
この記事の要約
- .38や.380などの弾薬名は、弾頭や銃身の実際の直径を正確に表しているとは限りません。
- ライフリング銃身には山径(ボア径)と谷径(グルーブ径)があり、弾頭は山径より太く設計されています。
- .380 ACPや.38スペシャル、.357マグナムも規格に合った寸法で設計されているため、指定された弾薬を使用する限り問題ありません。
「.380 ACPは9×17mmとも呼ばれますが、弾頭の直径や銃身内径を実際に測ると9mmや.380インチとは一致しません。なぜ数字が違うのでしょうか?」
「.38スペシャルと.357マグナムでは、名称上の数字が.38と.357で異なります。実際の弾頭径や銃身内径にも、それだけの差があるのでしょうか?」
・・・と、質問されることがあります。
結論からいえば、このような数字の違い自体は問題ではありません。弾薬名に含まれる数字、実際の弾頭径、銃身の内径は、それぞれ別の寸法だからです。
重要なのは、ライフリング銃身には「山径」と「谷径」という2種類の内径があることです。弾頭はライフリングの山に食い込みながら銃身内を進むため、弾頭径と山径が一致している必要はありません。
弾薬名の数字と実際の直径は同じとは限らない

「.38スペシャル」「.357マグナム」「.380 ACP」といった名称を見ると、それぞれの数字が弾頭の正確な直径を表しているように見えます。しかし、弾薬の口径名は歴史的な呼称を含んでおり、現在の実測寸法と一致しないことがあります。
代表的な例が.38スペシャルです。.38インチは約9.65 mmですが、SAAMI規格における.38スペシャルの弾頭最大径は、ジャケット弾で.358インチ、鉛弾で.359インチです。.357マグナムも同じ寸法の弾頭を使用します。
したがって、「.38インチの銃身に.357インチの弾頭を通しているため約0.5 mmの隙間がある」という理解は正しくありません。.38という数字は弾薬名であり、現在の銃身内径そのものではないからです。
.380 ACPも同様です。この弾薬は9mmブローニング・ショート、9mmクルツ、9×17mmなどとも呼ばれますが、SAAMI規格の弾頭最大径は.3565インチ(約9.06 mm)です。「.380」や「9mm」という名称から、実際の弾頭径をそのまま求めることはできません。
弾頭が銃身より太くても問題ない理由

ライフリング銃身の内部には、内側へ突出した「山(ランド)」と、その間にある「谷(グルーブ)」があります。山から反対側の山までの直径を山径(ボア径)、谷から反対側の谷までの直径を谷径(グルーブ径)と呼びます。
| 項目 | 意味 |
|---|---|
| 山径(ボア径) | ライフリングの対面する山から山までの直径 |
| 谷径(グルーブ径) | ライフリングの対面する谷から谷までの直径 |
| 弾頭径 | 発射される弾頭そのものの直径 |
一般的な拳銃弾では、弾頭径は山径より大きく、谷径に近い、または谷径よりわずかに大きく設定されています。これは製造上の「誤差」ではなく、ライフリングに弾頭をかみ合わせるための設計上の寸法関係です。
例えばSAAMI規格の.380 ACPでは、弾頭最大径が.3565インチ、山径が.348インチ、谷径が.355インチです。
| 項目 | .380 ACP |
|---|---|
| 弾頭最大径 | .3565インチ(約9.06 mm) |
| 山径 | .348インチ(約8.84 mm) |
| 谷径 | .355インチ(約9.02 mm) |
弾頭は山径より約0.22 mm太く、谷径よりもわずかに太くなっています。発射時にはライフリングの山が弾頭表面へ食い込み、弾頭をわずかに変形させながら回転を与えます。そのため、弾頭が山径より太いことは異常ではありません。
この寸法差は単なる誤差ではなく、ライフリングと弾頭をかみ合わせるための設計によるものです。
.38スペシャルと.357マグナムではどうなる?
.38スペシャルと.357マグナムは名称こそ異なりますが、SAAMI規格では弾頭径と銃身寸法がほぼ共通しています。
| 項目 | .38スペシャル | .357マグナム |
|---|---|---|
| ジャケット弾頭最大径 | .358インチ | 同左 |
| 鉛弾頭最大径 | .359インチ | 同左 |
| 山径 | .346インチ | 同左 |
| 谷径 | .355インチ | 同左 |
つまり、.38スペシャルの「.38」と.357マグナムの「.357」の差は、そのまま弾頭径の差を表しているわけではありません。両者の弾頭直径はほぼ同じです(弾薬全長は異なります)。
発射時には弾頭がライフリングへ押し付けられるため、表面にはランドとグルーブに対応した痕跡が形成されます。一般にライフリング痕やライフルマークと呼ばれるものです。そのため、「弾頭が細すぎてライフリングに触れないのではないか」という心配もありません。
まとめ
- .38や.380は弾頭の実測直径?
-
必ずしも一致しません
- 銃身内径は一つだけ?
-
山径と谷径があります
- 弾頭が山径より太くても問題ない?
-
それが通常の設計です
- .38スペシャルと.357マグナムの弾頭径は違う?
-
規格上は同じで、製造上の公差があります
- ライフリング痕は残る?
-
ライフリングとの接触によって形成されます
弾薬名の数字、弾頭径、銃身内径は同じものではありません。特にライフリング銃身では山径と谷径という異なる寸法があり、弾頭は山径より太く設計されています。
したがって、.380 ACPや.38スペシャル、.357マグナムの名称と実寸に違いがあっても、それ自体は問題ではありません。発射時には弾頭がライフリングへ食い込みながら進むため、弾頭にはライフリング痕が残ります。
重要なのは名称上の数字ではなく、銃に指定された規格の弾薬を使用することです。
さらに詳しい情報は、こちらの記事をご覧ください。

参考資料
- Sporting Arms and Ammunition Manufacturers’ Institute(SAAMI)
ANSI/SAAMI Z299.3 – Centerfire Pistol & Revolver - Sporting Arms and Ammunition Manufacturers’ Institute(SAAMI)
Generally Accepted Cartridge and Chamber Names - Sporting Arms and Ammunition Manufacturers’ Institute(SAAMI)
Generally Accepted Firearms and Ammunition Interchangeability - National Institute of Justice(NIJ)
Firearms Examiner Training – Caliber/Diameter - National Institute of Justice(NIJ)
Firearms Examiner Training – General Rifling Characteristics - National Institute of Standards and Technology(NIST)
Firearm Identification in the Forensic Science Laboratory




