
サボット弾(サボ)は、特定の銃器において弾頭を効率的に発射するために使用される特殊なアダプターです。
銃の口径より小さい弾頭を高精度で発射できるため、戦車砲やライフル、ショットガンなどで広く利用されています。
本記事では、サボット弾の基本的な仕組みから、ライフルやショットガンでの使い方までを詳しく解説します。
サボット(サボ)とは?

サボット(Sabot / サボ)とは、銃の口径より小さな直径の弾頭を発射する際に、弾頭に装着されるアダプターです。
サボット(Sabot)は、弾頭を銃身の中心に保持し、発射時に銃口に向かって正確に進むようにサポートするアダプターです。
サボットを使用することで、細い弾頭を大きな口径の銃身から発射可能となり、最大の運動エネルギーを伝えることができます。

発射後、サボットは弾頭から分離し、短い距離を飛んで落下。
サボットが離れた後、弾頭だけが長い距離を飛翔します。
サボットによって弾頭を銃身内で安定させ、高圧ガスが弾頭の後ろから前方に向かって漏れないようにします。
戦車砲の弾薬として、APDS(装弾筒付徹甲弾)やAPFSDS(装弾筒付翼安定徹甲弾)などが存在しますが、これらはサボットを利用し、空気抵抗が少なく高速で飛翔することでターゲットに対して高い貫通力を持ちます。
サボットは通常、軽量で強度の高い素材(小口径の銃ではプラスチック、大口径の銃ではアルミニウムやカーボンファイバー強化樹脂など)で製造されています。
サボットは1930年代にフランスのエドガー・ウィリアム・ブラントによって発明され、サボットはフランス語で「靴」を意味します。

通常、銃や砲で個々に定められている口径より小さい弾を使用することはできません。
ライフルを例にすると、12.7mm口径の銃に7mmの弾は使用できず、12.7mm口径専用の弾を使用する必用があります。
しかし、サボットでは12.7mm口径の銃身から7mmの弾頭を発射可能になります。
これにより小口径で高速飛翔することから強力な貫通力を得られます。
サボットの米国英語での発音記号はsæbóʊで、英語では「セイボー」、フランス語では「サブー」に近い発音です(Sabotの「t」は発音しません)。日本語では「サボット」や「サボ」と呼ばれています。
サボットの欠点

一見高性能なサボットですが、サボットにも欠点があります。
サプレッサーやマズルブレーキを装着した銃で使用すると、内部でサボットが詰まり、そこへ次弾が衝突すると破裂事故に至る場合があります。
また、弾頭と同じ速度で発射されるサボットは近距離において危険で、横方向へ逸れたサボットが味方に命中したり跳弾する可能性があり、軍用小火器には不向きとされています。
かつて、ステアーACRはフレシェット弾にサボットを利用し、この問題が解決できず開発計画が終了した経緯があります。
その他、サボットは通常弾と比較して価格が高いのも欠点です。
例えば、アメリカではライフルドスラグが1箱あたり約5〜10ドルに対して、サボットスラグは15〜30ドル以上になることがあります。
ショットガンのサボット弾

ショットガンは多種多様な弾を使用することが可能ですが、一般的には複数の弾を同時発射する「散弾」と、一発のみの「スラグ弾/スラッグ弾/slug」が多く利用されています。
ショットガンでのサボットはスラグ弾に使用されるもので、銃の口径よりも直径が小さいスラグ弾を発射可能です。
アメリカでは1980年代頃からショットガンでサボットが利用されるようになりました。
ライフルドスラグ VS サボットスラグ
スラグには様々な種類が存在しますが、ライフルドスラグとサボットスラグは多く利用されるスラグ弾です。

ライフルドスラグは弾の側面に斜めの溝があり、空気抵抗によって空中で回転します。
弾は空中で回転することでジャイロ効果によって直進性が向上し、高い命中率を得ることが可能です。
しかし、ライフルドスラグの回転は非常に遅く、この回転によって命中率が向上する効果は微妙なところです。
例を挙げると、約20ヤードの距離でライフリングが備わった銃身からスラグを発射した場合、ターゲットに命中するまでに約20~25回ほど回転しますが、ライフリングのないスムースボアの銃身から発射されたライフルドスラグは1~2回程度しか回転しません。
事実上、ライフルドスラグに備わった溝は弾の回転を助けるためのものではなく、狭いチョークを安全に通過するために必要な事故防止機能として意味があると言えます。

一方、サボットスラグはライフリングが備わった銃身(ライフルドバレル)から発射され、ライフルドスラグより強い回転によって高い命中率を得ることが可能になります。
しかし、ライフルドスラグとサボットスラグの命中率の差はピストルやライフルと比較すると小さいものです。
ショットガンは近距離で使用される銃のため、実質的な命中精度の差が重要となるかは目的によって異なります。
「少しでも高い命中率を追求したい」「ホローポイントのスラグを使用したい」「より高い貫通力が必要」といった場合にサボットスラグを選択すると良いでしょう。
しかし、サボットスラグはライフルドスラグより高価な傾向があったり、アメリカでは狩猟にライフルドバレルを使用することを規制している州や地域があるなどデメリットもあるため、目的に合わせて選択する必用があります。
ショットガン用サボット弾の長所と短所
サボット弾の長所
- 高精度: 特に200ヤード(約183m)以上といった長距離で優れた精度を発揮し、大型獣の狩猟に最適。
- 長射程: ライフルドスラグよりも弾道が向上し、より長い有効射程を持つ。
- 高速: 速度が速く、着弾時の運動エネルギーも増加。
- 安定弾道: ライフリングによる回転で、通常のライフリングスラグよりもフラットで安定した弾道を持つ。
- 多用途: 弾頭やスリーブの素材を変更することで、ニーズに合わせてカスタマイズ可能。
サボット弾の短所
- 高コスト: 製造コストが高く、ライフルドスラグよりも高価。
- バレル: ライフルバレルのショットガン用に設計されており、スムースボアバレルでは性能を発揮しない。
- 複雑な設計: 設計上製造が難しく、品質の一貫性に欠ける場合がある。
- 強い反動: 通常のスラグ弾よりも反動が大きくなることがある(特に3インチシェルで顕著)。
- 近距離に不向き: 75ヤード(約69m)以下の短距離では、サボットスラグとライフルドスラグの性能差はほとんどなく、高コストが無駄になる可能性がある。
まとめ
サボット弾は、精度と射程において優れており、長距離射撃や狩猟に最適な選択肢です。
しかし、コストが高く、ショットガンでは特定のバレルが必要なため、すべてのユーザーにとって必要であるとは限りません
最終的には、ユーザーのニーズ、使用する銃の種類、射撃の目的に依存します。