トリガーの機構に「シングルアクション」と「ダブルアクション」があります。
これはトリガーを引いた際の動作を表しています。
1回トリガーを引いてひとつの動作をするものを「シングルアクション」、2つの動作をするものを「ダブルアクション」と呼びます。
今回はシングルアクションとダブルアクションの違いと構造について解説します。
シングルアクション(SA)
シングルアクションはトリガーを引いてもハンマー(撃鉄)は起き上がらないため、手動でハンマーを起こしてからトリガーを引いて発射します。
シングルアクションのトリガーは起きた状態のハンマーを解放するだけで、他の機能はありません。
セミオートピストルの場合、シングルアクショントリガーであっても発射直後に火薬の力でスライドが後退することによってハンマーが自動的に起こされるため、トリガー操作だけで連続射撃が可能です。
ただし、最初の1発は手動で直接ハンマーを起こす、または手動でスライドを引いてハンマーを起こす操作が必要です。
シングルアクションはトリガーの移動距離が短く、トリガーも軽いため、ダブルアクションと比較してより正確な射撃を行える利点があります。
しかし、ハンマーを起こした状態で携帯するのは誤射の危険を伴い、またハンマーを起こしてセイフティをオンにした状態で携帯する場合も射撃時にはセイフティを解除する手間がかかります。
ハンマーが落ちた状態で携帯する場合は、射撃時にはスライドを操作してハンマーを起こしたり、直接指でハンマーを起こす必要があります。
また、ハンマーを起こした状態で携帯すると、ホルスターから銃を抜く際にハンマーが衣服に引っ掛かりやすい場合もあるため注意が必要です。(ハンマーの形状などによって異なります)
シングルアクションの利点
- トリガーが軽く、切れが良いため高い命中精度を得られる
- 初心者にとっても撃ちやすい
シングルアクションの欠点
- リボルバーなどでは、発射毎に手動でハンマー(撃鉄)を起こす必要がある
- シングルアクションリボルバーでは、装填に時間が掛かる
ダブルアクション(DA)
ダブルアクションはトリガーを引くとハンマーが連動して起き上がり、トリガーを最後まで引き切るとハンマーが落ちて撃発する構造です。
1回トリガーを引くだけで「ハンマーを起こす」「ハンマーを解放する」という2つの動作を行います。
シングルアクションとは違い、トリガーを引く前に手動でハンマーを起こす必要はありません。
ダブルアクションリボルバーはトリガーを引く指1本で連続射撃が可能な為、速射性はシングルアクションリボルバーより有利です。(コルトSAAなどテクニックで速射を行う場合を除く)
ダブルアクションはシングルアクションよりトリガーが重くブレやすいため、相対的に命中率が下がる傾向がありますが、一方でトリガーが重いことで誤ってトリガーに触れた際に誤射しにくいという利点があります。
ダブルアクションの利点
- ハンマーを手動で起こす必要がない
- トリガーが重いため、不意にトリガーに触れた際の誤射事故を防ぎやすい
- リボルバーの場合、スイングアウト方式のシリンダーを有しているため素早い装填と排莢が可能
- ハンマーが露出している場合、ホルスター収納時に親指をハンマーに乗せることで誤射を防止しやすい
ダブルアクションの欠点
- トリガーが重く、移動距離が長いため、命中精度に悪影響がある
- 特に初心者にとっては命中が困難になりやすい
ダブルアクション/シングルアクション(DA/SA)
これはコルト・パイソンの内部構造を表しており、ダブルアクションとシングルアクション(DA/SA)の両方が備わっています。
手動でハンマーを起こすことが可能でありながら、トリガーを引くだけでハンマーを連動させ撃発することも可能です。
手動でハンマーを起こして精密射撃を行ったり、トリガー操作のみで素早い連続射撃が行えます。
DA/SAのセミオートピストルでは、初弾だけダブルアクションで撃ち、次弾以降をシングルアクションで撃つことが可能です。
DA/SAモデルの利点
- ハンマーが落ちた状態からダブルアクションで発射し、次弾以降にシングルアクションで発射可能
- シングルアクションとダブルアクションの両方のメリットを得られる
- 状況に合わせて選択できるため、護身用から精密射撃まで対応可能
DA/SAモデルの欠点
- 初弾がダブルアクションで次弾がシングルアクションとなる場合、トリガーの重さが変化するため命中率に悪影響がある
- 高い命中率を得るには経験やトレーニングが必要とされる
- モデルによってはデコッカー(ハンマーをレスト状態にする機能)の使い方を学ぶ必要があり、初心者にとっては複雑で扱いにくい場合がある
- 構造が複雑なため、設計上メンテナンス性が悪化しやすい
ダブルアクションオンリー(DAO)
シングルアクションの機能がないダブルアクショントリガーはDAO(ダブルアクションオンリー)と呼ばれます。
ハンマーに指を掛けるための突起(ハンマースパー)が無く、ホルスターから銃を抜いた際にハンマーが衣服に引っ掛かりにくいため、コンシールドキャリー(隠匿携帯)に適しています。
ダブルアクションとシングルアクションではトリガーの移動距離がぞれぞれ異なりますが、DAOでは常に同じ距離のため、命中率も一定になりやすい傾向があります。
しかしシングルアクションと比較して「トリガーの移動距離が長い」「常にトリガーが重い」という特徴があり、高い命中率を得るにはトレーニングが必要とされます。
DAOの利点
- 発射毎にトリガープルが一定のため、命中率も一定になりやすい
- ストレス状況下でも扱いやすい
- トリガープルが長く重いため、誤射のリスクが低い
- DA/SA(ダブルアクション/シングルアクション)と異なり、トリガープルがシンプル
- ハンマーが露出しないため、隠匿携帯時に衣服に引っかかるリスクが低い
- トレーニングによってスキルが向上すると、高い命中率やスピードを得られる
DAOの欠点
- 長く重いトリガープルのため、特に初心者にとって正確な射撃が困難
- 他のトリガーに比べて、高い命中率を得るには多くのトレーニングを必要とする
- トリガープルが重いため、非力な射手にとって扱いにくい場合がある
- シングルアクションと比較すると、フォローアップショット(次弾発射)が遅くなりやすい
まとめ:どれを選択すると良い?
トリガー | 用途 | 特徴 | 護身目的の初心者 |
---|---|---|---|
DAO | 護身用 | シンプルで安定したトリガープル 衣服に引っかかりにくい ストレス下でも操作しやすい | 推奨 |
DA/SA | 護身用 競技用 軍・法執行機関用 | 汎用性が高い | やや推奨 |
シングルアクション | 護身用 競技用 | 優れた命中精度 | 非推奨 |
トリガーシステムはそれぞれ長所と短所があり、目的にあわせて選択する必用があります。
仮に、初心者が護身用として選ぶ場合、最も推奨されるのはDAO(ダブルアクションオンリー)です。
DAOはトリガープルが重く、高い命中率を得るには多くのトレーニングを必要としますが、操作方法はトリガーを引くだけで良いため、覚えることが少なくて済みます。
DAOであれば、ストレス状況下でパニックになっても、操作方法に混乱するリスクが低く抑えられるでしょう。
DA/SAのピストルは、マニュアルセイフティやデコッカーの操作方法を覚える必要がある他、シングルアクションとダブルアクションでトリガープルが異なるため、使いこなすには一定のトレーニングが必要です。
米国の法執行機関では、DA/SAリボルバーからDA/SAピストルに切り替えた際に、トレーニング不足から暴発や誤射などの事故が多発しました。
シングルアクションは最もシンプルな構造ですが、護身用目的の初心者には難易度が高いため、おすすめしません。
シングルアクションのピストルを携帯する場合、通常は薬室装填した状態でハンマーをコックし、マニュアルセイフティをオンにした「コック&ロック(コンディション1)」を利用するのが一般的です。
コック&ロックは1911ピストルの設計者であるジョンブローニング自身が意図した携帯方法であり、即応性と安全性のバランスが良く、現在も多くのエキスパートが推奨しています。
コック&ロックで携帯し発射する際には、ホルスターから銃を抜き、マニュアルセイフティを解除する一手間が必要になるため、初心者には扱いにくいといえるでしょう。
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