FN ARKAライフルとは? 特徴・SCARとの違い・英軍次期小銃計画との関係

FN ARKAライフルイメージ画像

この記事の要約:

  • FN ARKAは、FN SCAR由来の信頼性とAR-15型の操作性を融合した新型軍用ライフルです。
  • 完全両利き操作、着脱式ハンドガード、AR規格ストック、Smart Coreなど、現代の軍用小銃に求められる機能を備えています。
  • 英軍の次期小銃計画Project GRAYBURN(プロジェクト・グレイバーン)への提案も想定され、将来の口径変更や英国内生産にも対応する構想です。

FNハースタルが発表した「FN ARKA」は、AR-15に近い操作系と、FN SCARから発展したショートストローク・ガスピストン機構を組み合わせた新型軍用ライフルです。

外観はAR-15系に見えますが、内部構造まで同じ設計を踏襲したものではありません。SCARで培った信頼性と耐久性を維持しながら、軍が求める操作性、装備互換性、整備性、生産性に対応するため、ほぼ全面的に再設計されています。

SCAR・AR-15・FN ARKAの関係図
SCAR・AR-15・FN ARKAの関係図
項目FN ARKAの内容
メーカーFN Herstal
分類軍・法執行機関向けモジュラー式ライフル
使用弾薬5.56×45mm NATO
作動・閉鎖方式ショートストローク・ガスピストン、マルチラグ式ロータリーボルト
基礎となる設計FN SCAR系の作動機構
操作系AR-15型、アンビ(完全両利き)
バリエーションFN ARKA CQC、FN ARKA STD
銃身長CQC:約285mm(11.25インチ)
STD:約368mm(14.5インチ)
英軍向けに検討される銃身長:16インチ
全長CQC:約735.2~820mm
STD:約849.5~934.5mm
重量CQC:約3.7kg
STD:約3.9kg
※空マガジン装着時
マガジン容量30発
発射速度毎分約600~700発
ハンドガード短型・長型の着脱式M-LOK
ストックAR規格ストックに対応
ピストルグリップAR規格グリップに対応
サプレッサー使用を想定
運用管理Smart Coreに対応
目次

FN ARKAの開発背景

FNがSCARとは別のライフルを開発した理由

FN SCAR Next‑Gen 画像
FN SCAR Next‑Gen 画像出典:fnamerica.com

FN SCARは、米特殊作戦軍の要求に基づいて開発されたモジュラー式ライフルです。マルチラグ式ロータリーボルトとショートストローク・ガスピストンを採用し、交換式銃身や複数の銃身長に対応するなど、現代の軍用小銃に大きな影響を与えました。

しかし、FNがSCARを各国の軍や法執行機関向け入札に提案するなかで、性能とは別の問題が生じました。

多くの採用計画では、AR-15型のチャージングハンドルセレクターマガジンキャッチ、ストックなどが要求されます。兵士がすでにAR系火器に慣れている場合、異なる操作系を採用すると再訓練が必要になり、部品や装備の共通化も難しくなるためです。

その結果、SCARの信頼性が評価されていても、側面式チャージングハンドルや専用ストックのため、入札条件を満たせないケースがありました。FN ARKAは、SCARの長所を残しながら、この問題を解決するために開発されたライフルです。

FN SCARとは?
FN SCAR-Lライフル画像
FN SCAR-L+EGLM 画像出典:Bryan L. Castro, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons

FN SCARは、FNハースタルが米特殊作戦軍向けに開発したショートストローク・ガスピストン式の軍用ライフルです。5.56mm弾を使用するSCAR-Lと、7.62mm弾を使用するSCAR-Hを基本とし、任務に応じて銃身長や口径を変更できる高いモジュール性を備えています。

米特殊作戦軍はSCAR-Hと狙撃型のMk 20を採用しましたが、SCAR-Lは既存の5.56mmライフルに対する性能上の優位性が費用に見合わないとして、調達を中止しました。その後はSCAR-Hを5.56mm仕様へ変更する変換キットも開発されています。

本体はアルミ製の上部レシーバーとポリマー製の下部レシーバーで構成され、上面にはアクセサリーを装着できるレールを備えています。軍用モデルのほか、民間向けのSCAR 16S、17S、20Sなども展開され、複数の国で運用されています。

FN ARKA ロングハンドガード画像
FN ARKA ロングハンドガード 画像出典:fnherstal.com
比較項目FN SCARFN ARKA
主な設計対象特殊作戦用途を重視一般部隊を含む幅広い軍・法執行機関
チャージングハンドル側面式後部上面のT字型
操作系SCAR独自AR-15型
左右操作モデルや操作部により異なる完全両利き
ストックSCAR専用AR規格に対応
ピストルグリップ専用構成AR規格に対応
ハンドガードアッパーレシーバーと一体独立した着脱式
銃身交換訓練を受けた使用者による交換を想定武器整備員による交換を想定
折りたたみ式ストック対応後部構造の変更により対応可能
主な設計目的モジュール性と特殊作戦での信頼性SCAR系の信頼性とAR型操作性の両立

FNはARKAの内部機構を、SCARの「エンジン」を受け継いだものと説明しています。

ただし、既存のSCARにAR-15風の外装を加えただけではありません。SCARで得られた運用経験を基に、作動部品、レシーバー、ハンドガード、操作系などが改良されています。

FN側によれば、SCARとの設計上のつながりはあるものの、主要部品を共用する派生型ではなく、新たに設計されたプラットフォームです。

開発の契機となった英国のProject Hunter(プロジェクト・ハンター)

FN ARKAにつながる検討は、2022年半ばごろに始まりました。

きっかけのひとつが、英軍のProject Hunterです。この計画ではAR-15型の操作系が求められており、従来のSCARは条件に適合しませんでした。

KS-1ライフル
KS-1 画像出典:Photo: Corporal Rebecca Brown/UK Ministry of Defence 2023, OGL 3, via Wikimedia Commons

Project Hunterは、英軍が特殊作戦部隊向けの新型小銃を導入するために進めた調達計画です。2023年には、Knight’s Armament Company(KAC)が開発した5.56mm口径のKS-1が選定され、L403A1 Alternative Individual Weapon(AIW)として制式化されました。13.7インチ銃身とアンビ操作系を備え、英国陸軍レンジャー連隊や英海兵隊で、L85A2/A3およびL119A1/A2を補完・更新する目的で導入されています。

FNはその後、各国軍に対して市場調査を行い、「SCARの信頼性を持ちながら、AR-15と同じように操作できるライフル」への需要を確認しました。

正式な開発プロジェクトは2024年1月に始まり、英軍やNATO加盟国の兵士から得た意見を反映しながら改良が進められました。

計画概要FN ARKAとの関係
Project Hunter英軍の一部部隊向け新型小銃調達AR-15型操作系を求める要求がARKAの構想に影響
FN ARKA開発プロジェクトFNによる新型ライフル開発2024年1月に正式開始
Project GRAYBURNSA80系列の後継となる次期小銃体系の検討FN ARKAが候補として提案される計画

FN ARKAの開発年表

時期出来事
2022年半ばProject Hunterを背景に、FN内部で新型ライフルの検討を開始
2022~2023年各国軍を対象に市場調査を実施
2023年英国でProject GRAYBURNが公的に確認される
2024年1月FN ARKAの正式な開発プロジェクトを開始
2024~2025年試作・改良を進め、英軍などからのフィードバックを開発へ反映
2025年FN ARKAの商標出願や技術仕様の整備が進む
2026年1月英国政府がProject GRAYBURNの要求概要を産業界へ提示
2026年6月2日FN HerstalがFN ARKAを正式発表
2026年FN ARKAをProject GRAYBURN向け候補として提案

AR-15型の操作系と外装

FN ARKAの各部名称入り外観図
  1. AR規格ストック
  2. AR規格バッファーチューブ
  3. T字型チャージングハンドル
  4. フォワードアシスト
  5. エジェクションポート
  6. 上部アクセサリーレール
  7. ガスレギュレーター
  8. アンビセレクター
  9. AR規格ピストルグリップ
  10. アンビボルトキャッチ/リリース
  11. アンビマガジンキャッチ
  12. 着脱式M-LOKハンドガード

AR-15型の完全両利き操作系

FN Herstal FN ARKA チャージングハンドル画像
FN Herstal FN ARKA チャージングハンドル 画像出典:FN Herstal FN ARKA®: Built on Combat-Proven Reliability, Refined for AR Users

FN ARKAの外観上、最も大きな特徴は、レシーバー後部上面に配置されたT字型チャージングハンドルです。

FN SCAR-Lイメージ画像
FN SCAR-L

SCARの側面式とは異なり、AR-15系ライフルに慣れた兵士が違和感なく操作できます。チャージングハンドルはFN独自設計で、左右どちらからでも操作できる完全両利き仕様です。

セレクター、マガジンキャッチ、ボルトストップ、ボルトリリースも左右両側に配置されています。射手は持ち手を大きく変えずに操作でき、左右の肩を切り替えて射撃する場合にも対応しやすくなっています。

アッパーレシーバーはアルミニウム製ですが、チャージングハンドルのラッチが接触する部分にはスチール製インサートが設けられています。長期間の使用でアルミニウムが摩耗することを防ぐための構造です。

ハンマーが落ちていてもセーフティを使用可能

FN Herstal FN ARKA トリガーメカ画像
FN Herstal FN ARKA トリガーメカ  画像出典:Forgotten Weapons FN’s New ARKA: Revamping the SCAR for Military Tenders

FN ARKAのセレクターは、ハンマーが落ちている状態(コックされていない状態)でもセーフ位置に切り替えられます。一般的なAR-15の多くは、ハンマーが落ちているとセーフティを操作できません。

英軍では、放置された火器を確保する際などに、最初にセーフティを確認する手順があります。FN ARKAの仕様は、こうした既存の運用手順に合わせたものです。

AR-15型の操作感を採用しながら、内部構造までそのまま模倣していないことが分かります。

AR規格のストックとグリップに対応

FN Herstal FN ARKA グリップ画像
FN Herstal FN ARKA グリップ 画像出典:FN Herstal FN ARKA®: Built on Combat-Proven Reliability, Refined for AR Users

FN ARKAは、AR-15規格のピストルグリップとストックを取り付けられます。

後部にはAR規格のバッファーチューブがありますが、内部にリコイルスプリングやバッファーは入っていません。作動機構はレシーバー内部で完結しており、チューブはストックを取り付けるためだけに使用されます。

そのため、後部構造を変更すれば折りたたみ式ストックにも対応できます。FNは用途に応じた折りたたみ式ストックを開発しています。

通常部隊では伸縮式ストック、車両搭乗員や海軍部隊では折りたたみ式ストックといった使い分けも可能になります。

着脱可能なフォワードアシスト

FN Herstal FN ARKA フォワードアシスト画像
FN Herstal FN ARKA フォワードアシスト 画像出典:FN Herstal FN ARKA®: Built on Combat-Proven Reliability, Refined for AR Users

フォワードアシストは、ボルトが完全に閉じなかったときに、手動で前方へ押し込むための補助装置です。

T字型チャージングハンドルでは、SCARの側面式ハンドルのようにボルトキャリアを直接押し込めません。そのため、FN ARKAにはAR-15と同様のフォワードアシストが装備されています。

フォワードアシストはレシーバーと一体ではなく、ポリマー製の独立部品です。破損した場合は該当部分だけを交換でき、採用側が不要と判断すればカバープレートへの変更も可能です。

一方、独立したダストカバーはありません。FNは、閉鎖したボルトキャリアがエジェクションポートを平面状に塞ぐため、ボルトキャリア自体がカバーの役割を果たすと説明しています。

部位・機構AR-15規格との関係
ストックAR規格品に対応
ピストルグリップAR規格品に対応
バッファーチューブAR規格形状を採用
チャージングハンドルAR型配置だがFN独自設計
セレクター配置AR型に近い
マガジンキャッチ配置AR型に近い
ボルトキャッチ配置AR型に近い
ロワーレシーバーAR-15とは非互換
トリガーメカニズムSCAR系でAR-15とは非互換
ボルトキャリアFN独自設計
リコイルスプリングレシーバー内部に配置
作動方式SCAR系ショートストローク・ガスピストン

モジュール構成と整備性

FN Herstal FN ARKA 3丁比較画像
FN Herstal FN ARKA 3丁比較 画像出典:FN Herstal FN ARKA®: Built on Combat-Proven Reliability, Refined for AR Users

銃身とハンドガードの構成

FN ARKAには、11.25インチと14.5インチの銃身があります。

FN ARKA ロングハンドガード画像
FN ARKA ロングハンドガード 画像出典:fnherstal.com
FN ARKA ショートハンドガード画像
FN ARKA ショートハンドガード 画像出典:fnherstal.com
FN ARKA CQC画像
FN ARKA CQC 画像出典:fnherstal.com

11.25インチ仕様は近接戦闘や車両内での運用に適した短銃身型です。14.5インチ仕様は、携帯性と弾道性能のバランスを重視した構成です。

ハンドガードにも短型と長型があり、用途に応じて組み合わせられます。14.5インチ銃身と短いハンドガードを組み合わせた場合は、着剣装置を取り付ける空間も確保されます。

英軍向けには、Project GRAYBURNの要求を想定した16インチ銃身も開発されています。

項目・構成FN ARKA CQCFN ARKA STD用途・特徴
銃身長約285mm
(11.25インチ)
約368mm
(14.5インチ)
CQCは近接戦闘や車両内など狭い空間での運用、STDは携帯性と弾道性能のバランスを重視
全長約735.2~820mm約849.5~934.5mmストックの伸縮により全長が変化
重量約3.7kg約3.9kg空マガジン装着時
ショート・ハンドガード対応対応軽量で、銃身前部に装備用の空間を確保
ロング・ハンドガード対応対応前方まで把持面とM-LOKスロットを確保
14.5インチ銃身+ショート・ハンドガード対応バヨネットラグ(着剣装置)を装備できる構成
着脱式ハンドガード対応対応損傷時や仕様変更時に交換可能

着脱式でもゼロを維持するハンドガード

FN Herstal FN ARKA ハンドガードスクリュー画像
FN Herstal FN ARKA ハンドガードスクリュー 画像出典:FN Herstal FN ARKA®: Built on Combat-Proven Reliability, Refined for AR Users

SCARでは、アッパーレシーバーとハンドガードが一体化されています。高い剛性を得られる一方、ハンドガードだけを交換することは困難です。

FN ARKAでは、ハンドガードを独立部品とし、左右のスクリューで固定しています。損傷時の交換や、異なる長さへの変更が容易になりました。

固定スクリューには1番と2番の番号があり、組み立て時には1番を先に締め、続いて2番を締めます。複数の位置決め面を使って装着位置を再現することで、レーザー照準器などを取り外し前のゼロに戻しやすい構造です。

主要なスクリューは脱落防止式で、分解中に紛失しにくくなっています。

銃身交換はアーマラー(武器整備員)が担当

SCARの銃身は、訓練を受けた射手が交換できる構造でした。

FN ARKAの銃身も取り外せますが、通常の兵士が任務ごとに交換することは想定されていません。交換は部隊の武器整備員が担当します。

銃身交換には、締め付けトルク、照準調整、部品管理などが伴います。一般部隊への大規模配備を想定したFN ARKAでは、使用者の自由度よりも、整備責任と運用の安定性が優先されています。

分解しやすく、部品を紛失しにくい構造

FN ARKAのフィールドストリップ画像
FN ARKAのフィールドストリップ 画像出典:Forgotten Weapons FN’s New ARKA: Revamping the SCAR for Military Tenders

通常分解では、後部の固定ピンを引き出すと、ロワーレシーバーが90度以上開きます。

リコイルスプリングを取り外し、チャージングハンドルを少し後退させれば、ハンドル自体を外さずにボルトキャリアを引き抜けます。

さらに前側のピンを抜けば、ロワーレシーバーを完全に分離できます。

主要なピンやスクリューは脱落防止式ですが、ファイアリングピン・リテイニングピンなど一部の小部品は本体から完全に分離します。そのため、分解時には小部品の管理が必要です。

ガスシステムと内部機構

FN ARKA CQC画像
FN ARKA CQC 画像出典:fnherstal.com

2ポジションながら同一設定のガスレギュレーター

FN Herstal FN ARKA ガスレギュレーター画像
FN ARKAガスレギュレーター 画像出典:Forgotten Weapons FN’s New ARKA: Revamping the SCAR for Military Tenders

FN ARKAには2ポジションのガスレギュレーターがありますが、現在は両方に同じ大きさのガスポートが使用されています。どちらを選んでも作動状態は変わりません。

FNは試験の結果、通常用と悪条件用の設定を分けなくても、ひとつのガス量で十分な信頼性を確保できると判断しました。

複数の設定があると、兵士が誤った位置に合わせ、かえって作動不良を起こす可能性があります。設定を実質的に一本化することで、操作時の判断を減らしています。

それでも2ポジション構造を残したのは、将来の弾薬やサプレッサーに対応するためです。必要になれば片方のガスポートだけを変更でき、ガスブロック全体を再設計する必要がありません。

サプレッサーへの対応

FN Herstal FN ARKA サプレッサー画像
FN Herstal FN ARKA サプレッサー 画像出典:FN Herstal FN ARKA®: Built on Combat-Proven Reliability, Refined for AR Users

FN ARKAはサプレッサーの使用を想定しています。

FNは特定のメーカーに限定せず、複数のサプレッサーを試験し、採用側が選択できる方式を目指しています。

とくに、発射ガスを前方へ逃がし、サプレッサー装着時の背圧(発射ガスが抜けにくくなることで、銃身やガスシステム内に生じる圧力)を抑えるフロースルー型と相性がよいとされています。

一般的なサプレッサーでも作動しますが、背圧が高くなるため、射手側へ吹き戻すガスや機関部へ流入するガスが増え、作動部品への負荷が大きくなる可能性があります。

SCARから改良されたガスピストン機構

ショートストローク・ガスピストンの作動図
ショートストローク・ガスピストン 画像出典:FN Herstal FN ARKA®: Built on Combat-Proven Reliability, Refined for AR Users

FN ARKAは、SCARと同じくショートストローク・ガスピストンとロータリーボルトを使用します。

ただし、作動部品の構成は変更されています。

SCARではボルトキャリアから前方へ長いオペレーティングロッドが延びていました。FN ARKAではボルトキャリア側を短くし、独立したピストンエクステンションを配置しています。

往復部品の重量を減らし、射撃時の衝撃を抑えることが目的です。

ピストン自体はSCARよりも太く、強度が高められています。SCARで得られた運用経験から、想定外の弾薬や構成でも曲がりにくい設計へ改良されました。

部位FN SCARFN ARKA
作動方式ショートストローク・ガスピストンショートストローク・ガスピストン
ボルト閉鎖ロータリーボルトロータリーボルト
オペレーティングロッドボルトキャリアから前方へ長く延びるボルトキャリア側を短縮
ピストンエクステンションSCAR型の一体的な構成独立部品として配置
ピストン径比較的細い太くして強度を向上
往復部品長い作動部品を使用重量と配置を見直し
異物対策SCARの設計を基礎ピストン開口部の密閉性を向上
ハンドガードレシーバーと一体着脱可能な独立部品
銃身交換使用者による交換を想定武器整備員による交換を想定

摩耗箇所にスチールを使用

FN Herstal FN ARKA 左側画像
FN Herstal FN ARKA 左側面 画像出典:FN Herstal FN ARKA®: Built on Combat-Proven Reliability, Refined for AR Users

アッパーレシーバーは軽量なアルミニウム製ですが、摩耗が集中する部分にはスチールが使用されています。

FN Herstal FN ARKA ネジ画像
レシーバー内側のスチールプレートをネジ止めする交換可能な構造

内部では、ボルトのカムピンがレールに沿って移動します。スチール製のカムピンをアルミニウムに直接接触させると、長期間の使用でレシーバーが摩耗します。

そのため、カムピンが通る部分にはスチール製レールが取り付けられています。チャージングハンドルの接触部にもスチール製インサートが配置されています。

軽量化と耐久性を両立するため、必要な箇所だけを補強した構造です。

アンチリバウンド機構を備えたボルトキャリア

FN Herstal FN ARKA ボルトキャリア画像
FN Herstal FN ARKA ボルトキャリアと撃針 画像出典:Forgotten Weapons FN’s New ARKA: Revamping the SCAR for Military Tenders

ボルトキャリア上部の内部には、金属粉(メタリックパウダー)が収まる空間が設けられています。

ボルトが前進して閉鎖した際に金属粉が移動し、ボルトキャリアの跳ね返りを抑えます。ボルトが衝撃で再び開き、不完全閉鎖になることを防ぐアンチリバウンド機構です。

ボルトのロッキングラグには、ボルトストップが確実に噛み合うための切り欠きもあります。ボルトを後退位置で固定した状態で銃を落としても、衝撃でボルトが前進しにくい設計です。

内部はAR-15型ではない

FN ARKAはAR-15型の操作系を持ちますが、トリガーメカニズムはAR-15と異なります。

ロワーレシーバー内部には、SCAR系のファイアコントロールシステムが使用されています。AR-15用ロワーレシーバーやトリガーユニットを流用する構造ではありません。

互換性があるのは、主に操作感覚、ストック、ピストルグリップなどです。

FNが目指したのはAR部品の全面的な流用ではなく、AR系火器に慣れた兵士が同じ感覚で操作できることでした。

分解方法や内部機構の変更点は、以下の取材動画で詳しく紹介されています。

運用管理と射撃特性

射撃回数を管理するスマートコア(Smart Core)

FN ARKAのロワーレシーバー後部には、「Smart Core」と呼ばれる管理システムを搭載できます。

FN スマートコア(SmartCore)画像
FN スマートコア(SmartCore)画像出典:fnamerica.com

Smart Coreは、ハンマースプリングのガイドロッドの動きを検出し、射撃回数を記録します。実弾射撃、空包射撃、ドライファイアを区別できるとされています。

記録された情報を利用すれば、部品交換の時期を予測し、故障前に整備できます。部隊全体の使用状況や交換部品の在庫管理にも利用可能です。

軍用小銃を単体の装備ではなく、ライフサイクル全体で管理するための機能です。

FN スマートコア(SmartCore)とは?
FN スマートコア(SmartCore)画像
FN スマートコア(SmartCore)画像出典:fnamerica.com

FNは従来の銃器だけでなく、電子技術を組み合わせた「FN e-novation」というシステムも開発しています。これは、照準装置などの電子機器を小火器と連携させ、任務中の戦闘能力や通信を高めるとともに、整備や補給の管理をしやすくするものです。

その中の「FN SmartCore」は、発射回数を自動で記録する電子システムです。実弾と空包を区別し、一定時間あたりの発射数や連射速度も記録できます。

記録した情報は、整備・補給管理ソフトウェア「FN SAM」と連携して使用します。これにより、実際の使用状況に合わせて点検や部品交換の時期を判断しやすくなります。

その結果、必要以上に早く部品を交換したり、整備が遅れて故障したりするリスクを減らせます。複数の銃をまとめて管理する部隊では、整備費用を抑えながら、使用可能な銃をできるだけ多く維持することができます。

反動よりも悪条件での信頼性を優先

FN ARKAの射撃感覚は、一般的な5.56mm軍用小銃に近いと評価されています。

AR-15と比較すると、ピストンやボルトキャリアなどの往復部品が重いため、作動時の動きを感じやすくなっています。

重い作動部品は反動や振動を増やしますが、汚れや砂、低温、潤滑不足などの悪条件でも、慣性によって作動を継続しやすくなります。

競技用AR-15のような軽い反動ではなく、軍用火器としての信頼性を優先した設計です。

英軍の次期小銃計画との関係

FN ARKAとProject GRAYBURNを示す画像

英軍のProject GRAYBURN(プロジェクト・グレイバーン)

FN ARKAが注目される理由のひとつが、英軍のProject GRAYBURNです。

Project GRAYBURNは、SA80系列に代わる次期制式小銃と関連装備の導入を検討する計画とされています。

FN ARKAの開発には、英国陸軍本部の担当者や、第16空中強襲旅団、パラシュート連隊の兵士が参加しました。ベルギーでの実射試験から得られた意見が、操作系や構造の改良に反映されています。

開発段階から兵士を参加させることで、実際の使用環境に適した仕様を確認できるだけでなく、新装備への理解や信頼も得やすくなります。

提案項目内容
標準小銃一般部隊向けの基本構成
短銃身型11.25インチなどのコンパクト構成
英国向け銃身16インチ仕様を検討
サプレッサー複数製品から選択できる構成
空包訓練空包発射補助具を用意
訓練弾UTMやシミュニション用キットに対応
士官候補生用.22口径仕様を用意
将来口径中間口径や高圧弾への発展を想定
国内生産英国国内で90%以上の生産を提案
長期支援整備、部品供給、産業協力を含む

英軍内で進むAR型操作系への統一

英軍では、すでに複数のAR系火器が使用されています。

L129A1シャープシューターライフルはAR-10系で、特殊部隊向けのKS-1や、一部部隊が使用するSIG MCXもAR型の操作系を持ちます。

一般部隊の主力小銃にも同様の操作系を採用すれば、セレクター、マガジン交換、ボルト操作などの訓練を共通化できます。

L85A3ライフル画像
L85A3 画像出典:Photo: Graeme Main/UK Ministry of Defence 2021, OGL 3, via Wikimedia Commons

SA80はブルパップ式で、左肩からの射撃や左右の持ち替えに制約があります。完全両利きのFN ARKAは、遮蔽物を利用して左右を切り替える現代的な運用にも適しています。

AR型操作系の採用は流行ではなく、英軍内の装備共通化やNATO諸国との相互運用性を考慮したものです。

将来の口径変更も想定

公開されているFN ARKAは、5.56×45mm NATO弾仕様です。

FNは他口径モデルの具体的な計画を公表していませんが、将来の中間口径や高圧弾への対応を視野に入れていると説明しています。

防弾プレートの普及により、5.56mm弾では十分な効果を得にくい場面が問題になっています。一方、強力な弾薬を採用すると、反動、重量、携行弾数、銃身寿命などに影響します。

FN ARKAは、将来の要求に応じて発展できるプラットフォームとして設計されています。

英国内生産を含む提案

Project GRAYBURNでは、小銃の性能だけでなく、国内生産、補給体制、雇用、輸出能力も評価対象になります。

FNは英国ケント州に製造拠点を持ち、英軍向けの機関銃などを長年生産してきました。

FN側は、Project GRAYBURN向けのFN ARKAについて、90%以上を英国国内で生産できると説明しています。条件が整えば、100%の国内生産も可能としています。

これは最終組み立てだけでなく、英国国内の供給網、製造設備、技術者、輸出体制まで含む提案です。

有事に国外からの供給が停止しても、国内で生産や修理を継続できる能力は、安全保障上の重要な要素です。

FNはライフルの納入だけでなく、英国国防省との長期的な産業協力を目指しています。

Project GRAYBURNについては、以下の記事でも解説しています。

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まとめ

FN ARKA ショートハンドガード画像
FN ARKA ショートハンドガード 画像出典:fnherstal.com
分野FN ARKAの特徴
操作性AR-15型の完全両利き操作系
信頼性SCAR系ショートストローク・ガスピストン
外装互換性AR規格ストックとグリップに対応
モジュール性銃身長とハンドガードを用途別に選択
整備性分解手順を簡素化し、主要部品を脱落防止化
耐久性摩耗箇所をスチールで補強
サプレッサー複数製品への対応を想定
運用管理Smart Coreで射撃履歴を記録
将来性折りたたみ式ストックや異口径への発展を想定
調達面英国を含む現地生産や長期支援に対応

FN ARKAは、AR-15型の完全両利き操作系やT字型チャージングハンドル、AR規格ストックを採用しながら、内部にはSCAR系のショートストローク・ガスピストン機構を備えています。AR-15との部品互換性を追求したライフルではなく、AR型の操作性とSCAR系の信頼性・耐久性を両立させることが設計の中心です。

着脱式ハンドガード、改良型ピストン、単純化されたガス設定、Smart Coreなど、変更は外観だけにとどまりません。英国軍兵士の意見を開発に反映し、Project GRAYBURNを想定した構成や訓練装備、英国内生産体制も準備されています。

採用はまだ確定していませんが、FN ARKAは、訓練の共通化、整備性、兵站、国内生産、将来の拡張性まで重視される現代の小銃調達に対応するため、SCARで培った経験を再構築した新世代の軍用ライフルといえます。

参考資料集
  1. FN Herstal — “FN EXPANDS RIFLE RANGE WITH NEW FN ARKA®”
  2. FN Herstal — “FN ARKA®”
  3. Forgotten Weapons — “FN’s New ARKA: Revamping the SCAR for Military Tenders”
  4. The Firearm Blog — “FN Unveils Their Next Generation Rifle – The ARKA”
  5. Army Recognition — “FN Herstal debuts Arka 5.56mm assault rifle for modern military and law enforcement forces”
  6. Army Recognition — “Belgium’s FN Herstal Unveils New FN ARKA 5.56mm Assault Rifle Based on AR-15 Architecture”
  7. European Security & Defence — “FN expands rifle range with new FN ARKA® 5.56x45mm NATO cal. Assault Rifle”
  8. UK Defence Journal — “UK sets out Project Grayburn rifle replacement to industry”
  9. Forces News — “Project Grayburn: The hunt is on for the British Army’s next assault rifle”
  10. Forces News — “SA80 out, new assault rifle coming in as quest begins to make Army more lethal”
  11. Forces News — “Breaching body armour: MOD issues requirements for SA80 family’s replacements”
  12. Forces News — “Project Grayburn: MOD still undecided on SA80 replacement so you had your say instead”
  13. EDR Magazine — “Enforce Tac 2026 – BDT UK comments on Project Grayburn, the UK MoD programme to replace British Army small arms”
  14. Janes — “Update: FN UK to begin expansion of small arms manufacturing capability”
  15. Financial Times — “Belgian gunmaker FN Browning to buy UK sniper producer”
  16. UK Defence Journal — “BDT UK’s Project Grayburn pitch to re-arm British industry”
  17. Youtube Royal Armouries — “Project GRAYBURN: FN’s Rifle Competing to Replace the SA80 with firearms expert Jonathan Ferguson”
  18. Youtube Forgotten Weapons — “FN’s New ARKA: Revamping the SCAR for Military Tenders”
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