SIG Sauer(シグ・ザウアー)

SIG Sauerは、スイスで誕生しました。その歴史は1853年に設立された「シュヴァイツェリッシェ・ワゴンファブリック(スイスのワゴン工場)」に遡ります。
1860年には「プリラズ・バーンランドライフル」を開発し、1864年にスイス政府と製造契約を締結しました。
ピストルは1975年に登場したSIG P220を皮切りに、P225、P226、P229などのヒットモデルが続きました。
1990年代には、SIGARMSがアメリカに拠点を移し、P229の生産を開始。2000年代に入ると、AR-15スタイルのライフルを製造し、急成長を遂げました。
2017年には、アメリカ軍の制式採用銃の契約を獲得し、P320が採用されています。
当初、SIG Sauerはスイスのノイファウゼン・アム・ラインファル(Neuhausen am Rheinfall)で製造されていましたが、現在は複数の関連企業が「SIG Sauer(シグ・ザウアー)」の商標を使用し、それぞれ異なる形で事業を展開しています。元々のSIGは現在「SIG Group」として知られ、銃器事業からは撤退しています。(現在のSIG Groupは主に食品や飲料向けの無菌カートン、バッグインボックス、スパウト付きパウチなどの包装を製造販売しています)
年 | 出来事 |
---|---|
1853 | Schweizerische Waggonfabrik(スイスのワゴン工場)が創立。 |
1864 | スイス陸軍のライフル製造契約を受けて、会社名をSchweizerische Industrie Gesellschaft(SIG)に変更。 |
1947 | SIGがP210ピストルを開発。 |
1975 | SIGがJ.P. Sauer & Sohnと提携し、P220ピストルを製造。 |
1976 | SIGがJ.P. Sauer & Sohnを買収し、SIG Sauer GmbHを形成。 |
1985 | アメリカにSIGARMS, Inc.が子会社として設立され、SIG Sauerピストルの輸入を開始。 |
1990 | SIGARMSがニューハンプシャー州エクセターに移転し、アメリカでの製造を開始。 |
2000 | SIGの火器部門がL&O Holdingに売却。 |
2007 | SIGARMSがSig Sauer, Inc.に改名。 |
2020 | Swiss Arms Neuhausen(SAN)がSIG Sauer AGに改名。 |
2022 | アメリカ陸軍から次世代小銃(XM7)と自動小銃(XM250)の契約を獲得。 同年、新たに「SIGエクスペリエンスセンター」を開設。 |
SIG P226

使用弾薬 | 装弾数 |
---|---|
9x19mm | 15発 |
SIG Sauer P226は、信頼性の高いフルサイズ・ピストルです。1980年代初頭にアメリカ軍のXM9トライアル向けに開発されて以来、過酷な環境でも作動する信頼性の高さから、軍や法執行機関、民間市場で高い評価を受けています。
P226の設計は、ダブルアクション/シングルアクション(DA/SA)またはダブルアクションオンリー(DAO)の作動方式を採用しており、9mm、.40 S&W、.357 SIG、.22LRといった多様な口径に対応しています。
フレームはアルミ合金製で、耐久性に優れたナイトロンフィニッシュが施されています。重量はマガジン込みで964g、全長196mm、銃身長112mmというサイズです。
P226の特徴のひとつは、その優れたエルゴノミクス設計です。握りやすいグリップと直感的な操作性により高い命中精度を維持します。また、金属フレームによる重量が反動を抑制し、連射時のコントロール性を向上させています。
手動で操作可能なデコッカーが備わっており、ハンマーを安全にレスト状態にすることが可能です。一部モデルでは銃身交換によって口径を変更することも可能です。
P226は米海軍特殊部隊SEALsをはじめ、世界各国のエリート部隊に採用されてきました。コンパクトモデルのP228やP229、サブコンパクトモデルのP224など、派生モデルも多数存在します。

映画では「ロボコップ」「プレデター2」「バッドボーイズ」などに登場した知名度の高いピストルです。1980年代の設計ということもあり、今となってはデザインの古さを感じさせます。個人的にはデコックレバーの膨らみがグリップの邪魔になると感じますが、実射するとすぐに命中率の高さを実感します。
SIG P226 採用組織例
SIG P229

使用弾薬 | 装弾数 |
---|---|
9x19mm | 13/15発 |
.357SIG | 13発 |
.40S&W | 13発 |
P226をコンパクトにしたP228が開発され、P228を進化させたモデルがSIG Sauer P229です。
P229は1992年に登場し、主にアメリカ市場向けに設計され、法執行機関や民間で広く使用されています。
P229のベースとなったP228は使用弾薬に9mmを使用するコンパクトピストルでしたが、「.40S&Wや.357SIGにも対応させたい」ということになり、強力な弾薬に対応させるためスライドを強化したモデルがP229になります。そのため、P229はP228よりも若干重くなりました。
当初、P226とP228はプレス加工のカーボンスチール製スライドを装備していましたが、1992年に削り出しのステンレス製スライドを装備したP229が登場し、その後1996年からP226とP228にもステンレス製スライドが装備されました。
P228やP229はコンシールドキャリー(隠匿携帯)に適したサイズであり、携帯性と安定性のバランスが取れています。
SIG Sauer P229には、オリジナルの「P229」と改良版の「P229-1」が存在します。どちらもコンパクトなピストルですが、いくつかの違いがあります。
それぞれの特徴は以下の通りです。
※バレルフードとは、銃身の後部(スライド前進時に排莢口を塞ぐ部分)を指します。
オリジナルのP229とP229-1では、マガジンや一部パーツに互換性がありません。
P228/P229にはアメリカ軍に採用された「M11」と、民間モデルの「M11A1」と呼ばれるモデルが存在します。
それぞれの違いは以下の通りです。
2017年にアメリカ軍はSIG P320をベースとしたM17/M18を採用し、M11はM18(SIG P320コンパクト)と交代しました。
希少モデルとして「M11B」(非公式ナンバー)が存在します。これはアメリカ空軍が不要とした50丁が2012年に民間市場で販売されたモデルです。M11Bは陽極酸化フレーム、リン酸塩処理された内部パーツなど、空軍向けモデルと同様の仕様を持ちます。シリアルナンバーの位置により、ダブルナンバーやトリプルナンバーのバリエーションが存在します。
モデル | P226 | P228 | P229 |
---|---|---|---|
製造開始年 | 1984年 | 1989年 | 1992年 |
銃身長 | 112 mm (4.4 in) | 99 mm (3.9 in) | 99 mm (3.9 in) |
全長 | 196 mm (7.7 in) | 180 mm (7.1 in) | 180 mm (7.1 in) |
重量 | 980 g (34.6 oz) | 825 g (29.1 oz) | 905 g (31.9 oz) |
使用弾薬 | 9×19mm .40 S&W .357 SIG .22 LR | 9×19mm | 9×19mm .40 S&W .357 SIG |
装弾数 | 15+1 (9mm) | 13+1(9mm) 15+1(9mm) | 13+1(9mm) 15+1(9mm) 12+1(.40S&W) 12+1(.357 SIG) |
スライド素材 | カーボンスチール ステンレス(1996年以降) | カーボンスチール ステンレス(1996年以降) | ステンレス |
サイズ | フルサイズ | コンパクト | コンパクト |
制式採用 | アメリカ海軍SEALs 法執行機関 | アメリカ軍(M11) 法執行機関 | 法執行機関 |

P229を最新のピストルの水準に照らし合わせてると、「アンビに対応しない」「厚みがある」「DA時のトリガープルが重い」「ボアアクシス(銃身軸)が高い」などの短所がありますが、旧モデルからアップデートを経て、セレーション面積を広げるなどの改良点があります。軍用のM11を超える性能を持ち、現在も販売中のモデルであり、命中精度や信頼性の高さが評価されています。
SIG P229 採用組織例
SIG P239

使用弾薬 | 装弾数 |
---|---|
9x19mm | 8発 |
.357SIG | 7発 |
.40S&W | 7発 |
P239は、1996年から2018年までSIG Sauer GmbH(ドイツ)とSIG Sauer Inc.(アメリカ)によって製造されました。
9mm、.357 SIG、.40 S&Wの3種類の弾薬に対応し、アメリカではコンシールドキャリー(隠匿携帯)用のピストルとして人気を集めたモデルで、法執行機関が放出した中古品が民間市場で多く流通しています。
銃身長91mmで全長168mm、全高132mm、重量は口径バリエーションによって約710g~770gです。
シングルスタックのマガジンを採用し、9mm弾で8発、.357 SIGまたは.40 S&W弾で7発を装填できます。装弾数は「やや少なめ」ですが、シングルスタックのためスリムな厚みで、手の小さいユーザーでもグリップしやすいサイズです。
P239はDA/SAトリガーを採用したモデルとして登場しましたが、その後DAO(ダブルアクションオンリー)モデルも登場しました。
SIG SauerがP239の生産を終了した背景には、市場がポリマーフレームを採用したストライカー式ピストルやダブルスタックマガジンモデルにシフトしたことが影響しています。
バリエーションとして、DAKトリガー※を搭載したP239 DAK、衣服に引っ掛かりにくい「スムーズで引っかかりのないデザイン」のP239 SAS、サプレッサー対応のスレッドバレルや10連マガジンを搭載したP239タクティカルがあります。
DAK(Double Action Kellerman)は、SIG SAUERが開発したダブルアクションオンリー(DAO)方式のトリガーシステムです。
一般的なトリガーは、引いたトリガーを元の位置に戻すとリセットされ、再度トリガーを引いて次弾を発射します。
一方、DAKはリセット位置が2か所存在し、トリガーを半分戻すとリセットされ、そのまま最後まで戻すと再度リセットされます。
トリガーを最後まで戻してリセットさせた場合のトリガープルの重さは約6.5ポンドと軽くなり、トリガーを半分まで戻してリセットさせた場合のトリガープルは8.5ポンドと重くなります。
トリガーを最後まで戻すよりも、半分戻すだけでリセットされると素早い次弾発射が可能です。しかし、トリガーを最後まで戻した場合でも十分な速射性を得られるため、「DAK不要論」も存在し、賛否両論あります。
SIGは、フルダブルアクションのトリガーストロークを一貫して使用することを推奨しており、P226やP229などのモデルに採用されています。

SIG P239といえば、日本では漫画/アニメ「ガンスリンガー・ガール」での登場が有名です。長所は、「命中精度が高い」「信頼性が高い」「ナイトサイトの視認性が良い」です。短所は、「装弾数が少ない」「重い」「最新モデルと比較すると大きい」「中古でも高価」です。
SIG P239 採用組織例
SIG P320

使用弾薬 | 装弾数 |
---|---|
9x19mm | 17発 |
10 mm | 15発 |
.357SIG | 14発 |
.40S&W | 14発 |
.45ACP | 10発 |
P320は2014年に登場したセミオートピストルです。最大の特徴は、パーツを簡単に交換できるモジュラー設計にあります。
モジュラー設計の核となるのがファイアコントロールユニット(FCU)です。FCUはトリガーメカが収まり、シリアルナンバーが打刻される部分です。簡単に取り外すことが可能で、異なるグリップモジュールやスライドに組み込めます。
工具なしでカスタマイズが可能という特徴があり、グリップモジュール、スライド、銃身をユーザーが簡単に交換できます。これにより、グリップサイズや口径など用途に合わせた構成変更が行えます。
P320はマルチキャリバー対応となっており、9mm、.357 SIG、.40 S&W、.45 ACP、10mmオートに対応しています。(9mm、.357 SIG、.40 S&W間は、銃身交換だけで対応可能)
グリップモジュールは、ユーザーの手の大きさや好みに合わせて選べます。グリップのサイズや表面の質感を変更できるため、手にフィットするグリップを選ぶことで操作性が向上し、射撃性能も高まります。
軍や法執行機関では、1つのFCUを複数の仕様に切り替えて使用でき、任務に合わせた構成変更が可能になるというメリットがあります。また、民間ユーザーはフルサイズの護身用銃をコンパクトなコンシールドキャリー(隠匿携帯)用に変換することができるようになります。
このモジュラー設計により、P320はユーザーの体型や用途に合わせてカスタマイズ可能なプラットフォームとなっています。
P320の主な特徴は以下の通りです。
2017年、アメリカ陸軍がP320をベースにしたモデルを正式採用しました。
フルサイズのM17とコンパクトサイズのM18として配備され、民間市場でも高く評価されました。
安全機能は「ストライカーセイフティ」「ディスコネクトセイフティ」「トリガーを引かずに分解できる3ポイントテイクダウンシステム」が備わっています。
2017年7月下旬、テキサス州ダラス警察はP320に関する調査のため、全職員にP320の携行を一時停止するよう指示しました。問題となったのは、銃を落とした際、スライド後部が地面に33度の角度で当たると暴発する可能性がある点でした。これはトリガーの重量に関連しており、トリガーが重いと衝撃の慣性で動き続け、意図せず発射される可能性があると考えられました。
2017年8月8日、SIG Sauerはこの問題に対応するため、P320の無償アップグレードプログラムを発表しました。改良内容は、トリガー、トリガーバー、シアー、ストライカーの軽量化とメカニカル・ディスコネクターの追加による安全性向上でした。
このような落下による暴発問題があったものの、P320には従来のピストルに見られないほどの高度な安全設計が施されており、現在では非常に安全性の高いピストルとなっています。
主な安全機能は以下の通りです。
これらの安全機構は相互に関連し合い、総合的な安全性を確保する設計となっています。
P320の安全機構について専門的な内容を詳しく知りたい方は、SIG MECHANICSというYoutubeチャンネルがおすすめです。

P320の暴発対策は2017年に行われたものの、2025年現在も複数の訴訟や使用停止措置が起こっており、問題の完全解決に至っていません(落下時の暴発問題は解決済み)。暴発の原因は「銃」「ホルスター」「使用者」のいずれかであると考えられていますが、銃に問題がある場合は原因不明です。沖縄の米海兵隊で発生したM18暴発事故ではセイフティがオンの状態で暴発したとされており、アメリカ国内ではホルスターに収まった状態での暴発も起きています。しかし、数百万丁ものP320が使用されているため、事故の割合は全体から見ればレアといえます。SIGは2020年にCrossボルトアクションライフルに遅発問題があるためリコールを発表しており、ユーザーからは品質管理の問題も指摘されています。
SIG P320 採用組織例
SIG P365

使用弾薬 | 装弾数 |
---|---|
9x19mm | 10発 |
.380APC | 10発 |
P365は、コンシールドキャリー(隠匿携帯)を想定して作られた小型のセミオートピストルです。
2018年の発売以来、アメリカで高い人気を誇り、2018年と2019年には「最も売れたハンドガン」となりました。
P365は、コンパクトながら十分な性能を備えた「ディフェンス・ピストル」として、民間だけでなく法執行機関からも支持を得ています。その成功は、他メーカーの製品開発にも影響を与えました。

商業的に大ヒットしているものの、メディアへの露出が少なく、知名度が「そこそこ」なピストルです。小説/アニメ「探偵はもう、死んでいる。」にP365 SASが登場したのは意外でした。長所は、「軽量コンパクト」「装弾数が多い」「信頼性が高い」「トリガープルが良い」です。短所は、「価格が高め」「特殊設計でサイトの互換性が低い」「反動が大きい」です。
SIG P365 採用組織例
H&K(ヘッケラー&コッホ)

H&Kは、ドイツを代表する銃器メーカーです。
1949年、マウザー社の元技術者3名(エドムンド・ヘッケラー、テオドール・コッホ、アレックス・ザイデル)が、ドイツのオーバンドルフで会社を設立しました。最初は機械工具や金属部品を製造していましたが、1956年にドイツ連邦軍からG3ライフルの開発を依頼されたことをきっかけに、銃器メーカーとしての道を歩み始めました。
現在、H&Kはピストル、ライフル、サブマシンガン、グレネードランチャーなどを製造しています。
1990年代には、ドイツ連邦軍にG36ライフルとP8ピストルを供給し、民間市場向けにはAR-15/M4カービンを改良したHK416を開発しました。これらの製品は、世界各国の軍や警察で広く採用されています。
H&Kは銃器設計において、「ポリマー(樹脂)素材の活用」「最新の銃身内部加工技術」「新弾薬技術の開発」など、多くの技術を生み出しており、銃器産業界に大きな影響を与えています。
H&K USP

使用弾薬 | 装弾数 |
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9x19mm | 15発 |
.40 S&W | 13発 |
.45 ACP | 12発 |
USP(ユニバーサル・セルフローディング・ピストル)は、セミオートピストルで、P7シリーズの後継として設計されました。
ブローニングスタイルのカムロックアクションを使用し、ポリマーフレームを特徴としています。
1989年にアメリカ市場向けに.40S&W弾を使用するUSP40の開発が始まり、1993年に初めて発表されました。その後、9mm仕様のUSP9や、.45ACP仕様のUSP45も開発されています。
特徴的な点は、「ダブルリコイルスプリング・アセンブリ」と「ナイロン・ブッシング」による反動軽減システムで、これにより発射時の衝撃を抑え、摩耗を軽減します。
USPは高温や低温、湿度の高い環境でも高い信頼性を誇り、過酷な環境テストをクリアしています。
USPは1994年にドイツ連邦軍(Bundeswehr)にP8として採用され、いくつかの改良が施されました。また、アメリカでは、1998年に移民・帰化管理局(INS)に採用され、その後、国土安全保障省(DHS)にも採用されました。
コンパクトバージョンであるUSP Compactは、警察や特殊部隊でも使用されており、その信頼性と性能が評価されています。
USPの一部モデルは、SIG SauerのDAKトリガーに似た「LEMトリガー」システムを搭載しており、「携帯時の安全性」「命中率」「速射性」が向上しています。
LEM(Law Enforcement Modification)トリガーは、スライドが後退するとハンマーが半分プリコックされることで軽いトリガープルを実現します。ダブルアクション時と同様の長いストロークでありながらシングルアクションと同じトリガープルの重さとリセット位置となり、安全性とシンプルさを両立します。ダブルアクションとシングルアクションの利点を兼ね備えた独自のトリガーシステムで、USP、P30、P2000、HK45などのハンマー式のピストルで利用されます。

初めてUSPを実射した際、スライドにガンオイルが付着しており、セレーションが滑ってスライドが引きにくかったのが印象に残っています。USPは「低反動」で「命中率が高い」という長所がある反面、「現代の水準では大きさの割に装弾数が少ない」という短所があります。かつての「名銃USP」も、時代が変わると設計が古くなるのは寂しい気もします。
H&K USP 採用組織例
H&K VP9

使用弾薬 | 装弾数 |
---|---|
9x19mm | 15/17発 |
VP9(ヨーロッパとカナダではSFP9と呼称)は、ポリマーフレームの9mm口径ストライカーファイア・セミオートピストルで、”Volkspistole 9″(国民拳銃9)と名付けられました。
VP9は、H&Kが製造した3番目のストライカー式ピストルで、P7シリーズに続くものです。このピストルは、バイエルン州警察の要求で開発が始まり、2014年に発売されました。
設計は、P30のストライカー式バージョンとして開発され、初めは「P30X」という名称で進められましたが、最終的には「VP9」に変更されました。
VP9は、カスタマイズ可能なグリップ、ピカティニーレイル、アンビ対応設計を特徴とし、短く軽いトリガープルを持ちます。
フレームには、アクセサリー取り付け用のフルサイズピカティニーレイルが組み込まれ、耐荷重性に優れています。
また、アメリカ市場向けには、「LE」パッケージ(トリチウム・ナイトサイト付き)や、ボタン式マガジンリリースを備えた「VP9 B」などのバリエーションも登場しました。
2020年には、ドットサイト取り付け用スライドカット、17連マガジン、ブラックアウトリアサイトなどが標準装備されるアップデートが行われました。
VP9は、2014年に「Guns and Ammo誌」のハンドガンオブザイヤーを受賞し、その後、2015年には「ゴールデン・ブルズアイアワード」をも受賞するなど、高い評価を得ています。
また、バリエーションとしては、ドイツ警察用のSFP9 TRや、海兵隊向けのSFP9 M、競技用のSFP9 Matchなどがあり、アメリカ市場でもVP9、VP9SK、VP Tacticalなどが販売されています。
日本では2020年東京オリンピックの際に一部の警察に配備された他、自衛隊がSFP9を制式採用しました。

VP9の内部構造に感動して詳細な解説記事を書いたのですが、「下書き」で1年近く放置しています。需要があるのかわかりませんが、いずれ完成させて公開したいです・・・。VP9の長所は、「トリガープルが良い」「耐久性が高い」「信頼性が高い」「命中精度が高い」「人間工学的に優れた設計」です。短所は、「高価」ですが、ユーザーによっては「ウェポンライトの互換性が低い」「テイクダウンレバーの位置がサポートハンドの邪魔」「グリップテクスチャが甘い」などの不満の声もあります。
H&K VP9 採用組織例
次のページでは「FN Herstal」「Beretta」「Springfield Armory」を紹介します。