今月7日からドイツで開催されていたIWA2014が終了し、色々と情報が出てきました。その中で個人的に興味を惹かれたのがB&T社のサプレッサー付シングルショット・ピストルVP9です。怪我を負った動物に近づくことは大変危険であり、確実に仕留めたくても住宅が近いと銃を使用するのは音が気になる。そんなハンターや警察に応えるために製造された商品がB&T VP9ですが、もちろん、暗殺に使用することもできるでしょう。
極端に切り詰められたバレルにサプレッサーを装着し、一発撃つごとにボルト(ロッキングラグ2個付)を操作して装填します。後ろのダイヤルを90度左回転させるとアンロック、右回転でロック。ロックを解除してダイヤルを後ろに引いてボルトを開閉させます。マガジンはシングル・スタックで8発装填されグリップと一体化していますが、SIG P225のマガジンが使用できるとのこと。
使用弾薬は9x19mmという、通常のバレルから発射されると音速を超えてソニックブームが発生する高速弾ですが、VP9の超ショートバレルの影響で亜音速となります。音速を超えるまで加速せず、余分なガスはサプレッサー内部に放出されます。「ショート・バレル」と呼ぶと誤解を受けそうですが、ライフリングが切られている部分がサプレッサーが始まるところまでと短くなっています。(B&TのカタログPDFには「50cmのバレル」とありますが、恐らく50mmの間違いでしょう。)
サプレッサーは2種類付属し、一本は比較的消音効果低いアルミ・バッフル(隔壁)を備えた練習用、もう一本はシリコン樹脂のバッフルが使用されています。樹脂で完全密閉された状態からバッフルに弾を貫通させて使用するため通常のサプレッサーより減音され、124グレインのFMJで129デシベル(最高で通常より31デシベル低い)という性能を実現したようです。このため、シリコン・バッフルの寿命は20発で要交換となります。また、高速弾と比較して亜音速弾はバッフル衝突時にタンブリングが発生しにくく弾道が変化しにくいので、シリコン・バッフルには亜音速弾の相性が良いとされています。
「この銃、どこかで見覚えがある・・・」と思った方も多いでしょう。第二次世界大戦初期に製造されイギリスのSOEやSAS、アメリカのOSSなどが使用した暗殺用ピストル「ウェルロッドMKI/II」とよく似ています。中身も、バレルにガス抜き穴が開けられ、ゴムのバッフルを貫通させて使用する点も同じです。ウェルロッドMKIIと同じく、バレルにねじ込まれたサプレッサーは分解可能。異なる点は、ウェルロッドのセイフティはグリップ・セイフティでしたが、VP9はプッシュボタン式マニュアル・セイフティが採用されています。また、グリップの素材はラバーから樹脂となりました。重量も1~1.5kgのウェルロッドに比べ、VP9は862グラムと軽量です。
B&Tによると、発射音はボルトロックの操作音より静かということで、今後レビュー動画が楽しみです。
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