軍用ライフルには、アサルトライフル、バトルライフル、DMRなどが存在します。
今回はこれらの違いや特徴について解説します。
アサルトライフルとは?
アサルトライフル(突撃銃)は、第二次世界大戦時のドイツで誕生した概念です。
ヒトラーがMP43/MP44ライフルを「Sturmgewehr 44 (StG44 / 突撃銃44)」と名付けたことに始まります。
これが英語に翻訳されて「アサルトライフル」と呼ばれるようになりました。
以下の条件に当てはまるライフルがアサルトライフルに該当します。
- セミフル(単発と連発)を切り替え可能
- 着脱式ボックスマガジンを使用
- インターミディエートカートリッジ(中間弾薬)を使用
- 有効射程距離300メートル以上(米軍による定義)
インターミディエートカートリッジ(中間弾薬)とは、有効射程距離300~600メートルなど、中距離射程を持つ銃で使用される弾薬です。
例:アメリカのM16/M4(5.56x45mm NATO)、ロシアのAK47(7.62x39mm)など。
バトルライフルとは?
バトルライフルは次の条件に当てはまるライフルを指します。
- オートライフル(セミオート、またはセミフル切替が可能)
- フルサイズカートリッジを使用
バトルライフルはアサルトライフルと似た特徴がありますが、使用弾薬にフルサイズカートリッジを使用します。
フルサイズカートリッジは、アサルトライフルで使用される弾薬より全長が長く口径も大きいため、高威力で有効射程距離も長い傾向があります。
インターミディエートカートリッジの例 | フルサイズカートリッジの例 |
---|---|
5.45x39mm | 7x57mmマウザー |
5.56x45mm NATO | 7.62x51mm NATO |
.30カービン (7.62x33mm) | 7.62x54mmR |
7.62x39mm | .30-06 スプリングフィールド (7.62x63mm) |
7.92x33mmクルツ | .303ブリティッシュ (7.7x56mmR) |
バトルライフルの概念が登場したのは1990年代です。
インターミディエートカートリッジを使用するアサルトライフルと、フルサイズカートリッジを使用するバトルライフルを区別するために作られた新しい概念です。
例を挙げると、第一次世界大戦時に使用されたロシアのフェドロフM1916は世界初のバトルライフルです。
第一次世界大戦当時にバトルライフルの概念は存在しませんでしたが、現代の基準ではバトルライフルに分類されます。
SVT38は7.62x54mmRを使用するロシア製バトルライフルです。
フランスのMAS49も7.5x54mmフレンチ弾を使用するバトルライフルです。
アメリカのM14はセミフル切替可能な7.62x51mmを使用するバトルライフルです。
また、ベルギーのFN FALも7.62x51mmを使用するバトルライフルです。
FN FALも、開発された当時はアサルトライフルとして分類されていましたが、現在ではバトルライフルに該当します。
しかし「バトルライフル」は新しい概念のため、FN FAL、HK417、SCAR-Hなどがアサルトライフルとして扱われることもあります。
「アサルトライフルとバトルライフル」という見方と、「アサルトライフルのカテゴリーの中のバトルライフル」という見方があります。
DMRとは?
DMR(Designated marksman rifle)とは、DM(選抜狙撃手 / 分隊狙撃手)が使用するライフルを意味し、一般の兵士が所持するライフルと長距離射撃で使用されるスナイパーライフルの間(ギャップ)を埋める中間的な有効射程距離を持つライフルです。
ライフル | 有効射程距離の目安 |
---|---|
アサルトライフル | 300~600m |
DMR | 600~800m |
スナイパーライフル | 800~1000m以上 |
使用弾薬はフルサイズカートリッジが使用されます。(7.62mmNATOや7.62x54mmRなど)
セミオート、またはセミフル切替可能なライフルが使用され、スコープを搭載し600~800メートル以下の目標に対して使用されます。
静止目標だけではなく、移動目標や複数の目標に対しても射撃されるため、長距離射撃を行うスナイパーとは異なる専門的な訓練を受けた兵士によって運用されています。
DMRに使用されるライフルの例を挙げると、アイアンサイトのSCAR-HはDMRとして使用できませんが、スコープやバイポッド等を搭載するとDMRとして使用可能になります。
サブマシンガン(SMG)とは?
サブマシンガンは拳銃弾を使用する軽量コンパクトなフルオート射撃が可能な銃です。
隠匿性が高く、狭い屋内の他、車両や航空機に乗降する機会が多い場面でも活躍します。
サブマシンガンの有効射程距離は50~100m以下と短いため、近距離戦闘を想定したVIP警護用、警備用、自衛用(PDW)として利用されることが多くなっています。
第一次世界大戦時に拳銃弾を使用するコンパクトなフルオート火器(サブマシンガン/SMG)が登場し、塹壕戦用や自衛用として多用されました。
全長が短いHK53、AKS-74U、K1といったライフルはライフル弾を使用する「ショートバレル・ライフル」であり、拳銃弾を使用しないためサブマシンガンではありません。
サブマシンガンはあくまで拳銃弾を発射するフルオート火器です。
PDW(パーソナル・ディフェンス・ウェポン)とは?
PDWは自衛用を目的として設計されたセミオートとフルオートが切り替え可能な銃で、その多くはサブマシンガンに分類されています。
1980年代の終わりにNATOが従来のサブマシンガンで使用される9x19mmよりも長射程の弾薬とサブマシンガンを必要とし、拳銃弾とインターミディエートカートリッジの中間的性能を持つ5.7x28mmとFN P90 PDWが開発されました。
モデル | 使用弾薬 | 有効射程距離 |
---|---|---|
B&T APC9K | 9x19mm | 100m |
H&K MP5K | 9x19mm | 100m |
H&K MP5A5 | 9x19mm | 200m |
FN P90 PDW | 5.7x28mm | 200m |
H&K MP7 PDW | 4.6x30mm | 200m |
KAC PDW | 6x35mm | 300m |
PDWは小口径高速弾を使用し、ボディーアーマーを貫通する能力を有しています。
通常、前線の兵士で使用されることはなく、主に兵站部隊など後方支援を行う部隊の火力向上を目的として開発されましたが、軍や法執行機関の特殊部隊でも使用されています。
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