SIG SAUERピストル一覧|P226・P320・P365など主要モデルの違いを解説

SIGピストルイメージ画像

この記事の要約

  • SIG SAUERには、P226などの金属フレームハンマー式と、P320・P365などのモジュラー式ポリマーピストルがあります。
  • P320とP365はFCUを中心にグリップやスライドを変更でき、現代のSIGを代表するシリーズです。

SIG SAUER(シグ・ザウエル)には、P210、P220、P226、P229、P320、P365など多数のピストルがあります。モデルごとの違いは、開発年代、サイズ、構造、用途で整理すると理解しやすくなります。

本記事では、SIG SAUERの主要モデルを一覧で比較し、それぞれの特徴、歴史、バリエーション、P320・P365のモジュラー構造、米軍M17/M18との関係まで解説します。

目次

SIG SAUERスペック一覧

各項目名をクリックすると表を並べ替えることができます。

SIG
P210 FULL 9mm 8 127 214 143 34 1046
P220 FULL .45ACP 8 112 196 140 38 862
P221 FULL .357SIG 7 112 196 140 34 880
P224 SC 9mm 12 89 170 114 38 822
P225 C 9mm 8 91 180 132 32 820
P226 FULL 9mm 15 112 196 140 38 964
P227 FULL .45ACP 10 112 196 140 38 907
P228 C 9mm 13 99 180 137 38 825
P229 C 9mm 15 99 180 137 38 907
P230 SC .380ACP 7 92 169 119 29 460
P230JP SC .32ACP 8 92 169 119 29 500
P232 SC .380ACP 7 92 168 119 31 530
P238 M .380ACP 6 69 140 112 28 431
P239 C 9mm 8 91 168 132 30 714
P245 C .45ACP 6 99 185 127 34 795
P250 FULL 9mm 17 119 203 140 36 850
P250SC SC 9mm 12 91 170 119 28 700
P290 M 9mm 6 74 140 100 23 465
P320 FULL 9mm 17 119 203 140 33 833
P320C C 9mm 15 99 183 135 33 737
P322 C .22LR 20 102 178 140 36 482
P365 M 9mm 10 78 147 109 26 500
P365-X M 9mm 17 94 168 132 28 610
P365XL M 9mm 12 94 168 122 28 588
P938 M 9mm 6 76 150 110 28 454
SP2009 FULL 9mm 15 99 188 145 34 715
SP2022 FULL 9mm 15 99 188 145 34 762
SP2340 FULL .40S&W 12 99 188 145 34 771
Mosquito C .22LR 10 101 183 134 37 697
  • サイズはmm、重量はgで統一しています。装弾数は標準的なマガジンを基準とし、重量は原則として弾薬を装填していない状態です。
SIG SAUER主要ピストル分類
表記おおまかな位置づけ
FULLフルサイズ。軍・警察用途や一般的な大型モデル
Cコンパクト。携行性と射撃性能のバランスを重視したモデル
SCサブコンパクト。携行性を重視した小型モデル
Mマイクロ。P365など、サブコンパクトよりさらに小型の携行向けモデル
  • これらは記事内でモデル同士を比較するための分類であり、すべてがSIG SAUER公式の統一されたカテゴリー名称ではありません。

SIG SAUER概要一覧

SIG SAUER 5分類
モデル特徴
P210スライドがフレーム内側を走る構造を採用した、高精度志向のシングルアクションピストル。
P220後のClassic Lineのベースとなった、金属フレーム・ハンマー式の代表的フルサイズモデル。
P224P229をさらに短縮し、携行性を高めた小型のClassic Lineモデル。
P225P220系を細身の9mm仕様にした、シングルカラムの中型モデル。
P226ダブルカラムマガジンを採用した、SIGを代表する金属フレーム・サービスピストル。
P227P220系の.45 ACPモデルをダブルカラム化し、装弾数を増やしたモデル。
P228P226を短縮・軽量化した9mmコンパクトモデルで、米軍ではM11として採用。
P229P228系を強化し、9mmのほか.40 S&Wや.357 SIGにも対応したコンパクトモデル。
P230シンプルブローバック方式を採用した、.380 ACPなどを使用する小型ピストル。
P230JPP230をベースに日本向けの仕様変更を施したモデル。
P232P230の操作性や外装を改良した後継モデル。
P238.380 ACPを使用する、1911系に近い操作方式の小型シングルアクションモデル。
P239シングルカラムマガジンを採用し、携行性を重視した金属フレームモデル。
P245P220を短縮した、.45 ACP口径のコンパクトモデル。
P250FCUによるモジュラー構造を早期に採用した、DAOハンマー式ポリマーピストル。
P290ポリマーフレームとDAO機構を採用した、小型9mm携行用モデル。
P320FCUを核にグリップやスライドを交換できる、ストライカー式モジュラーピストル。
P320 CompactP320を短縮し、携行性と射撃性能のバランスを取ったコンパクト仕様。
P32220発マガジンと内部ハンマー式機構を採用した、.22 LRトレーニングモデル。
P365小型ながら10発以上を装填可能にした、9mmマイクロコンパクトモデル。
P365-XLP365のスライドとグリップを延長し、射撃性能と装弾数を高めたモデル。
P365-XMACROP365系のモジュラー構造を利用し、17発装弾数と大型グリップを備えたモデル。
P938P238に近い小型シングルアクション構造を9mm口径へ拡大したモデル。
SP2340SIG Proシリーズ初期の、.40 S&W/.357 SIG対応ポリマーフレーム・ハンマー式モデル。
SP2009SP2340系の構造を9mm用にしたSIG Proシリーズのモデル。
SP2022SIG Proを発展させ、アクセサリーレールなどを備えたポリマーフレーム・ハンマー式モデル。
MosquitoP226風の外観を持つ、.22 LRトレーニング用ピストル。
M17(P320)P320をベースに米軍MHS向け仕様としたフルサイズの9mm制式拳銃。
M18(P320)M17をコンパクト化した、P320系の米軍制式拳銃。

SIG SAUER各モデル解説

SIGピストルの設計世代

P210

Photo by Askild Antonsen / CC BY 2.0 via Wikimedia Commons
SIG SAUER P210 Photo by Askild Antonsen / CC BY 2.0 via Wikimedia Commons

P210は、SIGを代表する高精度ピストルのひとつです。原型はスイス軍が1949年に「P49」として採用した軍用ピストルで、民間向けではP210の名称で知られるようになりました。全鋼製フレーム、シングルアクション方式、8発マガジンを基本とし、スライドが一般的な自動拳銃とは逆にフレームの内側を走る構造が特徴です。この構造と高い工作精度によってスライドとフレームの遊びを抑えやすく、P210は軍用ピストルでありながら精密射撃でも高く評価されました。スイス軍では1975年にP220をベースとするP75へ更新されましたが、P210自体は競技・民間市場で長く生産され、後にはドイツ製や米国製の新世代モデルも登場しています。軍用ピストルと標的射撃用ピストルの性格を併せ持つ、SIGの歴史を語るうえで欠かせないモデルです。

試作モデルについては後述します。

P220

SIG P220画像
SIG SAUER P220 エリート 画像出典:sigsauer.com

P220は1975年に登場し、スイス軍が「Pistole 75(P75)」として採用した大型ピストルです。高価なP210に代わり、量産性を高めながら軍用ピストルとして必要な精度と信頼性を確保することを目的に開発されました。初期型はアルミ合金フレームとプレス加工された鋼製スライドを組み合わせ、ダブルアクション/シングルアクション方式とデコッキングレバーを採用しています。手動安全装置を操作せず、初弾を重いダブルアクションで発射できる操作体系は、後のP226やP228、P229などにも受け継がれました。歴史的には9mm、.38 Super、.45 ACPなど複数の弾薬に対応しましたが、米国では特にシングルカラムマガジン(単列弾倉)を使用する.45 ACPピストルとして知られています。日本ではP220をベースとする9mm拳銃がライセンス生産され、自衛隊で使用されています。P220はSIGのクラシックラインを確立した重要なモデルです。

自衛隊の9mm拳銃とは
Photo by Crescent moon / CC BY 3.0 via Wikimedia Commons
9mm拳銃 Photo by Crescent moon / CC BY 3.0 via Wikimedia Commons

自衛隊の9mm拳銃は、米軍から供与された11.4mm拳銃(M1911)の後継として1982年に制式採用された自動式拳銃です。SIG SAUER P220を基に、新中央工業(後のミネベアミツミ)がライセンス生産しており、海外では「Minebea P9」とも呼ばれます。新型拳銃の選定ではニューナンブM57A1やFNブローニング・ハイパワーなどと比較試験が行われ、P220が採用されました。使用弾薬は9×19mmパラベラム弾で、陸・海・空の各自衛隊で幹部自衛官や警務官、車両乗員などが使用しています。陸上自衛隊では後継としてHK SFP9が選定され、2020年に新型の「9mm拳銃SFP9」が公開されました。

P224

SIG P224イラスト
SIG SAUER P224

P224は、P226やP229などと共通する操作体系を非常に小さなボディへ収めたサブコンパクトピストルです。一般的な薄型小型ピストルとは異なり、グリップを短くしながらダブルカラムマガジンを維持しており、9mm仕様では12発を装填できます。.40 S&Wや.357 SIG仕様も用意されました。基本構造はショートリコイル式のハンマー式ピストルで、ダブルアクション/シングルアクション仕様などが存在します。最大の特徴は、単に携帯性だけを優先したポケットピストルではなく、P229などのサービスピストルに近い操作感と装弾数を、小型の予備ピストルとして実現しようとした点です。そのため現代の薄型マイクロコンパクトと比べると幅と重量がありますが、同時期のSIG製ピストルを使用する警察官などにとっては操作方法を統一できる利点がありました。

P225

Photo by Viking07 / CC0 via Wikimedia Commons
SIG SAUER P225 Photo by Viking07 / CC0 via Wikimedia Commons

P225は、P220を小型化して9×19mm弾に最適化したコンパクトなサービスピストルです。1970年代、西ドイツ警察が新しい制式ピストルの要件を定めたことを受けて開発され、警察仕様は「P6」の名称で広く採用されました。8発のシングルカラムマガジンを使用するためP226やP228よりグリップが細く、携帯性と握りやすさに優れています。作動方式はショートリコイル式で、ハンマーを使用するダブルアクション/シングルアクション方式とデコッキングレバーを備えます。外部の手動安全装置に頼らず、薬室へ装填した状態から初弾をダブルアクションで発射するというSIG独自の操作体系も確立されています。後年にはP225-A1が登場しましたが、これはオリジナルP225をベースに現代化した派生仕様です。P225は、警察用ピストルと隠匿携行用ピストルの中間に位置するSIG初期の代表的コンパクトモデルです。

P226

SIG P226画像
SIG SAUER P226 Mk.25 画像出典:sigsauer.com

P226は1980年代に米軍の新制式ピストル選定試験「XM9」へ参加するため、P220をベースとして開発された大型9mmピストルです。P220との大きな違いはダブルカラムマガジン(複列弾倉)の採用で、標準的な9mm仕様では15発を装填できます。選定試験では最終的にベレッタ92系がM9として採用されましたが、P226の信頼性と性能は高く評価され、米海軍特殊部隊SEALでは1989年に採用され、後にMk25として知られる仕様へ発展しました。基本型はアルミ合金フレームを使用するハンマー式で、ダブルアクション/シングルアクションとデコッキングレバーを組み合わせています。長い生産期間のなかでスライドは初期のプレス加工品から削り出しステンレス製へ移行し、多数の派生型も誕生しました。P226は軍・警察用サービスピストルとしてSIGのブランドを世界的に定着させた中心的モデルです。

P227

Photo by Digitallymade / CC BY-SA 4.0 via Wikimedia Commons
SIG SAUER P227 Photo by Digitallymade / CC BY-SA 4.0 via Wikimedia Commons

P227は、P220の.45 ACP弾とP226系のダブルカラムマガジンという特徴を組み合わせる形で2013年に登場した大型ピストルです。P220の標準モデルが8発のシングルカラムマガジンを使用するのに対し、P227はグリップ内部を複列化して標準10発、仕様によっては延長型14連マガジンを使用できました。基本的な操作体系はP220やP226と共通し、アルミ合金フレーム、ステンレス製スライド、ハンマー式のダブルアクション/シングルアクション方式、デコッキングレバーを採用しています。.45 ACPの装弾数を増やしながら、既存のSIG製サービスピストルに近い握り心地を維持することが設計上の大きな狙いでした。一方、市場ではポリマーフレームとハンマー式を採用するP320系が急速に成長し、P227は比較的短期間で生産を終了しています。SIGの金属製クラシックラインにおけるハイキャパシティ.45 ACPモデルという独特の位置を占めるピストルです。

P228

Photo by Rama / CC BY-SA 2.0 fr via Wikimedia Commons
SIG SAUER P228 Photo by Rama / CC BY-SA 2.0 fr via Wikimedia Commons

P228はP226を短縮したコンパクト9mmピストルとして1980年代後半に登場しました。P226より短いスライドと銃身、低いグリップを採用しながら、ダブルカラムマガジンによって13発を装填できます。初期のP226と同様にアルミ合金フレームとプレス加工された鋼製スライドを使用し、ダブルアクション/シングルアクション方式とデコッキングレバーを備えます。大型サービスピストルと同等の操作性を維持しつつ、私服勤務や航空要員などが携行しやすいサイズにまとめられた点が評価され、米軍では「M11」の名称で採用されました。捜査機関などでも使用され、SIGを代表するコンパクトピストルのひとつとなっています。その後、削り出しステンレス製スライドを使用してより強力な弾薬にも対応するP229が普及し、民間市場ではP228の役割を引き継ぎました。

P229

Photo by JE at English Wikipedia / CC BY-SA 3.0 via Wikimedia Commons
SIG SAUER P229 Photo by JE at English Wikipedia / CC BY-SA 3.0 via Wikimedia Commons

P229はP228を発展させ、.40 S&Wや.357 SIGといった高圧の弾薬にも対応できるよう設計されたコンパクトなサービスピストルです。P228がプレス加工スライドを使用していたのに対し、P229では削り出しのステンレス製スライドを採用しました。これによって重量と耐久性を確保し、強力な弾薬を使用した際のスライド速度にも対応しています。後に9mm仕様も加わり、P226より一回り小さいSIGの代表的クラシックモデルとして位置付けられました。基本構造はアルミ合金フレームを使用するハンマー式で、ダブルアクション/シングルアクションなど複数の撃発方式が用意されてきました。米国を中心に警察・連邦機関で広く使用された実績もあり、携帯性とサービスピストルとしての耐久性を両立したモデルです。

P230

Photo by BlaqueandBlue at English Wikipedia / Public domain via Wikimedia Commons
SIG SAUER P230 Photo by BlaqueandBlue at English Wikipedia / Public domain via Wikimedia Commons

P230は1970年代後半に登場した小型の警察・護身用ピストルです。P220など大型モデルとは異なり、銃身を固定したシンプルなブローバック方式を採用しており、.32 ACP、.380 ACP、9×18mm Policeなど比較的低出力の弾薬に対応しました。細身のフレームとシングルカラムマガジンによって携帯性を高めており、外観や用途はワルサーPP/PPK系に近い一方、SIGらしいデコッキングレバーとダブルアクション/シングルアクション方式を採用しています。米国でも護身用・予備バックアップピストルとして知られ、1990年代には改良型P232へ交代しました。日本向けにはP230JPと呼ばれる仕様が存在しますが、これはP230をベースにした派生型です。

日本警察仕様のP230JPとは
Photo by k_shirai_95 / CC BY-SA 4.0 via Wikimedia Commons
SIG SAUER P230JP
Photo by k_shirai_95 / CC BY-SA 4.0 via Wikimedia Commons

P230JPは、SIG SAUER P230を基に日本警察向けの仕様変更を施したコンパクトピストルです。1990年代後半から警察で使用され、警視庁警備部警護課、皇宮警察、機動捜査隊、銃器対策部隊などへの配備が確認されています。通常のP230が.380 ACP弾などを使用するのに対し、日本仕様は.32 ACP弾を使用し、8発入りのシングルカラムマガジンを採用しています。ストレートブローバック方式とダブルアクション機構を備え、薄型で突起の少ない形状が特徴です。また、日本警察の要求に合わせ、通常型にはないマニュアルセーフティと拳銃吊りひもを取り付けるランヤードリングが追加されました。自衛隊の9mm拳銃とは異なり国内でライセンス生産されたものではなく、SIG SAUERが製造した日本警察向けの特別仕様です。なお「P230JP」は広く定着した呼称ですが、SIG SAUERの正式な型式名だったかは明確ではありません。

P232

Photo by Niedźwiadek78 / CC BY-SA 3.0 via Wikimedia Commons
SIG SAUER P232 Photo by Niedźwiadek78 / CC BY-SA 3.0 via Wikimedia Commons

P232は1996年にP230の後継として登場した小型ピストルです。基本構造はP230をほぼそのまま継承しており、固定銃身を使用するブローバック方式、ハンマー式のダブルアクション/シングルアクション、デコッキングレバー、シングルカラムマガジンという構成です。主力となった.380 ACP仕様では7発弾倉を使用し、コンパクトな外形にまとめられています。P230からはスライドやグリップ周辺などに細かな改良が施されましたが、まったく新しい設計へ移行したモデルではなく、P230を成熟させた後期型と考えると分かりやすいでしょう。金属製フレームと細身の外形による伝統的な小型ピストルで、ポリマーフレームの軽量な.380 ACPピストルが普及する以前は高級な携行用ピストルとして知られていました。P230とP232はいずれも現在では旧世代モデルに位置付けられます。

P238

Photo by DGaw / CC BY-SA 3.0 via Wikimedia Commons
SIG SAUER P238 Photo by DGaw / CC BY-SA 3.0 via Wikimedia Commons

P238は2009年に発表された.380 ACP仕様のマイクロコンパクトピストルです。SIGのP220系とは機構が大きく異なり、ハンマーを使用するシングルアクション専用方式とフレーム側のマニュアルセーフティを備えます。その操作体系や外観はM1911やコルト・マスタング系に近く、一般的なSIGのダブルアクション/シングルアクション式とは異なります。アルミ合金フレームとステンレス製スライドを組み合わせた金属製ピストルでありながら、全長約140mm、重量約430gという小ささにまとめられ、標準マガジン装弾数は6発です。当時急速に拡大していた小型.380 ACP護身ピストル市場に対し、軽量なポリマー製ピストルとは異なる方向から参入したモデルといえます。その後、この基本設計をわずかに大型化して9×19mm弾へ対応したP938も登場しました。

P239

SIG P239ピストル画像
SIG SAUER P239 Tratnik at Slovenian Wikipedia, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons

P239は1996年から2018年まで生産された、隠匿携行を重視した薄型のコンパクトピストルです。P228やP229がダブルカラムマガジンを使用するのに対し、P239はシングルカラムマガジンを採用し、9mm仕様では8発、.40 S&Wおよび.357 SIG仕様では7発を標準としました。このため装弾数ではP229に劣るものの、グリップが細く、衣服の下へ携行しやすいことが大きな特徴です。基本構造はSIGのクラシックラインに準じたハンマー式ショートリコイル方式で、ダブルアクション/シングルアクションのほか、ダブルアクション専用仕様なども販売されました。米国では民間の隠匿携行用途だけでなく、連邦法執行機関でも採用実績があります。その後は、より小型でありながら装弾数の多いポリマーフレームピストルが普及し、P239は生産を終了しました。

P245

SIG P245イメージ画像
SIG SAUER P245

P245は1998年に登場した.45 ACP仕様のコンパクトピストルで、簡単にいえばP220を短縮したモデルです。P220と同じシングルカラムマガジン方式を採用しながらグリップとスライドを短くし、標準装弾数を6発として携行性を高めています。アルミ合金フレームとプレス加工された鋼製スライドを組み合わせ、ハンマー式のダブルアクション/シングルアクション方式とデコッキングレバーを装備するなど、基本的な操作方法は当時のP220と共通しています。主に米国市場を念頭に、.45 ACP弾を使用できる隠匿携行用ピストルや警察官の予備ピストルとして設計されました。現代の小型ポリマーピストルと比べれば重量がありますが、その分、大口径弾を使用した際の反動軽減により扱いやすさを確保しています。後に同様の役割を持つP220 Compactなどが登場し、P245は生産を終えました。

P250

Photo by http://www.rijksoverheid.nl / CC0 via Wikimedia Commons
SIG SAUER P250 Photo by http://www.rijksoverheid.nl / CC0 via Wikimedia Commons
Photo by Tobyc75 / CC BY-SA 3.0 via Wikimedia Commons
SIG SAUER P250 Photo by Tobyc75 / CC BY-SA 3.0 via Wikimedia Commons

P250は、後のP320につながるSIGのモジュラーピストル思想を初めて本格的に実用化したモデルです。北米市場には2007年に導入されました。最大の特徴は、撃発機構を収めた金属製のファイア・コントロール・ユニット(Fire Control Unit、FCU)をポリマー製グリップから取り外せる構造です。このFCUが銃の核となるため、グリップ、スライド、銃身などを交換してサイズや口径を変更できました。一方、P250は現代のP320とは異なりハンマー式で、長いストロークを持つダブルアクション専用トリガーを採用しています。この撃発方式は市場で大きな支持を得られませんでしたが、交換可能なグリップと独立したFCUという考え方はP320へほぼそのまま継承されました。P250自体の生産は終了しましたが、SIGの現代型ピストル設計へ移行する重要な橋渡しとなったモデルです。

P290

Photo by Digitallymade / CC BY 4.0 via Wikimedia Commons
SIG SAUER P290RS Photo by Digitallymade / CC BY 4.0 via Wikimedia Commons

P290は2011年に登場した9mmの小型携行用ピストルで、P250のようなモジュラー構造を持たない独立したマイクロコンパクト設計です。ポリマー製フレームとステンレス製スライドを使用し、全長約140mm、幅約23mmという小さなボディに6発の9mm弾を装填できます。撃発機構はストライカー式ではなく、小型の内蔵ハンマーを使用するダブルアクション専用方式です。2012年には改良型P290RSへ移行し、不発時にスライドを操作せず再度トリガーを引ける「リストライク」機能が追加されました。8発の延長マガジンも用意されています。小型9mmピストルとして携帯性を追求したモデルでしたが、後に同程度の大きさで10発以上を装填できるP365が登場したことで、その役割を譲ることになりました。P290はP365以前のSIG製薄型9mmピストルを代表する存在です。

P320

SIG P320画像
SIG SAUER P320 画像出典:Wikipedia

P320はSIGが2011年から開発を進め、2014年に発表した同社初の本格的なストライカー式サービスピストルです。P250で採用されたモジュラー構造を発展させ、撃発機構を収めたFCUを独立した中核部品としています。グリップモジュールやスライド、銃身などを交換することで、同一の基本システムからフルサイズ、キャリー、コンパクトなど多様な構成を作れることが最大の特徴です。トリガー操作はP250の長いダブルアクションではなく、ストライカー式によって毎回ほぼ一定となりました。この設計は米軍のモジュラー・ハンドガン・システム(Modular Handgun System、MHS)選定にも参加し、2017年にP320をベースとするM17とM18が採用されました。P320 Compactは独立した基本モデルではなく、このP320プラットフォームのサイズ違いとして位置付けられます。

P322

シグ ザウエル P322画像
SIG SAUER P322 画像出典:sigsauer.com

P322は2022年に発表された.22 LR仕様のピストルで、SIGが米国ニューハンプシャー州で設計・製造する比較的新しいリムファイアモデルです。外見は現代的なポリマーフレームピストルですが、P320やP365のようなストライカー式ではなく、内部にハンマーを収めたシングルアクション方式を採用しています。最大の特徴は標準20発という装弾数で、延長型では25連マガジンも使用できます。左右どちらからでも操作しやすい安全装置やスライドストップを備え、平型と湾曲型のトリガーシューを交換できるほか、光学照準器を搭載できる構造も標準装備しています。また、銃身先端には付属アダプターを介して対応機器を装着できる設計です。.22 LR弾の低い射撃コストと反動の小ささを生かし、練習、競技、娯楽射撃を重視したモデルとして位置付けられています。

P365

SIG P365画像
SIG SAUER P365 Digitallymade, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons

P365は2018年に登場し、小型ピストル市場に大きな影響を与えた9mmマイクロコンパクトです。それ以前の同程度の薄型9mmピストルでは6~8発程度のシングルカラムマガジンが一般的でしたが、P365は専用設計の変則的なダブルカラムマガジンによって、非常に小さなボディで標準10発を実現しました。ストライカー式を採用し、短い銃身とポリマー製グリップを組み合わせることで、日常的な隠匿携行を前提とした軽量・小型設計となっています。この「小型なのに10発以上」という構成が成功したことで、他社からも同様の高装弾数マイクロコンパクトが相次いで登場しました。その後はP365-X、P365-XL、P365-XMACROなどへ拡大し、現在はFCUを中心に構成を変更できる大きな製品群となっています。

P938

Photo by Dmoore5556 / CC BY-SA 4.0 via Wikimedia Commons
SIG SAUER P938 Photo by Dmoore5556 / CC BY-SA 4.0 via Wikimedia Commons

P938はP238をわずかに大型化し、より強力な9×19mm弾へ対応させたマイクロコンパクトピストルです。2011年に発表され、全長約150mm、重量約450gという非常に小さな金属製ボディに9mm弾を6発装填します。構造はP238と同様にハンマー式のシングルアクション専用で、フレームにはマニュアルセーフティを備えています。そのため、P220やP226のように薬室装填後にハンマーを落としてダブルアクションで初弾を発射するタイプとは操作方法が大きく異なります。アルミ合金フレームとステンレス製スライドによる薄型設計で、延長型7連マガジンも使用できます。P365登場以前のSIGにおいて、9mm弾を使用する最小クラスの携行用ピストルという役割を担いました。P365より装弾数は少ないものの、シングルアクション式のキレの良いトリガー感覚を好む層に向けた独自性のあるモデルです。

SP2340

Photo by Quickload at English Wikipedia / CC BY-SA 3.0 via Wikimedia Commons
SIG SAUER SP2340 Photo by Quickload at English Wikipedia / CC BY-SA 3.0 via Wikimedia Commons

SP2340は1998年に登場したSIG Proシリーズ最初のモデルであり、SIGにとって初の本格的なポリマーフレーム製サービスピストルです。名称の「2340」が示すように、当初は.40 S&Wと.357 SIGという当時需要が伸びていた法執行機関向け弾薬への対応を重視していました。ポリマー製フレームを採用しながら、撃発機構はP226系と同様のハンマー式ダブルアクション/シングルアクションで、デコッキングレバーも備えています。.40 S&W仕様では標準12発のダブルカラムマガジンを使用します。フレーム前部には初期SIG Pro独自のアクセサリーレールを装備していました。このSP2340をベースとして9mm仕様のSP2009が追加され、さらに改良を経てSP2022へ発展しています。P250やP320より前にSIGがポリマーフレーム市場へ参入したことを示す、同社の設計史上重要なモデルです。

SP2009

Photo by Rama / CC BY-SA 2.0 fr via Wikimedia Commons
SIG SAUER SP2009 Photo by Rama / CC BY-SA 2.0 fr via Wikimedia Commons

SP2009は、SIG初のポリマーフレームピストルシリーズ「SIG Pro」を構成する9mmモデルです。SIG Proは1998年のSP2340から始まり、その翌年に9×19mm仕様としてSP2009が追加されました。P226など従来の金属製フレームモデルとは異なり、ポリマー製フレームを使用して軽量化と製造コストの低減を図っています。一方、作動機構そのものはSIGらしいハンマー式で、ダブルアクション/シングルアクションとデコッキングレバーを組み合わせています。標準的な9mm仕様では15発のダブルカラムマガジンを使用します。初期SIG Proではフレーム前部にSIG独自規格のアクセサリーレールが採用されていました。後に一般的なアクセサリーレールなどを備える改良型SP2022が登場したため、SP2009は第一世代SIG Proを代表するモデルとして一線を退きました。

SP2022

SIS SP2022画像
SIG SAUER SP2022 Augustas Didžgalvis, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons

SP2022は第一世代SIG ProであるSP2340/SP2009を改良した、ポリマーフレームのサービスピストルです。基本構造はハンマー式のダブルアクション/シングルアクションで、デコッキングレバーを備え、9mmのほか.40 S&Wや.357 SIG仕様も存在しました。大きな変更点のひとつが、初期型の独自アクセサリーレールを一般的な規格へ変更したことです。フランスの国家警察、国家憲兵隊、税関などが新しい制式ピストルとして採用したことで特に知られています。「2022」という名称は、採用時に20年(2002年~2022年)使用する計画が存在したことに由来します。金属製P226系より低価格・軽量でありながら、従来のSIG製ピストルと近いハンマー式の操作体系を維持している点が特徴です。P320登場後も長期間販売され、SIG Proシリーズのなかで最も成功したモデルとなりました。

Mosquito

Photo by Rama / CC BY-SA 2.0 fr via Wikimedia Commons
SIG Sauer Mosquito Photo by Rama / CC BY-SA 2.0 fr via Wikimedia Commons

Mosquito(モスキート)は.22 LR弾を使用する練習・娯楽射撃向けのピストルとして2000年代に登場したモデルです。外観や操作部はP226を意識して設計されていますが、サイズはP226より小さく、内部構造も異なります。.22 LR弾に適した固定銃身のブローバック方式を採用し、10発のシングルカラムマガジン、ハンマー式のダブルアクション/シングルアクション、マニュアルセーフティを備えています。フレームはポリマー製で、スライドには軽量合金が使用されました。SIGのブランドで販売されていましたが、開発・製造にはドイツのジャーマン・スポーツ・ガンズ(German Sport Guns)が関わっています。SIG版Mosquitoの生産終了後も、同社は基本設計を受け継いだGSG FireFlyを販売しました。P322とは異なり、P226風の操作感を低コストな.22 LR弾で楽しむことを重視した旧世代の練習用モデルです。

SIG独自のバリエーション

SIG SAUERでは、同じ基本モデルから多数の派生仕様が展開されています。そのため、「P226」「P320」「P365」といったモデル名だけでは、判断できないことがあります。

代表的な派生仕様には、Xシリーズ(X-Series)、リージョン(LEGION)、エリート(Elite)、エクイノックス(Equinox)、SAS(シグ・アンチ・スナッグ)などがあります。ただし、これらは必ずしも統一された設計規格を意味するものではありません。同じ名称でも、ベースとなるモデルによってフレーム構造、トリガー、サイト、グリップ、スライドなどの仕様が異なります。

名称立ち位置特徴代表例
X-Series操作性・射撃性能を重視した高性能仕様ストレート形状のトリガー、専用グリップ、マグウェル、オプティックレディスライドなどをモデルごとに採用P320-XFIVE LEGION、P320-XCOMPACT
LEGIONプレミアムラインベースモデルごとに上位装備や専用仕様を採用。特定の作動方式や構造を示す名称ではないP226 LEGION、P320-XFIVE LEGION、P365-AXG LEGION
EliteClassic Lineを中心とした高機能仕様ビーバーテイルフレーム、SRT、専用グリップなどをモデルに応じて採用P226 Elite、P229 Elite
Equinox外装仕上げや専用装備を重視した特別仕様黒を基調としつつ、スライド側面などに金属色を残した特徴的な外観P226 Equinox、P229 Equinox
SASコンシールドキャリー向け仕様突起を抑えて衣服などへの引っ掛かりを軽減。一部モデルでは埋め込み式サイトを採用P365 SAS
  • X-Seriesは、主として操作性や射撃時のコントロール性を高めた仕様です。モデルによって専用トリガーやグリップ、マグウェル、オプティックレディ仕様などが採用されますが、「X」が付くモデルすべてに同じ装備が備わるわけではありません。
  • LEGIONはSIG SAUERのプレミアムラインで、P220、P226、P229、P320、P365など複数のシリーズに設定されています。ただし、LEGIONという名称自体が特定の構造や作動方式を示しているわけではありません。たとえば、P226 LEGION、P320-XFIVE LEGION、P365-AXG LEGIONでは、それぞれベースとなる設計が大きく異なります。
  • Eliteは、P220、P226、P229などのClassic Lineを中心に見られる高機能仕様です。モデルによってビーバーテイルフレーム、SRT(ショート・リセット・トリガー)、専用グリップなどが組み合わされ、標準仕様より操作性を高めています。
  • Equinoxは、機械的な基本設計を大きく変更するシリーズというより、外装仕上げや専用装備を特徴とする特別仕様です。黒を基調としながら、スライド側面などに金属色を残した独特の外観が代表的な特徴です。
  • SASは「SIG Anti-Snag」を意味し、携行時に衣服などへ引っ掛かりにくくすることを重視した仕様です。代表的なP365 SASでは、通常の前後サイトとは異なる埋め込み式サイトを採用し、テイクダウンレバーやスライドストップなどの突出も抑えられています。

このため、SIG SAUERのピストルを比較する際は、基本モデル名だけでなく、「P226 LEGION」「P320-XCOMPACT」「P365 SAS」のように派生仕様まで含めて確認する必要があります。

モジュラー・システムとは?

FCUが銃の核になる

Photo by Digitallymade / CC BY-SA 4.0 via Wikimedia Commons
SIG SAUER P320 FCU Photo by Digitallymade / CC BY-SA 4.0 via Wikimedia Commons

FCUはファイア・コントロール・ユニット(Fire Control Unit)の略で、トリガー、シア、スライドキャッチなどの主要部品を収めた内部ユニットです。

SIG SAUERのP320とP365では、このFCUがシリアル番号を持つ構成部品となっています。

従来の多くのポリマーフレームピストルでは、外側のフレーム自体が銃の核でした。P320やP365ではFCUを取り外し可能にすることで、外側のグリップモジュールを交換できる構造になっています。

グリップだけでなくスライドも変更できる

FCUを中心に、

  • グリップモジュール
  • スライド
  • バレル
  • リコイルスプリング
  • サイト
  • 対応マガジン

などを組み合わせることで、用途に適した構成を作ることができます。

SIG SAUERは、P320とP365向けにカスタム・ワークス・スタジオ(Custom Works Studio)を提供しています。これはFCUを起点として、グリップモジュール、スライド、バレル、光学サイトなどを画面上で選択し、用途や好みに合わせた構成を作成できるオンラインシステムです。モジュラー構造を利用して一つの基本機構から多様な仕様を構成できることを、メーカー自身が製品サービスとして展開した例といえます。

ただし、すべての部品を無条件に組み合わせられるわけではありません。スライド長、グリップサイズ、マガジン、口径などには互換条件があります。

P250からP320、P365へ

SIGのモジュラー化はP320から突然始まったものではありません。

ハンマー式のP250でFCU方式を採用し、その考え方をストライカー式のP320へ発展させました。その後P365にも独立したFCUが採用され、現在ではP320とP365の双方がモジュラー式プラットフォームとして展開されています。

これが、現代のSIGと従来のP226やP229を分ける大きな違いです。

米軍採用モデルM17とM18

Photo by US Army / Public domain via Wikimedia Commons
SIG SAUER M17 P320 Photo by US Army / Public domain via Wikimedia Commons

M17とM18は、SIG SAUER P320を基に米軍のモジュラー・ハンドガン・システム(Modular Handgun System:MHS)計画向けに開発された9mmピストルです。2017年1月、SIG SAUERが提出したP320の改良型が選定され、フルサイズ仕様がM17、コンパクト仕様がM18として制式化されました。

M17は銃身長4.7インチ、全長8.05インチ、M18は銃身長3.9インチ、全長7.25インチです。どちらも17発の標準マガジンと21発の延長マガジンに対応します。

M17/M18は単にP320の外装を変更したモデルではなく、米軍の要求に合わせて多数の改良が施されています。左右から操作できるマニュアルセーフティ、装填状態を確認するインジケーター、低照度でも視認できるトリチウムサイト、光学サイト搭載用のスライド加工、アクセサリーレールなどを備えます。また、内部への異物侵入を抑える改良や、分解時に小部品を保持しやすくする変更、耐食性を高めるPVD表面処理も採用されています。

M17/M18はベレッタM9などの後継として陸軍、海軍、海兵隊、空軍、宇宙軍で採用されました。特にM18は小型で携行性に優れることから、海軍や海兵隊でも広く使用されています。民間市場向けには軍用仕様を基にしたP320-M17とP320-M18も販売されています。

SIGの光学サイト対応(Optic Ready)仕様

Photo by Picanox / CC BY-SA 4.0 via Wikimedia Commons
SIG SAUER P320 Photo by Picanox / CC BY-SA 4.0 via Wikimedia Commons

近年のSIGピストルでは、スライドへ小型ドットサイトを直接装着する「Optic Ready」仕様が広く採用されています。

グロックではMOSという名称が知られていますが、SIGではすべてを一つの「MOS相当規格」で統一しているわけではありません。

ROMEOシリーズとの組み合わせ

SIG側の分類主な位置付け対応関係
COMPACT / Shield RMSc小型ピストル用P365系、ROMEO-X COMPACTなど
PRODPP系フットプリントオプティックレディのP320、P226、P229、ROMEO-X PROなど
SIG-LOC MHSM17/M18系専用ROMEO-M17
SIG-LOC COMPACT新しいSIG-LOC小型規格対応P365スライド、ROMEO-X SIG-LOC COMPACT
SIG-LOC PRO新しいSIG-LOC大型規格SIG-LOC対応大型スライド
ROMEO1旧SIG独自規格旧ROMEO1対応スライド
ROMEO3MAX / XL競技系ROMEO3MAX/XL対応カット

SIG SAUERは自社でROMEOシリーズのピストル用ドットサイトを展開していますが、マウント規格はすべて共通ではありません。P365系ではCOMPACT(Shield RMSc)系、P320・P226・P229のオプティックレディモデルではPRO(DeltaPoint Pro)系が主に使用される一方、旧ROMEO1カットやSIG-LOCなど異なる規格も存在します。さらに、同じシリーズでも製造時期やスライド仕様によって対応規格が異なる場合があります。SIG SAUERは対応関係を確認するため「RX Footprint Guide(Optics Compatibility Guide)」を公開しており、光学照準器を選ぶ際はモデル名だけでなく、実際のスライドのフットプリントを確認する必要があります。

特にROMEO-M17は、米軍M17/M18用に開発されたSIG-LOC MHSインターフェースを使用しており、標準的な市販P320スライドには適合しません。一方、SIG-LOC自体は現在では民間向けにも拡張され、SIG-LOC PROやSIG-LOC COMPACTなどの対応製品が展開されています。

SIG SAUERの歴史

SIG SAUERの歴史イメージ図

SIG SAUERの歴史は、銃器メーカーではなく鉄道車両メーカーから始まりました。その後、スイスで銃器製造へ進出し、ドイツのJ.P. Sauer & Sohnとの協力、米国市場への進出を経て、現在のSIG SAUERへと発展しています。

鉄道車両メーカーとして創業

SIGはスイスで鉄道車両メーカーとして創業しました。その後、スイス政府向けライフルの製造契約をきっかけに銃器事業へ進出し、第二次世界大戦後にはP210などの高精度ピストルを製造しました。

Sauerとの協力とClassic Lineの発展

ドイツのJ.P. Sauer & Sohnとの協力からP220が登場し、その後P225、P226、P228、P229などへ発展しました。これらは金属フレームとハンマー式機構を中心とするClassic Lineを形成し、P226はSIG SAUERを代表するサービスピストルとなりました。

アメリカ市場へ進出

米国でSIGARMSが設立され、SIG製品の輸入・販売が本格化しました。その後は米国内で開発・製造能力を拡大し、2007年にはSIG SAUERへ社名を変更しました。

ポリマーフレームを採用

1990年代以降はSIG Proでポリマーフレームを採用し、従来の金属フレーム・ハンマー式とは異なる設計へ展開しました。

P250でモジュラー構造を導入

P250では、取り外し可能なFCUを中心とするモジュラー構造を採用しました。この設計思想は後のP320へ継承されます。

P320が登場

P320ではFCUを中核とするモジュラー構造にストライカー式撃発機構を組み合わせ、グリップモジュールやスライドなどを変更できる現代的なサービスピストルへ発展しました。

P365でマイクロコンパクト市場へ拡大

P365が登場し、小型ながら高い装弾数を持つマイクロコンパクトとして大きな製品群へ発展しました。現在もClassic LineとP320、P365などのモジュラー系が並行して展開されています。

年代主な出来事代表的なモデル・動向
1853年スイスで鉄道車両メーカーとして創業鉄道車両を製造
1860年代スイス政府向けライフルの製造を開始銃器事業へ進出
1940年代スイス軍向け高精度ピストルを開発P210
1970年代ドイツのJ.P. Sauer & Sohnとの協力が本格化P220
1970~1980年代Classic Lineを拡大P225、P226
1980年代米国でSIGARMSを設立し販売網を拡大P226、P228
1990年代米国での事業と製造体制を拡大P229、SIG Pro
2000年代ポリマーフレームとモジュラー設計を採用P250
2007年SIGARMSがSIG SAUERへ社名変更米国事業をSIG SAUERブランドへ統一
2010年代ストライカー式モジュラーピストルを展開P320
2017年P320系が米陸軍のM17・M18に採用M17、M18
2018年小型・大容量のマイクロコンパクトを投入P365
2020年代金属フレーム系とモジュラー系を並行展開P210、P220、P226、P229、P320、P365など

P210へ至る試作モデル「SIG 44/16」

Photo by Hmaag / CC BY-SA 3.0 via Wikimedia Commons
SIG 44/16 プロトタイプ Photo by Hmaag / CC BY-SA 3.0 via Wikimedia Commons

SIG 44/16は、スイスのSIGが1940年代に開発した9mmパラベラム弾仕様の試作セミオートピストルで、後のSIG P210につながる重要なモデルです。SIGは1937年、フランスのSACMからシャルル・ペッターが設計したモデル1935Aの機構に関する権利を取得し、スイス軍が使用していたルガー06/29に代わる新型ピストルの開発を進めました。

1942~1944年には多数の試作型が製作され、そのなかには44/8、44/15、44/16などが存在しました。名称末尾の数字はマガジンの装弾数を表しており、44/16は16発入りのダブルカラムマガジンを採用していました。

44/16は全長約215mm、銃身長120mmのフルサイズピストルで、9mmパラベラム弾を使用します。最大の特徴は16発という装弾数で、8発のシングルカラムマガジンを使用する44/8に対し、グリップ内部を大きく広げてダブルカラムマガジンを収めていました。確認されている試作銃には複数の仕様があり、開発の過程でスライドストップやセーフティ、フレームのガイド部分などにも改良が加えられています。

1947年には、44/16と44/8がスウェーデンで比較試験されています。16発を装填できる44/16は装弾数の面では優れていましたが、ダブルカラム化によって太くなったグリップが敬遠され、スウェーデン側では細身の44/8が好まれたとされています。

SIGの開発は最終的にシングルカラム8発仕様へ収束し、改良型のSP47/8がスイス軍のピストル49として採用されました。この系統が、後にP210の名称で知られることになります。

そのためSIG 44/16は量産や制式採用には至りませんでしたが、1940年代半ばの時点で「9mm弾を16発装填するハイキャパシティ・サービスピストル」という構想を実現していた点で興味深いモデルです。後のP210が高精度な8発シングルカラムピストルとして完成したのに対し、44/16はSIGが開発段階で携行性や握りやすさだけでなく、装弾数を大幅に増やす方向も検討していたことを示す試作モデルといえます。

よくある質問

SIG P226とP320の違いは?

P226は金属フレームとハンマー式機構を採用したSIG SAUERの代表的なサービスピストルです。一方、P320はポリマーフレームとストライカー式機構を採用し、FCUを中心にグリップやスライドなどを交換できるモジュラー構造を特徴とします。P226が従来型SIGの代表モデルであるのに対し、P320は現代のSIGを代表するモデルです。

SIG P365とはどんな拳銃?

P365は、SIG SAUERが2018年に発表した9mmマイクロコンパクトピストルです。小型で携行しやすいサイズながら10発以上の装弾数を確保したことが特徴で、その後P365-XLやP365-XMACROなど多数の派生モデルが登場しました。現在はFCUを中心にグリップやスライドなどを変更できるモジュラー式プラットフォームとして展開されています。

P320とM17は同じ銃?

M17はP320をベースに開発された米軍向けの軍用モデルですが、一般的な市販P320と完全に同じではありません。米軍のModular Handgun System計画の要求に合わせた仕様が採用されており、フルサイズモデルがM17、コンパクトモデルがM18です。SIG SAUERは民間向けにもP320-M17やP320-M18を販売していますが、これらも実際に米軍へ納入されるM17/M18とは区別されています。

SIGのFCUとは?

FCUは「Fire Control Unit」の略で、トリガーやシア、スライドキャッチなどの主要な作動部品をまとめた内部ユニットです。P320やP365ではFCUをグリップモジュールから取り外すことができ、対応するグリップ、スライド、バレルなどを組み合わせて異なる構成へ変更できます。現代のSIG SAUERを特徴づけるモジュラー・システムの中核となる部品です。

SIG SAUERにはどんなピストルがある?

SIG SAUERには、P210、P220、P226、P229などの金属フレームモデル、SP2022などのポリマーフレーム・ハンマー式モデル、P320やP365などのモジュラー式モデルがあります。このほか、.22 LRを使用するP322や、P238、P938などの小型シングルアクションモデルも存在します。モデルによって軍・警察向け、携行用、競技用、トレーニング用など用途が異なります。

自衛隊のP220とは?

自衛隊が使用する「9mm拳銃」は、SIG SAUER P220をベースとして日本でライセンス生産された自動式拳銃です。P220系の金属フレームとハンマー式機構を採用し、自衛隊の装備として長年使用されてきました。一般的なSIG SAUER製P220そのものではなく、日本国内で生産された自衛隊仕様のモデルとして区別する必要があります。

まとめ

SIG SP2022イメージ画像
系統代表モデル特徴
精度重視P210金属フレーム、シングルアクション
Classic LineP220、P226、P229金属フレーム、主にハンマー式
SIG ProSP2022ポリマーフレーム、ハンマー式
初期モジュラーP250FCU、ハンマー式
現代サービスP320FCU、ストライカー式
マイクロコンパクトP365小型、高装弾数、FCU
リムファイアP322.22 LR、ハンマー式
軍用派生M17 / M18P320系MHS

P220やP226は、SIGが軍・警察向け金属フレームピストルとして評価を確立した時代を代表します。一方、現在のSIGを特徴づけるのはP320とP365です。

この2シリーズではFCUそのものを銃の中核とし、グリップ、スライド、バレルなどを交換することで、一つの基本システムから異なる用途へ展開できるようになりました。

また、P320をベースとするM17/M18が米軍に採用されたことで、このモジュラー構造は民間市場だけでなく軍用サービスピストルとしても大規模に運用されることになりました。

その一方でP226やP229、P220などのClassic Lineも継続しており、SIG SAUERは「旧世代を新世代へ完全に置き換える」のではなく、金属フレーム、ポリマーフレーム、ハンマー式、ストライカー式、モジュラー式を並行して展開しているメーカーだといえます。

参考資料
  • SIG SAUER — P320 Modular Handgun Series & FCU
  • SIG SAUER — Fire Control Unit (FCU)
  • SIG SAUER — P365 FCU
  • SIG SAUER — P220
  • SIG SAUER — LEGION Pistol Series
  • SIG SAUER — P322
  • SIG SAUER — Past Models Pistols
  • SIG SAUER — History
  • SIG SAUER — RX Footprint Guide
  • SIG SAUER — ROMEO-M17
  • U.S. Army — M17/M18 Modular Handgun System
  • U.S. Army — Modular handgun to begin fielding before Christmas
  • U.S. Army — 101st Airborne Division fields Army’s new modular handgun system
  • 航空自衛隊 — 9mm拳銃

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