フリーフローティングバレルの命中精度が高い理由について解説します。
フリーフローティングバレルとは?
フリーフローティングバレルとは、レシーバー(機関部)以外のどのパーツにも接触していないバレル(銃身)です。
ハンドガードはレシーバーのみに接続されており、バイポッド(二脚)などのアクセサリー類もバレルと接触しません。
まさにバレルが宙に浮いた状態になっています。
M4ライフルの場合、ハンドガードはレシーバーとバレルの2点で固定されています。
仮にこれをレシーバーの1点だけで固定しても、ガスチューブがガスブロックを介してバレルに接続されているため、純粋なフリーフローティングバレルではありません。
しかし、ハンドガードに加わる力がバレルに伝達されない状態の場合、ガスチューブやガスブロックの存在を無視して「フリーフローティングバレル」と呼ばれることがあります。
フローティングバレルの命中精度が高い理由
外部からの影響
バレルに外部から力が加わると銃口の位置が動き、着弾(POI)がずれます。
バレルにバイポッドを装着して地面に置くと銃口が上がり、弾道は上方へ変化します。
他にも、
- バレルと接触するハンドガードに力が加わった
- バレルに銃剣を着剣した
- バレル表面にカモフラージュテープを巻いた
- 銃口にサプレッサーを装着した
- 木製ストックが湿度によって変形しバレルに接触した
・・・なども弾道に影響を与えます。
高い命中精度を得るためには、初弾と次弾が一貫して同じ弾道を飛ぶ必要があります。
もし弾道にずれが生じると、いくら正確にサイトでターゲットを狙っても弾は狙った場所に命中しません。
このような理由から、高い命中精度を得るためには外部の影響を受けないフリーフローティングバレルが必要とされます。
また、バレルを強固に固定可能なレシーバーを利用すると精度に良い影響があります。
いくらフリーフローティングバレルが良いとはいえ、強度の弱いレシーバーを使用するとフリーフローティングバレルの能力を活かすことができません。
バレルの振動問題(バレルハーモニクス)
弾頭がバレル内を通過するとバレルは上下左右に波打つように振動します。
これには目視できる大きな振動と、目視できない小さな振動があります。
バレルが振動するということは、振動が収まるまでの間は銃を静止させても銃口が動き続けていることを意味し、この状態で次弾を発射すると初弾とは異なる弾道を飛ぶことになります。
高い命中精度を得るには銃口が静止している必要があり、バレルの振動は命中精度に悪影響があります。
振動レベルはバレルの長さや太さによって異なり、細く長いバレルは大きく振動し、逆に太く短いバレルは小さく振動します。
またバレル上の振動は個体差があり、例えば銃口から20cm後方のポイントでは振動が小さく、銃口から30cm後方のポイントでは振動が大きいといった、バレル全体が波打つような振動が発生します。
仮に銃口の位置で振動が少なく、銃口から離れた位置の振動が大きい場合、命中精度への影響は小さくなります。
しかし銃口の位置で大きな振動が発生する場合は問題です。
このような振動問題を解決する方法として、ベンチレストシューティングでは銃口に重りを装着する「バレルチューナー」が利用されることがあります。
銃身長の違いによって振動の波が変化するものの、銃身長を細かく変更することは難しいため、銃口に装着された重りの位置を微妙に変化させて銃口が最も振動しない位置を探します。
銃口にサプレッサーを装着すると命中精度が向上することがありますが、これはサプレッサーが重りとなって銃口の振動が軽減し、サプレッサーによる銃身長延長効果によって弾速が向上したことが原因となっている場合があります。
ガス作動のライフルはバレルの途中からガスチューブを経由してガス圧を得て作動します。
この構造ではガスブロック(フロントサイト)の位置でバレルの振動が小さくなる代わりに、銃口位置の振動が大きくなる場合があります。
また、ガス作動のライフルはガスポートから銃口までの距離がある程度決められており、この長さが長くても短くても作動不良の原因となるため、銃身長を変化させて振動を軽減することが困難です。
そのため長距離射撃(精密射撃)にはガス作動は不向きで、バレルが宙に浮いた状態のフリーフローティングバレルを使用可能な銃が適しています。
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