
この記事の要約:
- 銃口に「指」程度の異物を入れて撃っても、銃身が破裂することはほぼなく、指が吹き飛ぶだけで銃への影響はほとんどない。
- 銃身破裂(膨張・裂け)は、泥・雪・水・弾頭の停弾 など、銃身内部を大きく塞ぐ異物がある場合に発生しやすい。
- ライフルは高圧で破裂しやすく、ハンドガンは比較的破裂しにくいが、いずれも異物混入は危険で、特に水中射撃は銃を破損する可能性が高い。
映画やアニメでは、登場人物が銃口に指を差し込んで発砲を阻止したり、銃身が花のように開いてしまうといった描写が登場することがあります。こうした演出はドラマ性を高めるためのフィクションであり、現実の物理法則とはまったく異なります。
実際には、銃口に指を入れた状態で発砲された場合、指は瞬時に破壊され、手には深刻な損傷が生じます。それでも銃はほぼ確実に発射され、作動を止めることはできません。
本記事では、科学的な観点からその実態を詳しく解説します。
本記事は、映画やアニメに登場する非現実的な描写の危険性を科学的に説明するものであり、いかなる危険行為も推奨するものではありません。
実際に起こること:物理的メカニズム
弾丸の運動と軟組織の貫通

引き金が引かれると、撃針が雷管を叩き、火薬が燃焼して高圧ガスが発生します。装薬の燃焼により発生した高圧ガスによって、弾頭はガス圧に押されて銃身内を加速し、銃口に到達する前にすでに秒速数百メートルという極めて高速で前方に押し出されています。
人間の指は、水分を多く含む軟組織で構成されており、このような高速で移動する弾丸に対して何の抵抗にもなりません。弾丸は指を貫通するだけで、停止することはないのです。
銃身内の圧力と指の抵抗
人間の指は、弾薬が発生させる30,000~60,000psi(約2,000~4,000気圧)という高圧に耐えられません。
この圧力がどれほど高いかを理解するために、10トントラックのタイヤの空気圧が約130psi前後であることを考えてみてください。トラックのタイヤに空いた穴を指で塞いで空気漏れを防ぐことすら困難であることを考えれば、銃身内の圧力に指が耐えられないことは明白です。
指先を銃口に入れただけでは、銃身に損傷は発生せず、指を吹き飛ばしてしまうと考えられます。指で銃身を破裂に至らせるほどの強い抵抗を維持することは困難であり、現代の銃器では銃身が劇的に変形したり破裂したりすることはほとんどありません。
銃身破裂(腔発)のメカニズム
銃身内の異物による圧力上昇
銃身が破裂する現象(腔発)は、銃身内に異物が入ることによって発生する可能性があります。銃身の途中に異物があると、弾頭に急激なブレーキがかかります。このブレーキによって銃身内の圧力が急上昇し、圧力に耐え切れなくなった銃身が裂けることがあります。

このとき弾頭の底には波動圧(リングウェーブ)が発生し、銃身が裂けなくても膨張することがあります。過去に行われた科学的実験(ディスカバリーチャンネルのMythBustersなど)では、人工的な手を使った銃口閉塞テストが実施されており、手が爆発的に破壊される一方で、銃身は軽度の膨張や変形を示すのみで、映画のように花のように開くことはありませんでした。
銃の種類による破裂リスクの違い

銃身の破裂は、銃の種類や弾薬の圧力によって発生しやすさが異なります。高圧になりやすいライフルでは銃身破裂が発生しやすく、低圧なハンドガンでは発生しにくい傾向があります。
弾頭が銃身の途中で停弾したとき、ライフルでは次弾を発射すると銃身が裂けやすくなります。一方、ハンドガンでは次弾を発射してもバレルに損傷なく2発目も停弾することがあります。実際に、「何発撃っても弾が出ている気配がないので調べてみたら、銃身内に弾頭が連なっていた」という事例も報告されています。

ただし、ショットガンは低圧であっても銃身の肉厚が薄いため、雪や泥などが銃身内に付着すると発射時に銃身が膨張したり裂けることがあります。これは「ライフルやショットガンなら破裂するがハンドガンなら破裂しない」という単純な問題ではなく、それぞれ弾薬の圧力や銃身の耐圧性能によって結果が異なります。
銃口閉塞と銃身内の異物の違い
最も危険なのは、銃身の途中に硬く密閉された障害物がある場合です。例えば、銃身内に詰まった泥、前回の発射で残った弾丸などが該当します。これらの障害物は、圧力の逃げ道を完全に塞ぐため、銃身の破裂を引き起こす可能性があります。
しかし、銃口の柔らかい指先は、このような密閉された障害物とは根本的に異なります。仮に銃身の耐圧限度が指による抵抗を下回るなら破裂に至る可能性がありますが、現実では考えにくいことです。仮にショットガンで銃身を破裂させるだけの抵抗を維持した場合でも、銃身が裂けて大怪我をするのは指を入れた側です。
1878〜1879年に発表されたジョージ・フォーブス教授の論文を確認すると、銃口が雪・土・油脂などで塞がれた状態で発射すると銃身が破裂する理由を、理論的に説明した内容であることが分かります。
論文によれば、この現象は当時すでに「よく知られていた」問題であり、19世紀の銃では比較的起こりやすかったことが示唆されています。核心となる疑問は、ピストンで空気を押す場合には栓が押し出されるのに、実弾発射では栓が抜ける前に銃身が破裂してしまう点にあります。
弾丸は音速に近い速度で前進するため、銃口付近の空気を急激に圧縮します。圧縮された空気は逃げ場がなく、極めて高い圧力となって銃身を内側から破壊します。フォーブスは簡易的な計算を用いて、雪の栓を弾丸と同等の速度で押し出すには、銃が耐えられないほどの高圧が必要であることを示しました。その圧力は平方センチメートルあたり約0.5トンにも達します。
ただし、条件によっては弾速が十分に遅い場合に限り、弾が銃口に到達する前に栓が押し出される可能性もあると結論づけています。計算には大幅な単純化が含まれるものの、物理法則そのものに重大な誤りは見当たりません。
参考:Mythbusters were scooped — by 130 years! (Finger in the barrel) | Skulls in the Stars
水中での射撃について
「銃身に異物が入ると裂けるのであれば、なぜ銃は水中でも撃てるのか」という疑問を持つ方もいるでしょう。銃身内が水で満たされている場合、弾頭は加速を始める時点から抵抗を受けているため、急激なブレーキをかけることなく銃身内を通過します。そのため破裂しにくい環境となっています。
ただし、銃口だけを水中に入れて発射した場合は状況が異なります。銃口を水没させた状態で発射すると、銃身内の水を外へ押し出すことができず、銃身が破裂する可能性があります。また、耐久性の低い銃身や高水圧下では、銃身が裂けたり銃の機関部が損傷することがあるため、腔圧が上昇しやすい環境では射撃しないことをお勧めします。
被害者と周囲の人々へのリスク
直接的な身体的損傷
銃口に指を置いた人が被る損傷は壊滅的です。弾丸と高圧ガスの衝撃により、その指はほぼ確実に完全に失われます。口径の大きな銃器の場合、損傷は手全体に及び、手の大部分が失われる可能性もあります。骨の粉砕、軟組織の広範な破壊、主要な血管の損傷により、生命を脅かす大量出血が発生するリスクが極めて高くなります。
周囲への危険性の継続
多くの人が誤解していますが、この行為によって周囲の人々への危険が軽減されることはありません。破壊された指を通過した弾丸は、依然として十分な運動エネルギーを保持しており、銃口の延長線上にいる人を重傷または死亡させる可能性があります。つまり、この行為は自分自身を深刻な危険にさらすだけで、他者を守ることにはならないのです。
もし仮に「敵」が自分の銃の銃口に指を入れた場合(現実世界でこのような状況はまずないと思いますが)、そのまま撃っても銃に問題はありません。指で銃身を破裂に至らせるほどの強い抵抗を維持するのは困難であり、大怪我をするのは指を入れた側です。
参考文献
- Straight Dope Message Board
「Finger in gun barrel」スレッド(ディスカッション、2ページ目) - YouTube
銃口閉塞実験の映像デモンストレーション - YouTube
銃身障害物テストの映像 - YouTube
銃身閉塞テストの実験映像 - Skulls in the Stars
「Mythbusters were scooped by 130 years: Finger in the barrel!」歴史的実験に関する解説
