カーアームズK9という拳銃はどうしてNYPDの指定したトリガーの重さにできなかったのでしょうか?
カーアームズの拳銃は以前ポルさんが良い拳銃であるとおっしゃっていましたし、小型で9mmの威力と重さのバランスが写真を見る限り上手くとれた人気のある銃だと思っています。
しかし、NYPDが非番のときに携行できる拳銃の機種から外すという決定が2011年にされたという話を聞いてびっくりしたので質問させていただきます。
K9のトリガーを重くすると構造的に負担が大きく、信頼性を損ねるためといわれています。
NYPDがKahr K9ピストルを排除した理由とは?
仰る通り、ニューヨーク市警は2011年に非番(オフデューティー)時のキャリーガンやバックアップガンとして携帯できる銃のリストからカーアームズK9を外しました。
これはニューヨーク市警独自のレギュレーションによるもので、暴発防止を目的として携帯できる銃はDAOトリガー(ダブルアクション・トリガー)のみとし、トリガープルは12ポンド(約5.4kg)と決められています。
ニューヨーク市警はサービスピストルとしてSIG P226 DAO、S&W5946、グロック19を採用していますが、すべてトリガープルを12ポンド(NY-2トリガー)に設定したニューヨーク市警仕様となっています。
カーアームズK9はストライカー方式のDAOピストルです。トリガープルは8ポンド(約3.6kg)であるため、ニューヨーク市警はカーアームズ社に対し7.5~13ポンド(約3.4~5.9kg)のトリガープルに変更するよう要請しました。
しかし、カーアームズ社はこれを断念し、2011年にK9ピストルはニューヨーク市警のリストから外されます。
ニューヨーク市警は1997年から5,000丁以上のカーアームズ社製ピストルを採用しており、1997年から2011年まで非番時用のコンシールドキャリー・ピストルとして使用されていました。
現在ニューヨーク市警が非番時用として認めているピストルは、S&W3953TSW、S&W3914DAO、S&WM640、グロック G26、ベレッタM8000Dミニクーガー、SIG P239DAO、スプリングフィールドアーモリーXD-Sがリストにあります。
誤った判断を続けるニューヨーク市警
銃器業界の有識者でニューヨーク市警のレギュレーション「トリガープル12ポンド」を支持する人は皆無です。
ニューヨーク市警はなぜか「トリガープルが重い方が暴発が起きにくい」と考えているようですが、それは大きな間違いで素人判断としかいえません。
同市警では2009年に23件、2010年には21件の暴発事故が発生しましたが、これは銃に欠陥があったのではなく、トリガーを引いて暴発させた事故でした。
以前、「S&W M&Pを採用して暴発が増えた理由」の記事で触れたLAPDの暴発事故と同じことがニューヨーク市警でも起きています。銃は正常に作動するが、トレーニング不足の使用者によって暴発事故が繰り返されている状況です。
トリガーを引かなければ暴発しない
カーアームズK9は外部からの衝撃による暴発を防止する安全装置の「ストライカーブロック(上図7番)」を装備しており、トリガーを引かないかぎりストライカーブロックがストライカーの前進を阻止するため暴発しない構造です。
この銃が暴発する原因は、銃を扱う際の基本ルールである「撃つ瞬間までトリガーガード内に指を入れない」が守られていないことによるものです。これが守られなければ、トリガープルを重くしたところで暴発のリスクは無くなりません。
命中率と速射性の低下
銃の射撃性能を向上させるには、トリガーを軽くするのが一般的です。
しかし、逆にトリガープルを重くすると銃がブレやすくなり、トリガーコントロールが困難となることで命中率と速射性が低下します。
ニューヨーク市警は警察官にトレーニングを受けさせることを蔑ろにし、銃の命中率を低下させ一般人や警察官の命を危険にさらしているといえるでしょう。
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