日本の警察で採用されている(採用されていた)銃器をご紹介します。
※掲載画像は参考画像です。
※リボルバー以外の装弾数は薬室を含まないマガジン(弾倉)装弾数です。
リボルバー
ミネベアミツミ ニューナンブ M60
使用弾薬:.38スペシャル
装弾数:5発
- ニューナンブM60はS&W(スミス&ウェッソン)のJフレームおよびKフレームリボルバーをベースにしたダブルアクションリボルバーです。
- 新中央工業(現・ミネベアミツミ)が開発、製造し、1961年から約13万3400丁製造されました。
- 1964年以降、制式拳銃として一本化されています。
- 1990年代に生産終了しましたが、現在も警察官用拳銃として広く配備されています。
- 警察官の装備軽量化の観点から、小型な.38口径リボルバーが求められていた背景があり、国産で扱いやすく信頼性の高い拳銃の開発が推し進められた結果、採用となりました。
S&W M360J SAKURA
使用弾薬:.38スペシャル
装弾数:5発
- SAKURA M360JはS&W社の日本警察向け特注モデルです。
- ベースモデルのM340は.357マグナムを使用可能ですが、当モデルは.357マグナム弾使用を想定しておらず、シリンダーはステンレス製、銃身はアルミ合金+ステンレス製となっています。
- 2006年より調達が開始され、2011年までに約2万5,000丁配備されました。
S&W M36
使用弾薬:.38スペシャル
装弾数:5発
- S&W36は、.38スペシャル弾を使用するJフレームリボルバーです。
- 1950年に発売され、現在も生産されています。
- 小型軽量で携行性に優れるため、これまで軍、警察、民間の幅広い層に使用されてきました。
- 当初は「チーフススペシャル(Chiefs Special)」のモデル名でしたが、1957年からは「モデル36」のモデル名で販売されています。(一般的には現在もチーフススペシャルと呼ばれます)
- かつてアルミフレームの軽量版「モデル37」も存在しましたが、シリンダー強度などの問題で現在は生産終了しています。
S&W M37 エアウェイト
使用弾薬:.38スペシャル
装弾数:5発
- S&W M37はM36の軽量版モデルです。
- 1951年、アルミ製のフレームとシリンダーを使用したエアウェイトモデル37が発売されました。
- アルミ製シリンダーは強度不足などの問題があり、後に廃止されています。
- ランヤードリング付きのモデル37が日本警察向けに製造されました。
- モデル37は2006年に生産終了となっています。
S&W M1917
使用弾薬:.45ACP
装弾数:6発
- S&W M1917はアメリカ軍が第一次世界大戦中に採用した大型リボルバーです。
- 不足していたM1911ピストルを補う目的でコルト社とS&W社が製造し、.45ACP弾を使用します。
- 多くのリボルバーはピストルで使用されるリムレスカートリッジを使用できませんが、S&W M1917はピストルと同様の薬室構造を持つため、ムーンクリップなしでも使用可能です。
- 日本では戦後の拳銃不足時代に使用されました。
コルト M1917
使用弾薬:.45ACP
装弾数:6発
- コルトM1917はS&W M1917とほぼ同じ内容のリボルバーです。
- 第二次世界大戦当時にサイドアームが不足したため、アメリカ政府がS&W社とコルト社に依頼し製造されました。
- コルトM1917はS&W M1917とは異なり、リムを持たない.45 ACP弾を使用するため、ムーンクリップを使用しますが、リム付きの.45オートリム弾も使用可能です。
S&W レギュレーションポリス
使用弾薬:.38スペシャル
装弾数:6発
- S&W レギュレーションポリスはS&W社が開発した小型リボルバーです。
- 1917年から1940年まで製造され、初期のスミス&ウェッソンリボルバーの特徴を持ちます。
- キノコ型のエジェクターロッドが特徴的です。
- 日本では戦後の拳銃不足時代に使用されました。
S&W ビクトリー
使用弾薬:.38スペシャル
装弾数:6発
- S&W ビクトリーは第二次世界大戦中にアメリカ軍が使用したリボルバーです。
- 基本設計は S&W M&P リボルバー (.38 スペシャル弾使用) を元にしており、レンドリース法に基づき、イギリスをはじめとする連合国にも供与されました。
- .38/200 口径で、イギリス軍で使用されていた弾薬に合わせて製造され、一部の.38 スペシャルのモデルはアメリカ軍向けに、海軍や海兵隊の航空機搭乗員や、工場警備員などに配備されました。
- 初期のモデルは検査が不十分で品質に問題がありましたが、後に改善され、1945年には落下による暴発を防ぐ改良が施されました。
- リー・ハーヴェイ・オズワルドがジョン・F・ケネディ大統領暗殺後に警察官 J.D. ティピットを射殺した際に使用したモデルとしても知られています。
- 日本では戦後の拳銃不足時代に使用されました。
コルト ディテクティブ
使用弾薬:.38スペシャル
装弾数:6発
- コルト デテクティブスペシャル は.38スペシャルを使用する1927年~1996年に製造された小型リボルバーです。
- 刑事 (Detective) が隠匿携帯することを想定した設計となっており、軽量コンパクトです。
- カーボンスチールフレームで、銃身長は2インチ (5.1cm) または 3インチ (7.6cm)のダブルアクションです。
- コルト オフィシャル ポリスや S&W M10 より少し小さいフレームサイズとなっています。
- 日本では警察の銃器対策部隊でも使用されています。
コルト オフィシャルポリス
使用弾薬:.38スペシャル
装弾数:6発
- コルト オフィシャルポリスは1908年に発売されたダブルアクションリボルバーで、総生産数が40万丁を超えるベストセラーモデルです。
- 元々は「コルト アーミー スペシャル」というモデル名でしたが、1927年に警察向けを意識して「オフィシャルポリス」に改名され、1950年代にはアメリカの警察用拳銃として広く普及しました。
- 1927年当時人気だった「アーミー スペシャル」と「コルト ポリス ポジティブ」を改良し、「オフィシャルポリス」として発売され、トリガーのチェッカリング追加、フレームトップストラップのマット仕上げ、リアサイト溝の拡大などが施されました。
- アメリカのFBIや陸軍憲兵、財務省、沿岸警備隊、郵便検査局などでも採用され、南米諸国の警察や軍隊でも採用された実績があります。
- 1960年代になるとS&W社製モデルにシェアを奪われるようになり、コルト社は1969年にオフィシャルポリスの生産終了を発表しました。
- 日本では戦後の拳銃不足時代に使用されました。
コルト コマンド
使用弾薬:.38スペシャル
装弾数:6発
- 第二次世界大戦中に製造されたコルト・オフィシャルポリスの軍用版モデル。
- 銃身長は2インチまたは4インチで、2インチバレルモデルは 「ジュニア・コマンド」と呼ばれました。
- コスト削減のため、光沢のないパーカライズド仕上げ、ハンマー、トリガー、シリンダーラッチの金属チェッカリング省略、トップストラップの反射防止処理省略、グリップを木製からプラスチック製に変更などの違いがあります。
- 米軍は48,611丁を調達し、そのうち12,800丁は諜報機関 (軍情報部OSS) に採用されました。
- 日本では戦後の拳銃不足時代に使用されました。
コルト ポリスポジティブ
使用弾薬:.38スペシャル
装弾数:6発
- コルト ポリスポジティブは1905年に発売された.22~.38口径のダブルアクションリボルバーで、コルトの初期モデル「ニュー ポリス」リボルバーを改良したモデルです。
- 複数の口径バリエーションがあり、日本では.38スペシャルを使用するモデルが使用されました。
- 新たな安全装置「ポジティブロック」を搭載し、トリガーを引かない限りファイアリングピンがプライマーに接触しない構造になっています。
- 1900年代初頭には、コルト オフィシャルポリスと共に、法執行機関向けの主要な拳銃でした。
- ギャングの「アル・カポネ」が所持していたことでも知られています。
- 日本では戦後の拳銃不足時代に使用されました。
ピストル
SIG P230JP
使用弾薬:.32ACP
装弾数:8発
採用組織例:SAT / 警視庁警備部警護課 / 皇宮警察 / 機動捜査隊 / 銃器対策部隊
- SIG P230はドイツにて1977年に法執行機関向けに設計された隠匿携帯が容易な小型ピストルです。
- 戦後のドイツ警察ではワルサーPPやPPKが採用され、1970年代初頭の西ドイツでのテロ事件(ミュンヘンオリンピック事件や赤軍派の活動)により、より強力なハンドガンが求められるようになり、.32ACPのP230は採用されず、9mmパラベラム弾が採用されるようになりました。
- ブルーフィニッシュとステンレスフィニッシュの2種類があり、ポリマー製グリップが付属します。
- シングルアクションとダブルアクションの両方に対応しており、デコッキングレバーで安全にハンマーをレスト状態にすることが可能です。
- P230に外部安全装置(マニュアルセイフティ)は備わっていませんが、日本警察向け輸出モデルであるP230JPにはマニュアルセイフティが追加されています。
SIG P220
使用弾薬:9x19mm
装弾数:8発
採用組織例:警視庁警備部警護課
- SIG Sauer P220(シグザウエルP220)は、1975年にスイスのSIG Arms AGによって設計され、ドイツのJ.P. Sauer & Sohn社で製造されたセミオートピストルです。
- スイス軍で「Pistole 75」(P75)として、1975年に9mmパラベラム弾仕様で採用され、日本やデンマークにも採用されました。
- デザイン上の特徴として、デコッキングレバーやファイアリングピン・ブロックセイフティが備わっており、安全に操作することが可能です。
- 日本では新中央工業(現ミネベアミツミ)がライセンス生産し、1982年に「9mm拳銃」として自衛隊に採用されました。
SIG P225
使用弾薬:9x19mm
装弾数:8発
採用組織例:警視庁警備部警護課
- SIG P225はSIG P220のコンパクト版ピストルとして、1970年代中頃、ドイツ警察の新基準に対応するために開発されました。
- ドイツの各警察は基準に合致した選択肢のなかから自由に銃を選定することが可能で、ワルサー P5、P6(SIG P225)、H&K P7などにおいて、P6は最も安価かつ人気が高いモデルでした。
- 1995年にドイツ警察にて新基準が採用され、P225は段階的に置き換えられました。
- P225とP6との主な違いはトリガープルにあり、P225の方が軽いトリガーを採用しています。
- P225はトリチウムサイトを装備し、ドイツ警察向けのP6には「P6」の刻印があります。
- 新型のP225-A1は2015年~2019年に製造され、新型フレーム、短縮されたトリガーリセット、削り出しスライド、2種類のバレル(サプレッサー対応を含む)などの特徴があります。
SIG P226
使用弾薬:9x19mm
装弾数:15発
採用組織例:SAT
- SIG P226は、SIG Sauer(シグザウエル社)が開発したピストルで、9x19mm、.40 S&W、.357 SIG、.22LRの4種類の口径バリエーションがあります。
- P220を基に開発され、シングルスタックマガジン(単列)からダブルスタックマガジン(複列)へ変更されています。
- P226から派生したコンパクト版として、P228、P229があり、サブコンパクト版としてP224が存在し、P226とその派生モデルは世界各国の軍や法執行機関で使用されています。
- 1984年の米軍XM9ピストルトライアルにてP226はベレッタ92SBFと共に最終候補となりましたが、コストの問題からベレッタ92Fが採用されました。
- 米国海軍特殊部隊SEALsはP226を特別仕様のP226 MK25として採用しています。
- P226はドイツとアメリカで製造され、コピー品が中国(ノリンコNP22)やイラン(ZOAF)で製造されています。
SIG P228
使用弾薬:9x19mm
装弾数:13発
採用組織例:SAT / 海上保安庁特殊警備隊SST
- P228はP226のコンパクト版で、米軍ではM11として採用された9mmピストルです。
- P226よりもスライドとバレルが短く、マガジン装弾数は13発、P226用の15~20連マガジンも使用可能。
- P226との違いは、トリガーガードの形状やスライドとバレルの長さで、P228の銃身長はP226よりも15mm短くなっています。
- 民間市場においてP228は一時販売中止になったものの、アンダーレール付きのP228Rとして限定的に再販されました。
- 2012年にP229ベース(グリップの表示はP228)のM11A1が発表され、トリガーリセットが短くなり、ナイトサイト、15連マガジンなどが備わっています。
- 米軍では2017年1月にP320コンパクト(M18)が選定され、M11と交代しています。
ベレッタ 92FS
使用弾薬:9x19mm
装弾数:15発
採用組織例:SIT(特殊事件捜査係)
- ベレッタ92は、イタリアのベレッタ社が1975年に設計し、1976年から生産されているセミオートマチックピストルです。
- 米軍は1985年にM1911A1からベレッタ92FS(92SB-F)へ交代し、2017年まで米軍のサイドアーム「M9」として採用していました。
- ベレッタ92は、M1923やM1951といったベレッタ製小型ピストルから進化しており、オープンスライドデザインやアルミ合金フレーム、ロッキングブロックの機構がM1951から引き継がれています。
- 92の設計上の進化の特徴として、1974年のモデル84(.380ACP)から採用された「ダブルスタックマガジン」と、フィードランプを介さずに直接給弾する「ダイレクトフィード」システムが挙げられます。
- 92FSには、ハンマーピンがスライド下部の溝に嵌る改良が施され、スライドが破断した際に射手に怪我をさせない安全対策が施されています。
- 「92FS」の「F」はイタリア語で「連邦(Federale)」を意味し、アメリカ合衆国連邦政府によるテストに提出されたことを意味します。
- 「92FS」の「S」は、イタリア語で「スライド」を意味する「Scivolo」と、「安全」を意味する「Sicurezza」を指し、安全性が向上したモデルであることを示しています。
- 米軍でのテスト中にスライドが破損する報告を受け、調査により、過剰な威力の弾薬が原因だったことが判明し、ベレッタがアメリカ政府に対して名誉毀損訴訟を起こして勝訴。デザイン変更や改良は政府の費用で行われた経緯があります。
ベレッタ 92FS VERTEC
使用弾薬:9x19mm
装弾数:17発
採用組織例:SAT / 銃器対策部隊
- Vertec(ヴァーテック)は、ベレッタ92シリーズの派生モデルです。
- ストレートバックストラップ、取り外し可能なサイト、アクセサリーレール、拡大されたマグウェル、4.7インチバレルが備わっており、スリムなグリップによって手の小さい射手やグローブを装着した状態でも操作しやすいよう設計されています。
- 9mm(ベレッタ92ベース)と.40S&W(ベレッタ96ベース)のバリエーションがあり、ステンレスフィニッシュやブルーフィニッシュが選択可能。
- Vertecのフィット感や仕上げは高品質で、シングルアクションのトリガープルは5.75ポンド、ダブルアクションは11ポンド。
- シングルアクション、ダブルアクション共にトリガープルが向上しており、1911ピストルのようなトリガープルとも評されます。
ベレッタ 90-Two
使用弾薬:9x19mm
装弾数:17発
採用組織例:SIT(特殊事件捜査係)
- ベレッタ90-Twoは、2006年にリリースされたピストルで、ベレッタ92の改良版です。
- 9x19mm、9x21mm IMI、.40 S&Wの口径バリエーションがあります。
- 後継モデルであるベレッタ92A1/96A1が登場したことで90-Twoは生産終了となりました。
- 92シリーズとの違いはエルゴノミクスを強化したデザインで、交換可能なテクノポリマーグリップにより、手の大きさに適したグリップを選択可能です。
- ダストカバーにアクセサリーレールが追加され、ライトやレーザーを装着可能。
- レール用のカバーが付属し、未使用時にレールを保護します。
- 対応するマガジンは9x19mmで10, 15, 17発、9×21mm IMIで15発、.40 S&Wで10~12発が用意されています。
- 内蔵リコイルバッファーと改良されたサイトを搭載し、サイト間の長さが従来より5mm延長されています。
ベレッタ 85FS
使用弾薬:.380ACP
装弾数:8発
採用組織例:厚生労働省(麻薬取締官)
- ベレッタ80シリーズは1976年に登場したコンパクトなストレートブローバック方式のピストルで、イタリアのベレッタ社が製造しており、米国では「チータ(Cheetah)」のモデル名で流通しています。
- ベレッタ85は弾薬に.380 ACP(9mmショート)を使用し、シングルスタックマガジンのためグリップが薄く、握りやすいのが特徴です。
- FSバージョンは1990年頃に導入され、コンバットトリガーガード(指を置ける前面が四角い形状)、プラスチック製グリップ、ブルニトンフィニッシュ、クロームメッキされた銃身と薬室、セイフティ兼デコッキングレバーが備わっています。
- 「85FS」の「F」はイタリア語で「連邦(Federale)」を意味し、アメリカ合衆国連邦政府によるテストに提出されたことを意味します。
- 「85FS」の「S」は、イタリア語で「スライド」を意味する「Scivolo」と、「安全」を意味する「Sicurezza」を指し、安全性が向上したモデルであることを意味します。
グロック 19
使用弾薬:9x19mm
装弾数:15発
採用組織例:SAT / 警視庁警備部警護課
- グロック19(G19)はグロック17(G17)のコンパクト版で、1988年に軍や法執行機関向けに製造されました。
- G17よりも全長が約12mm短く、標準で装弾数15発のマガジンを使用します。
- 他のG17やG18のマガジンも互換性があり、17発から最大33発までのマガジンが使用可能。
- G19のバリエーションとして、G19XやG19Mが存在します。
- G19XはXM17モジュラーハンドガンシステムのために提案されたモデルの民間バージョンで、G19のスライドとG17のフレームを組み合わせた設計です。
- G19Mは2016年にFBIの要請に応じて開発されたコンパクト9mmモデルで、アンビスライドストップ、拡張されたマガジンウェル、新型マガジンベースプレート、ポリゴナルライフリング廃止などの改良が特徴で、米海兵隊やシークレットサービスでも採用されました。
- 2017年にはカナダの銃規制に対応するため「G19カナディアン」も製造され、延長された銃身長106mmの銃身を装備し、スライドにはメープルリーフのレーザー刻印が施されています。
ワルサー PPK
使用弾薬:.32ACP
装弾数:8発
採用組織例:警視庁警備部警護課 / 皇宮警察
- ワルサーPPはドイツのワルサー社(Carl Walther GmbH)が1931年に製造したストレートブローバック方式のピストルです。
- ワルサーPPシリーズには「PP」の他、「PPK」「PPK/S」「PPK/E」などの派生モデルが含まれます。
- PPとPPKは世界初の成功したダブルアクションピストルとして知られており、第二次世界大戦中にはドイツの軍や警察で使用されました。
- ソ連のマカロフやハンガリーのFEG PA-63など、多くの銃に影響を与えており、歴史的にダブルアクションピストルのお手本となった名銃です。
- PPKはドイツ、フランス、アメリカ、ハンガリーでライセンス生産され、PPKおよびPPK/Sは2018年からアメリカのワルサーアームズ社(Walther Arms)で製造されています。
- 「PPK」の「K」は「Kriminal(犯罪/刑事)」を意味し、隠匿携帯が容易で犯罪捜査機関に使用されることから「PPK(刑事用警察拳銃 / Polizeipistole Kriminal」と名付けられています。
- PPKはアドルフ・ヒトラーの自殺や朴正煕暗殺に使用されたことで有名である他、小説や映画の「ジェームズ・ボンドシリーズ」での使用により、PPKの人気が高まりました。
- PPK/Sは1968年のアメリカ銃規制法に対応するために開発されたモデルであり、PPのフレームとPPKのスライドを組み合わせ、重量を増して輸入制限に対応されました。(米国内で製造されるモデルは対応不要)
- PPK/Eは2000年からハンガリーでFEG社がライセンス生産しているモデルですが、PPK/Sと一部パーツの互換性がありません。
- 日本警察では警視庁警備部警護課や皇宮警察で使用されましたが、SIG P230JPに交代しました。
コルト M1903
使用弾薬:.32ACP
装弾数:7発
- コルトモデル1903 ポケットハンマーレスは、ジョン・ブローニングが設計し、コルト社が製造した.32ACPを使用するピストルです。
- ハンマー(撃鉄)が内蔵されているものの、外部にハンマーが露出していないことから「ハンマーレス」と呼ばれ、取り出す際に衣服に引っ掛かりにくく、隠匿携帯に適した設計です。
- グリップセイフティとマニュアルセイフティの二重安全機構が備わっています。
- 1903年~1945年に約57万丁が生産され、第二次世界大戦中から1970年代まで米軍で使用されました。
- 特性ホルスターと将校の名前が刻印された将校モデルも存在し、多くの米軍将校に配布され、ダグラス・マッカーサーやジョージ・パットンなどの著名な将軍にも与えられました。
- アル・カポネやジョン・ディリンジャーなど、多くのギャングに愛用され、日本の元首相である東條英機が自殺未遂に使用したことでも知られています。
- 日本では大日本帝国陸軍将校に愛用され、戦後の日活アクション映画では「日活コルト」として知られています。
- 戦前、戦中、戦後に少数のモデル1903が日本の警察機関に使用されました。
コルト M1911A1
使用弾薬:.45ACP
装弾数:7発
- コルトM1911は、米国のジョン・ブローニングが設計した.45ACP弾を使用するシングルアクションピストルです。
- 1911年に米軍に採用され、改良型のM1911A1は1926年から使用されました。
- 1890年代後半、米軍はリボルバーに代わるセミオートピストルを求め、フィリピン・アメリカ戦争での経験から大口径が必要と判断され、.45口径のM1911が最終的に採用されました。
- グリップセイフティやマニュアルセイフティを備え、軍用として信頼性の高い設計が評価されました。
- 1911年から1985年まで米軍の制式採用ピストルとして広く使用され、第一次・第二次世界大戦、朝鮮戦争、ベトナム戦争で活躍。
- M1911はショートリコイル方式を採用し、工具無しで簡易分解可能というメンテナンス性の高い設計です。
- 民間市場では.45ACP以外にも.38スーパーや9mmパラベラムなど様々な口径バリエーションが製造され、世界各国で使用されています。
- 1911シリーズは競技用としても根強い人気があり、現代の射撃競技でも使用されています。
- 日本では戦後に自衛隊が使用した他、全国の警察に14,160丁配布され、1990年代まで使用されていました。
S&W M5906
使用弾薬:9x19mm
装弾数:15発
採用組織例:海上保安庁
- S&W モデル5906はS&W社が1989~1999年に製造したオールステンレス製のダブル/シングルアクション(DA/SA)ピストルです。(5906TSWは2000~2004年製造)
- マガジンディスコネクト機能(マガジンセイフティ)により、マガジンが正しく挿入されないとトリガーが作動しない安全装置が備わっています。
- アンビセイフティレバー、ラップアラウンドグリップ、固定または調整可能なサイトが備わっています。
- アメリカの軍や法執行機関で人気がありましたが、現在はグロックやS&WのM&Pシリーズなどのポリマーフレームピストルにシェアを奪われています。
- S&W社製ピストルのモデルナンバーには規則性があり、1世代目が2桁、2世代目が3桁、3世代目は4桁の番号で識別されており、モデル5906は三世代目に当たります。(例外として3世代の一部には「バリューシリーズ」と呼ばれる3桁の廉価版モデル(915や910など)が存在)
- モデル5906はオールステンレスのため、アルミフレームを使用する5900シリーズのなかで最も重いモデル(1070g)となっています。
S&W M3913
使用弾薬:9x19mm
装弾数:8発
採用組織例:SAT / 銃器対策部隊 / 埼玉県警察RATS / 高知県警
- S&W モデル3913は、1989年から1999年まで製造されたコンパクトな9mmセミオートピストルで、S&Wの第三世代シリーズのひとつです。
- アルミフレームとステンレス製スライド・バレルを採用し、マニュアルセイフティとデコッキングレバー、固定のノバックサイトが備わっています。
- シングルスタックのスリムでコンパクトな設計のため、隠匿携帯に適しています。
- コンパクトながら、25フィート(約7.6m)の距離で1.5〜2インチ(38~51mm)の精度を保つことができる集弾性能を持ちます。
- 生産終了後も人気があり、一部の法執行機関で使用され続けています。
- 日本ではドラマ「アンフェア」にて主人公の雪平夏見(篠原涼子)が所持していたことでも有名です。
S&W M&P
使用弾薬:9x19mm
装弾数:15発
- S&W M&P (ミリタリー&ポリス)は、2005年にアメリカのS&W社が開発したショートリコイル方式のセミオートピストルです。
- 5.7×28mm、9mm、10mmオート、.22LR、.22WMR、.30スーパーキャリー、.357SIG、.380ACP、.40S&W、.45ACPといった多くの口径バリエーションを展開しています。
- M&Pは同社のシグマやSW99のデザインを進化させたモデルで、トリガーの改良とエルゴノミクスが強化され、カスタマイズ性が向上しています。
グロックに対抗するため、改良されたトリガー、トリガーを引かずに分解できる独自の機構が採用されました。 - Zytel製のポリマーフレームにステンレスシャーシが補強された構造で、4種類の交換可能なグリップインサート、18度のグリップ角度、メロナイト処理されたステンレス製スライドとバレルが備わっています。
- トリガーが引かれると、ストライカーが完全にコックされて発射されるという、グロックに似たシステムを採用し、同社は「ダブルアクションオンリー(DAO)」として分類しています。
H&K VP9(SFP9)
使用弾薬:9x19mm / .40S&W
装弾数:15、17、20発(9mm)/ 13発(.40S&W)
- ドイツのヘッケラー&コッホ社(Heckler & Koch GmbH)が開発したVP9(SFP9)ピストルは、ポリマーフレームの9mm口径セミオートピストルです。
- HK P7を採用していたドイツ・バイエルン州警察の要求に応じ、約4年の開発期間を経て2014年に登場。
- 「VP9(Volkspistole 9/国民拳銃 9)」のモデル名で発表された翌年、欧州市場とカナダ市場向けは改良型として「SFP9」が発表されました。(.40S&WモデルはVP40 / SFP40)
- 欧州モデル名の「SFP」は「ストライカー方式ピストル(Striker Fired Pistol)」を意味します。
- 重量を比較するとSFP9(710g)はVP9(753g)よりわずかに軽量です。
- 元々はハンマー方式であるP30ピストルのストライカー方式版という意味で「P30X」というモデル名でしたが、「VP9」へと変更されました。
- グリップパネルとバックストラップを交換可能で、27通りのグリップカスタマイズが可能。
- 「チャージングサポート」と呼ばれる凸型パーツがスライド後部両側面に装着され、スライドの引きやすさが向上しています。(サポート形状はVP9とSFP9で若干異なる)
- イタリア市場向けには9x21mmIMIを使用するモデルが流通しています。
- ドイツはウクライナへの軍事支援として3,500丁のSFP9を提供しました。
- 日本では2020年にSFP9M(塩水対応モデル)が9mm拳銃の後継として陸上自衛隊に採用。
- 2021年の東京オリンピックに対応するため2,000丁が調達され、全国の警察で使用されています。
H&K P2000
使用弾薬:9x19mm
装弾数:13発
採用組織例:SAT / 銃器対策部隊 / 埼玉県警察RATS
- ドイツのヘッケラー&コッホ社(Heckler & Koch GmbH)のP2000は、2001年後半に開発されたセミオートピストルです。
- 主に軍や法執行機関市場向けに設計され、USPコンパクトをベースに改良されたエルゴノミクスに特徴があります。
- DA/SAモデルでは側面のセイフティとデコッキングレバーを廃止し、後部にデコッカーを搭載。
- グリップは交換可能なバックストラップでサイズを調整でき、アンビスライドリリースとアンビマガジンリリースが備わっています。
- ブローニング式のリンクレスカムアクションと冷間鍛造ポリゴナルバレルを採用し、スライドは軟窒化処理されたスチール製を採用したことで耐久性が向上しました。
- USPシリーズとは異なり、アクセサリーレールを採用し、タクティカルライトやレーザーサイトなど多様なアクセサリが使用可能となっています。
- トリガーシステムは「DA/SA(ダブルアクション/シングルアクション)」または「CDA(コンバット・ディフェンシブ・アクション/LEM(ローエンフォースメント・モディフィケーション)」から選択可能となっており、トリガーの重さは複数のバリエーションが存在します。(以下表参照)
バリアント | トリガー | トリガープル |
---|---|---|
V0 | CDA/DA | コック時: 20 N (4.5 lbf) (+4/-2 N) 非コック時: 51 N (11.5 lbf) (±5 N) |
V1 | CDA/DA | 同上 |
V2 | CDA/DA | 32.5 N (7.3 lbf) (±2.5 N) |
V3 | SA/DA | シングルアクション: 20 N (4.5 lbf) (+4/-2 N) ダブルアクション: 51 N (11.5 lbf) (±5 N) |
V4 | CDA/DA | 27.5 N (6.2 lbf) (±2.5 N) |
V5 | DAO | 36 N (8.1 lbf) (±3 N) |
- V0: トリガーはデュアルステージトリガーで、常にハンマーがレスト状態のDAモードから発射しますが、作動のたびに内部メカニズムがコックされます。コックされたダブルアクショントリガープルは軽く、コックされていないダブルアクショントリガーは重いトリガープルです。
- V1: V0と同じですが、ハンマーにスパーがなく、デコッカーボタンもありません。そのため、コックされたメインスプリングを解放する唯一の方法は、薬室が空の状態でトリガーを引くことです。
- V2: V1と同じですが、トリガープルが増加しています。
- V3: SA/DAトリガーで、ハンマーの左側のスライド後部にデコッカーレバーが取り付けられています。
- V4: V1やV2と同じですが、中程度のトリガープルです。
- V5: DAO(ダブルアクションオンリー)トリガーシステムです。
H&K USP
使用弾薬:9x19mm
装弾数:15発
採用組織例:SAT / 警視庁警備部警護課 / 警視庁公安部
- USP(ユニバーサル・セルフローディング・ピストル / Universelle Selbstladepistole)はドイツのヘッケラー&コッホ社(Heckler & Koch GmbH)により、P7シリーズの代替として開発されたセミオートマチックピストルで、主にアメリカ市場向けに設計されました。
- 開発は1989年に始まり、1993年にUSP40(.40S&W)が登場。その後USP9(9mm)とUSP45(.45ACP)が続き、.357SIGを使用するモデル(コンパクトモデル)も追加されました。
- 作動の信頼性が高い従来のブローニング方式を採用し、ポリマーフレームを使用しています。
- リコイルスプリングアッセンブリーに反動低減システムを導入し、部品の摩耗を抑え、さまざまな弾薬に対応する特徴があります。
- SOCOM MK23と並行して開発され、過酷なテストに耐え、極限の温度や泥、水、塩水の環境でも問題なく作動することが確認されました。
- 1994年、ドイツ連邦軍(Bundeswehr)はUSPを「P8」として採用。
- P8は半透明マガジンや逆方向のセイフティレバーなど、通常のUSPとはいくつかの違いがあります。
- 当初USPは通常のライフリングが使用され、後にポリゴナルライフリングに変更しましたが、P8は通常のライフリングを採用しています。
- 派生モデルのP10は、ドイツの州警察が採用したUSPコンパクトの一部で、スパードハンマーが追加されており、P8とP10はどちらも9×19mmパラベラム(9mm NATO)弾を使用します。
- 2004年、SIG SauerとH&Kは米国国土安全保障省との契約を獲得し、P2000、P2000 SKサブコンパクト、USPコンパクトLEMモデルが選ばれました。
- LEMトリガーは、SIGのDAKトリガーに相当するもので、標準的なDAOトリガーより軽いトリガープル(7.3–8.5 lbf)と短いリセットが特徴で、より迅速な連射が可能です。
- 日本ではアニメ「新世紀エヴァンゲリオン」に登場したことでも有名です。
H&K P9S
使用弾薬:9x19mm
装弾数:9発
採用組織例:SAT / 警視庁特科中隊 SAP(Special Armed Police)
- HK P9はドイツのヘッケラー&コッホ社(Heckler & Koch GmbH)が開発したセミオートピストルで、9x19mmパラベラム、.45ACP、7.65×21mmパラベラムの口径バリエーションが存在します。
- H&K社製品で多用されるローラーディレードシステムとポリゴナルライフリングを採用しています。
- P9はプレススチールフレームとポリマートリガーガードで構成され、トリガーは従来のダブルアクションで、デコッキングレバーやコッキングインジケーターを搭載。
- ヒールマガジンリリースやシングルスタックマガジンが備わっています。
- P9SはP9のダブルアクション版で、1973年から1978年まで製造されました。
- P9Sはアメリカ海軍にサプレッサーとセットで採用され、固定バレルによりサプレッサー装着時も安定して作動します。
- コンパクトモデルのP9Kはプロトタイプのみ製造され、量産はされませんでした。
- P9Sターゲットモデルも存在し、調整可能なリアサイトやトリガーが備わっています。
- 日本ではSATの前身組織である警視庁特科中隊 SAP(Special Armed Police)に使用されていました。
【補足説明】ローラーを使用することからウィキペディアなどでは「P9はCz52ピストルと同じローラーロッキング構造」と説明されることがありますが、これは誤りです。P9は「ローラーディレード・ブローバック」、Cz52は「ローラーロックド・ショートリコイル」であり、両者は異なる設計を採用しています。
FN ブローニングハイパワー
使用弾薬:9x19mm
装弾数:13発
採用組織例:海上保安庁
- ブローニング・ハイパワー(Browning Hi-Power)は、米国のジョン・ブローニングが設計し、ベルギー・FN社のディエドネ・サイヴによって完成されたシングルアクション・ピストルで、1935年に登場しました。
- 口径バリエーションに7.65x21mm、9x19mmパラベラム、.40S&Wが存在します。
- マガジン装弾数13発のダブルスタックマガジンを使用し、当時の他のメジャーなピストル(ワルサーP38やコルトM1911など)よりも装弾数の多さで勝っていました。
- 第二次世界大戦中、ドイツ軍と連合軍の両方に使用され、ベルギーのFN工場はドイツ軍に占領されつつ、カナダの工場でも製造が継続されました。
- 50か国以上の軍で採用され、軍用ピストルとして世界的に広く使用されたモデルで、多くの派生モデルが展開されました。
- 2018年、82年にわたる連続生産の後、FN社はハイパワーの生産を終了しましたが、クローンモデルが他メーカーにより生産されています。
- 2022年にはFNアメリカが新たに「FN High Power」として製造を再開し、アンビスライドリリースや、簡略化された分解方式、17連マガジンなどの改良が加えられました。
FN ブローニング M1910
使用弾薬:.32ACP
装弾数:7発
- 米国のジョン・ブローニングが設計し、ベルギーのFN(ファブリック・ナショナル社)が製造したストレートブローバック方式のピストルです。
- 1910年~1983年に製造され、.380ACP(6発)と.32ACP(7発)の2種類の口径バリエーションが存在します。
- 銃身の周囲にリコイルスプリングを配置する構造を採用し、この設計は後のワルサーPPやマカロフなどに影響を与えました。
- ブローニング独自のストライカー方式に加え、グリップセイフティやマガジンセイフティ、外部にセイフティレバーを備えた「トリプルセイフティ」が特徴です。
- 派生モデルにFNモデル1922が存在し、ユーゴスラビア王国などで採用されました。
- モデル1910は暗殺事件に多く使用されており、第一次世界大戦の切っ掛けとなった1914年のオーストリア大公フランツ・フェルディナント夫妻暗殺、1932年のフランス大統領ポール・ドゥメール暗殺、1935年の米国ルイジアナ州知事ヒューイ・ロング暗殺など、歴史に影響を与えた銃とも言えます。(伊藤博文暗殺に使用されたのはブローニングM1900)
- 日本においては明治政府は1876年に帯刀を禁止したものの、民間人の拳銃所持は合法であったため、モデル1910は銃砲店で民間人が購入可能でした。
- 太平洋戦争中と戦後に日本の警察機関や郵便配達人に使用されていた時代があります。
FN ベビーブローニング
使用弾薬:.25ACP
装弾数:6発
- ベルギーのFN社が開発したベビーブローニング(Baby Browning)は、1931~1979年に製造された小型のストレートブローバック式ピストルです。
- 使用弾薬は.25ACPで、6発のマガジン容量を持ち、ストライカー方式、シングルアクショントリガーを採用。
- FNはジョン・ブローニングの設計による「FNモデル1905」と「コルトモデル1908」をもとに開発し、ベビーブローニングはこれらを改良した後継品に当たります。
- 当時FNモデル1905は非公式に「ベビーブローニング」と呼ばれていましたが、1931年モデルにて公式にベビーブローニングと名付けられました。
- グリップセイフティが廃止され、操作性が向上。
- マガジンセイフティが追加され、マガジンが取り外された状態では発射できない仕組みです。
- 1931年から1979年までFNで約55万丁製造され、米国では1968年の銃規制法により輸入禁止となり、1979年から1983年までフランスのMABで製造されました。
- ベトナム戦争中は米軍特殊部隊MACVSOG(南ベトナム軍事援助司令部付研究・観察グループ)に支給された事例があります。
- 1980年代にカナダのPSP社がFNと提携し生産を開始したものの、アメリカ政府による輸出許可の拒否で財政難に陥り、PSPは1988年に破産。1995年、プレシジョン・スモール・アームズ社(Precision Small Arms(PSA))として再編され、現在もベビーブローニングと各種派生バージョンを製造しています。
- 日本では戦前、戦中の軍や警察で使用されていました。
ライフル
豊和 ゴールデンベア
使用弾薬:.308Win
装弾数:5発
採用組織例:SAT / 銃器対策部隊 / 警視庁特科中隊 SAP(Special Armed Police)
- 豊和ゴールデンベア(Howa Golden Bear)は、1967~1979年に日本の豊和工業が製造していたボルトアクションライフルです。
- 1960年に豊和工業が設立され、最初にM300を発売。1967年、米国シカゴでの展示会で「Howa Golden Bear」が初披露され、日本で唯一の大口径ライフルとして発売されました。
- 設計はフィンランドのSAKO L61R Finnbearをベースとしています。
- 日本と米国で販売され、米国では「Dickson-Howa Golden Bear」として販売された他、ウェザビー社のOEM品「ウェザビーバンガード(Weatherby Vanguard)」としても提供されました。
- 1979年にM1500が登場し、ゴールデンベアの生産は終了。
- 日本警察では、1968年の金嬉老事件を教訓に、犯人制圧や人質救出用として警察に配備。
- 1970年の瀬戸内シージャック事件では、警察の狙撃手がゴールデンベアで犯人を射殺し、人質救出に成功。
- SATの前身組織である警視庁特科中隊 SAP(Special Armed Police)でも使用されていました。
豊和 M1500 (特殊銃I型)
使用弾薬:.308Win
装弾数:5発
採用組織例:SAT / 銃器対策部隊 / 原発特別警備部隊 / 関西国際空港海上警備隊(海警隊)
- 豊和M1500は、日本の豊和工業が1979年に開発したボルトアクションライフルで、狩猟用や警察の狙撃銃として利用されています。
- M1500は、豊和工業の旧モデル「ゴールデンベア」をフルモデルチェンジし、ウェザビー マークVを参考に設計されました。
- 国産では唯一の大口径ボルトアクションライフルであり、世界各国で販売されています。
- M1500は2ステージトリガーを採用し、精密射撃が可能。
- 2011年には新しいHACTトリガーシステムが導入されました。
- 国内市場では2種類のモデル(デラックスとヘビーバレル)があり、複数の口径を選択可能。
- 海外向けには、他社へのOEM供給が行われ、「ウェザビーバンガード」などとして販売されています。
- 日本国内の販売は他ブランドに押されているものの、海外では高評価を受け、特にアメリカ市場で人気があります。
- 日本警察ではSAT(特殊急襲部隊)や福井県警などの銃器対策部隊で採用されています。
豊和 89式5.56mm小銃
使用弾薬:5.56x45mm
装弾数:30発
採用組織例:SAT / 海上保安庁特殊警備隊SST
- 89式5.56mm小銃(ハチキュウ)は、64式7.62mm小銃の後継として1989年に制式化された国産自動小銃で、開発と製造は豊和工業が担当しています。
- 1990年代以降に陸上自衛隊の主力小銃となり、海上保安庁や警察の特殊部隊にも採用されています。
- 開発時には豊和工業がアメリカのAR-18ライフルを参考にし、89式が開発されました。
- 使用する弾薬やマガジンは、NATO規格やSTANAG規格に準ずるため、米軍との互換性があります。
- 日本人の体格に合わせた設計で、カービンに近い銃身長と高い集弾性能を持ち、折りたたみ式銃床が備わったモデルも存在します。
- 銃身、銃把、被筒には強化プラスチックが使われ、軽量化と生産性が向上。
- 銃の部品点数は64式より約10%減少しています。
- 冷戦後も改修が進み、光学照準器搭載や左側切換レバーの追加などの改良が行われています。
豊和 64式7.62mm小銃
使用弾薬:7.62x51mm
装弾数:20発
採用組織例:海上保安庁 / 関西国際空港海上警備隊(海警隊)/ 警視庁特科中隊 SAP(Special Armed Police)
- 豊和工業が開発した64式7.62mm小銃は日本の自衛隊と海上保安庁で使用される国産小銃で、1964年に制式採用されました。
- 開発は戦前・戦中の銃器開発者らが担当し、戦後米軍から供与された九九式短小銃やM1カービンの更新を目的として開発が進められました。
- 日本人の体格に合わせて設計され、二脚を標準装備し、連発時の命中精度向上のために発射速度を抑える機構を備えています。
- 弾薬は米軍と共通の規格である7.62x51mm弾を使用し、フルオート射撃時の反動を抑えるため減装弾を採用しました。
- 89式5.56mm小銃の登場により生産終了となりましたが、一部の自衛隊や予備部隊ではまだ使用されています。
- 九州南西海域工作船事件では工作船に対する正当防衛射撃に使用されました。
レミントン M700
使用弾薬:7.62x51mm / .308win
装弾数:5発
採用組織例:SAT
- レミントンモデル700は1962年から米国のレミントン社で製造されているボルトアクションライフルのシリーズで、軍用のM24やM40スナイパーライフルもこれに基づいて設計されています。
- モデル700は内蔵固定マガジン(3〜5発)や取り外し可能なボックスマガジンがあり、様々なストックやバレル、口径バリエーションが存在します。
- 1948年のモデル721および722をベースに開発され、製造コストを下げるために円柱状のレシーバーを採用し、金属部品の一部はプレス加工されています。
- 精度向上のため、狭い公差や速いロックタイムが特徴で、ADLとBDLの2種類が存在し、1970年代には左利き用のバージョンも登場しました。
- モデル700は軍や警察にも採用されており、M24は米陸軍、M40は米海兵隊によって使用されています。
- 警察向けのモデル700Pは、肉厚のあるバレルとアルミブロックベディングを特徴としており、.308ウィンチェスターや.338ラプアマグナムなどの口径が使用可能です。
- 軍用バージョンでは、M24はロングアクション、M40はショートアクションを使用し、近年では.300ウィンチェスターマグナムや.338ラプアマグナムへの移行が進んでいます。
H&K PSG-1
使用弾薬:7.62x51mm
装弾数:5、10、20発
採用組織例:SAT
- H&K PSG1は、ドイツのヘッケラー&コッホに社(Heckler & Koch GmbH)によって設計・製造されたセミオートスナイパーライフルです。
- PSG(Präzisionsschützengewehr)はドイツ語で「精密射撃ライフル」を意味します。
- 1972年のミュンヘンオリンピックでの人質事件を受け、西ドイツ警察が正確な射撃能力を欠いていたことから、H&Kが高精度セミオートライフルの開発を依頼されました。
- G3ライフルをベースにしており、ローラーディレードブローバック方式を採用し、集弾性能は1MOA未満(100ヤードで1インチ未満)とされます。
- 「Hensoldt ZF 6×42スコープ」を標準装備し、100~600メートルの範囲で弾道補正が可能。
- 銃身はポリゴナルライフリングのヘビーフリーフローティングバレルで、アジャスタブルストック搭載。
- トリガーユニットは取り外し可能で、調整も可能。
- 2006年には、コッキングハンドルの位置を調整し、より高性能な「Schmidt & Bender 3–12×50スコープ」を採用したPSG1A1が登場しました。
AI AW (L96A1)
使用弾薬:7.62x51mm
装弾数:5、10発
採用組織例:SAT
- AI AW(Accuracy International Arctic Warfare)は、イギリスのアキュラシーインターナショナル社が製造したボルトアクション・スナイパーライフルで、寒冷地でも高性能を発揮できるよう設計されています。
- 1980年代にイギリス軍が使用していたリー・エンフィールド系狙撃銃の後継として開発され、1982年にL96A1として採用されました。
- 主に「Schmidt & Bender PM IIスコープ」が使用され、可変倍率スコープも装着可能ですが、ドイツやロシア軍はZeiss製スコープを好むことが多いといえます。
- スウェーデン軍向けとして寒冷地対応の改良型AW(Arctic Warfare)が1991年に登場しました。
- AWシリーズは、オーストラリア、ドイツ、ロシアなど多くの国で採用されており、AWM(Arctic Warfare Magnum)やAW50など、様々な派生モデルが存在します。
- 多くのAWライフルは7.62×51mm NATO弾を使用し、.300ウィンチェスターマグナムや.338ラプアマグナムなどの口径バリエーションも展開されています。
- AWシステムは、軍用スナイパーライフルとして設計されたライフルであり、モジュール構造により柔軟な修理やパーツ交換が可能です。
- アルミ製シャーシを基盤に、スチール製ボルトや耐久性のあるパーツが使用されています。
ショットガン
レミントン M870
口径:12ゲージ
装弾数:4~7発(銃の仕様や使用弾薬の長さによって異なる)
採用組織例:海上保安庁特殊警備隊SST / 特殊事件捜査係
- レミントン・モデル870は、アメリカのレミントン・アームズ社が製造したポンプアクションショットガンで、射撃スポーツ、狩猟、自衛、法執行機関や軍で広く使用されています。
- レミントン社のショットガンとしては4つ目の設計であり、1950年に登場。
- 低価格で信頼性の高い構造が商業的な成功を収め、これまでに1,100万丁以上が製造されました。
- 銃身の下に配置されたチューブ型マガジンとサイドエジェクトレシーバーが特徴。
- 異なる口径(12、16、20、28ゲージ、.410)や様々な仕様のバリエーションがあり、民間、法執行機関、軍向けに多くのモデルが製造されています。
サブマシンガン
H&K MP5シリーズ
- H&K MP5(マシンピストル5)は、ドイツのヘッケラー&コッホ社(Heckler & Koch GmbH)が1960年代に開発したサブマシンガン(短機関銃)で、G3ライフルと同様のモジュラー設計を採用しており、数多くのバリエーションが存在します。
- MP5は、40カ国以上の軍、警察、情報機関、セキュリティ機関で採用され、最も広く使用されているサブマシンガンの1つです。
- 1960年代、G3ライフルの成功を受け、共通設計を基にしたシリーズを開発し、MP5はその一環で9mmパラベラム弾を使用する火器として開発されました。
- 1964年に開発が始まり、1966年にドイツの国境警備隊や連邦軍特殊部隊で採用され、MP5と名付けられました。
- 1970年代には、改良型のMP5A2やMP5A3、サプレッサー付きのMP5SD、コンパクトなMP5Kなど、様々なバリエーションが登場。
- 1977年以降、ホローポイント弾使用に対応するため、直線形のボックスマガジンから湾曲したバナナマガジン(15発、または30発)に変更されました。
- 1980年、イラン大使館人質事件でSASがMP5を使用したことから、MP5は広く認知され、エリート部隊の象徴となりました。
- MP5は主にセレクティブファイア(セミ/フルオート)機能を持ち、9mmパラベラム弾を使用するローラーディレードブローバック方式を採用しています。
- アイアンサイトは回転式のドラムリアサイトとフロントポストで構成され、周囲の明るさに応じて調整可能です。
- MP5は、ギリシャ、イラン、メキシコ、パキスタン、サウジアラビア、トルコ、イギリスなど、複数の国でライセンス生産されています。
H&K MP5A4
使用弾薬:9x19mm
装弾数:30発
採用組織例:SAT
- MP5A4は、MP5シリーズの一種で、セレクティブファイア(フルオート/セミオート)のサブマシンガンです。
- 固定式ストックを採用しており、安定した射撃が可能。
- 9mmパラベラム弾を使用し、反動が少なく、命中精度が高いのが特徴です。
- 3点バースト機能を搭載した「Navy」トリガーグループを使用し、射撃モードはセミオート、3点バースト、フルオートの3つ。
- 主に軍や警察の特殊部隊で使用されており、CQB(近接戦闘)に適しています。
H&K MP5A5(MP5F)
使用弾薬:9x19mm
装弾数:30発
採用組織例:SAT / 銃器対策部隊 / 原発特別警備部隊 / 海上保安庁特殊警備隊SST
- MP5Fは1999年にフランス国家憲兵隊の要請に応じて導入された、改良型のMP5です。
- パッド付きの伸縮式ストックが備わっています。
- 「Navy」トリガーグループが装備され、3点バースト射撃が可能。
- 左右どちらでも使えるスリングマウント、高圧弾薬に対応するための改良が施されています。
H&K MP5SD ( SD4 / SD6 )
使用弾薬:9x19mm
装弾数:30発
採用組織例:SAT / 海上保安庁特殊警備隊SST
- MP5SDは1974年に追加されたサプレッサー内蔵モデルです。
- 「SD(Schalldämpfer)」はドイツ語で「サプレッサー(消音器/減音器)」を意味します。
- 内蔵型サプレッサーを備えており、銃身長5.7インチを基本として設計されています。
- 特徴的な消音器に合わせたハンドガードデザインと、改良されたチャージングハンドルを採用しています。
- 音速を超える通常弾(9mm NATO)を使用することを前提とした設計です。
- 銃身の途中に穴があり、発射時に穴から高圧ガスが抜けることで弾頭の加速を抑え、低速(亜音速)で発射して爆音(ソニックブーム)を防ぎ、減音します。
H&K MP5SFK (セミオートオンリー)
使用弾薬:9x19mm
装弾数:15、 30発
採用組織例:SIT(特殊事件捜査係)
- MP5Kは1976年に追加されたMP5のコンパクトバージョンです。
- 「K(クルツ / Kurz)」はドイツ語で「短い(ショート)」を意味します。
- ストックなしのMP5A1をベースとして開発されました。
- 通常のMP5Kは銃身長4.5インチで、ストックの代わりにスリングマウント付きのエンドキャップを装備しますが、折り畳みストックモデルも存在します。
- コンパクトなデザインのため、ボルト、レシーバー、チャージングハンドル、カバー、トリガーグループフレームなどの部品が短縮されています。
- MP5Kは軽量ボルトにより発射度が約900発/分となり、通常のMP5の800発/分よりも速い発射速度です。
- MP5SFは、法執行機関や軍用市場向けに設計されたセミオートマチック版で、1986年に連邦捜査局による「9mmセミオートマチックカービン」の要求に応じて導入されました。
- MP5SFKは、MP5SFシリーズのコンパクトバージョンです。
- 民間市場向けセミオートマチックMP5であるHK94とは異なり、MP5SFは8.9インチバレルが備わっています。
- SFモデルはセレクター表記が「0-1」となっているトリガーグループが使用されていますが、1991年以降のモデルではフルオート対応トリガーグループに交換するだけでフルオート射撃が可能になります。
最後までお読みいただきありがとうございます。
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