ご質問を頂きました。
以前、44マグナム弾の写真を見たときにニッケルか何かでメッキがされていたのです。
やはりその方があまり劣化したりしないのでしょうか?
劣化は関係ありません。
メッキは弾の性能を高めるための製造手法のひとつです。
プレーテッド(Plated) VS ジャケッテッド(Jacketed)
一般的な弾の多くは、鉛のコア(弾芯)にジャケット(被甲)を被せた構造をしています。
これは大きく分けて、プレーテッド・ブレットと、ジャケッテッド・ブレットが存在し、それぞれ製造工程が異なります。
プレーテッド・ブレットは文字通り「メッキ加工された弾」で、鉛のコアに銅やアルミをメッキしています。
一方、ジャケッテッド・ブレットは鉛のコアに成型された銅のケースを被せて製造されています。
鉛を被っている銅の厚みは約0.1~0.5mmほどで、メッキは薄く、ジャケットは厚みがあります。
メッキは薄いため強度が弱く、ジャケットと比較すると着弾時に分離しやすい他、ライフリングのライフルツイストレートが高すぎると弾の回転による遠心力により空中分解の恐れがあります。
(メーカー品のリスクは低いといえますが、個人によるカスタムやリロードでは注意が必要です)
また、表面が薄く強度が弱いということは、弾が柔らかく着弾時に大きく変形しやすい(マッシュルーミングしやすい)傾向があり、貫通力が低下します。
しかし、弾の強度は鉛に他の金属を混ぜるなどして鉛の硬さを調節可能です。
また、ジャケットに使用される銅は銅合金で5~10%の亜鉛が含まれていますが、これも亜鉛の量を変更すれば硬さが変化します。
弾頭の表面が柔らかければ分離しやすいリスクはあるものの、銃身にとっては優しいため、銃身命数を伸ばして高い命中精度を長持ちさせることができます。
逆に強度を上げて硬くすれば着弾時に変形しにくいため貫通力が高まりますが、銃身には負担となります。
メッキ?シルバーチップ?
映画や小説で「シルバーチップ」という名前を聞くことがありますが、シルバーチップにも色々あります。
- ウィンチェスター社製ホローポイント弾のシルバーチップブランド
- 先端に銀色の素材を使用した弾
- 弾頭を識別のため銀色に塗った弾(アーマーピアシング弾など)
これらすべて「シルバーチップ」です。
ウィンチェスター社が製造するシルバーチップは、同社のホローポイント弾のブランド名で、弾頭がアルミメッキされています。
創作の世界では「凄い弾」という印象を受けますが、実際は他のホローポイント弾と大きな違いはなく、現在ではありふれた存在です。
1986年に米国フロリダ州マイアミで発生したFBIと銀行強盗の銃撃戦で、FBIが採用したシルバーチップが貫通力不足で無力だった事件が注目を浴び、メディアや映画の世界にも影響を与えました。
昔は「シルバーチップといえばウィンチェスターのホローポイント弾」でしたが、現在では様々なメーカーが独自のシルバーチップを製品化しています。
先端がポリマーのシルバーチップ
動画はNosler社製シルバーチップ弾です。
先端にプラスチック製のキャップを被せて空気の流れを整えることでフラットな弾道と高い命中精度を実現し、着弾時に潰れやすい先端が弾頭を押し広げて殺傷力を高めています。
先端の色は性能に影響しませんが、色が銀色のためシルバーチップと呼ばれます。
アーマーピアシング(徹甲弾)
必ずしも「銀色に塗っている弾=アーマーピアシング」ではありませんが、識別のためアーマーピアシング弾の先端を銀色に塗っていることがあります。
米軍のカラーコードでは、先端が「レッド/シルバー」「シルバー」「ブラック」の.50BMGはアーマーピアシング弾(徹甲弾)です。
「レッド/シルバー」はトレーサーで、光の尾を曳いて飛びます。
「シルバー」はAPIで、焼夷剤が含まれているため着弾と同時に発火し貫通力が高いアーマーピアシング弾です。
「ブラック」は通常のアーマーピアシング弾です。
他にも様々な弾薬で先端がシルバーの「シルバーチップ」が存在し、性能は多種多様となっています。
いずれもシルバーだからといってメッキとは限りません。
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