
「世界最強のハンドガン」と聞くと、多くの方が映画で有名になったデザートイーグルや、大口径マグナムリボルバーを思い浮かべるのではないでしょうか。実際に、ハンドガンの威力やサイズはモデルによって大きく異なり、「最強」と呼ばれる基準も一つではありません。
例えば、発射エネルギーで見ればスミス&ウェッソン モデル500が圧倒的な存在感を放っています。一方で、ライフル弾を撃てる特殊なハンドガンや、携行性を犠牲にした巨大モデルも「最強」と呼ばれる対象に含まれます。
この記事では、世界最強クラスとされる代表的な「リボルバー」「セミオートピストル」「ライフル弾対応の特殊モデル」までを幅広く解説します。
※専門用語は記事の最後で解説しています。
リボルバー
スミス&ウェッソン モデル500

弾薬 | 弾頭重量 (グレイン) | 銃口初速 (フィート/秒) | マズルエナジー (フットポンド) |
---|---|---|---|
.500 S&W | 440 gr | 1,625 fps | 2,580 ft-lbf |
現在市販されているハンドガンの中で、「拳銃弾を使用する」という条件では、.500 S&W弾を使用するハンドガンが最も強力です。
スミス&ウェッソンのモデル500は、.500 S&Wマグナム弾を発射するために設計された5連発のダブル/シングルアクションリボルバーです。2003年の登場以来、「世界で最も強力なハンドガン」として知られています。現在では、.500 S&W弾を使用するハンドガンは複数存在しますが、モデル500はその代表格です。
強力なマズルエナジーと高圧力に対応するため、同社最大の「Xフレーム」を採用しています。市販されている弾薬は、275~700グレイン(18~45グラム)の幅広い弾頭重量が用意されています。(1グレインは約0.0648グラム)
デザイン面では、銃全体の重量やバランス、ラバーグリップ、コンペンセイターにより、反動を抑える工夫が施されています。これにより、狩猟やスポーツ用途でも200ヤード(約183メートル)以上の長距離射撃が可能で、アフリカの大型獣狩猟にも対応します。
モデル500には、銃身長2.75インチ(約70mm)から10.5インチ(約267mm)までのバリエーションがあり、特別仕様として「ジョン・ロス仕様」や「パフォーマンスセンター」のカスタムモデルも用意されています。

使用弾薬は、弾速約1,800fps(約550m/s)で、マズルエナジーは約2,500ft-lbf(約3,390J)に達します。
ハードキャスト弾を使用すると、厚さ38ミリの木板を7枚貫通可能な威力があり、これは、日本で市販されているエアガンの約3,400倍から8,500倍のパワーに相当します。
スミス&ウェッソン モデル460

弾薬 | 弾頭重量 (グレイン) | 銃口初速 (フィート/秒) | マズルエナジー (フットポンド) |
---|---|---|---|
.460 S&W | 200 gr | 2,330 fps | 2,416 ft-lbf |
スミス&ウェッソンのモデル460は、.460 S&Wマグナム弾を使用する大口径リボルバーで、アフリカやアラスカでの狩猟や大型獣への護身を目的に設計されました。2005年の登場時には、シューティング・インダストリー・アカデミー・オブ・エクセレンスで「ハンドガン・オブ・ザ・イヤー賞」を受賞しています。
同社最大かつ最強の「Xフレーム」を採用し、スミス&ウェッソン、ホーナディ、コーボンの共同開発によって誕生しました。基本設計は.50口径のモデル500をベースにしており、.460 S&Wマグナム弾のほか、.454カスール、.45コルト、.45スコフィールド弾も使用可能です。
モデル460は、XVR(X-treme Velocity Revolver)の名称が示す通り、世界で最も高速な量産リボルバーのひとつであり、200グレイン(13グラム)の弾頭を毎秒2,330フィート(710メートル)の速度で発射し、2,416ft-lbf(3,276ジュール)のマズルエナジーを発生します。
重い弾頭と高圧・高速に対応するため、ライフリングにはゲインツイスト(漸増転度)が採用されており、銃口に向かって回転の速度が徐々に増す構造になっています。これにより弾頭のジャケット剥離や銃身への負荷を抑え、耐久性を向上させています。
バリエーションも豊富で、用途や好みに応じたモデルが用意されています。ショートバレルの460 ES(2.75インチ)はクマの多い地域で小型機のサバイバルキット用として利用され、長銃身モデルは狩猟用として最適化されています。その他、パフォーマンスセンター仕様や特殊装備を備えたモデルも存在します。
代表的な銃身長と特徴は以下の通りです。
トーラス レイジングハンター(レイジングブル)

弾薬 | 弾頭重量 (グレイン) | 銃口初速 (フィート/秒) | マズルエナジー (フットポンド) |
---|---|---|---|
.500 S&W | 440 gr | 1,625 fps | 2,580 ft-lbf |
.460 S&W | 200 gr | 2,330 fps | 2,416 ft-lbf |
.454カスール | 250~325 gr | 1,525~1,900 fps | 1,813~2,000 ft-lbf |
.44マグナム | 180~240 gr | 1,300~1,900 fps | 745~1,160 ft-lbf |
.357マグナム | 125~158 gr | 1,200~1,500 fps | 500~700 ft-lbf |
レイジングブル(Raging Bull)は、ブラジルのトーラス社(Taurus)が1997年に発売した大型フレームのDA/SAリボルバーで、強力な弾薬を発射できる耐久性が特徴です。名前の「Raging Bull」は、伝説的なボクサーのジェイク・ラモッタや、トーラス社の由来である牡牛座に由来し、銃の強力さを強調しています。
ハンター向けに設計され、ポート付き銃身やラバーグリップを装備しており、反動を抑制しています。また、独自のデュアルロックデザインにより、高圧弾の発射にも耐える構造です。使用可能な弾薬は、.44マグナム、.454カスールをはじめ、.357マグナムや.460 S&W、.500 S&Wなど多彩な口径が用意されています。特に.454カスールはケープバッファローのような大型動物の狩猟にも使用されます。
銃身長は5.12インチ、6.75インチ、8.37インチがあり、重量は約1.5kgです。銃身上部にはピカティニーレールが装備され、スコープやアクセサリーを取り付けやすくなっています。安全装置としては、手動式のフロントシリンダーラッチを採用しており、高圧に耐えられる構造です。
2019年には「レイジングハンター(Raging Hunter)」シリーズへ更新され、従来の性能は維持しつつ、狩猟向けに強化されたフィニッシュや標準装備のピカティニーレールを装備しています。レイジングハンターは、.357マグナム、.44マグナム、.454カスール、.460 S&W、.500 S&Wに対応し、ツートンフィニッシュやマズルブレーキ付きの銃身など多彩なバリエーションがあります。
過去のレイジングブルシリーズには、.41マグナムや.480 Ruger、.218 Bee、.22 Hornet、.30 Carbineなどの特殊口径モデルも存在し、ショートバレルや軽量フレームのモデルもラインアップされていました。これらの特徴により、レイジングブルとレイジングハンターは、ハンターや大型獣への護身を目的としたリボルバーとして高い評価を得ています。
マグナムリサーチ BFR

弾薬 | 弾頭重量 (グレイン) | 銃口初速 (フィート/秒) | マズルエナジー (フットポンド) |
---|---|---|---|
.500 Bushwhacker | 275~620 gr | 1,895~2,600 fps | 4,100~5,669 ft-lbf |
.500 S&W | 440 gr | 1,625 fps | 2,580 ft-lbf |
.460 S&W | 200 gr | 2,330 fps | 2,416 ft-lbf |
.454カスール | 250~325 gr | 1,525~1,900 fps | 1,813~2,000 ft-lbf |
.50AE | 300 gr | 1,475 fps | 1,449 ft-lbf |
.44マグナム | 180~240 gr | 1,300~1,900 fps | 745~1,160 ft-lbf |
.357マグナム | 125~158 gr | 1,200~1,500 fps | 500~700 ft-lbf |
マグナムリサーチBFR(Magnum Research BFR / Biggest, Finest Revolver)は、ステンレス製のシングルアクションリボルバーです。
ルガーブラックホーク(Ruger Blackhawk)をベースとした設計で、「.460 S&W マグナム」や「.500 S&W マグナム」といった大口径拳銃弾、「.30-30 WCF」や「.45-70 ガバメント」といったライフル弾、さらに「.410ショットシェル」も発射できます。
BFRはカスタム弾薬への改造にも対応しており、.500 ブッシュワッカー(Bushwhacker)のような世界最強クラスのハンドガン弾も使用可能です。

モデル名「BFR」の由来は当初「Brainerd’s First Revolver(ブレイナード初のリボルバー)」でしたが、現在は「Biggest, Finest Revolver(最大かつ最良のリボルバー)」の意味として販売されています。
BFRには「ロングシリンダーモデル」と「ショートシリンダーモデル」の2種類があり、ロングモデルはライフル弾用、ショートモデルは一般的なリボルバー弾用に設計されています。同一口径の弾薬であれば、2種類のシリンダーを共用できるモデルも存在します。
BFRは高圧弾薬や大型ライフル弾に対応するシングルアクションリボルバーとして、狩猟や大口径射撃に適したモデルです。
フリーダムアームズ モデル83

弾薬 | 弾頭重量 (グレイン) | 銃口初速 (フィート/秒) | マズルエナジー (フットポンド) |
---|---|---|---|
.500 Wyoming Express | 410 gr | 1,500 fps | 2,048 ft-lbf |
フリーダムアームズ モデル83 .500 ワイオミングエクスプレス(Freedom Arms Model 83 .500 Wyoming Express)は、アメリカ・ワイオミング州に拠点を置くフリーダム・アームズ社が2005年に発表したシングルアクション・リボルバーです。強力な専用弾薬.500 ワイオミングエクスプレス(.500 Wyoming Express)を使用するために設計されており、大型獣の狩猟や荒野での護身を想定した実用性の高いモデルとして知られています。
ステンレススチール製の堅牢なフレームを持つ5連発リボルバーであり、銃身長は4と3/4インチ、6インチ、7と1/2インチの3種類が用意され、携行性を重視する用途から本格的な狩猟まで幅広く対応可能です。フィニッシュには、上質な光沢を持つ「プレミアムグレード(ブラッシュドステンレス)」と、実用本位の「フィールドグレード(マット仕上げ)」の2種類が存在します。グリップはミカルタやワインウッドといったカスタムオプションが提供され、ユーザーの好みに応じた選択が可能です。
.500 ワイオミングエクスプレスは、弾頭重量325~440グレインの弾頭を1,600ft/sで発射し、2,000ft-lbfを超えるマズルエナジーを発揮します。この弾薬はベルト付きケースを採用しており、確実なヘッドスペースを確保できるほか、ジャムを防ぐため強力なロールクリンプを施しても信頼性を損なわない設計となっています。また、直径.500インチの弾頭に対応している点も特徴です。さらに、リボルバー自体はフォーシングコーンの摩耗を抑える設計が施されており、強装弾を繰り返し使用しても長寿命を維持できる構造となっています。
弾薬 | 弾頭重量 (グレイン) | 銃口初速 (フィート/秒) | マズルエナジー (フットポンド) |
---|---|---|---|
.500 Wyoming Express | 325 gr | 1,250 fps | 1,127 ft-lbf |
.500 Wyoming Express | 370 gr | 1,382 fps | 1,573 ft-lbf |
.500 Wyoming Express | 400 gr | 1,390 fps | 1,716 ft-lbf |
.500 Wyoming Express | 410 gr | 1,500 fps | 2,048 ft-lbf |
.500 Wyoming Express | 420 gr | 1,300 fps | 1,579 ft-lbf |
.500 Wyoming Express | 440 gr | 1,400 fps | 1,911 ft-lbf |
モデル83 .500 WEは、圧倒的な威力と高い精度により、大型獣狩猟やクマなど危険な野生動物への対処に適しています。リコイルのコントロールには相応の技量が要求されますが、その反動を克服できる射手にとっては、携帯性とパワーを兼ね備えた理想的な選択肢といえるでしょう。
セミオートピストル
ウィルディ

画像出典:Photograph by Rama, Wikimedia Commons, Cc-by-sa-2.0-fr, CC BY-SA 2.0 FR, via Wikimedia Commons
弾薬 | 弾頭重量 (グレイン) | 銃口初速 (フィート/秒) | マズルエナジー (フットポンド) |
---|---|---|---|
9mm Win Mag | 115~125 gr | 1,450~1,600 fps | 536~710 ft-lbf |
.357 Wildey Mag | 158 gr | 2,060 fps | 1,489 ft-lbf |
.41 Wildey Mag | 200 gr | 1,842 fps | 1,507 ft-lbf |
.44 AMP | 240 gr | 1,450 fps | 1,533 ft-lbf |
.45 Win Mag | 230 gr | 1,600 fps | 1,300 ft-lbf |
.45 Wildey Mag | 230 gr | 1,730 fps | 1,485 ft-lbf |
.475 Wildey Mag | 250 gr | 1,850 fps | 1,900 ft-lbf |
ウィルディピストル(Wildey Survivor)は、ウィルディ・J・ムーアが設計したセミオートピストルで、狩猟やスポーツ射撃向けに開発されました。高圧の弾薬、.45ウィンチェスター・マグナムや.475ウィルディ・マグナムに対応できる点で知られています。現在は米国コネチカット州ウィンステッドのUSA Firearms Corp.-Wildey Gunsで製造されています。
ウィルディはショートストローク式ガス作動システムを採用しており、銃身のガスポートからガスをピストンに導き、スライドを後退させてボルトを回転開放する構造です。これにより、高圧弾でも安定して作動し、ガスレギュレーターで弾薬に応じた作動調整が可能です。ガス作動方式は反動を軽減する効果もあります。
構造面では、固定銃身と3ラグローテイティングボルトを採用し、高圧弾の使用に耐える強度と安全性を確保しています。固定銃身設計は、ティルトバレルに比べて命中精度の向上にも寄与します。フレームは大型で重量があるため、大型獣の狩猟やスポーツ射撃に適しています。主要部品はすべてステンレス製で、耐久性と外観の美しさを両立させています。
ウィルディは、銃身交換によりカスタマイズが可能で、交換後はガス調整を行うことで安定作動を維持できます。銃身長は8インチ(203mm)、10インチ(254mm)、12インチ(305mm)があり、過去には5インチ、6インチ、7インチ、14インチのバリエーションも存在しました。標準口径は.45ウィンチェスター・マグナム、.475ウィルディ・マグナム、.44オートマグで、かつては.45ウィルディ・マグナム、9mmウィンチェスター・マグナム、.357ウィルディ・マグナムなども製造されていました。
マガジンはシングルスタックで、ヒール式マガジンリリースレバーを採用しており、デコッキングレバー、ファイアリングピンブロック、トリガーブロックなど多数の安全機構も装備しています。
ウィルディピストルは、ガス作動、DA/SAトリガー、高圧弾への対応能力により、狩猟やスポーツ射撃に特化したユニークなハンドガンとして評価されており、1985年公開の映画「スーパー・マグナム(原題:デス・ウィッシュ3)」などにも登場してカルト的な人気を誇っています。
2011年に一度生産が停止されましたが、2015年にUSA Firearmsが製造を再開し、2017年から新モデルの受注が開始されました。
デザートイーグル.50AE

弾薬 | 弾頭重量 (グレイン) | 銃口初速 (フィート/秒) | マズルエナジー (フットポンド) |
---|---|---|---|
.50AE | 300 gr | 1,475 fps | 1,449 ft-lbf |
.44マグナム | 180~240 gr | 1,300~1,900 fps | 745~1,160 ft-lbf |
.357マグナム | 125~158 gr | 1,200~1,500 fps | 500~700 ft-lbf |
デザートイーグルは、シングルアクションのガス作動式セミオートピストルで、.50 Action Express(AE)をはじめとする大型口径弾を使用可能です。.50 AEは市販のマガジン給弾式自動拳銃として最大口径の弾薬で、狩猟や大型獣への護身用途に向いています。
デザートイーグルは、マグナムリサーチ社が設計・開発し、イスラエルミリタリーインダストリーズ(IMI / Israel Weapon Industries)が改良・製造してきました。1995年に米国メイン州のサコー・ディフェンス(Saco Defense)へ製造が移管されましたが、1998年に再びIMIが製造を担当。その後IMIの小火器部門はイスラエルウェポンインダストリーズ(IWI / Israel Weapon Industries)として商業展開され、2009年以降はマグナムリサーチの米国ミネソタ州工場で生産されています。2010年にはカー・アームズ(Kahr Arms)がマグナムリサーチを買収しました。
設計面では、ガス作動式の排莢・装填機構を採用しており、これは通常ライフルで用いられる方式です。発射ガスは銃身のガスポートから前方に導かれ、スライド前部のピストンを押すことでボルトを回転させて閉鎖を解除します。この方式により、従来のセミオートピストルでは扱えない強力なマグナム弾を使用可能にしています。
銃はシングルアクションで作動し、スライド上のアンビセーフティ(両利き対応安全装置)により誤射を防止します。マガジン給弾式で、.357マグナムは9発、.44マグナムは8発、.50 AEは7発が装填可能です。銃身にはポリゴナルライフリングが施されています。
デザートイーグルはモデルごとにバリエーションがあります。代表的なMark XIXは、.357マグナム、.44マグナム、.429 DE、.50 AEに対応し、6インチや10インチの銃身長が用意されています。銃身上部にはウィーバーレールを装備し、光学サイトの搭載が容易です。過去のMark IやMark VIIはセーフティレバーやスライドリリースレバーの形状が異なります。
モデル名 | 特徴 | 使用弾薬 |
---|---|---|
Mark I | 1983年登場。 .357マグナム対応で、後に.44マグナムに対応。 特徴的な「涙滴型」のセーフティレバー。 | .357マグナム .44マグナム |
Mark VII | 1990年登場。 改良されたセーフティレバーとスライドリリース。 | .357マグナム .41マグナム .44マグナム |
Mark XIX | 1995年登場。 バレルにピカティニーレールが追加され、光学機器やアクセサリーが取り付け可能。 | .357マグナム .44マグナム .429 DE .50AE |
Mark XIX L5 | 2015年登場。 軽量版モデル。 アルミフレームと短いバレル。 | .357マグナム .44マグナム .50AE |

弾薬の.50 AEは1988年にアメリカのアクションアームズ(Action Arms)が開発した強力なピストル用弾で、リム径は.44マグナムと同じであるため、Mark XIXは銃身とマガジンの交換だけで.44マグナムから.50 AEへ変更可能です。最大腔圧は36,000 psiで、ファクトリーロードでは最大約1,800 ft-lbf(約2,400 J)のマズルエナジーを発生します。
主な用途はメタリックシルエット射撃や中型・大型獣の狩猟であり、クマなどの大型捕食動物に対する護身用にも適しています。
.50 AEは派生弾として.440 Cor-Bon(1998年)や.429 DE(2018年)が開発され、デザートイーグルのマガジンで使用可能ですが、弾薬ごとに対応する銃身が必要です。
以下はブランド別の.50 AEの例です。
メーカー | 弾頭重量 (グレイン) | 初速 (fps) | マズルエナジー (ft-lbf) |
---|---|---|---|
ホーナディ (Hornady) | 300 | 1475 | 1449 |
アンダーウッド (Underwood) | 300 | 1580 | 1663 |
HOP ムニションズ (HOP Munitions) | 300 | 1250 | 1214 |
スピア (Speer) | 300 | 1550 | 1600 |
バッファロー・ボア (Buffalo Bore) | 325 | 1400 | 1414 |
各弾薬を比較

弾薬 | 弾頭重量 (グレイン) | 銃口初速 (フィート/秒) | マズルエナジー (フットポンド) |
---|---|---|---|
.500 Bushwhacker | 275~620 gr | 1,895~2,600 fps | 4,100~5,669 ft-lbf |
.500 S&W | 440 gr | 1,625 fps | 2,580 ft-lbf |
.460 S&W | 200 gr | 2,330 fps | 2,416 ft-lbf |
Cor-Bon .460 S&W Barnes XPB Spitzer | 200 gr | 2,324 fps | 2,350 ft-lbf |
Cor-Bon .460 S&W Hard Cast | 395 gr | 1,561 fps | 2,108 ft-lbf |
Cor-Bon .460 S&W XPB Spitzer | 250 gr | 1,853 fps | 2,004 ft-lbf |
Cor-Bon .460 S&W Bonded Core A-Frame | 325 gr | 1,634 fps | 1,965 ft-lbf |
.500 Wyoming Express | 325~410 gr | 1,250~1,500 fps | 1,127~2,048 ft-lbf |
.454カスール | 250~325 gr | 1,525~1,900 fps | 1,813~2,000 ft-lbf |
.475 Wildeyマグナム | 250 gr | 1,850 fps | 1,900 ft-lbf |
.50AE | 300 gr | 1,475 fps | 1,449 ft-lbf |
.44マグナム | 180~240 gr | 1,300~1,900 fps | 745~1,160 ft-lbf |
.357マグナム | 125~158 gr | 1,200~1,500 fps | 500~700 ft-lbf |
.45ACP | 185~230 gr | 700~1,100 fps | 368~406 ft-lbf |
9x19mm | 115~147 gr | 900~1,300 fps | 364~512 ft-lbf |
弾薬の威力を比較すると、.500 Bushwhackerが圧倒的です。
しかし、.500 Bushwhackerを使用するハンドガンは市販されていないカスタムモデルのため、本記事では「最強のハンドガン」に加えませんでした。
マグナムリサーチ社のBFRをカスタムすることで.500 Bushwhackerも使用可能なため、ある意味BFRも「最強ハンドガン」のひとつと言えるかもしれません。
市販されているハンドガンのなかでは、やはり「.500S&W」や「.460S&W」を使用するS&W社のモデル500やモデル460が非常にパワフルです。
これらに比べると、セミオートピストル界最強レベルのデザートイーグル.50AEが弱々しく見えてしまいます。
.500 Bushwhackerについては、以下の記事をご覧ください。
ライフル弾を使用するハンドガン
そのほか例外として、同じハンドガンでも、ライフル弾を使用するモデルを「最強のハンドガン」というカテゴリーに含めると、以下のようなモデルが存在します。
レミントンXP100

レミントンXP-100(Remington XP-100)は、1963年から1998年まで製造されたボルトアクション式ピストルです。もともと長距離射撃を目的として開発され、ショートバレルに適した新弾薬.221ファイアボールを生み出したことで知られています。小型ながら初速は約825m/sに達し、精度はライフル弾の.222レミントンに匹敵しました。
初期モデルはセンターグリップと270mmの銃身を持つ独特な設計でしたが、後期には銃身長の延長やリアグリップ化が行われ、より扱いやすい形へ改良されています。またシングルショット(単発式)が基本でしたが、内蔵マガジンを装備したXP-100Rも登場し、.223レミントンや.308ウィンチェスターなどのライフル弾にも対応しました。
最終的には競合モデルの登場により生産を終了しましたが、アクションは「XR-100レンジマスター」に引き継がれています。そして、XP-100のために開発された.221ファイアボール弾は現在も生産が続き、レミントン・モデル700で使用可能です。
トンプソン・センター・コンテンダー

トンプソン・センター・コンテンダー(Thompson/Center Contender)は、1967年に登場したブレイクアクション式シングルショットピストル(およびライフル)です。最大の特徴は銃身交換の容易さで、フレームには薬室に依存する要素がなく、銃身にサイトやエキストラクターが一体化されています。そのためユーザーは工具一本で銃身を交換でき、多様な口径や銃身長に対応可能となりました。
当初は.22LRや.38スペシャルといった低反動弾を中心に採用しましたが、1970年代以降はマグナム弾や大口径弾も扱えるようになり、ハンドガンハンティングや実験的なワイルドキャット弾の普及に大きな役割を果たしました。純正の最大口径は.45-70ガバメントで、ライフル並みの威力をシングルショットハンドガンで実現しています。さらに.410ショットシェルも撃てるなど、汎用性は群を抜いていました。
デザイン面では、リムファイアとセンターファイアを切り替え可能な二重撃針やアジャスタブルトリガーを備え、狩猟から精密射撃まで幅広く適応しました。ストックやフォアエンドは木製と合成素材の両方が用意され、ユーザーの用途に合わせた組み合わせが可能でした。
1998年には後継のG2コンテンダーが登場し、内部構造やトリガーメカニズムに改良が加えられましたが、銃身の互換性は基本的に維持されています。高い柔軟性と交換システムの利便性により、コンテンダーは半世紀以上にわたり愛用され続けているモデルです。
マアディ・グリフィン .50BMGピストル

マアディグリフィン(Maadi-Griffin)は、アリゾナ州メサに拠点を置いた小規模メーカーで、元高校教師ロバート(ボブ)・スチュワートが創設しました。彼はバレットM82の価格と精度に不満を持ち、自ら.50 BMGライフルを開発し「マアディグリフィン」と名付けました。名称は神話の生物グリフィンに由来しています。
主力モデルはシングルショット・ボルトアクションのM89、ショートバレル版のM92、ロングバレルのM99で、いずれも安価で愛好家に人気がありました。セミオートのMG-6や、30×173mm弾を使う試作30mmライフルも製造されています。
そのなかで異色なのが.50 BMGピストルです。全長約60センチの巨大なシングルショットハンドガンで、実際には短いライフルに近い設計でした。強力な反動を抑えるため大型マズルブレーキを装備し、光学サイトも装着可能でした。威力はバレットM82と同等ですが、精度や実用性は限定的で、コレクター向けの特殊モデルといえます。価格は約4,250ドルで販売されました。
トリプルアクションサンダー

トリプルアクションサンダー(Triple Action Thunder)は、.50BMG弾を使用する試作シングルショットハンドガンで、2004年のSHOT ShowでTriple Action社が発表しました。
構造はブリーチローディング方式で、開閉にはハサミ状の機構を採用し、専用のコッキングレバーとエジェクターを備えていました。銃身基部には窒素ガスを利用したリコイル低減装置が組み込まれ、さらに大型マズルブレーキを装備して反動を抑制しています。それでも銃の重量は約5.4kg(空状態で約12ポンド)、銃身長は約335mm、全長は約430mmに達し、取り回しは非常に困難でした。
発射速度は約882〜927m/sに達し、一部の対物ライフルを上回る初速を示しましたが、ピストル形状ゆえに精度や射程は大きく制限されていました。装弾方式は単発のみで、発射ごとに手動で排莢と再装填を行う必要があります。
この銃の開発目的は、実用性よりもむしろ同社のリコイル吸収技術を披露することにありました。結果的に市販化されることはなく、生産もごく少数に留まりましたが、大口径銃愛好家の間では話題性の高い存在です。現在ではゲーム作品などのメディアで登場し、象徴的な扱いを受けています。
リストレッカー5000

リストレッカー5000(Wrist Wrecker 5000)は、.50 BMG弾を使用する極めて大型の試作ハンドガンです。重量は約3.4kgに達し、一般的なピストルを大きく上回るサイズです。
構造は独特で、アッパー全体が非常に強力なスプリングに対して後退する仕組みを採用しており、発射時の凄まじい反動を緩和する設計となっています。スライド前方にはセレーション(溝加工)が施され、操作性を向上させています。銃身にはスレッドが切られており、将来的にサプレッサーを装着することも可能です。
設計はインターネット上で公開されていた.50 BMGピストルの図面を基にしており、製作者が独自に強度を高める改良を加えています。そのため、既製品ではなく一点もののカスタムモデルといえます。
「Wrist Wrecker(手首破壊銃)」という名称が示す通り、反動の強烈さから実用性よりも実験的要素や話題性の強い銃であり、コミュニティ内ではしばしばジョーク交じりに語られる存在です。
巨大レミントン1859

巨大レミントン1859(Remington Model 1859)は、ポーランドのリシャルト・トビスによって製作された世界最大の作動可能なリボルバーで、ギネス世界記録に認定されています。これは歴史的なレミントン1859パーカッションリボルバーを忠実に拡大再現したもので、完全にオリジナルと同様に作動する構造です。
全長は約1.26メートル、高さ約40センチ、重量は約45kgに達します。シリンダーは6連発式で、使用する弾丸は直径28mm、重量136gという常識外れの大きさです。発射方式はオリジナルと同じくキャップ&ボール式を採用し、超大型ながらも本来の機構を保っています。
この巨大リボルバーは、約2500時間を費やして2002年に完成し、ポーランドのチェンピンで試射に成功しました。トビスは自らの技術力を示すと同時に、歴史的銃器への敬意を込めて製作したとされています。
ギネス記録をはじめ、世界中の銃器メディアやインターネット上で紹介され、その巨大さと職人技によって「スーパーリボルバー」として広く知られる存在となりました。
まとめ
世界最強のハンドガンは、単に口径の大きさや発射エネルギーだけで決められるものではありません。
狩猟においては長距離射撃が可能なマグナムリボルバーが適していますが、護身目的では現実的に携行できるサイズや操作性が重要です。
スポーツ射撃やコレクションの世界では、希少性や独自のメカニズムを持つモデルに価値が見出されています。
「世界最強のハンドガン」とは、使用目的や評価基準によって異なるといえます。