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【初心者必見】実銃におけるホローポイント弾とは?構造・威力・特徴・用途を徹底解説

ホローポイント弾画像

ホローポイント弾は、護身用や法執行機関で広く使用される弾薬です。

本記事では、ホローポイント弾の仕組み、歴史、用途、メリットとデメリットを詳しく解説します。

ホローポイント弾とは?

.40S&Wホローポイント弾画像
.40S&W ホローポイント弾 画像出典:Oleg Volk (en:User:Olegvolk), CC BY 2.5, via Wikimedia Commons

ホローポイント弾とは、弾頭の先端に空洞が備わっている弾薬です。

この空洞により、弾頭が柔らかい標的に命中した際に拡張し、「マッシュルーミング」と呼ばれるキノコ状に変形します。

拡張すると、ストッピングパワーが向上する効果があります。

「ストッピングパワー」とは、「対象を行動不能にし、無力化する能力」を意味します。

人や動物の体内に侵入した弾頭は、拡張によって広範囲に傷と出血を生じさせ、対象に対して大きなダメージを与えます。

また同時に、大きな抵抗によって体内で運動エネルギーを消費し、貫通しにくくなることで貫通弾による二次被害を防ぐ効果があります。

ホローポイント弾の構造

ホローポイント弾画像
ホローポイント弾イラスト画像
  • ホローポイント・キャビティー(先孔): 弾頭先端の空洞部分で、命中時に拡張し威力を高める構造。
  • ジャケット(被甲): 弾頭を覆う金属製の外装で、精度や貫通力を向上させる役割を持つ。
  • コア(弾芯): 弾頭の内部にある主要な金属部分で、貫通やダメージを与える中核部分。
  • パウダー(装薬): 弾薬内部に充填された火薬で、燃焼して弾頭を推進する役割を果たす。
  • ケース(薬莢): 装薬や弾頭を収納し、発射時にガス圧を保持する金属またはプラスチック製の容器。
  • プライマー(雷管): 火薬を着火するための小型爆発装置で、発射の引き金となる重要部品。

ホローポイント弾の内部構造は、その種類や設計によって異なりますが、多くの場合、これらの要素で構成されています。

ホローポイント・キャビティー(先孔)

ホローポイント弾画像

ホローポイント弾の最大の特徴は、先端部にある空洞です。

ホロー(Hollow)「凹み」「空洞」を意味し、ポイント(Point)「先端」を意味します。

この空洞は、着弾時に「意図した大きさ」に拡張するよう設計されています。

体液や細胞組織などの流体が空洞内に入って圧力が加わると、ジャケットとコアが耐えられる力を超え、先端が外側に向かって剥離し始めます。

しかし、鉄やコンクリートなど、硬い物体に着弾した場合は、設計通りに拡張しません。

あくまで人や動物といった、「ソフトターゲット」に着弾した際に効果を発揮する設計です。

ジャケット (Jacket/被甲)

多くのホローポイント弾は、コア(弾芯)を「ジャケット(被甲)」で覆っています。

ジャケットはホローポイント弾に限らず、現代のあらゆる弾薬で利用されています。

ジャケットは、鉛のコアが銃身内部に触れて摩擦熱で溶ける「レッディング」(銃身内部の汚れ)を防止し、ホローポイント弾では着弾時の拡張度合いをコントロールする役割を果たします。

ジャケット自体の硬さや柔軟性も、コアと同様に着弾時の変形に影響を与えます。

ジャケットとコアが分離した9mmホローポイント弾 画像出典:Dinomite, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons

着弾時にジャケットとコアが分離することがあり、分離すると慣性力が減少し貫通力低下の原因になるため、各メーカーは分離がおこりにくい構造を採用しています。

ホローポイント弾が最も高い効果を発揮するためには、「バイタル(※)に到達する高い貫通力」と、「ターゲットを完全に貫通しない貫通力」の両立が重要です。高すぎず、低すぎない貫通力が必要とされます。

(※)バイタル(Vital)とは、生命維持に不可欠な重要な臓器や組織を指します。

具体的には以下が該当します:

  • 心臓:血液を全身に送る臓器。損傷すると循環が停止。
  • 肺:酸素交換を行う臓器。損傷により呼吸困難や酸欠が発生。
  • 脳:全身を制御する司令塔。損傷すると即座に生命の危機となる。
  • 大血管:大動脈や頸動脈など。破壊されると致命的な出血を引き起こす。

ホローポイント弾は拡張による広範囲のダメージで、これらバイタルを確実に損傷し、迅速にターゲットを無力化することを目的としています。

弾頭製造時には、ジャケットは平らな材料からコップ状に成形され、鉛のコアの先端、または後端に取り付けられています(メッキ加工によるジャケットも存在します)。

ジャケットの素材は5~10%の亜鉛を含む銅合金が一般的ですが、珍しいものでは鉄のジャケットも存在します。

ホローポイント弾の製造法は、コップ状のジャケットの開口部から鉛のコアを挿し込んで製造されます。しかし、一部のホローポイント弾は、「逆ジャケット(リバースド・ジャケット)」を利用しており、ジャケットの開口部が弾頭の底部にあります。この場合、弾頭先端部からコアに向かって押し込んで凹みを成形し、着弾時に信頼性の高い拡張を実現する構造に仕上げることが可能になります。リバースド・ジャケットを利用する例としては、初期のウィンチェスター・シルバーチップ、ブラックタロン、レンジャーSXTなどが挙げられます。

コア (Core/弾芯)

ホローポイント弾断面図
ホローポイント弾断面図 画像出典:Grasyl, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons

一般的なホローポイント弾の中心部には、 または 鉛合金 のコアがあります。(鉛を使用しないホローポイント弾も存在します)

コアの硬度は、着弾時の衝撃による変形の大きさに影響します。

コアは、ジャケットで覆われている場合と、覆われていない場合があります。

比重の重い鉛により大きな慣性力を持ち、空気抵抗による減速を抑え、距離が離れても大きな運動エネルギーを維持することが可能になります。

これはホローポイント弾に限った特徴ではなく、他の多くの弾頭もコアに鉛を利用しています。

拡張制御機構 (Expansion Control Mechanisms)

ハイドラショックJHP 画像
ハイドラショックJHP 画像出典:Ken, CC BY 2.0, via Wikimedia Commons

ホローポイント弾は、着弾時の弾頭の拡張度合いをコントロールするために、さまざまな設計が施されています。

以下はその一例です。

設計特徴
ジャケットの厚さの変化ジャケットを前部で薄く、後部で厚くすることで、拡張の開始を容易にし、その後、拡張速度を低下させる。
コアの中央の仕切り特定の時点で拡張を停止させるために、コアの中央に仕切りを設ける。
コアとジャケットの接着分離や破砕を防ぐために、鉛のコアを銅のジャケットに、化学的、分子的、構造的に接着する。
ジャケットの溝拡張や破砕を促進するために、ジャケットに溝を設けたり、弱化させたりする。
空洞内の支柱ウィンチェスター社のハイドラショックで利用される構造。
組織内で拡張させるために、空洞内に支柱を設ける。
ただし、この設計は厚い衣服の素材で詰まりやすく、弾頭が拡張しない傾向がある。
プラスチックインサートホーナディー V-Maxなどで利用される構造。
フルメタルジャケット弾と同じ形状でありながら、 プラスチック(ポリマー)製のインサートが着弾時に弾頭内の空洞部分に押し込まれることで拡張を開始する。
飛行中に分離するプラスチックインサートドイツのGeco Action Safetyで利用される構造。
フルメタルジャケット弾と同じ形状で、セミオートピストルでのスムーズな装填を可能にする。
発射時に弾頭先端のプラスチックインサートがガス圧で吹き飛ばされ、発射後に通常のホローポイント弾と同じ形状になる。

ホローポイント弾の性能と威力

拡張後ホローポイント弾画像
着弾後のホローポイント弾(.38スペシャル)

拡張によるダメージ効果

ホローポイント弾は着弾時に弾頭が拡張し、ターゲット内部での接触面積が増大します。この特性により、血管や神経などの重要な組織を破壊し、広範囲に深刻な損傷を与えることができます。

ただし、衣服やガラスなどを貫通した場合、弾頭先端に異物が詰まることで拡張が阻害されることがあります。この場合、弾頭は設計通りの効果を発揮できず、過剰な貫通力を持つことで、背後の人や物に被害を与えるリスクがあります。

ストッピングパワーと安全性

弾頭が拡張することで、運動エネルギーが効率よく伝達され、ターゲットを迅速に無力化する「ストッピングパワー」を発揮します。この特性により、エネルギーがターゲット内部で効果的に放出され、貫通を防ぐことが可能です。

ホローポイント弾は貫通力が抑えられる設計であり、貫通弾による二次被害を最小限に抑えられる点で、市街地や住宅街などの人口が密集した都市環境での使用に適しています。

各弾薬のテスト結果

バリスティックゼラチン画像
バリスティックゼラチン 画像出典:Armorpiercer, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons

以下は、.380ACP、9mm、.40S&W、.45ACPの各弾薬を、人体を模したバリスティックゼラチンに射撃し、テストした結果です。

テストにはバリスティックゼラチンの手前に衣服を模した4層の布を加え、それぞれ異なる銃で実施されました。

.380 ACP

  • 性能は4つの弾薬の中で最も低いとされます。
  • 問題点
    • 貫通力と拡張性の両立が難しく、限られた弾薬のみが両方で良好な結果を示しました。
  • 代表的な結果
    • Hornady 90 gr FTX Critical Defense: 貫通深度13.2インチ、拡張直径0.52インチ。
    • Federal 99 gr HST: 貫通深度22.5インチ、拡張直径0.35インチ。

9mm

  • 貫通力と拡張性のバランスが良好な弾薬が多い一方で、厚い布で拡張が阻害される場合もありました。
  • FBIの推奨する貫通深度(12~18インチ)を達成した弾薬が多いです。
  • 代表的な結果
    • Barnes 115 gr TAC-XPD +P: 貫通深度13.4インチ、拡張直径0.70インチ。
    • Federal 124 gr HST: 貫通深度18.3インチ、拡張直径0.61インチ。

.40 S&W

  • FBIの推奨範囲内で貫通力と拡張性を示す弾薬が多数。
  • 一部では布による拡張失敗や過剰な貫通も見られました。
  • 代表的な結果
    • Federal 180 gr HST: 貫通深度18.5インチ、拡張直径0.72インチ。
    • Winchester 165 gr Ranger Bonded: 貫通深度14.7インチ、拡張直径0.77インチ。

.45 ACP

  • 成功した拡張では非常に大きな拡張直径を示す一方、布による阻害で過剰な貫通が発生する場合もありました。
  • 代表的な結果
    • Federal 230 gr HST: 貫通深度14.0インチ、拡張直径0.85インチ。
    • Winchester 230 gr Ranger T-Series: 貫通深度14.5インチ、拡張直径1.00インチ。

参考:Handgun Self-Defense Ammunition Ballistics Test

FBI推奨貫通深度とバリスティックゼラチンについては、記事の最後で詳しく解説します。

ホローポイント弾の種類

ホローポイント弾画像

ホローポイント弾には、以下の種類があります。

ホローポイント弾 (HP:Hollow Point)

ホローポイント弾イラスト画像
  • ホローポイント・キャビティー(先孔): 弾頭先端の空洞部分で、命中時に拡張し威力を高める構造。
  • ブレット(弾頭): 発射後に標的に向かって飛ぶ金属製の弾体。
  • パウダー(装薬): 弾薬内部に充填された火薬で、燃焼して弾頭を推進する役割を果たす。
  • ケース(薬莢): 装薬や弾頭を収納し、発射時にガス圧を保持する金属またはプラスチック製の容器。
  • プライマー(雷管): 火薬を着火するための小型爆発装置で、発射の引き金となる重要部品。

ホローポイント弾(Hollow-point / HP)は、弾頭先端部に空洞がある基本的なタイプです。

ホローポイント弾には「ジャケット付き」と「ジャケットなし」の2種類がありますが、本来「ホローポイント弾」という言葉はジャケットのないもの(ホローポイント/HP)を指します。

一方、ジャケット付きのものは正式には「ジャケット付きホローポイント弾(ジャケッテッド・ホローポイント/JHP)」と呼ばれ、区別されています。このため、単に「ホローポイント弾」と言えば、ジャケットのないタイプを指すのが基本です。

ジャケットの無いホローポイント弾はリボルバーで多く利用され、セミオート・ピストルでは給弾不良の原因となるため、.22LR弾などを除き、ほとんど利用されません。

現代では、護身用や法執行機関で流通するほとんどのホローポイント弾がジャケッテッド・ホローポイント弾 (JHP) です。

ホローポイント弾(HP)のメリット

  1. コストが安い
    • シンプルな構造で、ジャケット(被甲)なしのHP弾は低価格。
  2. 拡張性能が高い
    • 着弾時に大きく拡張し、浅い貫通深度でエネルギーを効率的に伝達。
    • 都市環境など、過剰な貫通力が問題となる環境で使用する際に有効。
  3. 弾速が低速の銃に適している
    • 弾速が遅くても拡張しやすい。
  4. 小動物の猟に最適
    • 小型獣に対する狩猟や害獣駆除に効果的。

ホローポイント弾(HP)のデメリット

  1. 高速発射は不可
    • 高速発射時に摩擦熱で溶解しやすいため、マグナム弾やライフル弾には不向き。
  2. 障害物に弱い
    • 衣服や硬い素材を貫通した後に拡張性能が低下することがある。
  3. 射程と精度が低下することがある
    • ジャケットがないため、弾道が安定しにくく、射程距離や命中精度が劣りやすい。
  4. 用途が限定的
    • 小動物猟や特定の用途以外に向いておらず、汎用性が低い。

ジャケッテッド・ホローポイント弾 (JHP:Jacketed Hollow Point)

ホローポイント弾画像
ホローポイント弾イラスト画像
  • ホローポイント・キャビティー(先孔): 弾頭先端の空洞部分で、命中時に拡張し威力を高める構造。
  • ジャケット(被甲): 弾頭を覆う金属製の外装で、精度や貫通力を向上させる役割を持つ。
  • コア(弾芯): 弾頭の内部にある主要な金属部分で、貫通やダメージを与える中核部分。
  • パウダー(装薬): 弾薬内部に充填された火薬で、燃焼して弾頭を推進する役割を果たす。
  • ケース(薬莢): 装薬や弾頭を収納し、発射時にガス圧を保持する金属またはプラスチック製の容器。
  • プライマー(雷管): 火薬を着火するための小型爆発装置で、発射の引き金となる重要部品。

ジャケッテッド・ホローポイント弾(Jacketed hollow point / JHP)は、鉛のホローポイント弾頭を銅合金などのジャケットで覆っています。

ジャケットは、弾頭の拡張を制御し、深い貫通深度を得られる効果があります。

また、セミオート・ピストルで使用する際に、ジャケットにより給弾がスムーズになる他、銃身の汚れを軽減します。

JHP弾は、護身、狩猟、法執行機関で広く使用されています。

ジャケッテッド・ホローポイント弾(JHP)のメリット

  1. 耐久性が高い
    • 高速で発射しても形状が崩れにくい。
  2. 汚れにくい
    • 発射時の摩擦熱による鉛の溶解を防ぎ、クリーニングが容易。
  3. 貫通力と拡張性のバランスが良い
    • 着弾時に適度に拡張し、深い貫通深度を実現。
    • 衣服などの障害物を通過しても、拡張性能を維持しやすい。
  4. 汎用性が高い
    • 護身用、法執行機関、中型~大型獣の狩猟など、多くの用途で適している。
  5. 精度が高い
    • 均一なジャケットにより、弾道が安定しやすい。

ジャケッテッド・ホローポイント弾(JHP)のデメリット

  1. コストが高い
    • ジャケット加工により製造コストが増加するため、価格が高い。
  2. 過剰な貫通のリスク
    • 条件によっては貫通力が高すぎ、貫通弾による二次被害リスクがある。
  3. 小動物猟に不向き
    • 小型の獲物や浅い貫通深度が必要な場合に適さない場合がある。

ポリマーチップ弾(Polymer tipped bullet)

ポリマーチップドホローポイント弾断面図
ポリマーチップドホローポイント弾断面図 画像出典:Grasyl, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons

先端部にプラスチック(ポリマー)製のチップを挿入した弾頭は、

  • ポリマーチップ弾(Polymer tipped bullet)
  • プラスチックチップ弾(Plastic tipped bullet)
  • プラスチックチップ・ホローポイント弾 (Plastic-tipped Hollow Point)
  • バリスティックチップ弾(Ballistic Tip bullet)(Nosler社の商標)

などと、呼ばれます。

ホローポイント弾の先端にポリマー製のチップを付けた弾頭で、空力性能とストッピングパワーを向上させた設計です。

着弾時にチップが空洞(凹み)に押し込まれ、弾頭先端が拡張してターゲット内部に大きなダメージを与えます。

ホローポイント弾とポリマーチップ弾の拡張構造の違い:

  • ホローポイント弾:空洞内に進入した流体(組織や血液)によって内圧が高まり拡張する。
  • ポリマーチップ弾:衝撃でポリマーチップが弾頭内部に押し込まれることで拡張する。

ポリマーチップ弾は、主にライフルやシングルショット・ピストルで利用され、長距離射撃での精度向上を目的としていますが、一部のセミオート・ピストル用弾薬では、作動不良を防ぐスムーズな給弾を目的として利用されています(例:Cor-Bon/Glaserの「Glaser Pow’RBall」やExtreme Shockの「NyTrilium Air Freedom」など)。

プラスチックチップ弾画像
ホローポイント弾(左)とポリマーチップ弾(右)
画像出典:Thewellman, CC0, via Wikimedia Commons

この弾頭は「バリスティックチップ(Ballistic Tip)」とも呼ばれ、この名称はノスラー社(Nosler)の商標ですが、ホーナディー社(Hornady)やシエラ社(Sierra Bullets)といった他メーカーも類似の弾頭を製造しています。

ポリマーチップ部分の素材は、ポリオキシメチレン(POM)が多いですが、ポリウレタンなど他の素材を使用する場合もあります。

ポリオキシメチレン(POM)は軽量で耐久性が高く、加工が容易なため、弾頭のチップに使用することで弾道性能の向上やコスト削減が可能です。

ポリマーチップ弾のメリット

  • 高い命中精度
    • ポリマーチップは形状が均一で安定しているため、ソフトポイント弾やホローポイント弾よりも精度が高く、長距離精密射撃で優れた集弾性能を発揮。
  • 優れた弾道特性
    • 流線型の形状により、空気抵抗が減少し、飛行中のエネルギーと速度を保持しやすく、風の影響を受けにくい。
  • 高いストッピングパワー
    • 狩猟用途では、着弾時にポリマーチップがコアに押し込まれ、拡張(マッシュルーミング)を促進する。
  • 給弾の信頼性
    • 滑らかな先端の形状により、自動式の銃でも給弾がスムーズで、ホローポイント弾よりも作動の信頼性が高い。
  • 優れた耐久性
    • ポリマーチップが弾頭を保護するため、取り扱い時や装填時の損傷を防ぎ、設計通りの性能を維持する。

ポリマーチップ弾のデメリット

  • 高コスト
    • 製造コストが高く、一般的な弾薬よりも価格が高い傾向がある。
  • 利点が限定的
    • 近距離射撃時や高精度が不要な場合、ポリマーチップ弾に大きなメリットがない。
  • 法的制限
    • 一部の地域では、ポリマーチップ弾を含む特定の弾薬が規制されていることがある。
  • 全ての銃に適合するわけではない
    • 設計上は給弾性能を向上させるものの、一部の銃では相性が悪く、動作不良を起こすこともある。

ノスラー社では口径によってチップを色分けしています。

  • .224:オレンジ
  • .257:ブルー
  • 6mm:パープル
  • 6.5mm:タン
  • .270:イエロー
  • 7mm:レッド
  • .30:グリーン
  • .338:マルーン
  • 8mm:ダークブルー

以下はポリマーチップ弾で利用されている代表的な弾薬です。

  • .17 HMR
  • .204 ルガー
  • FN 5.7×28mm
  • .30-30 ウィンチェスター
  • .308 ウィンチェスター
  • .460 S&W マグナム

その他の拡張する弾薬

主要なホローポイント弾には、「ホローポイント弾」「ジャケッテッド・ホローポイント弾」「ポリマーチップ弾」があります。

これらに比べると市場シャアは小さいですが、他にも以下のような弾薬が流通しています。

セグメンテッド・ホローポイント弾(Segmented Hollow Point / SHP)は、着弾時に複数の破片に分裂するよう設計された弾頭です。

弾頭が竹を割るように縦に分裂し、複数の創傷経路を生み出すことでストッピングパワーを高めます。

しかし、この弾薬には注意点があります。

分裂する特性が原因で、厚手の衣服を着たターゲットに対しては十分な貫通力を発揮できない場合があります。

大きな貫通力を維持するには大きな質量が必要であり、分裂して1断片あたりの質量が小さくなると貫通力が低下します。

狩猟においては、小動物に対して有効ですが、大きな動物の場合は致命傷となる主要な臓器に到達できないため、効果的ではありません。

SHP弾のメリット

  • 小動物に優れたストッピングパワー
    • SHP弾は着弾時に3つの断片に分裂し、複数の創傷を形成して効果を高める。
  • 過貫通の抑制
    • セグメント化された設計により貫通力が制限され、ターゲットの背後にある対象への二次被害リスクを軽減する。
  • 汎用性
    • 小動物の狩猟、害獣駆除、トレーニングなど、さまざまな用途で使用可能。

SHP弾のデメリット

  • 限定的なストッピングパワー
    • 対人用や狩猟用(中~大型獣用)としての効果が低い。
  • 射程の制限
    • 亜音速弾では通常の弾薬と比べて有効射程距離が短い傾向がある。
  • 貫通力の低下
    • 貫通力が低く、深い貫通深度が必要な場合には不利となることがある。
  • 給弾の問題
    • 一部の自動式銃で給弾不良が起こるリスクがある。
  • コストが高い
    • 特殊な設計のため、通常の弾薬よりも価格が高い傾向がある。
  • 法的規制
    • 一部地域ではホローポイント弾に規制があり、SHP弾にも適用される可能性がある。

モノメタル弾(Monometal)は、銅や銅合金などの単一素材で作られた弾頭です。

一般的な弾頭は鉛を銅のジャケットで覆う構造ですが、多く流通するモノメタル弾は鉛不使用が特徴です。

  1. 単一素材構造
    • モノメタル弾は、ジャケットやコアといった複数の部品を使用せず、均質な単一素材で製造されています。
  2. 素材
    • 主に銅や銅-亜鉛真鍮合金が使われており、これにより耐久性と加工性を両立しています。
  3. 環境への配慮
    • 鉛の毒性による環境汚染や健康被害を防ぐため、モノメタル弾は環境に優しい弾薬として注目を集めています。
  4. 重量保持率の高さ
    • 着弾時に破砕しにくく、変形後も重量が保たれるため、深い貫通深度を発揮します。
  5. 安定した拡張性
    • ホローポイント構造や特殊形状の設計により、拡張性能が均一で安定しています。
  6. コストの高さ
    • 製造コストが高く、従来の鉛のコアを使用した弾薬に比べて価格が高めです。

モノメタル弾の種類には以下があります。

  • ホローポイント弾
    • 先端に空洞を設けたホローポイント型モノメタル弾で、拡張性に優れます。
  • ソリッド弾
    • 先端が閉じた構造の弾頭で、貫通力を重視しています。
  • 特殊形状弾
    • 切断効果や特定の用途に最適化された独自の形状を持つ弾頭です。

モノメタル弾は主に狩猟や競技射撃で使用されます。

  • 大型獣の狩猟
    • 高い貫通力と質量保持率により、大型獣を効率的に仕留めることができます。
  • 小型獣や害獣駆除
    • 弾頭が破砕しにくいため、狩猟では肉へのダメージを最小限に抑えられます。
  • 競技射撃
    • 高精度で環境にやさしいため、競技でも採用が増えています。

モノメタル弾には以下のメリットとデメリットがあります。

モノメタル弾のメリット

  • 鉛を使用せず環境に優しい。
  • 貫通力が高い。
  • 着弾後も質量保持率が高い。
  • 拡張性能が安定。
  • 狩猟で肉へのダメージが少ない。

モノメタル弾のデメリット

  • 高価。
  • 従来の弾頭とは異なる弾道特性を持つ場合がある。
  • 弾頭重量維持のため弾薬の全長が長くなり、一部の銃で使用に適さない場合がある。

環境意識の高まりや鉛弾の規制強化により、モノメタル弾の需要は増加し続けると見込まれています。

また、技術の進化により、モノメタル弾は従来の鉛のコアの弾頭と同等か、それ以上の性能を発揮するようになっています。

エクスパンディング・フルメタルジャケット (Expanding Full Metal Jacket / EFMJ)は、フェデラル社(Federal Premium)が特許を取得した弾頭で、従来のホローポイント弾の代替として設計されたフルメタルジャケット弾です。

一般的なホローポイント弾のように先端が裂けず、弾頭内部が潰れて拡張する構造です。

この弾薬はホローポイント弾ではありませんが、ストッピングパワーと貫通力のバランスを取りつつ、過剰な貫通を抑えることを目的としています。

EFMJのメリット

  1. フルメタルジャケット構造でありながら拡張する
    • EFMJは、フルメタルジャケット構造を持ちながら着弾時に拡張する。
  2. 貫通力を抑制
    • 拡張によってターゲットに効率的にエネルギーを伝達し、障害物を貫通するリスクを低減。
  3. 高い信頼性
    • フルメタルジャケット構造のため、弾頭の先端が閉じており、セミオート・ピストルやサブマシンガンなど、自動装填式の銃器でも給弾不良が起きにくい設計。
  4. 低マズルフラッシュ
    • マズルフラッシュ(発射炎)を抑制した装薬を使用しているため、暗所や夜間の使用に向いている。
  5. 規制された地域でも使用可能
    • ホローポイント弾が規制されている地域で使用可能。

EFMJのデメリット

  • 入手性の制限
    • EFMJ弾は、一部の口径(9mm、.40 S&W、.45 ACP)でのみ提供されており、他の弾薬ほど口径バリエーションが豊富ではない。
  • 貫通力の低下
    • EFMJ弾は軽量で、重い弾頭と比較して貫通力が低下しやすく、特定の状況では効果が低い可能性がある。
  • 高コスト
    • ホローポイント弾と同様に、EFMJ弾は標準的なFMJ弾よりも高価な傾向がある。
  • 実績の少なさ
    • EFMJは長年使用されてきた従来のホローポイント弾やFMJ弾と比較すると比較的新しいため、実戦データが少なく信頼性が劣る。
  • 短銃身での信頼性
    • ショートバレルでの一部のテストでは、速度低下により、EFMJ弾が複数層の衣服を貫通する際に拡張しないことがある。

オープンチップマッチ弾(Open Tip Match / OTM)は、設計思想上ホローポイント弾ではありません。しかし、ホローポイント弾として扱われることがある弾薬です。

OTM弾は、ホローポイント弾と同様に先端に空洞があり、長距離射撃での精度を追求して設計されています。

先端の空洞は、製造過程で鉛を充填するために設けられており、弾頭の重量バランスを均一化し、空力特性を向上させることで高い精度を実現しています。命中時の弾頭の挙動(拡張)は考慮されていません。

主に標的射撃や競技で使用され、 軍でも使用されていますが、一般的に厳密にはホローポイント弾ではないと解釈されています。

しかし、見た目はホローポイント弾と変わらないため、ホローポイント弾とみなされる場合もあります。

一部、狩猟用OTM弾も存在しますが、狩猟を目的とした他の弾頭に比べて人気がありません。

OTM弾のメリット

  • 高い精度
    • OTM弾は長距離射撃で優れた精度を発揮するよう設計されている。
    • 弾道係数が非常に高く、重量配分も均一であるため、集弾率が非常に良い。
  • 一貫した性能
    • 製造時に非常に均質な弾体を生み出し、個体別の重量差が最小限に抑えられている。
  • 空気抵抗の低減:
    • 小さいメプラット(弾頭の開口部)とボートテール設計により、OTM弾は空気抵抗を最小限に抑え、速度を維持しつつ飛翔時間を短縮。
  • 入手性
    • OTM弾薬は精密射撃や射撃競技で人気があり、入手が容易。

OTM弾のデメリット

  • 限定的なストッピングパワー
    • 着弾時に拡張や破砕しないことがあり、狩猟やディフェンス用途には効果が限定的になる場合がある。
  • 法的な曖昧さ
    • 一部地域でホローポイント弾として分類されるかどうかについて議論や混乱がある。
  • コストが高い
    • OTM弾はフルメタルジャケット(FMJ)弾よりも高価な傾向がある。
  • 狩猟には不向き
    • 狩猟用に特化して設計された弾薬と比較すると、必ずしも最適な選択肢とは言えない。(一部の製品で狩猟用OTM弾も存在)

他の弾薬との違い

ホローポイント弾画像

一般的に多く流通している、「ホローポイント弾(HP/JHP)」「フルメタルジャケット弾 (FMJ)」「ソフトポイント弾 (SP)」 は、それぞれ異なる特性を持ち、用途や目的に応じて使い分けられます。

以下に、それぞれの特徴を解説します。

特徴ホローポイント
(HP/JHP)
フルメタルジャケット
(FMJ)
ソフトポイント
(SP)
拡張設計ありなしあり
ストッピングパワー高い低い中程度
(狩猟では獲物による)
貫通力低い高い中程度
近距離命中精度高い高い高い
長距離命中精度高い中程度低い
二次被害リスク低い高い中程度
給弾不良リスク中程度低い中程度
価格高い低い中程度
用途護身、狩猟、競技軍事、訓練、競技狩猟

フルメタルジャケット弾 (FMJ)

ホローポイント弾画像
FMJイラスト画像
  • ジャケット(被甲): 弾頭を覆う金属製の外装で、精度や貫通力を向上させる役割を持つ。
  • コア(弾芯): 弾頭の内部にある主要な金属部分で、貫通やダメージを与える中核部分。
  • パウダー(装薬): 弾薬内部に充填された火薬で、燃焼して弾頭を推進する役割を果たす。
  • ケース(薬莢): 装薬や弾頭を収納し、発射時にガス圧を保持する金属またはプラスチック製の容器。
  • プライマー(雷管): 火薬を着火するための小型爆発装置で、発射の引き金となる重要部品。

フルメタルジャケット(Full metal jacket / FMJ)は、コアがジャケットで覆われた構造の弾頭です。

日本語でFMJは「完全被甲弾」と呼ばれますが、実際は「完全」ではなく、弾頭の底部に鉛のコアが見える開口部があります。

弾頭底部の開口部は鉛が露出しているため、発射時には鉛の粒子が空気中に放出されることから、屋内射撃場では健康リスクを考慮して推奨されていません。

代わりに、弾頭底部もジャケットで完全に覆っている弾頭が屋内射撃場で推奨されており、この弾頭はトータル・メタル・ジャケット(TMJ)と呼ばれます。

TMJはメッキ加工でコアを包んでいるため厚みが薄く、ポーテッドバレルが備わっている銃で使用するとジャケットが剥がれるリスクがあるため、用途によっては推奨されません。

FMJは最も多く利用されている弾頭の種類で、主に射撃練習用軍用として利用されています。

ライフル用FMJは高速で、弾頭先端が尖った「スピッツァー」形状が一般的ですが、一部の口径では丸型のFMJも見られます。

低速のライフル弾(例:レバーアクションライフル用)などでは、先端が平らなFMJが多く使用されます。

セミオート・ピストルなど、自動式の銃で使用されるFMJは先端が丸い形状がほとんどですが、円錐台形などの形状のFMJも存在します。

一部のFMJはジャケット素材にスチール(鉄)を使用しています。スチールジャケットFMJは着弾時に火花を発生させることから火災のリスクがあるため、一部の射撃場ではスチールジャケットFMJの使用を禁止しています。

ライフル弾比較画像
5.45x39mm 5.56x45mm 7.62x39mm 7.62x51mm 7.62x54mmR

フルメタルジャケット弾のメリット

  • 高い貫通力
    • 弾頭が変形しにくく、高い貫通力を持つ。
  • 低価格
    • 製造コストが低く、流通量が多いため安価。
  • 高い信頼性
    • 自動装填式の銃でスムーズな給弾を実現し、作動不良が少ない。
  • クリーニングが容易
    • 銃身を汚しにくいため、射撃後のクリーニングに手間がかからない。
  • ハーグ条約で認められている
    • 軍では戦争時の使用が規制されるハーグ条約に準拠し、軍用として利用可能。

フルメタルジャケット弾のデメリット

  • ストッピングパワーが低い
    • 変形しにくいため、ターゲットに十分な損傷を与えられず、貫通しやすい。
  • 二次被害のリスク
    • 過剰な貫通力により、貫通弾が周囲の人や物に被害を与える危険性がある。

ソフトポイント弾 (SP)

38スペシャルSP画像
ソフトポイント弾イラスト画像
  • ソフトポイント:コアが露出し、拡張性と貫通力のバランスを重視した設計。
  • ジャケット(被甲): 弾頭を覆う金属製の外装で、精度や貫通力を向上させる役割を持つ。
  • コア(弾芯): 弾頭の内部にある主要な金属部分で、貫通やダメージを与える中核部分。
  • パウダー(装薬): 弾薬内部に充填された火薬で、燃焼して弾頭を推進する役割を果たす。
  • ケース(薬莢): 装薬や弾頭を収納し、発射時にガス圧を保持する金属またはプラスチック製の容器。
  • プライマー(雷管): 火薬を着火するための小型爆発装置で、発射の引き金となる重要部品。

ソフトポイント弾(Soft-point / SP)は、先端に鉛のコアが露出している弾頭です。

弾頭側面は銅合金などのジャケットで覆われており、着弾時には柔らかい先端部分が大きく潰れて拡張し、ターゲットに大きなダメージを与えます。

ホローポイント弾よりも拡張しにくいため、大きく拡張させるには高速な弾速が必要です。そのため、マグナム弾やライフル弾と相性が良い傾向があります。

フィードランプ説明画像

セミオート・ピストルなど、自動装填式の銃でソフトポイント弾を使用すると、露出した鉛がフィードランプ(傾斜)に接触し抵抗となり、給弾不良が起こりやすい問題があります。

ソフトポイント弾は狩猟用として使用されることが多く、リボルバーや手動式ライフル(ボルトアクション、レバーアクション、ポンプアクションなど)で使用されるのが一般的です。

弾速や弾頭重量などが同じ条件の場合、ソフトポイント弾はホローポイント弾よりも貫通力が高いため、大型獣の狩猟に適しています。

ソフトポイント弾のメリット

  • バランスの取れた性能
    • フルメタルジャケット弾(FMJ)とホローポイント弾(HP)の中間的な特性を持ち、FMJよりも拡張が大きく、HPよりも貫通力に優れる。
  • 狩猟に効果的
    • 大型の獲物を狩る際に効果を発揮し、拡張によって広い創傷を作りながら、十分な貫通力で致命傷となる臓器に到達可能。
  • 汎用性
    • ハンドガンとライフルの両方で利用可能であり、さまざまな口径が選べるため、用途や銃に応じた柔軟な選択が可能。
  • レバーアクションライフルに適合
    • チューブ型マガジンを持つレバーアクションライフルに最適で、平らまたは丸い弾頭によりプライマー(雷管)の暴発を防ぐ。
  • 高いコストパフォーマンス
    • シンプルな設計により、他の拡張型弾薬と比べて比較的安価。

ソフトポイント弾のデメリット

  • 拡張が限定的
    • 着弾時に拡張するものの、ホローポイント弾ほど急速または広範囲に拡張しないため、ストッピングパワーが劣る場合がある。
  • 貫通力の低下
    • フルメタルジャケット弾と比較すると、貫通力が低い。
  • 空力性能の制限
    • 多くのソフトポイント弾は平らや丸い弾頭を持つため、尖った弾頭よりも空気抵抗が大きく、長距離での精度が劣りやすい。
  • 装填不良の可能性
    • 一部の自動装填式銃では、ソフトポイント弾の露出した鉛の先端が抵抗となり、装填不良を起こすことがある。

ホローポイント弾の歴史とダムダム弾

コルトリボルバー画像
1849 .44コルトドラグーン、コルト1873 SAA、ルガースーパーブラックホーク 画像出典:Michael E. Cumpston, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons

ホローポイント弾の歴史は19世紀後半に始まります。当時、「エクスプレス弾」として販売され、主にライフル用として開発されました。

弾頭の先端部分を空洞化することで軽量化し、高速でフラットな弾道を実現すると同時に、柔らかい鉛合金製の弾頭が着弾時に拡張する効果も持っていました。.32-20、.38-40、.44-40などの弾薬はリボルバーでも使用可能で、ハンターや射撃愛好家の間で人気を集めました。

19世紀後半から20世紀初頭にかけて、無煙火薬が普及。無煙火薬は黒色火薬に比べ燃焼効率が高く、弾薬の小型化、高速化、軽量化を可能にしました。

しかし、鉛の弾を高速で発射すると、融点の低い鉛は摩擦熱によって溶けてしまい、ライフリングの溝を埋めてしまう「レッディング」と呼ばれる問題が生じます。そのため、弾頭が負荷に耐える必要があり、鉛を銅合金で包んだフルメタルジャケット(FMJ)弾が開発されました。

FMJ弾は鉛より硬いため着弾時に変形が少なく、対象を貫通する傾向が強い弾薬であると同時に、内部損傷を与えにくいという課題がありました。

この問題を解決するため、イギリス軍が管理するダムダム兵器廠(現インドのカルカッタ郊外)で「ジャケッテッド・ソフトポイント弾」が開発され、後にジャケッテッド・ホローポイント弾が開発されました。

これにより、着弾時に拡張する弾薬は「ダムダム弾」と呼ばれるようになりました。

ジャケッテッド・ソフトポイント弾とは、鉛のコアを銅合金で包んだ状態で、先端だけ鉛が露出している弾薬です。鉛は柔らかいため着弾時に変形し、大きく拡張します。

これらの弾薬には以下の種類があります:

  • .303口径のMk III, IV, V:イギリス軍が採用したライフル弾。
  • .455口径のMk III「マンストッパー」:リボルバー用ホローポイント弾。
ダムダム弾画像
第一次世界大戦のドイツ軍のポストカード。フランス軍が悪名高いダムダム弾を使用したと非難。 1914 年末から 1918 年に発行された。「悪名高きダムダム弾。ドイツの敵はそのような手段を使う!」と書かれている。 画像出典:Liersch & Co., Gustav, Berlin, Public domain, via Wikimedia Commons

1899年、ドイツがこれらの弾薬を「不必要な苦痛を与える武器」として国際法違反を訴えました。その結果、ハーグ条約で「人体内で容易に拡張または平坦化する弾丸」の使用が禁止されました。(アメリカはこの条約に署名しなかったため、国際法上アメリカは戦争でホローポイント弾を使用可能な状態を維持しました)

それから時が流れて1960年代のアメリカでは、ホローポイント弾が法執行機関や民間のハンターに利用されるようになり、次第に人気を得ていきました。

1980年代、FBIの要請を受けてフェデラル社(Federal Premium Ammunition)が「ハイドラショック(Hydra-Shok)」を開発。ホローポイントの中心に「センターポスト」を備え、衣類を貫通しても拡張性を維持する新しい設計でした。

1990年代初頭にはウィンチェスター社(Winchester)が黒いホローポイント弾「ブラックタロン(Black Talon)」を発売。命中時に花びら状に開く逆テーパージャケットを採用し、高い拡張効果と貫通抑制を実現しました。しかし、殺人事件で使用されたことでメディアの批判を受け、販売中止に追い込まれました。

ブラックタロンの後継として、ウィンチェスターは「レンジャーTシリーズ」や「PDX1」などの弾薬を開発し、民間市場や法執行機関で人気を博しました。これらの弾薬は、高いストッピングパワーを維持しつつ、安全性を考慮した設計が特徴です。

2018年、米陸軍は初めてホローポイント弾を正式採用しました。「M1153特殊用途弾薬」は、9×19mmパラベラム弾で、弾頭重量147グレインのジャケッテッド・ホローポイント構造を採用しています。

バリスティックゼラチンとFBIが推奨する弾薬

バリスティックゼラチン画像
バリスティックゼラチン 画像出典:Armorpiercer, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons

FBI(連邦捜査局)は、バリスティックゼラチン(バリスティックジェル)を使用した試験において、12~18インチ(約30~46cm)の貫通深度を持つ弾薬を推奨しています。

バリスティックゼラチンは、人の細胞組織を模したゼラチンの塊で、弾薬の貫通力を測る指標として利用されています。

以下はバリスティックゼラチンを使用した貫通力と拡張サイズの例です。

使用弾薬製品名貫通深度
(インチ)
拡張直径
(インチ)
銃口初速
(fps)
.380 ACPHornady 90 gr FTX Critical Defense13.20.52910
.380 ACPFederal 99 gr HST22.50.35893
.380 ACPSig Sauer 90 gr V-Crown12.80.51861
.380 ACPSpeer 90 gr Gold Dot11.00.49937
.380 ACPWinchester 95 gr PDX19.50.63900
9mmHornady 124 gr XTP18.00.521150
9mmFederal 124 gr HST14.50.681155
9mmSig Sauer 124 gr V-Crown13.80.571160
9mmSpeer 124 gr Gold Dot14.00.651180
9mmWinchester 124 gr PDX113.30.611200
.45 ACPHornady 185 gr FTX Critical Defense13.00.63960
.45 ACPFederal 230 gr HST12.20.77890
.45 ACPSig Sauer 230 gr V-Crown13.50.70850
.45 ACPSpeer 230 gr Gold Dot13.80.72875
.45 ACPWinchester 230 gr PDX112.90.75880

バリスティックゼラチン(弾道ゼラチン)は、動物の筋肉組織における銃創の効果をシミュレートするために設計された試験用素材で、主に貫通力の比較に利用されます。

人間の筋肉組織に近い特性を持ち、弾薬の性能試験で使用されています。

終末弾道(ターゲットに当たった後の弾頭の挙動)の研究に役立ちますが、皮膚や骨、筋肉の引張強度といった構造までは再現していません。

バリスティックゼラチンは、ゼラチン粉末を水に溶かして作られ、代表的な配合には以下の2種類があります。

  • FBI式(10%ゼラチン)
    • ゼラチン粉末(250ブルームのAタイプ)を水に対して1:9の質量比で混ぜ、4℃に冷却し製造。
    • 1988年、FBIが試験基準として採用後、広く普及しました。
  • NATO式(20%ゼラチン)
    • ゼラチン濃度が高く、10℃に冷却し製造。
    • 材料コストが高いため、FBI式より使用頻度は低めです。

バリスティックゼラチンは水温が40℃を超えるとゼラチンの特性が変化する可能性があり、調製時の温度管理が重要です。

バリスティックゼラチンを使用して正確な試験を行うためには校正が必要となり、校正方法の一例として、次の手順が挙げられます。

  • 空気銃で、.177口径(4.5mm)のスチールBB弾をゼラチンに撃ち込み、貫通深度を測定。
  • 速度183±3m/sで、貫通深度が8.3〜9.5cmであれば適切と判断。

天然ゼラチンと合成ゼラチンを比較すると、以下の違いがあります。

  • 天然ゼラチン
    • 黄褐色で透明。
    • 一度使用すると再利用不可。
  • 合成ゼラチン
    • 無色透明で、溶融再形成が可能なものもある。
    • 長期的に使用できるため、経済的な選択肢として人気。

狩猟用弾薬を評価する場合、以下の点に注目されます。

  • 小型動物用(例:プレーリードッグ)には浅い貫通と速い拡張が求められます。
  • 中型動物用(例:オジロジカ)には深い貫通が必要です。

FBIは護身用弾薬において、バリスティックゼラチンに対して14~16インチ(約35.6~40.6cm)の貫通深度を理想としています。

この基準は、1986年のFBIマイアミ銃撃事件をきっかけに策定されたもので、法執行機関で護身用弾薬の性能を適切に評価し選択できるようにするために作成されました。

※FBIマイアミ銃撃事件については、以下の記事をご覧ください。

主な目的は、貫通力とストッピングパワー(無力化する能力)を測定することです。

試験は以下の6種類の条件で行われます。

  1. 通常のバリスティックゼラチンのみ
  2. 厚手の冬服を着せたバリスティックゼラチン
  3. 車のドアを模した20ゲージ鋼板(2枚)
  4. 住宅の壁を模した石膏ボード+バリスティックゼラチン
  5. 合板+バリスティックゼラチン
  6. 車のフロントガラス+バリスティックゼラチン

各試験で5回発射し、ゼラチン内の貫通深度を測定します。

貫通深度の評価基準は以下に基づいています。

  • 理想的な貫通深度は14~16インチ
    • この範囲に収まる弾薬は高い評価を受けます。
  • 12インチ未満は貫通不足のため減点
    • FBIマイアミ銃撃事件では貫通不足が原因でFBI捜査官の命を失った反省があります。
  • 18インチ超えは過剰な貫通力とみなされ減点。
    • 貫通弾は二次被害のリスクになる他、体内で運動エネルギーを完全に消費しない弾頭はストッピングパワーに悪影響があると評価されます。

FBIは、試験で得られるデータの70%で「貫通深度の一貫性」を重要視しています。

残りの評価基準は、拡張性能が20%、停弾時の弾頭重量が10%です。

この試験基準によって弾薬メーカーはFBI試験で高評価を得る製品の開発に取り組むようになり、その結果、9mm弾の性能向上や、低威力と判断されていた.38スペシャル弾や.380ACP弾なども改善し、護身用の弾薬として注目されるようになりました。

しかし、この試験は万能ではありません。

一部の専門家は以下の点を指摘しています。

  • 対象を無力化する能力よりも、貫通力の判定として有効。
  • 平均貫通深度がわずか0.01インチ違うだけで、スコアが最大50ポイント(10%)も異なることがある。
  • 最終的に弾頭が目標に命中しなければどんな試験結果も意味がない。
  • 適切な箇所に命中すれば、FBIスコアや貫通深度の違いは重要ではない。

まとめ

ホローポイント弾は、護身用や法執行機関で使用される弾薬で、先端に空洞(ホローポイント)が設けられており、着弾時に拡張してダメージを増大させるのが特徴です。

構造と機能

  • ホローポイント:弾頭の先端に空洞があり、命中時に拡張し威力を高める。
  • ジャケット:弾頭を覆う外装で、精度や貫通力を向上させ、拡張度合いを制御する。
  • コア:弾頭の内部部分で、貫通やダメージを与える中核となる。

性能と特徴

  • 拡張:着弾時に直径が増大し、大きなダメージを与える。
  • ストッピングパワー:効率的にエネルギーをターゲットに伝達し、対象を無力化する能力が高まる。
  • 貫通力と安全性:貫通力を抑え、二次被害を最小限に抑える設計。

種類と用途

ホローポイント弾には、ジャケット付きの「ジャケッテッド・ホローポイント」やプラスチックチップが内蔵された「ポリマーチップ」などがあります。

ホローポイント弾にはさまざまな設計が施されており、用途に応じて選択されています。

関連用語集

用語説明
ホローポイント弾
Hollow Point Bullet
先端部に空洞があり、着弾時に拡張して標的に大きな損傷を与える弾丸。
貫通力を抑制し、背後への貫通を防ぐ。
ジャケテッドホローポイント弾
Jacketed Hollow Point Bullet
ホローポイント弾の一種で、ジャケットで覆われており、銃身内での鉛汚れを減少させる。
ソフトポイント弾
Soft Point Bullet
弾芯の先端が露出しており、着弾時に適度に拡張するが、ホローポイント弾ほどの拡張はない。
フルメタルジャケット弾
Full Metal Jacket Bullet
弾芯全体をジャケットが覆っており、変形しにくく貫通力が高いが、阻止力は低い。
モノメタル弾
Monolithic Bullet
鉛を含まない単一の金属(通常は銅)で作られた弾丸。
コア/弾芯
Core
弾丸の中心部で、通常は鉛などの軟らかい金属でできている。
ジャケット
Jacket
弾芯を覆う硬い金属製の外皮。
銃身内での摩擦を減らし、弾丸の形状を維持する。
拡張
Expansion
ホローポイント弾が標的に命中した際に、先端部がきのこ状に広がる現象。
マッシュルーミング
Mushrooming
ホローポイント弾が標的に命中した際に、先端部がきのこ状に広がる現象を指す俗語。
貫通力
Penetration
弾丸が目標物を貫通する能力。
ストッピングパワー
Stopping Power
対象を行動不能に(無力化)する能力。
オーバーペネトレーション
Over-penetration
過剰な貫通。
弾丸が標的を貫通し、背後にあるものにも被害を与える可能性がある。
FBI テストプロトコル
FBI Test Protocol
FBIが採用する弾薬の性能試験方法。
貫通力や拡張性を評価する。
バリスティックゼラチン
Ballistic Gelatin
弾丸の挙動を研究するために使用される特殊なゼラチン。
人体組織に似た密度と弾性を持つ。
ハーグ条約
Hague Conventions
戦争における兵器使用を制限する国際条約。
人体内で容易に拡張する弾丸の使用を禁止。

最後までお読みいただきありがとうございます。

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