FN P90の5.7×28mm弾はなぜソフトボディアーマーを貫通できる? SS190を解説

FN P90イラスト

この記事の要約

  • SS190が「硬い物と柔らかい物を判別している」わけではなく、ソフトアーマーへの貫通とバリスティックゼラチン内でのヨーは別の物理現象です。
  • SS190は約2.0 gの細長い弾頭に、スチール製先端部、アルミニウム製コア、スチール製ジャケットを組み合わせています。
  • 5.7×28mmはFN P90とともに開発され、Five-seveNにも採用されました。2020年にはSTANAG 4509によってNATO標準口径となっています。
FN P90やFive-seveNの5.7×28mm SS190は、ソフトボディアーマーを貫通する一方、バリスティックゼラチン内では大きく向きを変えて減速すると聞きます。なぜ同じ弾頭でこのような違いが生じるのでしょうか?

ソフトボディアーマーでは、小径・高速度の弾頭と硬い先端構造が繊維層を破る方向に働きます。一方、軟組織を模擬したバリスティックゼラチンのような連続した高密度媒体では、弾頭が大きな抗力を受け、ヨーと呼ばれる傾きが増大して急速に減速することがあります。

SS190の特徴は「硬い物だけを貫通する」ことではなく、異なる対象物に対して異なる物理現象が生じることにあります。

項目SS190の概要
口径5.7×28mm NATO
弾頭重量約2.0 g(31.2 gr)
主な構造尖ったスチール製先端部、アルミニウム製コア、スチール製ジャケット
FN P90での銃口初速約715 m/s
Five-seveN Mk2での銃口初速約615 m/s
NATO標準STANAG 4509

弾頭重量と銃口初速は、FNが現在の5.7×28mm製品ページから案内しているテクニカルデータに基づきます。銃口初速は銃身長や測定条件によって変化するため、他の銃や弾薬へそのまま当てはめることはできません。

目次

5.7×28mm弾とSS190はなぜ開発されたのか

FN P90画像
FN P90 画像出典:Ayuwoki2019, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons

FN Herstalは1980年代後半、軍や法執行機関でソフトボディアーマーの使用が増えていた状況を背景に、5.7×28mm弾とFN P90の開発を進めました。従来の9×19mm拳銃弾より高い速度を得ながら、小型・軽量の個人防御火器(PDW)で扱える弾薬を目指したものです。

Photo by ROG5728 / CC BY-SA 3.0 via Wikimedia Commons
Five-seveN Photo by ROG5728 / CC BY-SA 3.0 via Wikimedia Commons

FN P90は5.7×28mm弾と組み合わせることを前提として設計されました。その後、同じ弾薬を使用するFive-seveNピストルが加わり、FNは両者を一つの5.7mmウェポンシステムとして展開しています。

5.7×28mmは2020年にSTANAG 4509としてNATO標準化され、2026年現在も有効な規格です。

SS190の弾頭はどのような構造なのか

Photo by Liftarn / CC BY-SA 3.0 via Wikimedia Commons
5.7x28mm SS190 Photo by Liftarn / CC BY-SA 3.0 via Wikimedia Commons

SS190は単に「軽いFMJ弾」ではありません。約2.0 gの細長い弾頭の内部に、アルミニウム製コアと尖ったスチール製先端部を配置し、その外側をスチール製ジャケットで覆った構造です。

アルミニウムは密度が低いため、弾頭全体を軽量化しながら一定の長さを確保できます。FNはこれによって高い初速と比較的小さな反動を両立できると説明しています。スチール製先端部については、硬い対象へ衝突した際の変形を抑える役割があり、スチール製ジャケットについても弾頭が破砕しにくい構成として説明されています。

SS190の挙動を理解するには、弾頭重量だけでなく、細長い形状、材質、重心位置を含む弾頭全体の設計を見る必要があります。

なぜSS190はソフトボディアーマーを貫通できるのか

レベルIIIAボディアーマー画像
レベルIIIAボディアーマー 画像出典:PMullahaa, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons

ソフトボディアーマーは、アラミド繊維などの高強度繊維を多数重ね、弾頭を受け止めながら広い範囲へ力を分散させる仕組みです。金属板やセラミック製ハードプレートとは防護原理が異なります。

SS190では、小さな弾頭径、高い速度、尖った形状、変形しにくいスチール製先端部が組み合わされています。FNは、尖った先端が繊維間へ入り込みやすく、繊維へ直接当たった場合にも小さな面積へ荷重が集中することで繊維を破断しやすいと説明しています。ただし、これはFNによる設計上の説明であり、防弾材の構造や命中条件によって結果は変わります。

FNのテクニカルデータでは、SS190についてCRISATターゲットに対して100 mを超える距離での貫通性能が示されています。CRISATは、従来の拳銃弾に対する防護より厳しい軍用の標準化ターゲットです。一方、現在のFN製品ページにはソフトボディアーマーとヘルメットに対して最大200 mというメーカー公称値がありますが、そのページだけではヘルメットの型式やすべての試験条件に対応するのか確認できません。

また、NATOのAOP-4509には5.7×28mm戦闘用弾薬の終末効果試験として、公称1 mm厚の軟鋼板6枚を100 m、入射角0度で完全に貫通する試験条件が定められています。ただし、これは規格上の試験ターゲットであり、「6 mm厚の鋼板一枚を貫通する」ことや「ライフル弾対応のハードプレートを貫通する」ことを意味しません。

SS190はソフトボディアーマーへの対処を重視して設計された弾薬ですが、あらゆる防弾装備を貫通できる弾薬ではありません。

対象貫通性能注意
CRISATターゲット距離100 m超FN公式でSS190について明記
PTI hard target setup最低6枚FN公式データ。警察用弾薬評価、距離100 m。ただし同資料では各プレートの材質・厚さを明記していない
ソフトボディアーマーNIJ Level IIIAまでFNホワイトペーパー。ただし、この記述には距離が明記されていない
ソフトボディアーマー/ヘルメット最大距離200 m現行FN 5.7×28mm製品ページのメーカー公称値。ただし弾種・アーマー・ヘルメットの具体的試験条件がページ上では示されていない
NATO鋼板試験1 mm軟鋼板×6枚を100 mで完全貫通AOP-4509に規定された5.7×28mm NATO戦闘弾薬の要求値

なぜバリスティックゼラチンではSS190がヨーするのか

FN P90マガジン画像
FN P90マガジン 画像出典:ROG5728, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons

ヨー(yaw)とは、弾頭の長軸が進行方向に対して傾くことです。弾頭が完全に横向きになることもありますが、「タンブリング」という言葉から想像されるように、常に何回転も転がり続けるとは限りません。弾道学では、まずヨー角の増大として考えると正確です。

弾頭は、銃身内のライフリングによって回転を与えられ、空気中では進行方向を向いて安定して飛翔します。しかし、バリスティックゼラチンのような空気よりはるかに密度の高い媒体へ入ると、弾頭前方には急激に大きな抗力が加わります。

弾頭が媒体へ完全に真っすぐ入らず、わずかなヨー角を持っていると、抗力の合力が弾頭の重心と一致しないことがあります。このとき重心の周囲に弾頭をさらに傾けるモーメントが生じます。FNもSS190について、弾頭前方が媒体から強く減速される一方、重心が後方に位置することでヨーが増大し、弾頭が大きく向きを変えると説明しています。

ヨー角が大きくなると、弾頭が媒体に向ける面積も増えます。その結果、抗力が増えて減速が速くなり、弾頭が持つ運動エネルギーも短い距離で失われやすくなります。これは「弾頭が軽いから勝手に向きを変える」という現象ではなく、形状、質量分布、進入時の姿勢、回転、速度、媒体から受ける力が組み合わさった結果です。

FNは公式資料でSS190がバリスティックゼラチン内でヨーしながら進み、弾頭自体は大きく変形しない例を示しています。ただし、バリスティックゼラチンの試験結果をそのまま人体へ置き換えることはできません。ゼラチンの濃度、温度、較正状態、着弾速度、衣服などによって貫通深さやヨーの開始位置は変化します。

このことから、「SS190は人体を貫通しない」「柔らかい物なら必ず途中で止まる」と断言することはできません。

硬い物は貫通して柔らかい物では止まる?

FN P90画像
FN P90 画像出典:FN Herstal, CC BY-SA 2.0, via Wikimedia Commons
対象主な相互作用SS190側で関係する要素
ソフトボディアーマー繊維の変形・破断、荷重の分散小径、高速度、尖ったスチール製先端部、弾頭形状
バリスティックゼラチン媒体からの連続的な抗力、ヨーの増大、減速細長い形状、重心位置、進入姿勢、速度、質量分布
ハードアーマー金属・セラミックなどによる侵徹抵抗や弾頭の破壊ソフトアーマーとは別の問題であり、SS190が一律に貫通できるわけではない

違いを整理すると、「硬い物には強く、柔らかい物には弱い」という性質ではないことが分かります。

ソフトアーマーでは繊維を局所的に破ることが重要なのに対し、バリスティックゼラチンでは弾頭の表面全体が媒体から連続的に抗力を受けます。

5.56×45mmなどの細長い小口径弾でも、軟組織模擬物質内でヨーすることがあります。ただし、5.56×45mmには多数の弾種があり、条件によって変形や破砕(フラグメンテーション)を伴うものもあります。FNが説明するSS190は、スチール製ジャケットによって弾頭の破砕を抑え、主としてヨーしながら減速する設計であり、両者を同じ終末弾道として扱うことはできません。

SS190は徹甲弾(アーマーピアシング弾)なのか

Photo by TehVice at English Wikipedia / CC BY 2.5 via Wikimedia Commons
5.7x28mm L191トレーサー Photo by TehVice at English Wikipedia / CC BY 2.5 via Wikimedia Commons

米国法上では、SS190は「アーマーピアシング(Armor Piercing)」に分類されています。ただし、これをそのまま「SS190は一般的な意味での徹甲弾である」と理解するのは正確ではありません。

米国のATF(アルコール・タバコ・火器及び爆発物取締局)は、2005年に公開した文書でSS190をアーマーピアシング弾薬として扱っています。これは米国連邦法上の分類であり、「あらゆるボディアーマーを貫通できる」という性能を示す名称ではありません。FN自身も現在の製品ラインナップでは、この弾薬を「SS190 Ball」と表記しています。軍用弾薬でいう『Ball』は標準的な実弾を示す分類名であり、弾頭内部に硬い部材を含まないという意味ではありません。

また、5.7×28mmを標準化したNATO規格のSTANAG 4509も、SS190や5.7×28mm弾全般を「徹甲弾」と認定する規格ではありません。この規格は弾薬の寸法、性能、試験方法などを標準化し、互換性を確保するためのものです。

したがってSS190については、「米国法上はアーマーピアシング弾薬に分類されるが、徹甲弾という言葉だけから貫通性能を判断することはできない」といえます。

現在のFN 5.7×28mm弾薬ラインナップ

FN Herstalのディフェンス・セキュリティ向け公式ページでは次の5.7×28mm弾薬が案内されています。これはFN公式の軍・法執行機関向けラインナップであり、市販されている5.7mm弾を示す一覧ではありません。

弾種弾頭重量概要
SS190 ボール約2.0 g(31.2 gr)標準的な実用弾
L191 トレーサー約2.0 g(31.2 gr)曳光弾
Sb193 サブソニック約3.9 g(60.2 gr)亜音速弾。サプレッサー使用を想定
SS192 ソフト約1.8 g(27.8 gr)ソフトコア。訓練用途など
FR199 フランジブル約2.3 g(35.5 gr)破砕性弾頭。硬いバックストップ付近での訓練など
ブランク―空包

旧来の資料では異なる名称や用途説明が見られる場合があります。

よくある質問

SS190は人体では必ず止まるのですか?

いいえ。バリスティックゼラチン内で大きくヨーして減速する傾向があっても、実際の貫通結果は着弾速度、角度、通過する組織などによって変わります。「人体を必ず貫通しない」とは断言できません。

5.7×28mm弾ならすべてボディアーマーを貫通できますか?

いいえ。5.7×28mmにはSS190、L191、Sb193、SS192、FR199など異なる構造と用途の弾薬があります。貫通性能は弾種と対象となる防弾材によって異なります。

SS190は「タンブリング」する弾なのですか?

軟組織模擬物質内でヨー角が大きくなり、弾頭が横向きからさらに反転する場合があります。「タンブリング」と呼ばれることもありますが、弾道学的にはヨーの増大として説明する方が正確です。

P90とFive-seveNではSS190の性能は同じですか?

同じSS190を使用できますが、銃身長などが異なるため銃口初速は同じではありません。FNのテクニカルデータではP90が約715 m/s、Five-seveN Mk2が約615 m/sとされており、終末弾道も完全に同じとは限りません。

SS190は徹甲弾ですか?

FNの製品名はSS190 Ballですが、米国ATFは連邦法上SS190をArmor Piercingと分類しています。法律上の分類と、「どの防弾材を貫通できるか」という技術的性能は分けて考える必要があります。

まとめ

ポイント内容
ソフトアーマーへの貫通小径、高速度、尖ったスチール製先端部などが関係
ゼラチン内の挙動抗力によるモーメントでヨー角が増大し、抗力と減速も大きくなる
誤解しやすい点対象物の硬さを判別する機能はなく、人体で必ず停止するわけでもない
NATO5.7×28mmはSTANAG 4509で標準化
現状P90とFive-seveNを中心とするFN 5.7mmウェポンシステムの主要弾薬

FN P90の弾として知られる5.7×28mm SS190は、ソフトボディアーマーへの対処を目的の一つとして開発された弾薬です。その一方で、バリスティックゼラチンのような高密度媒体では、細長い弾頭に働く抗力によってヨー角が増大し、減速が速くなる場合があります。

「硬い目標は貫通し、柔らかい目標では止まる」という特殊な選択機能があるのではなく、ソフトアーマーへの貫通性能と、軟組織模擬物質内でのヨー・減速という別々の性質が組み合わさった結果です。

参考資料
  • FN Herstal
    5.7×28mm NATO Ammunition
  • FN Herstal
    FN 5.7×28mm Ammunition Technical Data
  • FN Herstal
    5.7mm NATO caliber: defeating the target
  • FN Herstal
    FN welcomes the NATO standardization of the 5.7×28mm calibre
  • NATO
    AOP-4509 Edition A Version 1
  • Defense Logistics Agency ASSIST
    STANAG 4509
  • National Institute of Justice
    NIJ Standard 0101.07
  • U.S. Bureau of Alcohol, Tobacco, Firearms and Explosives
    ATF Open Letter on Fabrique Nationale 5.7×28mm Ammunition
  • Forensic Science International
    Wound ballistics and projectile yaw related technical literature
  • International Journal of Legal Medicine
    Ballistic gelatin as a soft tissue simulant: systematic review
よかったらシェアしてね!

よく読まれている記事

目次