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5.56mm NATOと.223レミントンの違い

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西側諸国の軍で使用される5.56mmNATO弾は.223レミントン弾と同サイズであるにも関わらず、AR-15など多くの民間モデルで使用できません。

それは何故なのか、ざっくりと解説します。

軍用弾として誕生した.223レミントン弾

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Photo via military.com

第二次世界大戦後、米軍は着脱式マガジンを備えたフルオート射撃が可能なライフルを必要としていました。

1950年代に入り7.62mmNATO弾を採用しましたが、同時に「SCHVライフル/スモール・キャリバー・ハイ・ベロシティー・ライフル」(小口径高速弾ライフル)の研究開発をスタートさせます。

1951年、いわゆるSALVO計画がスタートし、高速なフレシェット弾を使用するライフルを開発しようとするものの、結果要求を満たす銃は完成せず、一方で既存の弾薬を改良した小口径高速弾の開発を推進しました。

.222レミントン、.224ウィンチェスター、.224スプリングフィールドなど、様々な.22口径ライフル弾が存在する中、当時アーマライトのAR-15に適した弾を選定するため様々な口径バリエーションのAR-15がテストされましたが、AR-15の生みの親であるストーナー氏は.222レミントンの性能が不十分であることを指摘し、ガス圧の限界を超えずにより弾速のある弾薬を求め、ウィンチェスター社とレミントン社にケースの容量アップを要求しました。これにレミントン社が応えて.222スペシャルが誕生。

その後.222スペシャルは.223レミントンと名づけられ、米軍のAR-15に使用するM193(.223レミントンの米軍内制式番号)として採用されました。

SS109(欧)/M855(米)が5.56mm NATO弾

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民間で使用される.223レミントンや米軍で使用されていたM193は、どちらも5.56x45mm(口径5.56mm/ケース長45mm)というサイズですが、いずれもNATO弾ではありません。

ベルギーのFN社により発展したSS109がNATO規格の弾として採用され、米軍ではこの弾をM855と呼んで使用しています。

SS109はM193より重い弾頭を使用し、遠距離での貫通力がより高い性能を持ち合わせています。

想定するガス圧の差

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Photo via sadefensejournal.com

5.56mm NATOの規格では発生するガス圧は62,000psiを上限とし、一方、.223レミントンはSAAMI規格で55,000psiを上限としています。

およそ12%の差で両者の想定する限界値が異なるため、.223レミントンの使用を想定している銃に5.56mm NATOを使用すると、撃発時に耐圧限界値を超えて破裂事故を起こす可能性があります。

圧力差は概ね5%以下といわれていますが、仮に安全に撃てたとしても高圧力はジャムの原因となりうるためメリットがありません。

また、NATOとSAAMIでは圧力の計測場所が異なります。NATO(C.I.P.)はケースの先端、SAAMIはケースの中央を測ります。

スロートの長さ

チャンバー(薬室)の先にはスロート(リード)と呼ばれる空間があり、ここは円錐状で、徐々に狭くなった先にライフリングが始まっています。このチャンバーの先端とライフリングが始まる間をスロートと呼びます。

発射の際、弾頭は少しづつ狭くなった穴に沿ってスムーズに滑り込み、バレルと弾頭が同芯線上に位置するのが理想で、スロートは精度や安全面で重要な場所といえるでしょう。

5.56mm NATOと.223レミントンではスロートの長さが異なります。

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Photo via wingtactical.com

5.56mm NATOでは長さが0.162インチ、.223レミントンは0.085インチとほぼ二倍の差があり、全長の長いスロートに短い弾頭が使用されると中心がズレて命中精度に影響したり、ブレーキが掛かることで内圧が上昇するといった不具合が生じます。
ちなみにフリーボア(発射された弾がバレルに接触しない部分)の長さは5.56mm NATOでは0.059インチ、.223レミントンでは0.025インチです。

5.56mm NATOを.223レミントンのチャンバーで使用すると、弾頭がライフリングに接触するタイミングが早すぎて圧力が危険なレベルに達しやすくなります。

重い弾(長い弾頭)と軽い弾(短い弾頭)

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Photo via Accurateshooter.com

口径を変えずに弾頭の重さを変えるには、比重の異なる材質を使ったり内部に空洞を作る方法がありますが、一般的に重さによって全長が異なります。

弾頭の全長が長く重い弾を使用する場合は、装填時に弾頭がライフリングにつっかえないよう長いスロートが必要です。その点、5.56mm NATOは.223レミントンより長いスロートが備わっているので、より重い弾頭を使用できます。重い弾頭は初速が遅い反面、遠距離で安定し貫通力が高いメリットがあります。

逆に、短いスロートに全長の長い弾頭を使用するには、ケースの中に弾頭を深く押し込む方法が考えられますが、これは発射時に高圧になりがちなので注意が必要です。

もし長いスロートに短い(軽い)弾頭を使用したら、以下のような状態になることがあり、命中精度の狂いや圧力の上昇を招きます。

わかりやすくするためFLASH動画を描いてみました。実際よりかなりオーバーに表現しています。

正常に発射された場合と、弾頭に偏った負荷が掛かった場合とでは、圧力が変化します。

5.56 NATOバレルに.223レミントンは使用可能だが低精度の場合も

安全性を考えた場合、5.56mm NATOのチャンバーに.223レミントンを使用することは問題ありませんが、命中精度やパフォーマンスの面で不利となることがあります。

バレルに刻まれたライフリングにはそれぞれ決められたライフリング・ピッチ(ツイスト・レート)があり、ライフリングの角度によって弾頭の回転数をコントロールしています。

一般的に命中精度を維持するためには弾頭重量が重いほど速い回転が必要となりますが、回転数が速すぎると空中でバランスを崩し精度が低下します。そのため、回転数は最低限の回転数を維持し、可能な限り低速回転で飛ばす必要があります。

5.56mmバレル刻印
Photo via nrablog.com

5.56mm NATOでは殆どの場合「1:7」というピッチが使用され、これは弾頭が7インチ進むと1回転することを意味します。

民間モデルを含めると弾頭重量は様々あり、それらに対応したバレルには1:6.5(重い弾用)や1:16(軽い弾用)など、様々なピッチが用意されています。

逆に、.223レミントンのチャンバーに5.56mm NATO弾を使用するのは危険を伴うため避けなければなりません。銃を問題なく作動させるには、チャンバーと弾薬の規格が同一であるべきでしょう。

もちろん例外はありますが、使用するモデルが.223 Wyldeのような.223レミントンと5.56mm NATOに対応している場合を除き、原則として5.56mm NATOバレルには5.56 NATO弾、.223レミントンのバレルには.223レミントン弾を使用することが推奨されます。

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