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シングルアクションとダブルアクションとは? トリガーメカの違いを解説

トリガーの機構に「シングルアクション」と「ダブルアクション」があります。

これはトリガーを引いた際の動作を表しています。

1回トリガーを引いてひとつの動作をするものを「シングルアクション」、2つの動作をするものを「ダブルアクション」と呼びます。

この記事ではシングルアクションとダブルアクションの違いと構造について解説します。

シングルアクション(SA)

シングルアクションはトリガーを引いてもハンマー(撃鉄)は起き上がらないため、手動でハンマーを起こしてからトリガーを引いて発射します。

シングルアクションのトリガーは起きた状態のハンマーを解放するだけで、他の機能はありません。

セミオートピストルの場合、シングルアクショントリガーであっても発射直後に火薬の力でスライドが後退することによってハンマーが自動的に起こされるため、トリガー操作だけで連続射撃が可能です。

ただし、最初の1発は手動で直接ハンマーを起こす、または手動でスライドを引いてハンマーを起こす操作が必要です。

銃の画像

シングルアクションはトリガーの移動距離が短く、トリガーも軽いため、ダブルアクションと比較してより正確な射撃を行える利点があります。

しかし、ハンマーを起こした状態で携帯するのは誤射の危険を伴い、またハンマーを起こしてセーフティをオンにした状態で携帯する場合も射撃時にはセーフティを解除する手間がかかります。

ハンマーが落ちた状態で携帯する場合は、射撃時にはスライドを操作してハンマーを起こしたり、直接指でハンマーを起こす必要があります。

また、ハンマーを起こした状態で携帯すると、ホルスターから銃を抜く際にハンマーが衣服に引っ掛かりやすい場合もあるため注意が必要です。(ハンマーの形状などによって異なります)

シングルアクションの利点と欠点

シングルアクションの利点

  • トリガーの操作は軽く短い
  • 切れが良いため高い命中精度を得られる
  • 初心者にとっても撃ちやすい

シングルアクションの欠点

  • リボルバーなどでは、発射毎に手動でハンマー(撃鉄)を起こす必要がある
  • シングルアクションリボルバーでは、装填に時間が掛かる

シングルアクションのモデル例

シングルアクションリボルバー

  • コルト・シングルアクションアーミー(ピースメーカー)
  • ルガー・ブラックホーク
  • ヘリテイジ・ラフライダー
  • マグナムリサーチ・BFR
  • テイラー&カンパニー 1873 TC9
  • フリーダムアームズ・モデル83
  • レミントン・モデル1858
  • レミントン・モデル1875
  • レミントン・モデル1890
  • ルガー・シングルシックス
  • ルガー・バケロ
  • ウベルティ 1873 キャトルマンII

シングルアクションセミオートピストル

  • コルト 1911 シリーズ
  • ブローニング・ハイパワー
  • トカレフ TT-33
  • CZ 75 SAバリアント
  • スプリングフィールド・アーモリー XD-S & XD-M エリート SAモデル
  • シグザウエル P938
  • シグザウエル P238
  • キンバー・カスタムシリーズ
  • ワルサー PP(一部モデル)
  • FN モデル1903
  • スプリングフィールド TRP オペレーター

シングルアクションライフル

  • ヘンリー・シングルショットライフル
  • トンプソンセンター・エンコア プロ
  • ルガー No.1
  • CVA スカウト・シングルショットライフル
  • ロッシ LWC シングルショットライフル

ダブルアクション(DA)

銃の画像

ダブルアクションはトリガーを引くとハンマーが連動して起き上がり、トリガーを最後まで引き切るとハンマーが落ちて撃発する構造です。

1回トリガーを引くだけで「ハンマーを起こす」「ハンマーを解放する」という2つの動作を行います。

シングルアクションとは違い、トリガーを引く前に手動でハンマーを起こす必要はありません。

ダブルアクションリボルバーはトリガーを引く指1本で連続射撃が可能な為、速射性はシングルアクションリボルバーより有利です。(コルトSAAなどテクニックで速射を行う場合を除く)

ダブルアクションはシングルアクションよりトリガーが重くブレやすいため、相対的に命中率が下がる傾向がありますが、一方でトリガーが重いことで誤ってトリガーに触れた際に誤射しにくいという利点があります。

※チャートはDA/SAおよびDAOを含みます。

ダブルアクションの利点と欠点

ダブルアクションの利点

  • ハンマーを手動で起こす必要がない
  • 素早い連射に有利
  • トリガーが重いため、不意にトリガーに触れた際の誤射事故を防ぎやすい
  • リボルバーの場合、スイングアウト方式のシリンダーを有しているため素早い装填と排莢が可能
  • ハンマーが露出している場合、ホルスター収納時に親指をハンマーに乗せることで誤射を防止しやすい

ダブルアクションの欠点

  • トリガーが重く、移動距離(引き幅)が長いため、命中精度に悪影響がある
  • 特に初心者にとっては命中が困難になりやすい

ダブルアクション/シングルアクション(DA/SA)

これはコルト・パイソンの内部構造を表しており、ダブルアクションとシングルアクション(DA/SA)の両方が備わっています。

手動でハンマーを起こすことが可能でありながら、トリガーを引くだけでハンマーを連動させ撃発することも可能です。

銃の画像

手動でハンマーを起こして精密射撃を行ったり、トリガー操作のみで素早い連続射撃が行えます。

DA/SAのセミオートピストルでは、初弾だけダブルアクションで撃ち、次弾以降をシングルアクションで撃つことが可能です。

DA/SAモデルの利点と欠点

DA/SAモデルの利点

  • ハンマーが落ちた状態からダブルアクションで発射し、次弾以降にシングルアクションで発射可能
  • シングルアクションとダブルアクションの両方のメリットを得られる
  • 状況に合わせて選択できるため、護身用から精密射撃まで対応可能

DA/SAモデルの欠点

  • 初弾がダブルアクションで次弾がシングルアクションとなる場合、トリガーの重さが変化するため命中率に悪影響がある
  • 高い命中率を得るには経験やトレーニングが必要とされる
  • モデルによってはデコッカー(ハンマーをレスト状態にする機能)の使い方を学ぶ必要があり、初心者にとっては複雑で扱いにくい場合がある
  • 構造が複雑なため、設計上メンテナンス性が悪化しやすい

SA/DAのモデル例

DA/SAリボルバー

  • スミス&ウェッソン モデル27
  • コルト コブラ
  • ルガー GP100
  • スミス&ウェッソン モデル60
  • コルト パイソン
  • レミントン モデル1875

DA/SAセミオートピストル

  • CZ 75 シリーズ(CZ シャドウ2を含む)
  • シグザウエル P226 シリーズ
  • ベレッタ 92FS / M9
  • ワルサー P99
  • ベレッタ PX4 ストーム
  • H&K USP(P30、HK45を含む)
  • スミス&ウェッソン モデル39 / 59
  • FN FNX / FNP
  • ルガー Pシリーズ
  • トーラス PT92

ダブルアクションオンリー(DAO)

シングルアクションの機能がないダブルアクショントリガーはDAO(ダブルアクションオンリー)と呼ばれます。

ハンマーに指を掛けるための突起(ハンマースパー)が無く、ホルスターから銃を抜いた際にハンマーが衣服に引っ掛かりにくいため、コンシールドキャリー(隠匿携行)に適しています。

銃の画像

ダブルアクションとシングルアクションではトリガーの移動距離がぞれぞれ異なりますが、DAOでは常に同じ距離のため、命中率も一定になりやすい傾向があります。

しかしシングルアクションと比較して「トリガーの移動距離が長い」「常にトリガーが重い」という特徴があり、高い命中率を得るにはトレーニングが必要とされます。

DAOの利点と欠点

DAOの利点

  • 発射毎にトリガープルが一定のため、命中率も一定になりやすい
  • ストレス状況下でも扱いやすい
  • トリガープルが長く重いため、誤射のリスクが低い
  • DA/SA(ダブルアクション/シングルアクション)と異なり、トリガープルがシンプル
  • ハンマーが露出しないため、隠匿携行時に衣服に引っかかるリスクが低い
  • トレーニングによってスキルが向上すると、高い命中率やスピードを得られる

DAOの欠点

  • 長く重いトリガープルのため、特に初心者にとって正確な射撃が困難
  • 他のトリガーに比べて、高い命中率を得るには多くのトレーニングを必要とする
  • トリガープルが重いため、非力な射手にとって扱いにくい場合がある
  • シングルアクションと比較すると、フォローアップショット(次弾発射)が遅くなりやすい

DAOのモデル例

DAOリボルバー

  • コルト・キングコブラ キャリー
  • ルガー LCR シリーズ
  • スミス&ウェッソン モデル642 アルティメットキャリー
  • ルガー SP101
  • キンバー K6s
  • スミス&ウェッソン モデル640 プロシリーズ

DAOセミオートピストル

  • シグザウエル P226 DAO バリアント
  • ワルサー P30 DAO
  • ベレッタ PX4 ストーム DAO モデル
  • CZ-75 P-01 DAO
  • スミス&ウェッソン M&P シールド EZ DAO
  • ダイヤモンドバック DB9 DAO
  • モスバーグ MC1sc DAO
  • ケルテック P32 / P3AT DAO

ストライカー方式のトリガーメカの違い

ストライカー方式は、「ファイアリングピン / ストライカー(撃針)」が直接スプリングの力で前進し、弾薬の雷管を叩くことで発火させる仕組みです。

ストライカー方式のピストルには、シングルアクションが備わっているものが多いですが、すべてがシングルアクションというわけではありません。

内部機構の設計によって作動方式は異なり、大きく分けて「シングルアクション型」と「ダブルアクション型」、あるいはその両方の特徴を組み合わせたタイプが存在します。

スプリングフィールドXDシリーズ

シングルアクション型のストライカー式では、スライドを操作するとストライカー(撃針)が完全にコックされます。

その後、トリガーは単にストライカーを解放する役割を果たすだけで発射が行われるため、ハンマーファイア式のシングルアクションピストルと仕組みがよく似ています。

具体的な例としては、スプリングフィールドXDシリーズがシングルアクション型に該当し、スライド操作によってストライカーが完全にコックされます。

グロックAFPBS
グロックシリーズ

一方、ダブルアクション型のストライカー式は、トリガーを引く動作によりストライカーのコッキングが完了し、そのまま解放されて発射に至ります。

グロックシリーズの多くはこの構造を持っており、ダブルアクションオンリー(DAO)に近い動作をします。

しかし、グロックはスライドを引いて「プリコック状態」にする必要があり、トリガー操作のみでストライカーの後退と解放を行うことはできない(トリガー操作のみで連続空撃ちができない)構造で、従来のシングルアクションともダブルアクションとも異なる独自のシステムを採用しています。

まとめ:どれを選択すると良い?

項目シングルアクション (SA)ダブルアクション
シングルアクション
(DA/SA)
ダブルアクションオンリー
(DAO)
ハンマー操作手動自動または手動自動
トリガーの役割ハンマーを解放ハンマーを起こして解放ハンマーを起こして解放
トリガープルの重さ軽い・短い初弾は重く長い。
以降は軽い。
常に重い
主な用途精密射撃
競技用
限定的な護身用
護身用
競技用
軍・法執行機関用
護身用
特徴高精度な射撃が可能。操作に手間がかかる。汎用性が高い。
幅広い用途に対応。
シンプルで安定。
衣服に引っかかりにくい。
安全性が高い。
護身目的の初心者非推奨やや推奨推奨

トリガーシステムはそれぞれ長所と短所があり、目的にあわせて選択する必用があります。

護身用にはDAO推奨

仮に、初心者が護身用として選ぶ場合、最も推奨されるのはDAO(ダブルアクションオンリー)です。

DAOはトリガープルが重く、高い命中率を得るには多くのトレーニングを必要としますが、操作方法はトリガーを引くだけで良いため、覚えることが少なくて済みます。

DAOであれば、ストレス状況下でパニックになっても、操作方法に混乱するリスクが低く抑えられるでしょう。

護身用としてDA/SAはやや推奨

DA/SAのピストルは、マニュアルセーフティやデコッカーの操作方法を覚える必要がある他、シングルアクションとダブルアクションでトリガープルが異なるため、使いこなすには一定のトレーニングが必要です。

米国の法執行機関では、DA/SAリボルバーからDA/SAピストルに切り替えた際に、トレーニング不足から暴発や誤射などの事故が多発しました。

護身用としてシングルアクションは初心者には非推奨

シングルアクションは最もシンプルな構造ですが、護身用目的の初心者には難易度が高いため、おすすめしません。

シングルアクションのピストルを携帯する場合、通常は薬室装填した状態でハンマーをコックし、マニュアルセーフティをオンにした「コック&ロック(コンディション1)」を利用するのが一般的です。

コック&ロックは1911ピストルの設計者であるジョンブローニング自身が意図した携帯方法であり、即応性と安全性のバランスが良く、現在も多くのエキスパートが推奨しています。

コック&ロックで携帯し発射する際には、ホルスターから銃を抜き、マニュアルセーフティを解除する一手間が必要になるため、初心者には扱いにくいといえるでしょう。

※この記事で使用したレーダーチャートの数値は筆者の主観によるものです。