何があったかを告白。姉は警察に通報した。自宅に戻ったルースは到着した警官に「地獄」「この世の終わり」「ブードゥー」などの意味不明なことを語ったあと逃走し、短いカーチェイスとなったが、警察車両に衝突し保安官によって逮捕された。
- 2015年~裁判
ルースは「誰も俺に話しかけてくれなかったから撃った」と供述し、ルースの弁護側は「心神喪失状態だった」と主張。
2015年2月、ルースに仮釈放なしの終身刑が言い渡された。
この事件はアメリカ国民に大きな衝撃を与えました。
カイルの遺作である自伝「アメリカン・スナイパー」はベストセラーとなり、映画化もされました。
殺害に使用された武器
事件当時、ルースは.45口径の1911ピストルをカイルに向け発砲、殺害し、カイルの友人であるリトルフィールドをSIGの9mmピストル(SIG Sauer P226 Mk.25 Mod 0)で殺害しました。
どちらのピストルもカイルが所有する銃だったとのことです。
このときカイルとリトルフィールドが装備していた1911ピストルはホルスターに収まったままで、セイフティはオンの状態でした。
カイルとリトルフィールドは二人とも応戦する間もなく突然襲われたと考えられます。
カイルは大動脈や顎に6発被弾し死亡。リトルフィールドは7発被弾し、頭頂部に被弾があったことから倒れたあとにも撃たれたとみられます。
射撃場に向かう途中、カイルはリトルフィールドに 「This dude is straight-up nuts(この男は頭がおかしい)」と携帯メールを送り、リトルフィールドは「Watch my six(気を付けて俺を見守っていてくれ)」と返信していました。
ルースの証言
事件から4か月後、留置場のルースは元アース郡保安官代理ジーン・コールに次の様に語っています。
I was just riding in the back seat of the truck, and nobody would talk to me. They were just taking me to the range, so I shot them. I feel bad about it, but they wouldn’t talk to me. I’m sure they’ve forgiven me.
https://people.com/crime/witness-chris-kyles-killer-said-i-shot-them-because-they-wouldnt-talk-to-me/
「俺はただトラック(フォードF-350)の後部座席に乗っていて、誰も俺に話しかけようとしなかったんだ。ただ俺を射撃場に連れて行くだけで、だから彼らを撃ったんだ。悪いとは思っているが、彼らは口をきいてくれないんだ。彼らはきっと(撃ったことを)許してくれていると思うよ。」
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