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レミントン・モデル 1858 ニュー・アーミー

今回はレミントン・モデル1858ニュー・アーミーをご紹介します。

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1816年、アメリカ最古のガンメーカーであるレミントン社(E. Remington and Sons)は、エリファレット・レミントン(Eliphalet Remington)によってニューヨークに創設されました。現在はレミントン・アームズ・カンパニーと社名を変えて大企業として成長を続けています。当時、レミントン氏はバレル製造を学んだ後、自ら製造したフリント・ロック・ライフルが好評でガンスミスとして銃器製造を始めたといわれています。

1858年にレミントン社が「レミントン・モデル1858リボルバー」を誕生させると、1861年から開戦した南北戦争で同モデルは大量生産され活躍しました。1858年といえば、日本では江戸時代末期、日米修好通商条約が締結され、ペリーの黒船来航から5年後のことです。

 

Uberti Remington Model 1858 New Army

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イタリアのガンメーカー「Uberti」は、1959年から南北戦争時代の銃のレプリカ製造を始めました。現在はベネリUSA傘下企業であり、アメリカ市場でも有名な存在となっています。今回ご紹介する銃は、Ubertiによるレミントン・モデル1858の復刻版となります。

5.5インチバレルを装備し、装弾数は6発。キャップ火薬(パーカッション・キャップ)で撃発するシングル・アクションのパーカッション・リボルバーです。フレームやバレルはスチール、トリガー・ガードは真鍮製。定価369ドルと比較的安価であり、非金属カートリッジ使用の銃であるため、アメリカでは購入時の登録が不要です。そのため、規制が厳しいカリフォルニア州でもスーパーマーケットやホームセンターでスポーツ用品として気軽に購入できます。(日本では当時のオリジナルであれば古式銃として登録し文化財として所有可能です。)

 

 

特有の扱い方

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構造はシンプル。シリンダーに火薬(装薬)と弾を装填後、ニップルにキャップ火薬を装着し、それをハンマーで叩くとニップルの穴(フラッシュホール)から内部の火薬に引火し弾が発射される構造です。

「ニップルにキャップを被せただけでは、簡単にキャップが脱落してしまうのでは?」と疑問に思われるかもしれませんが、まさにその通りです。日常的に携帯するにはかなり気を使うでしょう。不発や遅延撃発は当たり前。激しいアクションを行えばキャップも吹き飛んでしまうかもしれない。現代の銃器と比較すると不便ですが、当時、連続して5発撃てる性能はマズルローディング・ピストルより心強かったことでしょう。

ブラックパウダーを使用する6連発リボルバーは、通常5発のみ装填し、一発は空にします。ハンマーは空のチャンバーのニップルにレストさせて携帯します。上の画像を見ると、隣り合うニップルの間にスロットがあり、凹んでいるのが確認できます。これは安全装置のひとつで、ハンマーがシリンダーの上を滑った場合、この凹みでハンマーを停止させ、隣のキャップの撃発を防止します。

ハンマーはハーフコックが可能ですが、キャップの脱落を防ぐためにも携帯時にはハンマーを常にレスト状態にしてシリンダーの回転を防ぎます。

西部劇ではホルスターを腰の下にぶらさげていますが、パーカッション・リボルバーでこれを実践すれば、すぐにキャップを紛失したでしょう。実際、当時は腰で固定するのが一般的だったといわれています。

 

 

(我流)装填方法

私が行っていた装填方法は、あえて説明書通りではありませんでした。装填時にシリンダーを外すかどうかの差ですが、まずは私のやり方をご紹介します。

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ローディング・レバーを下げて「○」のシリンダー・ピンを引き抜くとシリンダーをフレームから抜き取れます。(このピンはシリンダーの後ろまで貫通しています。) シリンダーを外す際にハンマーがレスト状態だとシリンダーに引っかかるので、ハーフコックであることを確認します。ローディング・レバーを下げすぎるとプランジャーがシリンダー内に入ってしまい、シリンダーが抜けなくなるので要注意。

私の1858は射撃中にリコイルでローディング・レバーが落ちることが多々ありました。ローディング・レバーを固定するラッチに問題があったようです。シリンダー・ピンは抵抗なく簡単に抜けるので、うっかりするとシリンダーを落としてしまいそうです。

 

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装填前にあらかじめシリンダー内に火薬や異物が残っていないか、キャップ火薬が残っていないかを確認します。

シリンダー前方から火薬(装薬)を入れ、次にワッドを入れます。弾を入れるのはシリンダーをフレームに戻した後です。シリンダーを外さなくても火薬の装填は可能ですが、時間短縮と火薬量のチェックにはシリンダーを外した方が簡単です(個人的に)。

 

 

ワッドは連鎖撃発を防ぐが、使用しなくてもOK

ワッドは火薬燃焼時に発生する圧力を弾に伝えると同時に、撃発時に隣りの火薬に引火(チェイン・ファイア)するのを防ぐ役割があります。使用するワッドには乾燥状態のフェルトと、オイルに浸されたフェルトの二種類がありますが、どちらも引火を確実に防ぐために、ワッド挿入後は少量のグリスを塗ったり、数滴のオイルを挿すとより確実です。過度のオイルは火薬を湿らせて不発に繋がるので、あくまで適量を守ります。オイルはシリンダーの出口のみに絞り、ニップルやシリンダー内部(チャンバー)を常にドライに保つのが重要です。(長期保管する場合は内部もオイルで皮膜を作ります。)

ワッドを使用しない場合は、弾を装填後に弾の周囲に少量のグリスを塗ってフタをすると安全です。

 

 

一般的な装填方法

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以上の「シリンダーを外して火薬を装填する方法」は私の自己流ですが、通常の方法(説明書通り)は次の通りです。

  1. ハンマーをハーフコックにする
  2. シリンダーを回転させ、内部や外部に異物や火薬がないことを確認
  3. クリーニング・ロッド等、棒をマズルから挿してバレルとシリンダーが軸線上にあることを確認すると同時に、ロッドがニップルまで届いていることを確認
  4. ハンマーがハーフコックになっていることを確認
  5. キャップをニップルに装着し、シリンダーがスムーズに回転することを確認
  6. 銃を安全な方向へ向けてハンマーを起こしてトリガーを引き、キャップを撃発してニップル内部の油分を飛ばし乾燥させる
  7. すべて撃発を終えたら未使用のキャップが残っていないか確認
  8. ハンマーをハーフコックにし、マズルを上向きにしてシリンダーを握る
  9. 一発分の火薬が入ったメジャーを使用してシリンダーに流し込む
  10. 弾をシリンダーの穴に乗せ、シリンダーを回転させてプランジャーの下へ置く
  11. ローディング・レバーを下げてプランジャーにより弾をシリンダー内へ押し込む
  12. マズルを安全な方向に向けてハンマーがハーフコックなのを確認し、ニップルにキャップを装着する
  13. 射撃。射撃後は次のローディング作業に移るまで一分間待つ。(シリンダー内に残った火薬カスの燃焼が終わっていない可能性があるため)

 

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弾をシリンダー内に挿入する作業は想像以上に力を要します。グリップエンドをテーブルの上に置いて、少し体重を掛けると楽ですが、弾で火薬を強く圧縮してはいけません。また、かといって金属カートリッジと同様にエアスペースを設けるのも好ましくありません。この作業は射撃時のグルーピングやパワーに影響します。

 

 

計量用メジャーと弾の削りカス

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火薬は撃発用のキャップ火薬(パーカッション・キャップ)とブラック・パウダー(黒色火薬)を使用します。火薬の量はブラックパウダー・メジャーを使用して適量を量ります。メジャーの先端にはシリンダーへ火薬を流し込みやすくするために漏斗があります。この漏斗を回転させて火薬をメジャーに流し込みます。後ろには伸縮するゲージが備わっており、目的の量の位置でネジを締めて固定します。私はメジャーに火薬を流し込む際、空薬莢を使用していました。製品によってはスティックシュガーのように一発分ずつ小分けにしたものもあります。

上の画像には弾の削りカスがありますが、これが非常に重要です。弾をシリンダーに挿入する際、弾の周囲が削れて「鉛の輪」の削りカスが出ます。このカスが出なければ、その弾は通常より小さいので、銃に適合していないといえます。一度使用した弾を再利用したい場合は、削れた部分(地球に例えると赤道)を上に向けて再装填すれば再度削りカスが出ます。

 

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勿論、弾をバレルに置いただけでは通過しません。ライフリングは6条右回り。発射すると鉛の弾はライフリングに食い込んで回転します。鉛弾はバレル通過時に溶けてライフリングの溝を埋めてしまう「レッディング」を発生させますが、この銃に関してはローディングと発射に時間が掛かるためバレルの加熱が少なく、初速も遅いので心配無用でした。口径も.44と大きいので、掃除しやすいモデルといえます。

 

 

代替黒色火薬について

黒色火薬(ブラックパウダー)にも様々な種類がありますが、現代では反応が安定した代替黒色火薬を使用することがほとんどで、純粋な黒色火薬が使用されるのは稀です。

燃焼速度 粒の大きさ 代替黒色火薬の分類 使用する対象
遅い


速い
大きい


小さい
キャノン 大砲
FG マスケット
FFG / 2FG ライフル
FFFG /3FG ハンドガン
FFFFG / 4FG プライマー
カートリッジ 金属薬莢ライフル

1858年当時に使用されていた純粋な黒色火薬は粒の大きさがバラバラだったため、現代の火薬と比較すると燃焼速度が安定しませんでした。粒が小さければ瞬間的爆発により短時間で高圧となり、逆に粒が大きければゆっくり燃焼します。燃焼速度の速い火薬は短いバレル、逆に燃焼速度が遅い火薬は、長いバレルや重い弾を使用する大砲に適しています。このルールは現代のスモークレスパウダーと共通します。

レミントン・モデル1858では、ハンドガン用のFFFG(スリー・エフ・ジー)が使用されます。

 

 

メーカー推奨火薬量

銃の口径 通常火薬重量(グレイン) 最大火薬重量(グレイン) 弾の形状と口径
.31 9 15 ラウンドボール.330
.36 15 25 ラウンドボール.375/380
12 15 コニカル(円錐).375
.44 22 30 ラウンドボール.454/457
19 25 コニカル(円錐).454

実際にあらゆる火薬量で試してみましたが、メーカー推奨の通常火薬量か少し多めが最も安定した結果が得られました。22~35グレイン(1.43~2.27グラム)だと集弾が良く、それ以上になると弾にバラツキが出ます。最大火薬量で連発するとスモークで視界が無くなるほどで、銃声もボーンからドポーンに変化します。メーカーは「最大火薬量はハンティングかデモンストレーション時のみに使用してください」と注意を促しています。

「ラウンドボール」とは、球形の鉛弾です。円錐形の「コニカル」は、ローディング時に斜めに挿入される傾向があるため、命中精度はラウンドボールの方が高いといわれています。

 

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25ヤードで射撃し、だいたい50cm以内の集弾といったところでしょうか。恐らく、この手のリボルバーで25ヤードは遠距離です。西部劇で相手の帽子を吹き飛ばす芸当は、実際には相当困難でしょう。当時の安定しないブラックパウダーだと尚更です。射手の腕より、パウダーや弾の状態に左右されます。

 

 

【注意】ゴーグル着用は必須

どんな銃でも射撃時にはゴーグルやサングラスなどで目を保護しましょう。特にブラックパウダーを使用する銃では、火薬や鉛のカス、オイルなどが激しく飛び散りがちです。撃発時、パーカッション・リボルバーのニップルの穴からは発射ガスがハンマーに向かって噴出します。

 

 

不発時の対処方法

  1. 不発が起きたらマズルをターゲットに向けた状態で最低一分間待つ
  2. 待っても発射されなければ、ハンマーをハーフコックにし、装着されたキャップをすべて取り外す
  3. 不発が起きたチャンバーのニップルにニップルピック(針金)を通す
  4. 新しいキャップを装着し撃発する
  5. また不発の場合は、そのまま一分間待つ
  6. 待っても発射されなければ、ハンマーをハーフコックにし、装着されたキャップをすべて取り外す
  7. シリンダーを取り外し、ニップルレンチでニップルを外す
  8. 外した穴からニップルピック(針金)を入れて火薬を取り出し、新しい火薬を入れる
  9. ニップルを締めなおしてシリンダーをフレームに戻し、通常の操作方法で再度撃発させる

 

 

シリンダーのクリーニング

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  1.  ニップルは専用レンチで取り外し可能です。6個のニップルを外し、シリンダーと一緒に金属ブラシを通す。次にお湯で水洗いと拭き取りで大きな汚れを除去します。
  2. 射撃中に不発が発生した際、キャップを交換しても撃発しなかったため、レンチでニップルを外し、この穴から火薬を入れ替えて発射しました。ニップルが外れないと色々不便です。
  3. シリンダー内部は激しく汚れます。放置するとすぐに錆びるので、できるだけ早急にクリーニングしましょう。ブラックパウダーを使用するシリンダーのクリーニングは、金属カートリッジのリボルバーより数段面倒です。
  4. 大きな汚れを落としたら、専用ソルベントに漬けて汚れを浮かします。
  5. シリンダー専用なので扱いやすい。
  6. 漬け終わったら水洗いし、ブラシとパッチを通して終了。仕上げにガンオイルで皮膜を作ります。(数日以内に射撃する予定がある場合は、チャンバー内をドライに保つためオイルの使用は避けます。)

シリンダー以外のパーツも、お湯とソルベントを使用してクリーニングします。ブラックパウダーはスモークレスパウダーの比ではなく錆びやすく汚れやすいので、入念かつ迅速に作業しましょう。

 

 

編集後記

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 レミントン・モデル1858ニュー・アーミー(.44口径)と、ルガーGP100(.357マグナム)

マズルローダーなど、ブラック・パウダーを使用する銃の楽しみには、「ゆったりとした時間の使い方」や「当時を再現するロマン」があると思います。オートピストルで数百発射撃することは簡単ですが、この銃は大変な労力を費やします。ですが、晴れた日に鳥の声を聞きながらローディングしていると心が落ち着きますし、亜音速の弾とブラック・パウダーによる独特の臭いと低い銃声は、現代の銃器にはない魅力があり、ノスタルジックな気分にさせられます。

当時のガンファイター達がどのように銃を扱い、困難を克服したかを考えるキッカケにもなりました。トリガーを引いてハンマーが落ちた瞬間に弾が発射されるのは当たり前だと思われるかもしれませんが、ブラックパウダーだとコンマ数秒の差で撃発に至るまでタイムラグがあることがあります。タイミングがいつも一定とは限らないので、とても精密射撃できる銃ではありません。

パーカッション・リボルバーの扱いには火薬の湿気防止、火薬量、弾、キャップの扱いなど、気を使う点が多いだけに、金属カートリッジの登場は衝撃的だっただろうと想像します。自分の命を託す道具に神経を使うのは、いつの時代も変わらないのではないでしょうか。

最後までお読みいただきありがとうございます。

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