初めてご連絡いたします。
かつて米陸軍のACRプロジェクトにステアー社が提出したモデル(エヴァのパレットガンの元ネタになったアレです)はプラ薬莢にサイドプライマー、下方エジェクトなど革新的な構造だったと聞きますが、当時のGun誌の床井氏のレポートでは「パテント関連の都合で構造は公表できない」と濁され、現在のネットでも曖昧な構造図らしきものしか見つけることができません。
作動メカニズム、特に、従来の方式ではブリーチがマガジンから弾を拾えないであろうボルト周りについて、ご存知のようでしたらご教授願います(「TKB-022と同じ」というお茶の濁し方は無しの方向で)よろしくお願い致します。
ステアーACRはボルトやエキストラクターが存在しないという、一般的なライフルとは異なる珍しい構造を持ちます。
ちなみにTKB-022とは全く異なる構造です。
また「曖昧な構造図らしきもの」とは、下図のことかもしれませんが、これは当時のパテント図なので内容は正確です。
Firearm US 4760663 A
https://www.google.com/patents/US4760663
ステアーACR(アドバンスド・コンバット・ライフル)の構造と装填の仕組みとは?
具体的な作動は以下の通りです。
1:コッキングしていない状態では、バレル周囲のリターンスプリングは伸びた状態になっており、上の図の通りです。
2:コッキングによってスプリングが縮み、トリガーに引っ掛かってロックされます。このとき、同時に後退したオペレーティングロッドによって薬室がエレベーターの様に下に降ります。(銃身と薬室は別パーツです)
降りた薬室はマガジン内の弾薬と同軸線上に位置します。
3:トリガーを引くとリターンスプリングが開放され、オペレーティングロッドに繋がったパーツ(ラマー)がマガジンから弾薬を押し込み、薬室内に装填されます。
そして薬室が上昇し、固定ファイアリングピンがプラスチックカートリッジを貫通して円周状に配置されたプライマーに接触し撃発します。
4:撃発するとガスピストンがガスによって押され、この力を利用してオペレーティングロッドが後退し、薬室が下降します。
5:次弾がマガジンから薬室に装填されると、空のカートリッジは新しい弾薬に押されて薬室の前から落下し、そのままエジェクションポートから外へ落ちます。
以上です。
ポイントは、銃身と薬室が別パーツとなっており、薬室が上下に移動する構造です。
H&K G11では薬室が回転式でしたが、ステアーでは上下に移動させる方法を採っています。
H&K G11の回転式薬室
ステアーACRの記事興味深く読ませていただきました。
便乗質問の様で申し訳ないのですが追加で教えてください。
ステアーACRやH&K G11もそうですが、スルーホールのチャンバーの様に見えます。
その場合のカートリッジの位置決めはどのように行っているのでしょうか?
両方とも後ろからカートリッジを押しているだけのように思えます。
またACRは発射済みのカートリッジの排出、G11は不発カートリッジの排出の為、エジェクションポート側にストッパーがあるようには思えません。
ゆっくり動作させる分には問題はないかと思うのですが、フルオートの場合だと慣性がついてカートリッジが定位置で停止しない可能性があると思うのです。
下図はH&K G11の回転式薬室(初期プロトタイプ)を表しています。
G11の詳しい説明は長くなるため割愛しますが、G11の回転式薬室は回転するなかで装填、発射、エジェクション(不発弾排出用)の動作を行い、エジェクション時のみ下側のシャッターが開く構造となっています。
これは砂や泥などの異物進入を防ぐ役割もあります。
G11は試作のみで終了したライフルですが、試作品には様々な種類があり、そのなかで弾薬の形状変更と共に薬室の形状も変更されました。
初期のケースレス弾薬で弾頭が剥き出し状態となっているものには、薬室内が一般的なライフルと同様に弾薬が通り抜けられない構造になっているものも存在します。
ステアーACRの薬室部分
そして上図はステアーACRの薬室部分のパテント図です。
図の「9b」の部分がストッパーです。
新しい弾薬が薬室に装填されると、発射済みのカートリッジが押されて前へ抜け落ちます。
そして空のカートリッジが完全に抜け落ちると同時に、薬室上昇によってストッパーが次弾の前進をストップします。
この構造で作動の信頼性を得るには、使用するプラスチックカートリッジのサイズが常に一定である必要があり、カートリッジの精度がジャムの直接的原因となるなど、ACRの問題点のひとつとなりました。
最後までお読みいただきありがとうございます。
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