オートピストル(自動式拳銃)はマガジン内と薬室内に弾薬が装填される構造です。
銃にマガジンを挿入し、スライドを引くとマガジン内の弾薬が薬室へ装填されます。
このとき、ハンマー(ストライカー)は後退状態を維持し、トリガーを引けば発射可能です。
この状態で銃を携帯したとき、うっかりトリガーに触れると自分や第三者を誤射する可能性があります。
トリガーに指が掛かる可能性だけでなく、衣服やホルスターの一部がトリガーに触れたり、テーブルの上に銃を仮置きした際に銃を取ろうとして指がトリガーに触れて発射した事例も存在します。
このことから、「銃を携帯する際は薬室内に弾を装填しない方が良いのか?」、それとも「薬室に装填するべきか?」と議論されることがあります。
果たして、どちらが正しいのでしょうか?
これには様々な考え方がありますが、一般的には「薬室装填が正しい」とされています。
薬室装填で携帯する方が良い理由
軍、法執行機関、民間においてハンドガンは護身用に多く使用されています。
(もちろん法執行機関では狭い屋内などにおいて攻撃の手段としてピストルが利用されることもありますが、そのほとんどが護身用途となります)
こうした軍や法執行機関のプロはもちろん、民間においても多くは薬室に装填した状態で携帯しており、それには理由があります。
理由1:スライドを引く時間がない
FBIの統計を確認すると、発砲事件の多くは「近距離」や「短時間」で起きていることがわかります。
フレンドリーに会話していた相手が突然銃を抜いて発砲するケースも少なくありません。
そうした瞬間的に起こる事件に対処する際、スライドを引いて薬室に装填し発射するのは時間が掛かりすぎてしまいます。
1秒でも早く相手を撃たなければ自分の命が危ない状況でスライドを引いている時間はありません。
仮に相手の方が自分より発砲が早かったとしても、その弾が有効弾でなければ自分の射撃によって相手の次弾発射を迅速に阻止する必要があります。
理由2:両手が使えるとは限らない
仮に相手があなたの片腕をつかみ、もう片方の手に持つナイフであなたを刺そうとしている状況では片手が塞がっているためスライドを引くことができません。
また、相手の攻撃によって自分の片手を負傷した場合、片手だけでスライドを引くのは困難です。
他にも片手が塞がっている際に銃が必要となる状況は様々で、あらゆるケースが想定されます。
銃のリアサイトを脚の踵に引っ掛けて片手でスライドを引くテクニックも存在しますが、そのような時間を掛けるよりあらかじめスライドを引いて薬室内に装填しておく方が合理的です。
理由3:スライドが引けるとは限らない
自分の命が脅かされているストレス状況下では誰でも緊張します。
このような状況は自律神経が緊張し、普段なら問題なくできることが難しくなる場合があります。
銃を抜いてスライドを引く際も、手が滑ってスライドがうまく引けない、スライドは引けたが手が引っ掛かってしまいスライドの前進速度低下によってジャムが発生するといったリスクがあります。
銃を発射しなければならない場面で正しくスライドが引けるとは限りません。
理由4:安全は訓練で確保できる
近年、大手ガンメーカーによる銃はトリガーを引かなければ発射されない安全性が担保されています。
法執行機関において薬室装填されたグロックがヘリコプターから落下したものの発射されなかった事例もあります。
使用者は銃の安全性を理解し、「銃を撃つ瞬間以外は指をトリガーガード内に入れない」という鉄則を守ることでほとんどの事故を防ぐことが可能です。
これは日常的に意識することで訓練されます。
薬室装填に不安があるのは理解できますが、「何のために銃を携帯するのか」という理由について考えると、誤射や暴発のリスクより有事で銃が役に立たないリスクの方が大きいと感じられるのではないでしょうか。
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