
実銃ではサプレッサー(サイレンサー)の効果はどこまで期待できるのでしょうか?
今回はサプレッサーの効果について解説します。
サプレッサーの効果
銃にサプレッサーを装着し発砲すると「プシュッ!プシュッ!」と静かな銃声を発し、誰にも発砲を気付かれない・・・と思われがちです。
しかし、実際のサプレッサーは映画やゲームに登場するサプレッサーのように静かではありません。
音圧レベルで比較する場合、サプレッサー付ピストルは自動車のクラクションより大きな音をイメージすると分かりやすいかもしれません。
生の銃声は離陸中の旅客機を超える音圧レベルで、聴覚障害を起こすほどの非常に大きな音です。
しかし、サプレッサーを装着すると相対的に小さくなり、爆竹の音圧レベル(110~120db)まで減音できるものもあります。
音源 | 音圧レベル (デシベル) |
---|---|
12ゲージショットガン (ショートバレル) | 171 |
.308win | 170 |
7.62x39mm | 167 |
5.56x45mm .44マグナム | 165 |
.357マグナム .40S&W | 163 |
.45ACP | 162 |
9x19mm | 161 |
離陸中の旅客機 | 150 |
サプレッサー付ライフル (.308win) | 146 |
打ち上げ花火 | 145~150 |
.22LR | 140 |
25ヤード離れたAR15 (5.56x45mm) | 138 |
25ヤード離れたサプレッサー付AR15 (5.56x45mm) | 133 |
200ヤード離れたAR15 (5.56x45mm) | 130 |
サプレッサー付ピストル (9x19mm亜音速弾) | 129~134 |
200ヤード離れたサプレッサー付AR15 (5.56x45mm) | 128 |
ロックコンサート 近くの落雷 | 120 |
サプレッサー付.22LRピストル | 116 |
サプレッサー付.22LRライフル | 113 |
爆竹 | 110~120 |
自動車のクラクション 手持ち削岩機 | 110 |
携帯音楽プレーヤーの最大音量 | 105 |
バイクのエンジン | 95 |
救急車のサイレン | 90~120 |
犬の鳴き声 | 90 |
掃除機(平均) | 65 |
人の会話 | 60 |
音圧レベルはサプレッサーの性能、弾速、口径などによって異なります。
音速を超える弾はソニックブーム(衝撃波による爆音)が発生するため、低速な亜音速弾(サブソニック弾)を使用することで効果的に銃声を軽減することが可能です。
関連記事「銃声の大きさとは?:ジェットエンジンより大きな銃声の到達距離」もご覧ください。
軍におけるサプレッサーの目的

サプレッサーを使用しても銃声は第三者の耳に届きます。
それでは、軍は何のためにサプレッサーを使用するのでしょうか?
サプレッサーには以下の利点があります。
- 敵に銃声発生地点までの距離や方角を誤認させることが可能
- 離れた敵に気づかれにくい(銃声が届く距離が短い)
- 仲間の声や環境音を聞き取りやすい(状況確認が容易)
- 反動を軽減する
- マズルフラッシュ(発射炎)を抑制する
特に重要なのはマズルフラッシュ軽減効果で、銃口に装着されているフラッシュハイダーより高い効果があります。
そのため夜間射撃時に敵から発見されにくく、射手にとってもマズルフラッシュが視界を妨害せずターゲットを見失いにくくなります。
サプレッサーの構造については記事「銃声を抑えるサプレッサー(サイレンサー)の構造とは?」もご覧ください。
スライドが後退しないピストル
銃声は発射ガスによって発生するため、ガスの流れを遅くしたりガスが銃から漏れにくくなると銃声が軽減されます。
オートマチックの銃(ピストル、サブマシンガン、ライフル、マシンガン)では、スライドやボルトを固定することで銃身の後方から漏れるガスを低減させ銃声をより軽減することが可能です。

サプレッサーを利用することを前提とした特殊なハンドガンでは、スライドを固定し発射後に薬室を開放させない機能を備えたものも多数存在します。
有名なものにはサプレッサー用にカスタムされたコルトM1911A1やM9(ベレッタ 92FS)、MK22(S&W M39 通称:ハッシュパピー)、その他、中国の64式や67式、ロシアのPBマカロフ、ブルガリア製マカロフ・ピストルなどが存在します。
この様なスライドを固定するモデルは珍しくなく、多くのハンドガンがこのような加工を施されました。