ショートリコイル?ブローバック?銃の閉鎖方式の違いを解説

「ブローバックって何?」、「ディレード・ブローバックは何が違うの?」といった疑問を持つ方も多いので、銃の閉鎖方式の違いについて、入門者の方にも分かりやすく簡潔に解説します。

 

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ブローバック

ブローバックとは吹き戻し式のことです。

発射時に薬莢内の装薬が燃焼して高圧ガスが発生し、ガス圧によって弾頭が加速し発射されます。

このとき、薬莢に対しても後方に向かって同じ圧力が加わり、スライドやボルトを後退させます。(作用反作用の法則)

しかし、スライド、ボルト、リコイルスプリングなどの抵抗は弾頭の抵抗より大きいため、弾頭は高速で進む一方、スライドやボルトはゆっくり後退します。

スライドやボルトが後退して薬莢が排莢される頃には弾頭が銃口から離れているため、銃身内の圧力が低下しており、銃身の後方から高圧ガスを漏らすことなく安全に排莢することが可能となります。

この機構は「ブローバック」、「シンプル・ブローバック」、「ストレート・ブローバック」などと呼ばれ、オートマチック・ピストルやサブマシンガンといった拳銃弾を使用する銃で広く利用されています。

ブローバックとは反対に、銃身を前進させて排莢と装填を行う「ブローフォワード」が存在しますが、こちらは作動に問題が多く、現在ピストルでは利用されていません。

ブローフォワードを利用する銃には、シュワルツローゼ 1908 や日野・小室式自動拳銃の他、陸上自衛隊の96式40mm自動てき弾銃などがあります。

 

ディレード・ブローバック

ブローバックで強力な弾薬を使用するとスライドやボルトの後退が早まり、銃身内の圧力が下がらないまま開放されて高圧ガスが銃身後部(ブリーチ)から噴出し、危険な状態になる場合があります。

それでも重いスライドやボルト、強いリコイルスプリングなどを使用して作動させることも可能ですが、銃が重くなったり、作動の信頼性や安全性が低下するなどの問題が生じやすくなります。

この問題を解決する方法として、スライドやボルトの後退を遅らせ、発射後も薬莢が薬室内に留まる時間(数ミリ秒)を稼ぐ機構が開発されました。

これを、「ディレード・ブローバック(遅延式ブローバック)」、または、「リターデッド・ブローバック」と呼びます。

ディレード・ブローバックには以下の様な機構があります。

 

ガス・ディレード(ガス・ロック)

H&K P7ピストルではシリンダーとピストンを利用したガス・ディレード・ブローバックを採用しています。

銃身の下にはシリンダーがあり、発射時に高圧ガスがシリンダー内を満たすことでスライドと連結されたピストンの動きを止めます。

弾頭が銃口を離れると銃身内とシリンダー内のガス圧が低下し、余剰ガス圧と慣性によってスライドが後退し排莢します。

 

ローラー・ディレード

H&K MP5ではローラーの動きを利用したローラー・ディレード・ブローバックを採用しています。

発射時にボルトが後ろへ押されるとローラーに圧力が加わり、レシーバーの傾斜に沿って内側へ動きます。

ローラーが外側から内側へ移動する間、ボルトの後退速度が低下し薬室の開放を遅らせています。

 

レバー・ディレード

フランス軍で採用されているFA-MASでは、レバー・ディレード・ブローバックを採用しています。

発射時にボルトが後退すると、ボルトに備わったレバーがレシーバーに衝突します。

ボルトに押されたレバーが回転し、ボルト上のボルトキャリアを後退させます。

ボルトキャリアはボルトよりも速く後退し、その間ボルトの後退が遅れる構造です。

 

ヘジテーション・ディレード

レミントンR51では、ヘジテーション・ディレート・ブローバックを採用しています。

発射時にスライドとブリーチブロックが後退を始めますが、ブリーチブロックがフレームに衝突して後退が阻止されます。

しかしスライドは後退を続け、やがてブリーチブロック側面にある傾斜とスライド内側にある傾斜が衝突し、ブリーチブロックが上昇します。

ブリーチブロックが上昇することで後退が可能となり、スライドの慣性や余剰ガス圧によってブリーチブロックが後退し薬室が開放されます。

 

ベクター・ディレード

クリス・ベクターではベクター・ディレード・ブローバックを採用しています。

発射時にボルトが後退しますが、スライダーの傾斜によって抵抗が加わります。

ボルトが後退する力がスライダーを下降させることでボルトが落ち込み、薬室が開放されます。

スライダーが下降するまでの間、ボルトの後退が遅れる構造です。

 

ロックド・ブリーチ

ブリーチとは、後装式の銃身の後端を指します。ブリーチの反対側は銃口(マズル)です。

ブリーチを閉鎖するものをブリーチ・ブロックと呼び、薬莢の底が接する面をブリーチ・ブロック・フェイスと呼びますが、ピストルの場合はブリーチ・ブロックがスライドと一体になっているものが多く、スライドがブリーチを閉鎖しています。

ブリーチを物理的にロックして閉鎖する機構を「ロックド・ブリーチ」と呼びます。

これまでご紹介したディレード・ブローバックは完全閉鎖ではなく、発射の瞬間から薬莢が僅かに後退を始めます。しかし、ロックド・ブリーチはロックが解除されて薬室が開放されるまで薬莢は後退しません。

銃身内が高圧のとき、薬莢は膨張して薬室の側壁に強く張り付いた状態となり、高圧のまま薬莢が後退すると薬莢が破断するなどの問題が生じやすくなります。

その点、ロックド・ブリーチは閉鎖が完全なため、ディレード・ブローバックで使用する弾薬よりも強力で高圧な弾薬を使用することが可能です。

ロックド・ブリーチには、以下の様な機構があります。

 

ティルトバレル

1911やグロックなど、現代のオートピストルにおいて広く利用されているのが、ティルトバレルです。ジョン・ブローニングが開発したことから、「ブローニング方式」とも呼ばれます。

銃身(バレル)が傾く(ティルト)ことで銃身とスライドのロックを解除する構造です。

発射時に弾頭が銃身内で加速する間、エジェクションポートの前に備わったロッキングラグによりスライドと銃身がロックされています。

反動によってスライドと銃身が後退し、後退によってロックが解除される間に銃身内の圧力が低下するため安全に排莢されます。

HK USPでもティルトバレルを採用していますが、ロッキングラグの代わりにエジェクション・ポートの前面を利用して銃身の上部を固定し、スライドと銃身をロックしています。

反動によってスライドと銃身が後退すると銃身が落ち込み、ロックが解除されます。

Photo via Forgotten Weapons

反動が発生しない映画撮影用のピストルでは、この部分をカットしてスライドを後退させています。

 

プロップ・アップ(ティルト・ブロック)

ベレッタ92FSではプロップアップを採用しています。

銃身の下にロッキング・ブロックがあり、スライド内側と接触してロックすることでスライドの後退を阻止しています。

発射時の反動によって銃身とスライドが共に後退し、銃身後部に備わったプランジャーがフレームに衝突してロッキング・ブロックを押し下げます。

するとスライドのロックが解除され、スライドだけが後退を続けて薬室が開放されます。

ロッキング・ブロックが落ち込むときには既に銃身内の圧力は低下しています。

 

ロータリー・バレル

ベレッタPX4ではロータリー・バレル(ローテイティング・バレル)を採用しています。

スライドが前進している状態では、銃身側面の突起がスライドの内側とエジェクションポートに干渉し、スライドの後退を阻止しています。

発射時の反動によりスライドと銃身が後退すると、銃身の下に備わったセントラル・ブロックの突起と銃身下面にカットされた斜めの溝が接触し、銃身が回転します。

銃身が回転するとスライドと銃身の接触が断たれ、スライドが後退して薬室が開放されます。

 

ロータリー・ボルト

デザートイーグルではロータリー・ボルトを採用しています。

ボルトが銃身後部のロッキング・ラグと咬み合い、閉鎖状態を維持します。

発射時のガス圧によりスライドを後退させると、スライドの後退によりボルトが回転して銃身とのロックを解除します。

ガス圧と慣性によって排莢する頃には、銃身内の圧力は既に安全なレベルまで低下しています。

 

ローラー・ロック

Cz52ではローラー・ロックを採用しています。(画像はスライドの下から銃身を覗いています)

スライド前進時にスライドと銃身はロックされており、発射時にスライドと銃身が共に後退します。

スライドと銃身が後退すると銃身に備わったローラーカム下部の後端がフレームに衝突し、そのまま銃身が後退を続けることで両側のローラーが内側へ入ることが可能となります。スライドに押されてローラーが内側へ入るとロックが解除され、スライドだけが後退して排莢されます。

ローラー・ディレードではローラーに力が加わることで後退を遅らせますが、ローラー・ロックにおけるローラーはスライドの閉鎖を維持するためだけに使用されており、ローラーだけに力が加わってもロックは解除されません。

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ショートリコイルとロングリコイル

ショートリコイルとロングリコイルは、反動(リコイル)を受けて後退する銃身の後退距離とその作動によって区別されます。

簡単に説明すると、後退距離が短いものをショートリコイルと呼び、後退距離が長いものをロングリコイルと呼びます。

スライドやボルトと銃身との閉鎖状態を解除する方法として、ショートリコイルやロングリコイルが広く利用されています。

これは閉鎖方式の種類に関わらず、反動を利用して装填と排莢のサイクルを繰り返す、比較的強力な弾薬を使用する銃で利用されていますが、ブローバックの銃や、反動を利用しない作動方式の銃では必要ないため利用されません。(一部を除く)

ショートリコイルとロングリコイルの具体的な構造の違いについては、以下をご覧ください。

 

ショートリコイル

ショートリコイルを利用する1911ピストルでは、銃身が短く後退することでスライドと銃身のロックを解除し、同時に後退中の時間を利用して銃身内の圧力を低下させて安全な排莢を実現しています。

弾頭が銃身内を加速しているとき、ほんの僅かですがスライドと銃身は後退を始めています。

銃身が短く最後まで後退した時点で既に銃身内の圧力が低下しており、スライドと銃身のロックが解除されてスライドだけが後退を続けます。

後退したスライドがリコイルスプリングの力で再び前進し、その際にマガジン内の次弾を薬室内に送り込みます。

今回ご紹介したロックド・ブリーチのピストルは、デザートイーグル以外全てショートリコイルを採用しています。

 

ロングリコイル

ブローニングA5ショットガンでは、ロングリコイルを採用しています。

発射時の反動によってボルトと銃身が長い距離を後退します。

そしてボルトと薬莢を残して銃身だけが前進し、銃身と接続されたエジェクターが薬莢を排莢します。

排莢後にエレベーターが次弾を持ち上げるとボルトが前進し、次弾を薬室内に装填します。

 

以上で解説を終わります。

※今回ご紹介した閉鎖方式はほんの一部であり、この他にも様々な閉鎖方式が存在しています。

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