
カービンとは何でしょうか?
PCCとは?
今回はカービンの由来とライフルの全長が変化した歴史的背景について解説します。
カービンとは?

カービン(CARBINE)とは、従来のライフルより全長が短いライフルです。
語源はフランス語の「carabinier」で、ナポレオン戦争時代のマスケット銃を持つ騎兵を指して呼ばれました。
騎兵はもう現代の軍において存在しませんが、騎兵が存在していた時代には馬で移動したり、馬上射撃する際に長いライフルでは扱い難いため、全長が短いライフルを装備していました。これがカービンの由来となっています。
カービンは長銃身のライフルより短く軽量で取り回しいやすいため、特殊部隊や後方支援部隊で主に使用されましたが、現在では多くの軍においてカービンの長さが軍用ライフルの標準サイズとなっています。

AR15 / M16 / M4では銃身長が16インチのモデルをカービンと呼びますが、どれだけ短ければカービンなのかといった定義はありません。

また逆に、ピストルやサブマシンガンの銃身長を16インチまで延長して「カービン」と呼ぶものもあります。
昔のライフルが長い理由

前装式ライフルは15世紀ごろから戦場で使用され始め、16世紀にライフルを装備した騎兵が存在していました。
前装式ライフルは、銃口から弾と火薬を装填し、1発ごとに発射と装填を繰り返すため、現代の連射可能なライフルと比べると非常に遅い発射間隔になります。
当時は銃身長が40インチを超えるライフルも多く、これには次の理由があります。
- 長い銃身を利用することで弾速を向上させ、威力が得られる。
- サイトレイディアス(フロントサイトとリアサイトの間隔)が長いため、精密に狙うことが可能。
- 銃剣(バヨネット)を着剣し、リーチの長い槍として使用可能。(着剣された長いライフルは一般兵が敵の騎兵と闘う場合にも有効)
- 前方の仲間を誤射する事故を防止。
当時、兵士たちは横並びに隊列を組み、号令と共に射撃していました。
仮に各兵士がバラバラに射撃と装填を繰り返すと、発射の間隔が長くなり火力の空白が生じます。
これを防ぐため、前列の兵士が発射し次弾を装填する間に、後列の兵士が発射し、後列が発射したら装填を終えた前列が再び発射するというサイクルを繰り返すことで、一定の火力を維持できます。
このとき、ライフルの全長が短いと後列の兵士が前列の兵士を誤射する恐れがあります。そこで長いライフルを使用することで後列の兵士の銃口が前列の兵士より前へ突き出る状態を維持し、安全が確保されます。
しかし、やがて機関銃の登場により、騎兵や隊列を組む戦術は効果を失いました。
全てのライフルの全長が短くなった理由
騎兵は馬上でライフルを操作するため、長いライフルを装備することは困難でした。
馬上では片手でライフルを保持する場合もある他、長いライフルでは装填も困難なため、これがカービン誕生の由来となっています。
しかし、騎兵ではない一般兵が装備するライフルも時代と共に全長が短くなり、銃身長24~26インチのライフルが多く採用されるようになりました。
これには次の理由があります。
- 黒色火薬の時代から強力な無煙火薬の時代となり、短い銃身長でも必要な弾速が得られるようになった。
- 歩兵の機械化が進み、車両の乗降などで短いライフルの方が扱いやすくなった。
- 戦術の変化により素早い装填が必要になったため、扱いやすい短いライフルが必要とされた。
また、フランス軍に関してはアジア地域での植民地政策において、欧州人より平均身長の低いアジア人に長いライフルは扱いにくいため、短いライフルを採用した背景もあります。
PCCとは?

PCC(ピストル・キャリバー・カービン)とは、ストックが備わった拳銃弾を使用するカービンです。
西部開拓時代に活躍したレバーアクションのウィンチェスター1873カービンもそのうちの一つで、リボルバーでも使用される弾薬(.44-40ウィンチェスター等)を使用します。

現在では9mmや.40S&Wを使用するPCCが流行しており、IPSCやUSPSAといった射撃競技のPCC部門でも利用されています。
PCCはストックが備わった銃から拳銃弾(ピストル弾)を発射することで反動が小さくコントロールしやすいため、近距離(約100~200m以内)において高い命中率と速射性が期待できます。

また、ピストルより長い銃身から発射されるため弾速が向上し、ホームディフェンス用としても強力で人気があります。
定義上、ストック付きマシンピストルやサブマシンガンもPCCのカテゴリーに分類可能ですが、現在では一般的にセミオートモデルを指してPCCと呼ばれています。