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SIG P320は命中精度が低い? 命中率に影響する点とは?

皆さんからいただいた、「銃の疑問」に回答します。

SIG P320に対して「命中精度が低い」、「銃口の跳ね上がりが大きい」という真偽不明のレビューがありますが
これはP320が.45ACP弾等も運用可能な設計故にグロック19やVP9より重くなり、反動制御自体はし易いものの重量によって射手の精密射撃が難しくなるからでしょうか?

当該レビューを拝見していないので、明確な回答ができません。

そこで、一般的な評価について解説します。

命中精度について

命中精度を評価する場合、必要とされる命中精度を定義しなければ良し悪しを判断できません。

Photo via sigsauer.com

例を挙げると、米軍はM17(SIG P320)に要求する命中精度について、「(製品寿命内において)50メートルの距離で4インチ以内の集弾」を条件としました。

この点でSIG P320は要求された条件をクリアしており、米軍にとって必要な命中精度を有するといえます。

仮に護身用に使用するピストルに「サブMOA(100ヤードで1インチ以内の集弾)」を要求したところで意味は無く、実用上必要な集弾率ではありません。

一般的には、「使用目的」や「相対的に何と比較するか」によって評価が分かれると思われますが、様々なレビューを拝見したうえでのP320に対する私の個人的な感覚では「悪く評価されていない」という印象があります。

当然ながら、現実的な命中精度は「設計」「使用弾薬」「射手のスキル」などによっても左右されます。

レストマシンに固定して発射した場合とは異なり、実際に人間が射撃する場合はトリガープルやグリップ等の設計が命中精度に大きく影響します。

グロックとの比較

Glock17 Photo via Glock

「.45ACPに対応させる理由からグロック等より重い」という点については、私はそうではないと考えます。

P320のパーツの互換性は「9mm/.357SIG/.40S&W」のグループと、「10mm/.45ACP」のグループに分けることができます。同じグループ内では互換性がありますが、9mmと.45ACPには互換性がありません。

これは公式のコンバージョンキットに、「スライドアッセンブリー」「フレーム」「マガジン」等が含まれることからもわかると思います。

スライドのサイズ(厚み、幅、高さ、重量)は、9mmと.45ACPで異なっており、この条件はグロックも同様です。

SIGとグロックは、どちらもスライドやフレームに関して9mmバージョンと.45ACPバージョンを別々に設計しており、.45ACPに対応させるために9mmのモデルが影響を受けているわけではありません。

ボアアクシスの違い

Photo via gungenius.com

もしグロックよりも「反動が大きい」と感じる要素があるとすれば、それは「グリップ角度」「グリップ方法」「ボアアクシス(銃身軸)の高さ」などによる影響と考えられます。

ボアアクシスが低い(銃身が低く配置されている)と、マズルジャンプが小さくなるため速射時の命中率が向上する傾向があります。

その点でグロックはボアアクシスがトップクラスに低く配置されたピストルですが、P320はベレッタ92FSと同等の高さに配置されており、現代のピストルのなかでは比較的に高い配置になっています。

しかし、「ボアアクシスが低い方が優れる」とは一概に言えません。

銃は総合バランスが重要なため、「重心位置」「エルゴノミクス」「可動部(スライド)重量」などの条件により、ボアアクシスが高い銃でも速射時の命中率が高い場合があります。

そのため、グロックとP320の比較において、「エルゴノミクスに優れるP320の方が命中率が高く、コントロールしやすい」と評価されることもあります。(個人差あり)

また、「重量と精密射撃」の関係につていは、原則として「銃の総重量」が重いほど反動が軽減され、高い命中精度を得られやすくなります。

しかし、可動部(スライド)が重い場合は、マズルジャンプが大きく「暴れやすい銃」になるため、速射時の集弾が悪くなる傾向があります。