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同じ口径の弾なのに弾頭重量が違うのはなぜですか?

銃の画像

弾薬には様々な口径が存在し、同口径でも複数の異なる弾頭重量の弾頭が存在します。

なぜ重量が異なる弾頭が必要なのでしょうか?

今回は弾頭重量の違いによる効果について解説します。

軽い弾頭 VS 重い弾頭

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銃は装薬の燃焼により発生したガスを利用し、銃身内で弾頭を加速させ発射します。

慣性(外力が働かなければ、物体はその運動状態を保つという性質)により、軽い弾頭は加速しやすく、着弾時には止まりやすくなります。

一方、重い弾頭は加速が遅く、加速した弾頭は着弾時に止まりにくくなります。

作用反作用の法則により重い弾頭は軽い弾頭より反動を強く感じられますが、貫通力が高くなる傾向があります。

ただし、貫通力は弾頭の設計によって異なるため、重い弾頭は貫通力が高いとはいえない場合があります。

以下の表は装薬量と口径などの条件が同一のとき、弾頭重量が異なる場合の比較です。

条件軽い弾頭重い弾頭
弾道フラットより大きい放物線
弾速速い遅い
反動小さい大きい
貫通力の傾向低い高い
横風耐性弱い強い
オートピストルの作動の信頼性低い高い
マグナムリボルバーとの相性悪い良い
サプレッサーとの相性悪い良い
空気抵抗による減速大きい小さい
ライフリングの回転弱い強い
長距離射撃における適正悪い良い
携行可能弾数多い少ない
殺傷力弾頭の種類による弾頭の種類による

弾道

ガス圧が一定のとき軽量な弾頭は加速が容易なため、放物線の小さいフラットな弾道を実現しやすいといえます。

しかし、重い弾頭も十分な加速を与えるとフラットな弾道になるため、これは装薬量や銃身長などの影響を受けます。

弾速

弾速は弾頭が銃身内をどれだけ速く加速するかによって異なります。

高圧であるほど速い弾速を得られますが、重い弾頭に高圧を与えると銃身が耐えられず破裂するため、重い弾頭ほどゆっくり加速させる必要があります。

ただし、どれぐらいの弾速を求めるかによって必要な装薬の燃焼速度が異なります。

ピストルのように低速で短い銃身では速燃性の装薬が使用され、ライフルのように高速を求める場合には加速に必要な長い銃身と遅燃性の装薬が使用されます。

大口径ライフル弾のように重い弾頭は加速が遅いため遅燃性の装薬が必要ですが、ピストル弾で重いとされる弾頭は速燃性の装薬も使用されます。

反動

反動には実際に発生する「物理的な反動」と体感で異なる「知覚する反動」があります。

銃の総重量、弾頭重量、ガスの量によって反動の大きさが異なりますが、銃のデザインや構造の違いによっても体感する反動が異なります。

つまり、実際には大きな反動ではなくても、感覚的に大きな反動に感じられることがあります。

重い弾頭は後方に向かって押す力が強く感じられますが、軽い弾頭は銃が跳ねるような体感を得られやすい傾向があります。

貫通力

貫通力は弾速、弾頭重量、弾頭の設計によって異なります。

通常、弾頭の種類と弾速などの条件が同一のとき、重い弾頭は貫通力が高くなります。

そのため狩猟用で大きな獲物を対象とするとき、致命傷となる臓器に到達しやすいよう重い弾頭を使用することで貫通力を得ます。

しかし、貫通力は弾頭の設計によって影響を受けるため、ホローポイント弾やソフトポイント弾のように着弾時に拡張する弾頭は拡張が大きいほどブレーキとなり、重い弾頭であっても貫通力が低下します。

横風耐性

重い弾頭ほど空中で安定し、風に流される影響が小さくなります。

風の影響を受けやすい遠距離における射撃では弾頭重量が重要になり、重い弾頭が必要とされます。

オートピストルの作動の信頼性

コンパクトピストルなど銃身長が短いオートピストルで軽量な弾頭を使用すると作動に必要な反動やガス圧が得られず、作動不良を起こしやすい傾向があります。

反動を利用して作動する銃においては軽量弾との相性が悪く、弾頭重量差が作動の信頼性に影響を与えます。

マグナムリボルバーとの相性

S&W社の軽量マグナムリボルバーのマニュアルには「弾頭重量120gr未満のマグナム弾は使用不可」との記載があります。

そしてフレームのトップストラップ(シリンダーギャップの上)にはスチールのインサートが備わっています。

これは何かといえば、軽量な弾頭を使用した際、高圧ガスによって未燃焼の装薬がシリンダーギャップから噴出し、合金のシリンダーやフレームを削って損傷するエロージョンが発生します。

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マグナム弾ではない通常の弾薬では軽量な弾頭を使用しても問題ありませんが、マグナム弾を使用する際には重い弾頭を使用するよう注意する必用があります。

サプレッサーとの相性

サプレッサー(減音器)を使用する際、超音速(スーパーソニック)ではソニックブームによって大きな音が発生するため、最大の静音効果を得るには弾速が亜音速(サブソニック)である必要があります。

重い弾頭を使用すると弾速が低速であっても大きなマズルエナジーを得ることが可能なため、サプレッサーには重い弾頭が利用されます。

また、ショートリコイル方式やブローバック方式のピストルで銃身にサプレッサーを接続した場合、重い弾頭によって強い反動を得ることで作動の信頼性が向上しジャムのリスクが低下します。

空気抵抗による減速

ピンポン球とゴルフボールを投げたとき、遠くまで飛ぶのはゴルフボールです。

このように空気抵抗による減速を抑えるには重量が必要となるため、長距離射撃では重い弾頭が使用されます。

アサルトライフルで使用される軽量高速弾は600メートルまでは良好な結果を出しますが、それ以上の距離では減速が大きくなり落下量が増加し、命中が困難になります。

ライフリングによる回転

口径が同一のとき、重い弾頭は軽い弾頭より全長が長くなります。

素材の違いなどによる例外は存在しますが、多くはこの傾向があります。

背の高いコマを長時間回転させるには速い回転が必要になるのと同様に、全長の長い弾頭をジャイロ効果によって空中で安定させるには速い回転が必要になります。

回転速度はライフリングのツイストレート(回転率)によって決まるため、高い命中精度を得るには弾頭重量とライフリングのツイストレートが重要になります。

つまり、銃に適合した弾頭重量の弾頭を使用すると高い命中精度を得ることが可能になり、反対に弾頭重量が適切でない場合は命中精度が低下します。

長距離射撃における適正

先述の通り、空気抵抗による減速や横風耐性など、長距離射撃に必要な条件として重い弾頭が必要とされます。

携行可能弾数

軍においては弾頭重量差による携行可能弾数も重要となります。

軽量な弾薬を使用すれば兵士はより多くの弾薬を携行可能になり、火力を増大させることが可能です。

殺傷力

弾頭重量と殺傷力は直接関係しませんが、条件次第で影響します。

人や動物を行動不能な状態にするには弾頭を致命傷となる中枢神経や臓器に到達させる必要があり、そのためには一定の弾頭重量が必要とされます。

しかし、軽量高速弾が着弾時にタンブリング(弾頭の横転)を起こすと大きな永久空洞を形成し、人体に対し大きな損傷を与えることが可能です。

弾頭の設計によって効果が異なるため、最大の効果を得るために軽量弾が必要とされる場合もあれば、重量弾が必要とされる場合もあります。

異なる弾頭重量の弾速差

次に、実際にどれほど差があるのか比較します。

9mm(FMJ)の距離0~200ヤードでの弾速(フィート/秒)

弾頭重量
(メーカー)
銃口初速25 yd50 yd75 yd100 yd125 yd150 yd175 yd200 yd
115 gr
(Winchester)
1190112510711027990958929903878
123 gr
(Lapua)
#4319230
13121225115110901040999964933905
123 gr
(Lapua)
#4319177
10501007970938909883859836814
140 gr
(Sellier&Bellot)
Subsonic
1001968938911886863842821802
147 gr
(PMC)
980965941919900883867851837
147 gr
(Federal)
960930910890870851833816799

ここでは重さ155~147グレインの弾頭を比較しています。

弾頭重量が重くなるほど弾速が落ちる傾向があります。

しかし、ガス圧の差により、ウィンチェスターの115グレイン弾頭より重いラプアの123グレイン弾頭の方が弾速が速いのが分かります。

また、同じ弾頭重量で同じメーカーであるラプア製123グレイン弾頭が、製品モデルによって弾速が異なっているのが分かります。

異なる弾頭重量の運動エネルギー

続いて、重さ115~147グレインの弾頭が持つ運動エネルギー(マズルエナジー)を比較しています。

9mm(FMJ)の距離0~200ヤードでのエナジー(フィート/ポンド)

弾頭重量
(メーカー)
銃口初速25 yd50 yd75 yd100 yd125 yd150 yd175 yd200 yd
115 gr
(Winchester)
362323293270250234220208197
123 gr
(Lapua)
#4319230
470410362324296278254238224
123 gr
(Lapua)
#4319177
301277257240226213201191181
140 gr
(Sellier&Bellot)
Subsonic
311291275258244232220210200
147 gr
(PMC)
314299287275264255245237229
147 gr
(Federal)
295280270260250237227217209

あまり大きな違いが見られませんが、弾速とエナジーを総合的に比較すると、速度と重量が比例して大きいほどパワフルであることが分かります。

また、弾速の遅い弾頭でも、弾頭が重ければ軽量弾と同等のエナジーを維持しているのが分かります。

仮に2種類の異なる弾頭重量の弾があり、その2つのマズルエナジーが同一であった場合、弾頭重量が軽い弾の弾道は放物線が小さく、逆に重い弾の弾道は放物線が大きくなります。

つまり、ターゲットのまでの距離が離れるほど重く遅い弾はより大きな角度で弾頭を撃ち出す必要があり、命中率が低下する可能性があります。

弾速と弾頭重量のバランスが重要

弾頭重量にベストの重さというのは無く、目的と使用する銃に適した弾を選択することが重要となります。

また、その銃に適した弾を探すには、データの数値だけでは判断しかねるため、実際に様々な弾を撃って確認することが確実な方法です。

ここまで9mmを例に比較しましたが、9mmのようなピストル弾は弾頭重量による影響の差は比較的小さいものの、長距離を狙い精密さを要求されるライフル弾では弾頭の選択は非常に大きな問題となります。

高い精度を得るためには弾頭重量だけでなく、弾速、銃身長、ライフリングのツイストレート、装薬の燃焼速度などすべてのバランスが整っていることが重要であり、弾頭重量の選択はあくまで精度や破壊力などの目的を達成する過程で必要な要素のひとつだといえます。

貫通力は条件次第

よく誤解されがちなことですが、数値上では弾速と弾頭重量が大きくなるほど弾頭の持つ運動エネルギーは大きくなり、そのため運動エネルギーが大きければ貫通力が高く、ターゲットに与えるダメージが大きいとされます。

しかし、実際は少し違います。

弾頭が持つ運動エネルギーをターゲットに伝えた場合のみ効果があります。

例えば対人用において大きな運動エネルギーを持つ弾頭でも、体内で停弾し運動エネルギーを消費すれば高い効果が得られるものの、貫通すると体内で運動エネルギーを完全に消費できず、十分な効果を得られません。

また、高速の弾頭が着弾の衝撃により粉砕されるフラグメンテーションが起こると、弾頭の運動エネルギーが拡散されます。

フラグメンテーションは人や動物などのソフトターゲットに対して大きなダメージを与えますが、鉄板のようなハードターゲットに対しては貫通力が低下します。

フラグメンテーションを起こさない場合でも、着弾時には弾頭の先端が潰れ、潰れ方が大きいと弾頭の面積が増加(拡張)し、貫通力が低下します。

そのため「ライフルで200mの距離から撃つよりも、400mから撃った方が貫通力が高かった」という現象が起こることがあります。

最後までお読みいただきありがとうございます。

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