最強のハンドガンは何でしょうか?
そもそも、最強のハンドガンの定義とは?
「威力」が最も高いもの、つまり弾丸が持つ運動エネルギーが強力なものを「最強」と定義するなら、その名にふさわしいモデルがあります。
今回は、「市販されている世界最強のハンドガン」について解説します。
世界最強のハンドガンとは?
スミス&ウェッソン モデル500
弾薬 | 弾頭重量 (グレイン) | 銃口初速 (フィート/秒) | マズルエナジー (フットポンド) |
---|---|---|---|
.500 S&W | 440 gr | 1,625 fps | 2,580 ft-lbf |
現在市販されており、「拳銃弾を使用するハンドガン」という条件では、.500 S&W弾を使用するハンドガンが最もパワフルといえます。
S&W モデル500は、.500 S&W マグナムカートリッジを発射するために設計された5連発のダブル/シングルアクションリボルバーで、2003年に登場以来、「世界で最も強力なハンドガン」として知られています。(現在では.500 S&W弾を使用するハンドガンが複数存在します)
強力なマズルエナジーと圧力に対応するため、同社最大の「Xフレーム」を採用しており、弾頭重量275~700グレイン(18~45グラム)の弾頭が用意されています。(1グレイン=0.0647989グラム)
デザイン面では、銃全体の重量やバランス、ラバーグリップ、コンペンセイターによって強力な反動を軽減します。
ハンティング用やスポーツ用途として、200ヤード以上の長距離射撃が可能で、アフリカの大型獣狩猟にも対応しています。
バリエーションとしては、2.75インチから10.5インチまで様々な銃身長が選べ、特別仕様モデルには「ジョン・ロス仕様」や「パフォーマンスセンター」のカスタムモデルが含まれます。
モデル500で使用される弾薬は、弾速が約1,800 fpsになり、マズルエナジーは約2,500フィート重量ポンドです。
ハードキャストの弾頭を使用した場合、厚さ38ミリの木板を7枚貫通可能な威力があります。
これは、日本で市販されているエアガンと比較すると、約3,400から8,500倍のパワーがある計算です。
スミス&ウェッソン モデル460
弾薬 | 弾頭重量 (グレイン) | 銃口初速 (フィート/秒) | マズルエナジー (フットポンド) |
---|---|---|---|
.460 S&W | 200 gr | 2,330 fps | 2,416 ft-lbf |
スミス&ウェッソンのモデル460は、.460 S&W マグナム弾を使用する大口径のリボルバーで、アフリカやアラスカにおける狩猟で危険な大型獣に対応する護身目的に設計されました。
2005年に登場した際には、シューティング・インダストリー・アカデミー・オブ・エクセレンスで「ハンドガン・オブ・ザ・イヤー賞」を受賞。
同社の最大かつ最強のフレーム「Xフレーム」を採用しており、スミス&ウェッソン社、ホーナディ社、コーボン社の共同開発によって誕生しました。
モデル460は、.50口径のモデル500を基にしたXフレームリボルバーで、.460 S&W マグナム弾の他に、.454カスールや.45コルト弾にも対応しています。
弾速が最高速レベルのリボルバーで、200グレイン(13グラム)の弾頭を毎秒2,330フィート(710メートル)の速度で発射し、2,416フィートポンド(3,276ジュール)のマズルエナジーを発生します。
重い弾頭と高圧・高速度に対応するために、ライフリングにはゲインツイスト(漸増転度)を採用しており、銃口に向かってライフリングのツイスト(転度)が徐々に増している構造です。
一般的な銃はライフリングのツイストレートが一定ですが、重い弾頭を高速で発射する場合は、ライフリングによる弾頭の回転時に大きな負荷が掛かります。
しかし、ツイストレートを徐々に増す構造にすると、弾頭のジャケットが剥がれるのを防止したり、銃身の負荷を軽減して寿命を延ばすことが可能になります。
ゲインツイストは製造コストが高いというデメリットがあるものの、高速で高重量な弾頭を使用する場合はメリットになります。
スミス&ウェッソンは、いくつかのバリエーションを展開しており、ショートバレルモデルである460 ESはサバイバルキット、長銃身のモデルは狩猟用として適した設計がされています。
また、銃身長2.75インチのESモデルから14インチの長銃身モデルまで、様々なモデルが用意されています。
デザートイーグル.50AE
弾薬 | 弾頭重量 (グレイン) | 銃口初速 (フィート/秒) | マズルエナジー (フットポンド) |
---|---|---|---|
.50AE | 300 gr | 1,475 fps | 1,449 ft-lbf |
.44マグナム | 180~240 gr | 1,300~1,900 fps | 745~1,035 ft-lbf |
.357マグナム | 125~158 gr | 1,200~1,500 fps | 500~700 ft-lbf |
デザートイーグルは、アメリカのマグナムリサーチ社(MRI)とイスラエルのIMI(現IWI)が開発し、1983年に登場したガス作動機構を持つシングルアクション・セミオートマチックピストルです。
1988年に登場した.50AE(.50アクションエクスプレス)という大口径のセンターファイアカートリッジに対応し、狩猟や標的射撃などに使用されています。
ライフルで利用されることが多いガス作動方式を採用し、一般的なセミオートピストルでは扱えないような強力な弾薬を使用可能になっています。
設計上、この機構は銃の大型化を招くデメリットがありますが、高威力の発射が可能になり、大型化による重量増によって反動を軽減します。
マニュアルセイフティ(手動安全装置)はアンビ仕様で、作動させるとファイアリングピンが固定される仕組みで暴発リスクを減少させています。
デザートイーグルはバレルやボルトアセンブリの交換により複数の口径に対応可能で、.44マグナムと.50AEの間での変更も、銃身とマガジンの交換のみで可能です。
銃身長は6インチが標準で、10インチバレルも選択可能。
現行のMark XIXモデルでは、一部のモデルにピカティニーレールが装備されています。
バリエーションには、以下があります。
モデル名 | 特徴 | 使用弾薬 |
---|---|---|
Mark I | 1983年登場。 .357マグナム対応で、後に.44マグナムに対応。 特徴的な「涙滴型」のセイフティレバー。 | .357マグナム .44マグナム |
Mark VII | 1990年登場。 改良されたセイフティレバーとスライドリリース。 | .357マグナム .41マグナム .44マグナム |
Mark XIX | 1995年登場。 バレルにピカティニーレールが追加され、光学機器やアクセサリーが取り付け可能。 | .357マグナム .44マグナム .429 DE .50AE |
Mark XIX L5 | 2015年登場。 軽量版モデル。 アルミフレームと短いバレル。 | .357マグナム .44マグナム .50AE |
口径バリエーションに「.41マグナム」や「.440 Cor-Bon」も存在しましたが、廃止されました。
また、比較的レアなモデルとして「.429デザートイーグル」や「.41AE」の口径バリエーションも存在します。
トーラス レイジングハンター(レイジングブル)
弾薬 | 弾頭重量 (グレイン) | 銃口初速 (フィート/秒) | マズルエナジー (フットポンド) |
---|---|---|---|
.500 S&W | 440 gr | 1,625 fps | 2,580 ft-lbf |
.460 S&W | 200 gr | 2,330 fps | 2,416 ft-lbf |
.454カスール | 250~325 gr | 1,525~1,900 fps | 1,813~2,000 ft-lbf |
.44マグナム | 180~240 gr | 1,300~1,900 fps | 745~1,035 ft-lbf |
.357マグナム | 125~158 gr | 1,200~1,500 fps | 500~700 ft-lbf |
レイジングブル(Raging Bull)は、ブラジルのトーラス社(Taurus)が1997年に発売した大型フレームのDA/SAリボルバーで、強力な弾薬を発射できる耐久性が特徴です。
Raging Bullは直訳すると「激怒した雄牛」ですが、その強力さと威力を強調した名前です。
ハンター向けに設計され、ポート付きバレルやラバーグリップでリコイルを抑制。
また、独自のデュアルロックデザインにより、非常に高圧の発射に耐える構造になっています。
強力な.44マグナムや.454カスールをはじめ、複数の口径がラインアップされていましたが、2019年に「レイジング・ハンター(Raging Hunter)」シリーズへと置き換えられました。
レイジングハンターは、狩猟向けとしてピカティニーレールが標準装備され、.357マグナム、.44マグナム、.454カスール、.460 S&W、.500 S&Wなどの口径に対応。
銃身長は5.12インチ、6.75インチ、8.37インチがあり、重量は1.5kg程度です。
マグナムリサーチ BFR
弾薬 | 弾頭重量 (グレイン) | 銃口初速 (フィート/秒) | マズルエナジー (フットポンド) |
---|---|---|---|
.500 Bushwhacker | 275~620 gr | 1,895~2,600 fps | 4,100~5,669 ft-lbf |
.500 S&W | 440 gr | 1,625 fps | 2,580 ft-lbf |
.460 S&W | 200 gr | 2,330 fps | 2,416 ft-lbf |
.454カスール | 250~325 gr | 1,525~1,900 fps | 1,813~2,000 ft-lbf |
.50AE | 300 gr | 1,475 fps | 1,449 ft-lbf |
.44マグナム | 180~240 gr | 1,300~1,900 fps | 745~1,035 ft-lbf |
.357マグナム | 125~158 gr | 1,200~1,500 fps | 500~700 ft-lbf |
マグナムリサーチBFR(Magnum Research BFR / Biggest, Finest Revolver)は、ステンレス製のシングルアクションリボルバーで、強力なハンドガンやライフルの弾薬に対応しています。
ルガーブラックホーク(Ruger Blackhawk)をベースとした設計で、「.460 S&W マグナム」や「.500 S&W マグナム」などの強力な弾薬や、「.30-30 WCF」や「.45-70 ガバメント」といったライフル用弾薬、さらには「.410ショットシェル」まで対応可能です。
また、BFRはカスタム弾薬仕様への改造も可能で、.500 ブッシュワッカー(Bushwhacker)のような強力な弾薬にも対応しています。
BFRには「ロングシリンダーモデル」と「ショートシリンダーモデル」の2種類があります。
ロングモデルはライフル弾向け、ショートモデルは一般的なリボルバーのサイズに近い設計で、複数の弾薬を共用可能なモデルも存在します。
ロングシリンダーモデル対応弾薬例:
- .30-30 ウィンチェスター
- .444 マーリン
- .45 コルト/.410(カリフォルニア州では販売不可)
- .45-70 ガバメント
- .500 S&W マグナム など
ショートシリンダーモデル対応弾薬例:
- .357 マグナム
- .44 マグナム
- .454 カスール
- .480 ルガー/.475 ラインバウ
- .50 AE など
各弾薬を比較
弾薬 | 弾頭重量 (グレイン) | 銃口初速 (フィート/秒) | マズルエナジー (フットポンド) |
---|---|---|---|
.500 Bushwhacker | 275~620 gr | 1,895~2,600 fps | 4,100~5,669 ft-lbf |
.500 S&W | 440 gr | 1,625 fps | 2,580 ft-lbf |
.460 S&W | 200 gr | 2,330 fps | 2,416 ft-lbf |
Cor-Bon .460 S&W Barnes XPB Spitzer | 200 gr | 2,324 fps | 2,350 ft-lbf |
Cor-Bon .460 S&W Hard Cast | 395 gr | 1,561 fps | 2,108 ft-lbf |
Cor-Bon .460 S&W XPB Spitzer | 250 gr | 1,853 fps | 2,004 ft-lbf |
Cor-Bon .460 S&W Bonded Core A-Frame | 325 gr | 1,634 fps | 1,965 ft-lbf |
.454カスール | 250~325 gr | 1,525~1,900 fps | 1,813~2,000 ft-lbf |
.50AE | 300 gr | 1,475 fps | 1,449 ft-lbf |
.44マグナム | 180~240 gr | 1,300~1,900 fps | 745~1,035 ft-lbf |
.357マグナム | 125~158 gr | 1,200~1,500 fps | 500~700 ft-lbf |
.45ACP | 185~230 gr | 700~1,100 fps | 368~406 ft-lbf |
9x19mm | 115~147 gr | 900~1,300 fps | 364~512 ft-lbf |
弾薬の威力を比較すると、.500 Bushwhackerが圧倒的です。
しかし、.500 Bushwhackerを使用するハンドガンは市販されていないカスタムモデルのため、本記事では「最強のハンドガン」に加えませんでした。
マグナムリサーチ社のBFRをカスタムすることで.500 Bushwhackerも使用可能なため、ある意味BFRも「最強ハンドガン」のひとつと言えるかもしれません。
市販されているハンドガンのなかでは、やはり「.500S&W」や「.460S&W」を使用するS&W社のモデル500やモデル460が非常にパワフルです。
これらに比べると、セミオートピストル界最強レベルのデザートイーグル.50AEが弱々しく見えてしまいます。
.500 Bushwhackerについては、以下の記事をご覧ください。
ライフル弾を使用するハンドガン
そのほか例外として、同じハンドガンでも、ライフル弾を使用するモデルを「最強のハンドガン」というカテゴリーに含めると、以下のようなモデルが存在します。
レミントンXP100
トンプソン/センター・コンテンダー
.50BMGを使用するトリプルアクションサンダー
ポーランドで製造された巨大化レミントン1859
・・・こうしたハンドガンは特殊で、「純粋なハンドガン」とはいいにくいところがあります。
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