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スターム・ルガーGP-100【前編】特徴と構造他

スターム・ルガーGP-100をご紹介します。

スターム・ルガーGP-100

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1986年、ルガー・セキュリティー・シックス(1970~85年製造)に代わるニュー・モデルとして、スターム・ルガー社はGP100を市場に投入しました。

セキュリティー・シックスはスターム・ルガー社製品の中でも成功した信頼性のあるダブルアクション・リボルバーでしたが、さらに改良されGP100が登場することとなりました。

GP100年表
1986年GP100が市場に登場。(フル・シュラウド・バレルのみ)
1987年ステンレス・スチール・モデル登場(Kモデル)
#スターム・ルガーではステンレス・モデルにはモデル名にKが使用される。
1988年(K)GP141、(K)GP161等のバリエーションを展開。
1989年GPFシリーズ(今回紹介のモデル)登場。
1990年KGPF840、KGPF841登場。
1995年Gシリーズ登場。ポリッシュ・ステンレス・モデル/ハイ・グロス・フィニッシュには頭文字にGが使用される。GKGP141,GKGPF331,GKGPF341
1997年KGPF841、GPF330製造終了。

GP100は素材にA.I.S.I.4130合金鋼や、4140クローム・モリブデン合金鋼を使用しており、S&Wなどで見られるサイド・プレートは使用しないソリッド・フレームで、ホットな弾薬を使用しても耐える強度と信頼性を持っています。

.357マグナム・リボルバーの世界で最強とも言える頑丈さは、GP100最大の取り柄といえるでしょう。

他社の同クラスモデルとは相対的に価格がリーズナブルなので、手を出しやすい点はスターム・ルガー製品全般に言えることですが、どのモデルも価格に対するバリューが非常に高いと感じます。購入者に損をした気分にさせないといって良いほどで、高いクオリティーを保ちつつ、コストを削減するその努力は賞賛に値します(誉めすぎ?)。

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GP100は外見も美しく洗練された.357マグナム・リボルバーです。

マズルはフラットでフルシュラウド先端はスッキリ斜めにカット。バレルは全体的に丸みを帯びているが、リブはシャープなエッジ。トリガーとハンマーはステンレスでツートン・カラーとなっています。

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このボタンを押すとシリンダーをスイングアウトできます。呼び名はメーカーで異なり、S&Wは「サムピース」、コルトは「ラッチ」、ルガーは「クレーン・ラッチ」と呼んでいます。

ボタン式クレーン・ラッチはシリンダーのスイング・アウトも簡単です。個人的には慣れるとS&Wやコルトより扱いやすいと感じます。シリンダーは左側へスイング・アウトし、ボタンを押す方向は逆の右側方向なので、片手で操作しやすいデザインです。

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画像出典:imfdb.org

映画「ハードボイルド」では主演のチョウ・ユンファがGP100(アジャスタブル・リアサイト搭載のステンレスモデルKGPF841)を使用しており、ステンレスハンマーをアップで映したシーンがありました。

GP100のハンマー・スパーには鋭いチェッカリングが彫られているので、しっかり親指に食い込んでグリップ力は抜群です。コッキングの途中ですっぽ抜けることはありません。(劇中ではダブルアクションで撃っていましたが)

銃の画像

余談ですが、この映画は1992年公開で、KGPF841が発売されたのは1990年なので、撮影時期を逆算すると発売からあまり時間が経っていない新製品を映画に登場させたということになりますね。

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グロスのブルーイングは美しく青黒光りし、どことなくレトロな雰囲気を持ちながらも機能美のGP100は実力以上に観賞用としても人気を得るモデルといえるでしょう。GP100にはS&Wやコルトでは見られない剛健さが感じられます。

唯一の安全装置、トランスファー・バー

ほとんどのリボルバーはマニュアル・セイフティを持ちませんが、その代わり内部にインターナル・セイフティという形で安全装置が組み込まれるのが一般的です。GP100では、トランスファー・バーが唯一の安全装置です。

GP100のハンマーは、構造上直接プライマーやファイアリング・ピンに触れることはありません。ハンマーをコックする(起こす)か、トリガーを引くと、下からトランスファー・バーが上昇し、ファイアリング・ピンを隠します。そしてハンマーが落ちると、トランスファー・バーを通じてファイアリング・ピンを叩く構造になっています。

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トランスファー・バーは、銃の落下など外部からの衝撃による暴発を防ぐ装置であり、コックされたハンマーが何らかのアクシデントにより落ちてもファイアリング・ピンには接触しないので撃発しません。

最近のリボルバーでは比較的ポピュラーな方式の安全装置です。

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ハンマーの頂上付近には前方へ”出っ張り”(アッパー・エクステンション)があり、トランスファー・バーが上昇していないときにハンマーが落ちても、ファイアリング・ピンにハンマーが接触しない構造です。

また、ファイアリング・ピンがハンマーに接触しないように、ハンマーには凹み(ファイアリング・ピン・クリアランス・リセス)があります。このように、二重の安全設計で暴発防止を確実にしています。

GP100はダブルアクションなので、トリガーとハンマーの動きが常に連動しています。ハンマーを起こせばトリガーが一定の位置まで引かれ、一方でトリガーを引けばハンマーが起きて落ちるという動作をします。

そして連動するのはトリガーとハンマーだけでなく、トランスファー・バーの上下運動と、パウルの上下運動とも連動しています。

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「パウル」はS&Wやコルトでは「ハンド」と呼ばれています。

ダブルアクションでトリガーを引くと、トランスファー・バーとパウルが同時に上昇します。パウルはシリンダーのラチェットを押し上げ、シリンダーを回転させます。ラチェットが汚れたりダメージがあると正しく回転しないので、ジャムや事故の原因となりかねず注意が必要です。

ネットでは「リボルバーはジャムらない」と語られることが多いですが、それは正しくありません。リボルバーも磨耗や汚れでトリガーやハンマー、パウル、シリンダー・ラッチなどに不具合が出て動作しなくなることがあります。日常的なメンテナンスやチェックが必要なのは、どの銃器も同じでしょう。

まるごと取り外せるトリガー・ユニット

GP100の良いところのひとつは、トリガーがユニット化されてメンテナンスが楽だという点でしょう。フレームからトリガー・ガードごと引き抜けるので、射撃後は完全分解しなくてもメカにブラッシングやオイル挿しが可能です。また、この状態でトリガーの動きをチェックできます。

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トリガーを引くと、トリガー・パーツの前方は下がり、後方は上昇します。下がる部分でシリンダー・ラッチを下降させ、上昇する部分でパウル、ハンマー、トランスファー・バーを動かす構造です。

シリンダー・ラッチとは、シリンダーの回転を定位置に停止させるためのパーツです。パウルがシリンダーを回転させ、シリンダー・ラッチがシリンダー側面のスロットに噛んでシリンダーを停止させます。

セキュリティー・シックスからの改良点

GP100は旧モデルの「セキュリティー・シックス」から何が変わったのか?

それは主に次の3つが挙げられます。

  • 新設計エジェクター・ロッド採用
  • エジェクター・ロッド及びヨークの固定方法変更
  • 大型ラバーグリップ採用

新設計エジェクター・ロッド採用

「GP100のエジェクター・ロッドはシリンダーの中心を貫通していない」と言ったら驚かれるかもしれませんね。実はその通りなのです。

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GP100は”オフ・センター・エジェクター・ロッド”を採用しています。他社のリボルバーでは一般的にエジェクター・ロッドがシリンダー中央を貫通していたり、エキストラクター軸中心と繋がっていることが多いのですが、スターム・ルガーはこれをエジェクター・ロッドの位置を下方へと修正しました。

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上の図はエジェクター・ロッドとセンター・ピン・ロッドの位置関係を表しています。エジェクター・ロッドはセンター・ピン・ロッドより下方に位置しているのが分かります。この構造によりバレルは肉厚に設計でき、高圧にも耐えうる強度を保つことができます。

構造は単純でも効果的であり、興味深いアイディアですね。創設者のビル・ルガーは、「前作セキュリティー・シックスにトラブルがあった」としつつ、GP100で採用したデザインはベストであると自信を持って答えています。

また、このアイディアは同社のレッドホークにも採用されています(時代的にはレッドホークへの採用が先)。

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画像出典:STURM, RUGER & Company, Inc.

エジェクター・ロッド及びヨークの固定方法変更

セキュリティー・シックスではエジェクター・ロッド先端をシュラウド内のフロント・ラッチで固定していました。

しかし、GP100ではクレーン内にフロント・ラッチが位置しています。

シリンダーが収納されている状態でクレーン・ラッチを押すと、シリンダーのセンター・ピン・ロックが前方へ押されます。センター・ピン・ロックはセンター・ピン・ロッドを押し、ロッドはフロント・ラッチの上部を押す。するとフロント・ラッチがクレーン内部へ引っ込み、ロックが解除されてシリンダーがスイングアウトできます。

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S&Wなど近年のリボルバーではヨーク(クレーン)の固定にボールベアリングやロッキングボルトを使用するなど、シリンダーの固定方法も様々ですが、スターム・ルガーで採用されているロック方式は確実に動作するロックのひとつです。

大型ラバーグリップ採用

GP100はリボルバーなのでグリップ内にマガジンが入るスペースは必要はなく、自由に太さやフィーリングを調節しデザインしやすい構造です。

GP100のグリップは、セキュリティー・シックスのようなフロント/バック・ストラップがなく、ラバーグリップでフレームを覆うデザインとなっています。

モナカ構造ではない一体成形グリップはグリッピング時に歪みが無く、しっかりとホールドできます。特にGP100は他のミディアム・フレーム.357マグナム・リボルバーの中でも厚みが薄く、握りやすい部類に入ります。

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希にGP100を撃って手に痛みを感じるという人が居ますが、それはグリッピングが悪いのかもしれません。過去、多量の.357マグナム弾をこのGP100で消費しましたが、手に痛みを感じたことはありません。

.357マグナム弾という強力な弾薬は、軽量フレームのリボルバーでは手を痛めることがありますが、GP100は1,134g(4インチ・バレル)という重量とラバーグリップが助けとなり、強力な.357マグナムもマイルドなリコイルに感じられます。(チェッカリング付のラバーグリップでマグナム・リボルバーを撃つと手の皮膚を傷めることがありますが、その場合はシューティング・グローブを使用すると良いでしょう。)

今回ご紹介するGP100のラバーグリップには、左右両面に「ゴンカロ・アルヴェス」を埋め込んでいます。ゴンカロ・アルヴェスは南米産の木材ですが、家具はもちろん木製グリップの素材として多く利用されています。性能に直接的な影響はないものの、その色と木目の美しさがGP100の洗練されたスタイルをよりいっそう際立たせています。

この木製インサート・パネルはGP100の初期と後期ではモデルによって使用面積が異なりますが、今回ご紹介のモデルは旧モデルの後期型なので、使用面積が小さくなっています。(現行品はホーグ製ラバー・モノグリップか、ハードウッド・グリップが付属します。)

 マズルフェイス

肉厚なバレルを装備したGP100マグナムリボルバー。ライフリングは6条右回り。クラウンも綺麗に45度でカットされています。

ライフリングの溝の深さに注目。アニメや漫画、トイガンではライフリングの溝を実際よりも深く再現することが多いですが、実際はこんな状態です。溝が深すぎると発射ガスが逃げてしまい、弾の初速が低下します。

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.357マグナムとフォーシング・コーン

弾が発射されるとシリンダーを出てバレルに到達しますが、その際にフォーシング・コーンを通過します。

フォーシング・コーンは漏斗のような形状で、入り口が広く、ライフリングに近づくにつれて狭くなっています。これはシリンダーの穴(チャンバー)も同じで、入り口は広く、出口は狭くなっています。

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一般的にリボルバーのフォーシング・コーンの狭まる角度は使用弾薬やリボルバーによって異なります。

スターム・ルガー社のシックス・シリーズ(セキュリティー・シックス、ポリスサービス・シックス、スピード・シックス)リボルバーでは、1983年以前は9.5~10.5度が多く(中には18度もあったそうですが)、後に5~5.5度になったようです。角度が浅くなるとフォーシング・コーンの長さも長くなるので、弾がライフリングに到達するまで距離が長くなります。角度は浅いほど弾がスムーズに前進してライフリングに食い込みます。

.357マグナム弾は強力な弾薬なので、バレルやフォーシング・コーンが損傷を受けやすく、エロージョン(侵食、焼食)が発生しやすくなります。特にパウダー(装薬)の燃焼速度が大きく影響し、燃焼速度の遅いパウダーを使用すると、弾がフォーシング・コーン通過時に高圧状態が持続されるので、フォーシング・コーンやシリンダー前面の寿命を縮めます。

最近のリボルバーでは、素材にチタンを使用しているモデルがありますが、このモデルに軽量弾とマグナム弾を組み合わせて使用すると、シリンダー・ギャップ周辺(フォーシング・コーンとシリンダーの間)が高圧状態に晒されて激しくダメージを生じさせるので注意が必要です。

下の画像は、弾頭重量110グレインの.357マグナム弾を34発撃った結果。S&W社は、「チタンフレームで.357マグナムに120グレイン以下は使用不可」と警告しています。チタンの場合は酷い結果ですが、スチールでも軽量弾頭とマグナム弾の組み合わせは銃への負担が重くなりがちです。

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画像出典:all4shooters.com

次回、「スターム・ルガーGP-100【後編】」へつづく

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