小林宏明著「銃を読み解く23講」を購入して読んでみました。
「銃を読み解く」というタイトルから「銃の資料紹介の本かな?」という第一印象を持ったのですが、内容はそうではありません。
この本は一言でいえば、銃の基礎知識を広く浅く紹介すると同時に、著者が体験した銃に纏わるエピソードを紹介している本です。
「広く浅く」と言っても、銃の世界は非常に奥が深く、銃一丁で本一冊が書けますから、限られた誌面でできる限り紹介するには仕方がありません。寧ろ、総ページ数214ページ+索引でこれだけの情報量を詰め込めたら十分だと思いました。
書籍「銃を読み解く23講」の感想
全23講のうち、前半の第一部と後半の第二部に分かれており、第一部では銃の構造、弾薬の解説、射撃に関する知識など、入門者にやさしい内容となっています。著者が翻訳者ということもあり、海外小説を引用しながら「この小説で述べられている銃のセリフは、こういう意味だ」といった、読者や翻訳者が疑問に思う銃器用語やアメリカ銃社会の解説もされています。
そして第一部では銃の基礎知識に重点がおかれる一方、第二部では具体的な作品や体験を基にした銃に纏わる解説がされています。
私は第一部より第二部が楽しめました。長年月刊Gun誌を購読していたようなある程度銃の知識があるガンマニアには第二部がお勧めで、そうではない初級~中級者は第一部が必読だと思います。
第一部の初出は、推理小説を掲載する文芸誌「ミステリーズ!」(2012年8月~2014年6月)に連載されたもので、第二部は書下ろしとのことです。
イラストは3~5ページに1枚ぐらいの割合で挿入されています。想像していたよりも多い印象。
入門者の読者にとって想像が難しい内容にはイラストでカバーするといった感じです。
ピストルの説明ではディレードブローバックについても解説されています。
また他にも、サブマシンガン、マシンガン、ライフル、ショットガン、マズルローダーなど、重点を抑えながら幅広く解説されています。
第二部では映画や小説など作品に纏わる銃の話題の他、著者の体験談が多く語られています。
第十六講では、著者がある漫画家から銃の相談に応じ、「狙った場所より上に当たるよう細工するにはどうしたら良いか?」という疑問に答えるというエピソードが語られました。その解決方法として1911ピストルにコーンバレルを使用し、弾が銃身内で上へ曲がるように加工するというアイディアが採用されたということで、思わず笑ってしまうような興味深い話でした。
その漫画は単行本化されているようですが、具体的な作品名に触れられていないので気になります。
第二部ではこの他に、餃子の王将社長が銃撃された事件や、劇場版ルパン三世の感想など、意外と最近の話題が盛り込まれており興味深いです。
第二部の202ページには、私のことも書かれていて驚きました。
「ポルさんというアメリカで銃の修行とも言えることをしてきた人で、質問すればすぐに答えてくれる。」の一文には、恐れ多いやら恥ずかしいやらで、恐縮します。
書籍に載ってしまっては、FAQのコーナーを止めるわけにはいきませんね。
当サイトに触れていただきありがとうございました。
索引には銃器用語が並んでいるので、用語集として使用することもできそうです。
人名索引もあります。
司馬遼太郎とクエンティン・タランティーノとユージン・ストーナーの名前が同一ページに並んでいるなんて、滅多にないでしょう。
小説に関する記述が多いので、小説家の名前が多数掲載されています。
まとめ
この本を手に取るまでは「入門者向けだろう」と思っていましたが、実は銃に詳しい人でも楽しめる内容だと思います。それも、この本は銃の詳細を解説したものではなく、「読み物」として楽しめるよう構成されているおかげでしょう。お茶でも飲みながら、のんびり読み進めます。特に、映画や小説が好きな人なら、より楽しめるはずです。
私は洋書を中心とした銃の専門誌を読むことが多いのですが、翻訳家目線で銃について述べられた本はこれが初めてで興味深いものでした。銃に関する英文を和訳する難しさは共感できるところがあり、なるほどと頷かされます。
本書中の銃の情報に間違った点はほとんどないと思います。というより、私は見つけられませんでした。ヤフー知恵袋やウィキペディアにはトンデモ記述が散見されますが、本書では流石にそういった心配はありません。ただ、著者の推測に触れた箇所では個人的に異なる意見を持っていますが、それは諸説あって良いと思います。また、著者が断定的に述べている箇所で、深く掘り下げれば著者が述べた以外に例外事項があるので、情報を付け加えた方が良いと思えるところもありましたが、限られたページ数に多くを求めるのは酷かもしれません。
この本は次のような方にお勧めです。
- 銃に興味がある入門者~中級者
- 映画や小説が好き
- 銃の知識が欲しい翻訳家や小説家
気になった方はぜひ読んでみてください。
最後までお読みいただきありがとうございます。
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