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【実銃】ショットガンの射程距離とは?弾薬の種類と条件による違いを詳しく解説

ショットガン射撃画像

ショットガン(散弾銃)の射程距離は、使用する銃や弾薬の種類によって大きく異なります。

バックショットやバードショットは近距離で優れた効果を発揮しますが、距離が離れると命中率が低下します。

一方、スラッグ弾は長距離でも高い精度を保つため、用途に応じた弾薬選びが必要になります。

この記事では、それぞれの射程距離と、射程に影響を与える条件について解説します。

バックショット(Buckshot)の射程距離

バックショット画像
画像出典: Ninjatoth

バックショットは直径6.1mm~8.4mmの散弾で、主に対人用や狩猟(中型獣)に適しています。

一般的なバックショット使用時の最大有効射程距離は50ヤード(約45メートル)です。

ほとんどの場合、20~30ヤード(約1827メートル)以下が最適です。

実際、私がレミントン870でバックショットを実射した際、30~50ヤード以上はターゲットに命中する散弾数が減ってしまい、効果が薄いと感じました。

対人用として有効とされるダブルオーバック弾などのバックショットでは、最大到達距離530~550メートルに達しますが、それに比べて有効射程距離は大幅に短くなります。

有効射程距離とは、その弾薬を効果的に使用できる距離を意味し、「狙って命中可能」でありながら「十分なパワーを維持する距離」です。

たとえ距離が75ヤード(約69メートル)でも殺傷力がありますが、距離が離れるほど散弾の拡散パターンが大きく広がってしまうため、命中率が悪化し、効果が低下します。

バックショットは近距離で高いストッピングパワー(対象を無力化する能力)を発揮するため、距離が近いほど有効です。

ただし、有効射程距離は弾薬の性能だけで決定されません。

本記事で紹介する有効射程距離は一般的な目安であり、実際には銃と弾薬の条件によって異なります。

その条件については記事の後半で解説します。

射程距離の実例

ウィンチェスタートレンチガン画像
ウィンチェスター1897 M12ショットガン 画像出典:Hmaag, CC0, via Wikimedia Commons

1950年代のイギリス軍は、マレー半島での戦闘でショットガンの有効性を確認し、レミントンやブローニング製ショットガンを数千丁購入しました。

当時のイギリスの研究では「30ヤード(約27メートル)以内では、アサルトライフルやサブマシンガンよりも優れている」と評価されており、マレーシアのゲリラ兵もショットガンを使用しました。

ベトナム戦争でも、密林での戦闘に有効と判断したアメリカ軍がショットガンを採用しており、ベトナム戦争中におけるショットガンの有効射程は、バックショットを使用した場合、約20~30メートルスラッグ弾を使用した場合は約100メートル以下と認識されました。

また、1980年代のアメリカ軍による「ジョイント・サービス・コンバット・ショットガン・プログラム Joint Service Combat Shotgun Program(JSCSP)」では、フルオートショットガンの研究が行われ、バックショットは70メートルまで有効と発表されています。

用語「バックショット(buckshot)」は、「buck(雄鹿)」と「shot(散弾)」を組み合わせたものです。この弾薬は、鳥撃ちやクレー射撃で利用されるバードショットよりも大きな散弾を指し、主に雄鹿などの中型獣を狩るために使われます。バックショットという用語は18世紀後半に登場し、狩猟に使用されるようになったとされています。

バードショット(Birdshot)の射程距離

バードショット画像
画像出典: X-Javier

バードショットとは、その名の通り、鳥撃ちに使用される小さな粒の散弾です。

バードショットの最大有効射程距離は25~30ヤード(約23~27メートル)です。

例えば、5ヤード(約4.57m)といった近距離では、直径約12インチ(約30.48cm)の集弾を形成します。

バードショットは、通常、#9(約2.3mm)から#2(約4.5mm)の小さな散弾(鉛やスチールなど)が含まれており、散弾が小さいほどショットシェル内に多く詰められ、発射時に広い拡散(ショットパターン)が得られます。

狩猟では、ウズラ、ガン、キジ、カモなどの鳥類に使用される他、ウサギ、リス、ヘビなどの小動物にも有効です。

一度に大量の散弾を発射するため、素早く移動するターゲットに命中させやすく、散弾の粒が小さいため小さい獲物の肉へのダメージが少ない利点があります。

有効射程距離以上の距離では散弾のパターンが広がりすぎて、一貫した効果が得られなくなります。

バードショットは小型の散弾を使用するため、遠距離での貫通力やストッピングパワーは期待できません。

スラッグ/スラグ(Slugs)の射程距離

スラッグ弾画像
画像出典:Jason Wimbiscus, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons

スラッグ弾は、中〜大型の動物(鹿、クマ、イノシシなど)の狩猟に使用される他、軍や警察、ホームディフェンスなどで利用されます。

スラッグ弾には以下の特徴があります。

  • 単一の固体弾(散弾ではない)
  • 通常、鉛、銅、またはその他の材料で製造される
  • 一般的な銃弾よりも重くて大きい
  • ショットガンで高精度と長い射程距離を得られるように設計
  • 1,800フィート毎秒(fps)を超える高速弾が多い
  • 1発の質量が大きいため、距離が離れても大きな運動エネルギーを維持
  • 優れた貫通力(特に都市環境では高い貫通力により二次被害のリスクがある)

このような特徴から、散弾よりも長射程になります。

スラグ弾画像
画像出典:Lax1

そして、主に以下の種類のスラッグ弾が広く流通しています。

  • フォスター:スムーズボアバレル用の従来のデザイン
  • ブレニキ:1898年にウィルヘルム・ブレニキによって発明
  • サボット:ライフルバレル用で、精度と射程距離を向上させるために使用

これらのスラッグ弾は種類によって射程距離が異なります。

ショットガンには、ライフリングが備わっていない「スムースボアバレル(滑腔銃身)」と、ライフリングが備わっている「ライフルドバレル」があります。

従来型のフォスター」と「ブレニキ」は、スムースボアバレルで使用され、最大射程距離は50~100ヤード(約45~91メートル)です。

一方、「サボットスラグ」はライフルドバレルから発射され、最大有効射程距離は、100~200ヤード(約91~183メートル)です。

ショットガンスラッグは理論的にははるかに遠くまで飛ぶことができますが、ほとんどの用途において実際の有効射程は一般的に100ヤード以内と考えられています。

しかし、スコープを搭載するなど、ライフルのようなセッティングにより、200ヤード以上に延ばすことも可能です。

ショットガンの射程距離に影響を与える要因

散弾画像
画像出典:Andrew Davidhazy, CC BY 3.0, via Wikimedia Commons

ショットガンの射程距離は、次の条件によって異なります。

  • 装弾重量と弾速
  • 装薬量
  • バレルの種類(スムーズボアとライフルバレル)
  • スラッグのデザイン
  • サイトの違い(ビーズサイト、ゴーストリング、光学サイトなど)
  • 射手のスキル
  • チョークの種類
  • 銃身長
  • ワッド(ワッズ)の種類
  • 弾薬の種類(価格やブランドの違いなど)

特に「チョークの種類」と「ワッドの種類」は散弾使用時に大きく変化します。

チョークとは「絞り」のことで、銃口に装着することで散弾の拡散を制御します。

チョークを使用しなければ有効射程距離30~40メートルのところ、フルチョークを使用すると50メートルまで延長することも可能です。

ベトナム戦争では、一部の部隊が「ダックビル・チョーク(Duckbill Choke)」と呼ばれる特殊なチョークを試験的に使用しており、ショットを水平方向に広げる設計で効果を発揮しました。(熱処理が不十分でひび割れが生じる問題もありました)

また、ワッドの種類を変更すると拡散の度合い(ショットパターン)が変化するため、拡散を抑えた製品を使用すると射程距離が延長されます。

ワッドには主に以下の種類が存在します。

一般的なワッド(Common Wad / Conventional Wad):主に3つの部分(パウダーワッド、クッション、ショットカップ)で構成されており、ガス漏れを防ぐシールとして機能します。火薬とショットの間の「仕切り」としての役割があり、プラスチックや紙製が一般的です。

ショットカップワッド(Shotcup Wad):発射時、ショットをバレル内でまとめる役割があり、側面に設けられたスリットにより、発射後に開いてショットを放出します。飛行中にショットが乱されるのを防ぎ、ほぼすべてがプラスチック製です。

セパレーティングワッド(Separating Wad / Sabot Wad):サボットスラッグや特殊弾薬で使用され、発射後に弾体と分離する設計です。ライフルドバレルのライフリングと噛み合い、弾体に回転を与え、射程や精度を向上させます。

フルボアワッド(Full-Bore Wad):バレルの内径全体を満たす設計で、発射ガスの漏れを防ぎます。スラッグや大口径の散弾と組み合わせて使用され、一貫した圧力と弾速を保つ効果があります。

フィンスタビライズドワッド(Fin-Stabilized Wad):フィンや安定化構造が備わっており、弾体の飛翔軌道を安定化させます。特殊弾薬やスラッグで使用されることが多く、長射程での精度を向上させます。

ワッドの種類構造射程と拡散密度用途
従来型ワッドシンプルなカップ状
発射時に銃身から解放する
射程:短い
密度:低い
クレー射撃や鳥猟など近距離用
ショットカップワッドショット全体を完全に覆う射程:長い
密度:高い
中距離狩猟やホームディフェンス
分離型ワッド
(サボットワッド)
ショットやスラッグ弾を包む部分が分離可能射程:長い
密度:高い
スラッグ弾による精密射撃や長射程狩猟
フルボアワッド銃身内でショットを保護しない
発射時に完全解放
射程:短い
密度:低い
超近距離の狩猟や広範囲の散弾用途
フィンスタビライズドワッド安定翼を持つ
空気抵抗が少ない
射程:長い
密度:高い
サボットスラッグによる精密射撃や大型動物の狩猟

各ワッドが与える効果(射程、パターン、精度)は、弾薬メーカーや具体的な設計によっても異なります。これらの特徴は一般論であり、弾薬やショットガンとの組み合わせで性能が変化します。

ショットガンの最大射程距離

最大射程距離とは、弾が到達可能な最大の距離です。

ピストル弾、ライフル弾、スラグ弾では弾が数百メートル~数キロの距離を飛んでも殺傷力をもちますが、粒が小さい散弾(バードショット)では遠距離において殺傷力を失います。

12ゲージのバックショットでは約270~400メートル以下で人間の皮膚を貫通しますが、数百メートル離れると貫通力を失っているため有効弾になりません。

しかし、殺傷が目的ではないスポーツにおいては危険といえます。

散弾の大きさ
(ショットサイズ)
到達距離の目安
No.9185-200 m
No.7 1/2210-220 m
No.6230-260 m
No.5245-260 m
No.4260-270 m
No.2290-300 m
No.0330-550 m
No.00530-550 m
スラグ735 m
.410スラグ760 m

まとめ

弾薬の種類対人における最大有効射程距離の目安
散弾(チョーク無し)30~40 m
散弾(フルチョーク)50 m
スラグ50~100 m
サボットスラグ200 m

30メートル離れた人間大サイズのターゲットを射撃したとき、チョークを使用しない軍用ショットガンでバックショットを発射すると、発射された散弾のうち少なくとも約半数以上程度の命中が期待できます。

これは散弾が8~15個入っている00バック(ダブルオーバック)を撃つと、5~8個以上の散弾が狙点の近くに着弾し有効弾になるイメージです。

ただし、散弾は常に均等に拡散されるとは限らず、拡散の状態に偏りが生じることがあるため、発射毎に期待通りの命中率が得られるわけではありません。

また、使用弾薬のワッズの種類によってはチョークを使用しないシリンダーボアから発射してもチョーク使用時と同等かそれ以上の狭い集弾になる場合もあります。

いずれにしても弾薬の種類、散弾の数、銃身長などの条件によって結果が異なりますが、散弾の場合は距離が近いほど命中する散弾が多くなり、有効弾を命中させることが可能になる傾向があります。

最後までお読みいただきありがとうございます。

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