
この記事の要約:
- アサルトライフル、スナイパーライフル、狩猟用ライフルでは、用途の違いから命中精度に対する設計思想が大きく異なる。
- MOAという共通指標を用いることで、各種ライフルの実用的な集弾性能と距離ごとの差を客観的に比較できる。
- G36の事例が示すように、命中精度はカタログ値だけでなく、環境条件や設計上の制約を含めて評価する必要がある。
ライフルに求められる性能は、その用途によって大きく異なります。
戦場で信頼性を優先する軍用ライフルと、遠距離での精密な一撃を追求するスナイパーライフルでは、命中精度に対する要求が全く違います。
この記事では、ライフルにおける命中精度の指標であるMOA(ミニット・オブ・アングル)を解説し、アサルトライフル、スナイパーライフル、狩猟用ライフルといった種類ごとの平均的な集弾性能を詳しく比較します。
- 本記事に掲載している表は、同一条件での厳密な比較を示すものではありません。個別モデルを示した表は、代表的な仕様や良好な条件下で報告される平均的な精度をもとにしています。
- 分類別の表は、実戦運用や実猟で想定される弾薬品質、環境条件、使用状況を含めた「一般的な目安」を示したものです。そのため、同じアサルトライフルであっても数値に幅が生じていますが、これは評価基準や前提条件の違いによるものであり、数値そのものが矛盾しているわけではありません。
- 実際の集弾性能は、銃本体だけでなく、弾薬、射手の技量、温度や姿勢など多くの要因によって左右されます。
MOAの基礎知識
MOA(ミニット・オブ・アングル)は、銃の命中精度を角度で表す指標で、射撃の世界で最も一般的に使われています。1度を60分に分けたうちの1分が1 MOAで、これを距離に換算すると100mで約2.9cmの集弾になります。つまり「1 MOAの銃」は、100mで直径約2.9cmの円に弾がまとまる精度を持つという意味です。

MOAは距離が伸びても角度は一定のため、300mでは約9cm、500mでは約14.5cmと、距離に比例して集弾が広がります。この性質により、どの射程でも同じ基準で精度を比較できるのが大きな利点です。
また、MOAは銃の性能だけでなく、弾薬の品質、射手の技量、姿勢や環境条件など、射撃に関わる要素すべての結果として表れます。高性能な銃でも条件が悪ければMOA値は悪化し、逆に適切な弾薬や安定した姿勢で射撃すれば、より良い集弾が得られます。
| 内容 | MOA | 距離 | 集弾 |
|---|---|---|---|
| MOA換算(ヤード) | 1 MOA | 100ヤード(約91m) | 約1インチ(2.54cm) |
| 0.5 MOA | 100ヤード | 約0.5インチ | |
| 0.5 MOA | 200ヤード | 約1インチ | |
| MOA換算(メートル) | 1 MOA | 100m | 約2.9cm |
ライフル命中精度比較表

軍用のアサルトライフルは、過酷な環境下で確実に作動することを最優先に設計されており、耐久性や信頼性、軽量性、連射性能が重視されています。そのため、機械的なクリアランスは比較的広く取られ、バレルは携行性を考慮して軽量化され、照準線も短めになります。これらの設計思想により、命中精度は一般的に2から3MOA程度が標準とされています。
一方、狩猟用ライフルやスナイパーライフルは、精密射撃を主目的として設計されています。剛性の高いバレルや厳密な工作精度、安定した照準系を採用することで、1MOA以下の高い命中精度を達成するモデルも多く存在します。
さらに、軍用アサルトライフルで使用される弾薬は、大量生産性や環境耐性を重視しており、必ずしも精密性を最優先していません。この点も、アサルトライフルの集弾が相対的に緩やかになる要因の一つです。
| モデル | 種類 | 平均MOA | 100m集弾 |
|---|---|---|---|
| M4カービン | AR | 2~3 MOA | 約5.8~8.7 cm |
| SIG SG 550 | AR | 1~2 MOA | 約2.9~5.8 cm |
| UDMC F5(5.56 NATO) | AR | 1 MOA | 約2.9 cm |
| レミントン700 PSS | SR | 1 MOA | 約2.9 cm |
| アキュラシー・インターナショナル AW | SR | 1 MOA未満 | 2.9 cm未満 |
| アキュラシー・インターナショナル AS50 | SR | 約1.5 MOA | 約4.4 cm |
| ティッカ T3x | HR | 0.9~1.0 MOA | 約2.6~2.9 cm |
| ルガー・アメリカン Gen II | HR | 1.1 MOA | 約3.2 cm |
| サベージ Axis 2 | HR | 1.4 MOA | 約4.1 cm |
| スプリングフィールド 2020 Boundary | HR | 0.98 MOA | 約2.9 cm |
| ウィルソン・コンバット NULA 20S | HR | 0.83~1.12 MOA | 約2.4~3.3 cm |
| マーリン Model 336 | HR | 1.56~1.85 MOA | 約4.5~5.4 cm |
| ベレッタ BRX1 | HR | 約1.46 MOA | 約4.2 cm |
| マウザー M18 | HR | 約1.26 MOA | 約3.7 cm |
| ブローニング X-Bolt Speed 2 | HR | 約1 MOA | 約2.9 cm |
種類別の命中精度
アサルトライフルの命中精度

MOAは100mで約2.9cmに相当します。アサルトライフルは3〜6 MOAが一般的で、100mで9〜18cm、300mで27〜54cmほどの集弾になります。軍用狙撃銃は1〜3 MOA、警察用や専用の精密狙撃銃は0.25〜1.5 MOAで、100mで3cm前後の集弾が得られます。
アサルトライフルは狙撃銃や現代的な猟銃より機械的精度が2〜3倍低く、中〜長距離では差が明確に表れます。代表的なM4は2〜3 MOAで、M4/M16シリーズも弾薬やモデルにより同程度の精度です。これは実戦で必要な命中精度を確保しつつ、耐久性と信頼性を優先した設計によるものです。

AK系はばらつきが大きく、AK-47は2.5〜8 MOA、AK-74は2〜3 MOAとされています。
一方、ドイツ軍のG36は高温下で精度が大きく低下し、気温30度で約10 MOAに達したことが問題となりました。
距離100メートルでの集弾率比較
| ライフル | 平均MOA | 100m集弾 |
|---|---|---|
| M4/M16 | 2~3 MOA | 約5.8~8.7 cm |
| AR-15 | 1.5~2 MOA | 約4.4~5.8 cm |
| HK417 | 1.3~4 MOA | 約3.8~11.6 cm |
| FN SCAR | 1.5~4 MOA | 約4.4~11.6 cm |
| AK-47 | 2.5~8 MOA | 約7.3~23.3 cm |
| AK-74 | 2~3 MOA | 約5.8~8.7 cm |
| SIG SG 550 | 1~2 MOA | 約2.9~5.8 cm |
| HK G36(気温30度時) | 10~20 MOA | 約29.1~58.2 cm |
| XM7(SIG) | 約3 MOA | 約8.7 cm |
| 米陸軍狙撃銃要求 | 1 MOA以下 | 約2.9 cm以下 |
| FBI狙撃銃要求 | 0.5 MOA以下 | 約1.5 cm以下 |
銃の命中精度は、銃自体の性能だけでなく、使用する弾薬の精度や、銃と弾薬の相性によって大きく左右されます。
メーカーの公称値や試験データは、ベンチレスト射撃や高精度な弾薬を使用する最良条件下での数値であることが多いため、あくまで参考として捉えることが重要です。
どのような条件下でテストされた結果であるかを確認することで、より正確な判断ができます。
各国の軍は、「ライフルAは距離Bで集弾率C以内」といったように、ある程度の誤差があることを前提に要求する性能を定めています。
スナイパーライフルの命中精度

スナイパーライフルは高い精度を重視して設計されており、1MOA以下の性能を持つモデルが一般的です。中にはアキュラシー・インターナショナルAWのように、0.5MOAから1MOA未満の精度を発揮する銃も存在します。一方、大口径の対物ライフルは用途上の制約から、精度はおおむね1.5MOA前後に収まります。
狙撃銃や精密志向の猟銃には、重く剛性の高いバレル、フリーフロート構造、安定性の高いストック、優れたトリガー、そして高品質な光学照準器が採用されています。これらの要素に、精度重視の弾薬や安定した射撃姿勢、ゆっくりとした射撃ペースが組み合わさることで、実射においても1から2MOA以下の性能を引き出すことが可能になります。
こうした高精度を支えている要因の一つが、ボルトアクション方式です。機構が単純で剛性が高く、発射時に動く部品が最小限に抑えられるため、半自動式に比べて振動やブレが少なくなります。さらに、弾薬がチャンバーに確実に固定され、ロックタイムも短いため、射撃時の銃の動きや銃身振動の影響を受けにくくなります。
構造の単純さと高い剛性、確実な装填と安定した発射動作が組み合わさることで、ボルトアクションライフルは優れた射撃精度を発揮し、長距離射撃や狩猟、スナイパー用途で広く用いられています。

狩猟用ライフルの命中精度

狩猟用ライフルの精度は用途によって求められる水準が異なります。近距離であれば4MOAでも実用になりますが、300m前後で中型獣を狙う場合は、2MOA程度が現実的な基準とされています。精度を重視するハンターでは、1から1.5MOAを目安に長距離での確実性を高めるケースも一般的です。
ティッカやスプリングフィールド、ルガーといった主要メーカーの狩猟用ライフルは、適切な条件下で1MOA前後の精度を発揮します。弾薬の選択や射撃環境が整えば、さらに安定した集弾を得ることも可能です。
300mでシカの心肺部(約20から25cm)を狙う場合、4MOAでは集弾が大きく命中の余裕がほとんどありません。一方、1から2MOAであれば集弾は約9から18cmに収まり、より確実な命中が期待できます。
| 分類・用途 | MOA | 距離 | 集弾 |
|---|---|---|---|
| アサルトライフル(一般的) | 3~6 MOA | 100m | 約9~18cm |
| アサルトライフル(一般的) | 3~6 MOA | 300m | 約27~54cm |
| 軍用狙撃銃 | 1~3 MOA | 100m | 約2.9~8.7cm |
| 警察用・精密狙撃銃 | 0.25~1.5 MOA | 100m | 約0.7~4.4cm |
| 猟銃(近距離) | 約4 MOA | 100m | 約11.6cm |
| 猟銃(中距離・中型獣) | 約2 MOA | 300m | 約17.5cm |
| 猟銃(精密志向) | 1~1.5 MOA | 100m | 約2.9~4.4cm |
レバーアクションライフルの命中精度

マーリン Model 336などのレバーアクションライフルは、その構造上、ボルトアクションライフルよりも精度が劣り、1.5から1.85 MOAが一般的です。
しかし、狩猟用途としては十分な性能が備わっています。
H&K G36の命中精度問題

ドイツ連邦軍(Bundeswehr)の試験や各種報告により、G36アサルトライフルは高温環境や連射時に深刻な命中精度の低下を示すことが確認されています。
通常は2~3 MOA程度の精度を持ちますが、熱の影響を受けると10~20 MOAにまで悪化する事例が記録されています。これは標準的な軍用ライフルの精度基準から大きく外れたものです。
| 状況 | G36のMOA |
|---|---|
| 室温、少数射撃 | 2~3 MOA |
| 高温環境・連射後 | 10~20 MOA |
G36ライフルの熱による精度低下は、設計上の根本的な欠陥に起因しており、プラットフォーム内部で完全に解決されることはありませんでした。部品の金属補強やフリーフロートバレル化などの技術的対策は検討されましたが、コストや設計上の制約から実装には至らず、実戦上も効果的な改善策は提示されませんでした。
最終的にドイツ連邦軍は、G36を改修して使い続けるのではなく、2015年以降の技術評価を経て更新を決定しました。新たに採用されたHK416系統などのライフルは、より高い耐熱性と安定した精度を備えており、G36の欠点を補うものでした。
まとめ
| 分類・条件 | MOA | 100m集弾 | 300m集弾 |
|---|---|---|---|
| MOAの換算 | 1 MOA | 約2.9 cm | 約8.7 cm |
| アサルトライフル(一般的) | 3~6 MOA | 約9~18 cm | 約27~54 cm |
| 軍用狙撃銃 | 1~3 MOA | 約2.9~8.7 cm | 約8.7~26.1 cm |
| 警察用・精密狙撃銃 | 0.25~1.5 MOA | 約0.7~4.4 cm | 約2.2~13.1 cm |
| 猟銃(近距離) | 約4 MOA | 約11.6 cm | 約34.9 cm |
| 猟銃(中距離・中型獣) | 約2 MOA | 約5.8 cm | 約17.5 cm |
| 猟銃(精密志向) | 1~1.5 MOA | 約2.9~4.4 cm | 約8.7~13.1 cm |
ライフルの命中精度は、その用途や設計思想によって大きく異なります。軍用のアサルトライフルは、実戦における信頼性と耐久性を優先するため、一般的に2から3 MOAが標準的な精度です。一方、精密射撃を目的とするスナイパーライフルや狩猟用ライフルは、1 MOA以下の精度を追求しています。
MOA(ミニット・オブ・アングル)は集弾率の指標で、100ヤード(約91メートル)の距離で1インチ(約2.54センチメートル)の集弾を意味します。この数値は、銃の性能だけでなく、使用する弾薬や射撃環境、射手の技量によって変動します。
ドイツ軍のH&K G36は、その代表的な例です。このライフルは、ポリマー製のバレルハウジングが熱で変形する設計上の欠陥を抱えており、高温環境や連続射撃時には命中精度が10から20 MOAにまで低下することが確認されました。この問題は根本的に解決されなかったため、ドイツ軍はG36を置き換えることを決定し、より安定した精度を備えるHK416系統などのライフルを新たに採用しました。
ライフルの命中精度は、単なるカタログスペックだけでは判断できず、その銃がどのような環境で、どのような目的で使用されるかを考慮することが重要です。
参考文献
- Africa Hunting: Acceptable Accuracy in a Rifle
- Africa Hunting: Old Military Rifle Accuracy
- Beretta: BRX1 Black
- Deutsche Welle: Heckler & Koch G36 – the rifle held in all the wrong places
- Deutsche Welle: Heckler & Koch vindicated in G36 accuracy row
- Deutsche Welle: Von der Leyen, parliamentarians hit de Maizière for G36
- Everyday Marksman: AR-15 Barrel Selection
- Forgotten Weapons – G36 controversy
- Gun Digest: Best Sniper Rifle
- GunMag Warehouse: Best Civilian Sniper Rifles
- Gunsite forum – G36 reports
- HKPro forum – G36 accuracy
- International Business Times: SAS, UK anti-terror police G36 rifles don’t shoot straight in hot weather
- NeoGAF: Heckler & Koch’s G36 rifle
- Outdoor Life: Best Rifles
- Pew Pew Tactical: Best New Hunting Rifles
- SSB Crack: Best Assault Rifles in the World
- Silencer Central: MRAD vs MOA
- The MeatEater: The Myth of the Sub-MOA Rifle
- The National Interest: Revealed – What made Heckler & Koch’s G36 rifle selectively terrible
- The Truth About Guns: Germany officially ditches G36 for HK417
- UDMC Weapons: Sub-MOA Accuracy
- Wikipedia: Accuracy International Arctic Warfare
- Wikipedia: Accuracy International AS50
- Wikipedia: Heckler & Koch G36
- Wikipedia: M24 Sniper Weapon System
- YouTube: G36 accuracy test
- その他、多数の資料
