
世界に存在する弾薬は数千種以上にのぼります。
しかし、すべてを網羅的に解説するのは現実的ではありません。
そこでこの記事では、代表的な弾薬を厳選して解説します。
※記事の最後に専門用語解説を掲載しています。
標準的な自動拳銃用弾薬
汎用性が高く、世界的に広く使用されている自動拳銃(セミオートピストル)用の弾薬群です。
.32 ACP

| 弾頭重量 | 60~73 gr |
| 初速 | 約900~950 fps |
| マズルエナジー | 約130~140 ft-lbf |
| 薬莢長 | 17.3 mm |
.32 ACP(Automatic Colt Pistol)は、ジョン・ブローニングが1899年に設計した小型拳銃用のセンターファイア式弾薬で、主にブローバック式自動拳銃向けに開発されました。全長25mm、弾頭径7.94mmで、セミリムド・ストレート型ケースを採用しています。初期にはFN M1900やコルトM1903などに使用され、世界中の軍・警察で広く使用されました。
軽量で反動が少なく、近距離での命中精度が高いため、コンシールドキャリー(隠匿携帯)用途に適しています。ストッピングパワーに関しては議論があるものの、実戦での使用実績も豊富です。ジェームズ・ボンドが使用するワルサー PPKが.32 ACPを採用していたことから、一般認知度が高まりました。
米国ではSAAMI規格により最大圧力20,500 psiと定められていますが、ヨーロッパではCIP規格により23,000 psiまで許容されており、欧州製弾薬の方が高初速になる傾向があります。代表的な弾種には、60gr JHP(初速1,100 ft/s)、71gr FMJ(984 ft/s)、75gr +P(1,150 ft/s)などがあり、銃身長によって性能が大きく変化します。
.32 ACPは、KelTec P32、ワルサー PP/PPK、ベレッタトムキャット、CZ-83など多くの拳銃に採用されており、近年では軽量ポリマー製のサブコンパクトピストルにも広く使われています。ヨーロッパでは「7.65mm ブローニング」として知られ、民間・法執行機関での使用が一般的です。
- .32ACPを使用する銃の例:
- FN ブローニング M1900(FN Browning Model 1900)
- FN ブローニング M1910(FN Browning Model 1910)
- コルト M1903(Colt Model 1903 Pocket Hammerless)
- ワルサー PP(Walther PP)
- ワルサー PPK(Walther PPK)
- SIG P230
- CZ 83
- アストラ 300(Astra 300)
- ベレッタ M1935(Beretta Model 1935)
- マウザー HSc(Mauser HSc)
.380 ACP(9x17mm)

| 弾頭重量 | 85~100 gr |
| 初速 | 約850〜1,100 fps |
| マズルエナジー | 約170~220 ft-lbf |
| 薬莢長 | 17.3 mm |
.380 ACPは、1908年にジョン・ブローニングによって設計され、コルト社が製造を開始した小型拳銃用のリムレス・ストレート型弾薬です。弾頭径は約9mm(.355インチ)で、主にブローバック式の小型ピストルに使用されることを想定して開発されました。低反動で構造が簡素なため、固定バレル式の設計が可能となり、命中精度が高く、製造コストも抑えられます。
第二次世界大戦前にはチェコスロバキア、ハンガリー、イタリア、オランダ、ユーゴスラビアなど複数の国で軍用拳銃の標準弾薬として採用され、ドイツでも広く使用されました。戦後は9×19mmパラベラムに置き換えられましたが、民間市場では現在も人気があり、特に隠匿携帯用の自衛用ピストルとして広く使われています。
代表的な使用銃には、レミントン Model 51、Kel-Tec P3AT、グロック 42などの軽量ロックブリーチ式ピストルや、MAC-11、CZ 83などの小型サブマシンガンがあります。弾種は85〜100グレインが主流で、初速は約980〜1280 ft/s、マズルエナジーは約190〜337 ft⋅lbfと幅があります。用途に応じて貫通力や拡張径が異なる設計がされており、自己防衛用途に適した性能を持ちます。
.380 ACPは、地域によって「9mm Kurz」「9mm Corto」「9mm Browning Short」など様々な名称で呼ばれ、現在も多くのメーカーが製造を続けています。
- .380ACPを使用する銃の例:
- コルト M1908(Colt Model 1908 Pocket Hammerless)
- FN ブローニング M1910(FN Browning Model 1910)
- ワルサー PP(Walther PP)
- ワルサー PPK(Walther PPK)
- ベレッタ M1934(Beretta Model 1934)
- ベレッタ M84(Beretta Model 84)
- マウザー HSc(Mauser HSc)
- SIG P230
- グロック 42(Glock 42)
- ルガー LCP(Ruger LCP)
9x19mm パラベラム

| 弾頭重量 | 115〜147 gr |
| 初速 | 約1,150〜1,200 fps |
| マズルエナジー | 約350〜395 ft-lbf |
| 薬莢長 | 19.15 mm |
9×19mmパラベラムは、1901年にオーストリアの銃器設計者ゲオルク・ルガーによって開発されたピストル用のセンターファイア式リムレス型弾薬で、世界で最も広く使用されている小火器用弾薬の一つです。元々はルガー・ピストル用に設計され、1904年にドイツ海軍、1908年に陸軍に採用されました。弾頭径は約9mm、ケース長は19mmで、適度なストッピングパワーと低反動、大きな市場シェアを兼ね備えており、軍・警察・民間で広く使用されています。
第二次世界大戦中には、鉛節約のためスチールコア(鉄芯)弾(08 mE)や鉄粉を焼き固めた焼結鉄製弾(08 sE)などの特殊弾種が登場しました。戦後はNATO標準弾薬として採用され、9mm NATOとして知られる高圧仕様も存在します。スウェーデンではm/39B弾が開発され、ケブラー(ソフトアーマー)を貫通できる性能を持ちます。米国では「+P」や「+P+」といった高圧仕様が普及し、自己防衛用途での性能向上が図られています。
ロシアでは7N21や7N31などの高貫通力を持つ軍用特殊弾が開発され、ボディアーマーの貫通を目的とした設計がなされています。弾種はFMJ、JHP、トレーサーなど多岐にわたり、用途に応じた選択が可能です。米国の法執行機関では、115gr +P+弾が長年にわたり使用されており、近年ではFBIも9mm弾の有効性を再評価し、採用を拡大しています。
現在では、9×19mmパラベラムは世界中の軍・警察・民間市場で標準的な拳銃弾として位置づけられており、性能、供給、互換性の面で高い信頼性を持つ弾薬です。
- 9x19mmパラベラム弾(9mm Luger)を使用する銃の例:
- グロック17(Glock 17)
- ベレッタ92FS(Beretta 92FS)
- シグ・ザウエル P226(SIG Sauer P226)
- ワルサーP99(Walther P99)
- H&K USP
- CZ 75
- スミス&ウェッソン M&P9(Smith & Wesson M&P9)
- ルガー SR9(Ruger SR9)
- FN ハイパワー(FN Browning Hi-Power)
- H&K VP9
.40 S&W

| 弾頭重量 | 135〜180 gr |
| 初速 | 約850〜1,330 fps |
| マズルエナジー | 約400〜500 ft-lbf |
| 薬莢長 | 21.6 mm |
.40 S&W(スミス&ウェッソン)は、1990年にアメリカのS&W社とウィンチェスター社によって共同開発されたピストル用のリムレス弾薬です。1986年のFBIマイアミ銃撃事件を契機に、FBIが求めた中速・低反動の10mmオート代替弾として誕生しました。10mmオートのケースを短縮し、9mmサイズの中型フレームピストルに適合させることで、.40 S&Wは高いストッピングパワーと扱いやすさを両立させています。
初期にはS&W Model 4006やGlock 22/23などが対応拳銃として登場し、法執行機関を中心に広く採用されました。1994年の連邦アサルトウェポン禁止法(2004年失効)により、マガジン容量が制限された際には、限られた装弾数でも高威力を発揮できる.40 S&Wが民間市場でも人気を集めました。
弾頭重量は105〜200グレインまで幅広く、代表的な装弾では135grで588 ft⋅lbf、180grで463 ft⋅lbfなどがあり、用途に応じた選択が可能です。SAAMI規格では最大圧力35,000 psiとされており、9mmや.45 ACPと比較してエネルギー効率や貫通力に優れています。
しかし、FBIは2015年に再び9mm弾へ移行し、.40 S&Wは一部で過剰な銃の摩耗や速射時のコントロールが困難といった問題が指摘されるようになりました。現在では、特殊部隊や一部の民間ユーザーに支持されつつも、法執行機関では9mmへの回帰が進んでいます。とはいえ、.40 S&Wは依然として高威力と汎用性を兼ね備えた有力な選択肢の一つです。
- .40 S&Wを使用する銃の例:
- グロック22(Glock 22)
- グロック23(Glock 23)
- スミス&ウェッソン M4006(Smith & Wesson Model 4006)
- スミス&ウェッソン M4046(Smith & Wesson Model 4046)
- スプリングフィールド XD40(Springfield XD40)
- H&K USP40(Heckler & Koch USP40)
- シグ・ザウエル P229(SIG Sauer P229)
- ベレッタ Px4 ストーム(Beretta Px4 Storm)
- ワルサー P99(Walther P99)
1986年のマイアミ銃撃戦は、FBI史上最悪の銃撃戦の一つです。この事件を契機に、FBIは制式拳銃の見直し(9mmから.40S&W口径への移行)や戦術訓練の強化を進めました。
.45 ACP

| 弾頭重量 | 200〜230 gr |
| 初速 | 約830〜950 fps |
| マズルエナジー | 約350〜675 ft-lbf |
| 薬莢長 | 22.8 mm |
.45 ACPは、1904年にジョン・ブローニングによって設計された拳銃用のリムレス・ストレート型弾薬です。アメリカ陸軍がフィリピンでの戦闘において.38口径弾のストッピングパワー不足を痛感したことから、より強力な.45口径弾の採用が求められました。これを受けて、コルト社がブローニングの設計をもとに開発したのが.45 ACPであり、1911年にはM1911ピストルとともに正式採用されました。
230グレインの弾頭を約830フィート毎秒で発射する標準仕様を持ち、比較的低圧で作動するため、銃器の耐久性にも優れています。また、標準弾は亜音速であるため、サプレッサー(消音器)との相性も良く、特殊部隊などでも使用されています。弾種にはFMJ(フルメタルジャケット)、JHP(ジャケット・ホローポイント)、トレーサー、ショットシェルなど多様なバリエーションがあり、軍用・民間用ともに幅広く利用されています。
.45 ACPは、アメリカ軍だけでなく、イギリス、カナダ、オーストラリア、フランスなどでも使用され、各国で独自の名称や仕様が存在します。現在では、9mmパラベラム弾が主流となっているものの、.45 ACPはその高いストッピングパワーと信頼性から、民間の防衛用途や射撃競技、特殊部隊などで根強い人気を保っています。弾薬の寸法や圧力規格はSAAMI(米国)およびCIP(欧州)によって定められており、安全性と互換性が確保されています。
- .45 ACPを使用する銃の例:
- コルト M1911(Colt M1911)
- グロック 21(Glock 21)
- H&K USP45(Heckler & Koch USP45)
- シグ・ザウエル P220(SIG Sauer P220)
- スミス&ウェッソン M&P45(Smith & Wesson M&P45)
- スプリングフィールド XD45(Springfield XD45)
- FNX-45(FN FNX-45)
- ベレッタ Px4 ストーム(Beretta Px4 Storm)
- マウザー M2(Mauser M2)
- AMT ハードボーラー(AMT Hardballer)
7.62x25mm トカレフ

| 弾頭重量 | 85~90 gr |
| 初速 | 約1,200〜1,630 fps |
| マズルエナジー | 約290〜514 ft-lbf |
| 薬莢長 | 25 mm |
7.62×25mmトカレフ弾は、1930年代にソビエト連邦で開発された拳銃・短機関銃用の弾薬です。設計の元となったのはドイツ製の7.63×25mmマウザー弾であり、寸法が非常に似ているため、一部の銃器では両方の弾薬を使用可能です。ただし、トカレフ弾はより高圧のため、マウザー弾専用の銃で使用すると損傷の恐れがあります。
拳銃弾としては珍しいボトルネック型を採用しており、平均初速は約400〜500m/s、マズルエナジーは600J前後と非常に高い性能を誇ります。そのため、NIJ規格のボディアーマー(レベルIIA〜II)を貫通する能力があり、9×19mmパラベラム弾よりも貫通力に優れるとされています。特にスチールコア(鉄芯弾)の弾種では、防弾装備に対して高い効果を発揮します。
ソ連では、TT-33ピストルやPPSh-41短機関銃などに広く採用され、ワルシャワ条約機構加盟国にも輸出されました。後に9×18mmマカロフ弾に主力が移行しましたが、ロシアや中国の警察・特殊部隊では現在も使用例があります。冷戦後には西側諸国にも流入し、民間市場でも一部で流通しています。
現在でもルーマニア、チェコ、セルビアなどで生産が続けられており、射撃競技やコレクターに一定の人気があります。トカレフ弾は、軍事史において技術的・戦術的に重要な位置を占める弾薬の一つです。
- 7.62×25mmトカレフを使用する銃の例:
- トカレフ TT-33(Tokarev TT-33)
- PPS-43 短機関銃(PPS-43 Submachine Gun)
- PPSh-41 短機関銃(PPSh-41 Submachine Gun)
- CZ 52
- ノリンコ 213(Norinco Model 213)
- 54式拳銃(Type 54 Pistol)
- 64式短機関銃(Type 64 Submachine Gun)
- 85式短機関銃(Type 85 Submachine Gun)
- ツァスタバ M57(Zastava M57)
9x18mm マカロフ

| 弾頭重量 | 95 gr |
| 初速 | 約950〜1,050 fps |
| マズルエナジー | 約200〜250 ft-lbf |
| 薬莢長 | 18 mm |
9×18mmマカロフ弾は、ソビエト連邦で1946年に設計され、1951年に正式採用された拳銃弾です。設計者はB.V.セミンで、当時の制式ピストルであったTT-33の問題点を解消する目的で開発されました。特に、操作性の向上と製造の簡略化を重視し、ブローバック方式に適した構造となっています。
ドイツの9×18mmウルトラ弾を参考にしており、弾頭径は9.27mmと、一般的な9mmパラベラム弾(約9.017mm)よりもわずかに大きくなっています。そのため、互換性には注意が必要です。最大圧力は約162MPa(23,500psi)で、比較的低圧であるため、固定銃身のピストルに適しています。
標準的な弾種には、フルメタルジャケット(FMJ)、ジャケット・ホローポイント(JHP)、鋼芯弾などがあり、用途に応じてストッピングパワーや貫通力が異なります。ロシアでは、SP-7やSP-8などの特殊弾も開発されており、防弾装備を貫通する能力を持つものも存在します。代表的な使用銃には、マカロフPM、ステチェキンAPS、CZ vz. 82などがあり、東側諸国で広く採用されました。
現在でもロシアや一部の旧東側諸国では使用されており、民間市場でも一定の人気があります。9×18mmマカロフ弾は、設計の合理性と信頼性から、軍用・警察用だけでなく、自衛や射撃競技にも適した弾薬として評価されています。
- 9×18mmマカロフを使用する銃の例:
- マカロフ PM(Makarov PM)
- スチェッキン APS(Stechkin APS)
- MP-448 スキッフ(MP-448 Skif)
- RCA TKB-0216
- KBP R-92KS
- フォート12(Fort-12)
- ラドム P-64(Radom P-64)
- ラドム P-83 バナド(Radom P-83 Wanad)
- FÉG PA-63
高威力・大口径自動拳銃用弾薬
標準的な弾薬よりも高い威力や、特殊な用途を持つ自動拳銃用の弾薬です。
.357 SIG

| 弾頭重量 | 115〜147 gr |
| 初速 | 約1,350〜1,450 fps |
| マズルエナジー | 約500〜620 ft-lbf |
| 薬莢長 | 21.97 mm |
.357 SIGは、1994年にスイスのSIG社とアメリカのフェデラル(Federal Premium Ammunition)社によって共同開発された拳銃弾です。リボルバー用の.357マグナム弾に匹敵する性能を、オートマチックピストルでも実現することを目的として設計されました。基本構造は.40S&W弾の薬莢をベースに、先端を絞って9mm径の弾頭を装着する「ボトルネック形状」を採用しています。
この形状により、短いグリップ長のピストルにも対応しつつ、十分な装薬量を確保することが可能となり、高い初速と運動エネルギーを実現しています。弾道性能としては、125グレインの弾頭で410〜450m/sの初速、686〜790ジュールのマズルエナジーを持ち、精度と貫通力に優れています。
.357 SIGは一部のアメリカの公的機関、例えばシークレットサービスや連邦航空保安局などで採用されていますが、銃への負荷が大きい、反動が大きい、高価、マズルフラッシュが大きいなどの問題もあり、9x19mmパラベラム弾や.40S&W弾と比べると普及率は限定的です。民間市場でも一定の人気はあるものの、主流の座には至っていません。
- .357 SIGを使用する銃の例:
- シグ・ザウエル P226(SIG Sauer P226)
- シグ・ザウエル P229(SIG Sauer P229)
- グロック 31(Glock 31)
- グロック 32(Glock 32)
- グロック 33(Glock 33)
- スミス&ウェッソン M&P357(Smith & Wesson M&P357)
- スプリングフィールド XD357(Springfield XD357)
- H&K USP コンパクト(Heckler & Koch USP Compact in .357 SIG)
- スミス&ウェッソン Sigma 357V(Smith & Wesson Sigma 357V)
- ステアー M357-A1(Steyr M357-A1)
10mm Auto(10×25mm)

| 弾頭重量 | 155〜200 gr |
| 初速 | 約1,200〜1,600 fps |
| マズルエナジー | 約500〜700 ft-lbf |
| 薬莢長 | 25.2 mm |
10mmオート弾(10x25mm)は、1983年にアメリカの銃器評論家ジェフ・クーパー氏とスウェーデンのFFVノルマ社によって共同開発された拳銃弾です。設計の背景には、従来の9mm弾よりも高威力で、.45ACP弾よりも高初速かつフラットな弾道の弾薬を求める声がありました。元となった薬莢は.30レミントン弾で、形状はリムレス・ストレート型を採用しています。
弾頭径は約10.17mmで、薬莢長は25.2mm、全長は32mmとされ、最大圧力はSAAMI基準で37,500psiに達します。これにより、175グレインの弾頭で高い初速と運動エネルギーを発揮し、貫通力とストッピングパワーの両立が可能となっています。
一時期はFBIの人質救出チームや特殊装備部隊に採用されましたが、反動の強さや銃器の耐久性に課題があり、後に.40S&W弾へと移行する動きが見られました。それでも、10mmオート弾はIPSCなどの射撃競技や狩猟用途で根強い人気を保っており、現在も一部のメーカーによって生産が続けられています。高威力なこの弾薬は、特定の用途においては非常に有用な選択肢となっています。
- 10mmオートを使用する銃の例:
- ブレン・テン(Bren Ten)
- コルト デルタエリート(Colt Delta Elite)
- スミス&ウェッソン M1006(Smith & Wesson Model 1006)
- スミス&ウェッソン M1076(Smith & Wesson Model 1076)
- スプリングフィールド XD-M 10mm(Springfield XD-M 10mm)
- グロック 20(Glock 20)
- グロック 29(Glock 29)
- ロックアイランド TAC Ultra FS(Rock Island TAC Ultra FS)
- キンバー カスタム TLE II(Kimber Custom TLE II)
- STI パーフェクト10(STI Perfect 10)
.50 Action Express(.50 AE)

| 弾頭重量 | 300〜350 gr |
| 初速 | 約1,200〜1,500 fps |
| マズルエナジー | 約1,200〜1,600 ft-lbf |
| 薬莢長 | 32.6 mm |
.50アクション・エクスプレス弾(.50 AE、12.7×33mm)は、1988年にアメリカのエヴァン・ウィルジン氏とアクションアームズ(Action Arms)社によって開発された大口径拳銃弾です。当時の拳銃弾の中でも最強クラスの威力を持つとされ、特にデザートイーグルなどの大型拳銃で使用されることで知られています。
薬莢の形状はリベーテッドリム・ストレート型で、弾頭径は12.7mm(.500インチ)と非常に大きく、全長は約40.9mmです。雷管には大型拳銃用のタイプが使用されます。代表的な弾頭には300グレインのXTP(Hornady)やGDHP(Speer)、325グレインのUCHP(Speer)などがあり、初速は約450〜470m/s、マズルエナジーは約1,965〜2,200Jに達します。
.50 AEは、その高威力ゆえに狩猟や自己防衛、競技射撃などで用いられることがありますが、反動の強さや銃器の大型化を伴います。そのため、一般的な拳銃弾としての普及は限定的であり、特定の用途に特化した選択肢として位置づけられています。現在でも一部のメーカーによって製造が続けられており、狩猟やメタリックシルエット競技など特殊用途において高い評価を受けています。
- .50AEを使用する銃の例:
- デザートイーグル Mark VII(Desert Eagle Mark VII)
- デザートイーグル Mark XIX(Desert Eagle Mark XIX)
- AMT オートマグ V(AMT Automag V, .50 AE)
メタリックシルエット射撃競技は、動物形の金属標的(鶏・猪・七面鳥・羊)を遠距離から立射で撃ち倒す精密射撃競技です。命中して標的が倒れることで得点となり、距離や風を考慮した弾道補正技術が求められます。ライフル・ピストル部門があり、国際的にはIMSSUが統括しています。
9x21mm ギュルザ

| 弾頭重量 | 103 gr |
| 初速 | 約1,300 fps |
| マズルエナジー | 約415 ft-lbf |
| 薬莢長 | 20.9 mm |
9×21mmギュルザ弾は、1990年代にロシアのツニートチマッシ(TsNIITochMash)が開発した拳銃弾です。主に連邦保安庁や軍の特殊部隊で採用されており、設計目的は、9×19mmパラベラムで貫通できないボディアーマーなどの個人防護装備を突破することです。
薬莢はストレート型リムレスで、代表的な弾種にSP-10、SP-11、SP-12、SP-13があります。各弾種は弾頭重量と性能が異なり、SP-10は軽めの弾頭で高初速と高い貫通力を示します。弾頭構造は外側のジャケットとスチールコアがポリエチレン層で仕切られ、非装甲目標では一体的に作用し、装甲に当たるとジャケットが剥がれてスチールコアが貫通する仕組みになっています。近距離での高い装甲貫通性能が報告されており、例えば薄いチタン板と多数層のケブラーを近距離で貫通する評価があります。
欠点としては弾頭を軽くして高速化しているため空気抵抗で減速が早く、有効射程が短くなる点が挙げられます。専用銃としてSR-1セミオートピストルやSR-2ヴェレスク向けに整備されており、同寸法の他国製9×21mmとは仕様が異なり互換性がありません。民間市場での流通はほとんどなく、特殊任務や戦術的用途に限られた運用が中心です。
- 9×21mmギュルザ(Gyurza)を使用する銃の例:
- SR-1 ベクター(SR-1 Vektor)
- SR-2 ヴェレスク(SR-2 Veresk)
- ゲパルド短機関銃(Gepard)
サブコンパクト/PDW向け小口径弾
個人防衛火器(PDW)や小型拳銃向けに開発された、貫通力などに特化した小口径高速弾薬です。
5.7x28mm FN

| 弾頭重量 | 約28〜40 gr |
| 初速 | 約1,600(拳銃)~2,350(P90) fps |
| マズルエナジー | 約220〜340 ft-lbf |
| 薬莢長 | 28.90 mm |
FN 5.7×28mm弾は、ベルギーのFNハースタル社が1980年代末から1990年代初頭にかけて開発した小口径・高初速の拳銃弾です。NATOの新世代個人防衛火器(PDW)構想に基づき、9mmパラベラム弾に代わる弾薬として設計されました。目的は、ボディアーマーを貫通できる能力を持ちながら、軽量・低反動・高精度を両立することにあります。
弾頭重量はおおむね28〜40グレイン(約1.8〜2.6g)で、初速は銃種により異なりますが、P90のような長銃身では約716m/sに達します。運動エネルギーは約500〜790ジュールに及び、CRISAT基準のソフトアーマーを貫通する能力を備えています。代表的な弾種には軍用のSS190、鉛フリーのSS195LF、民間向けのSS197SRなどがあります。
弾頭は着弾時にタンブリング(横転)を起こすよう設計されており、拡張や破砕によらず大きな創傷を形成します。この構造はハーグ条約に抵触せず、軍・法執行用途に適しています。軽量弾頭のため空気抵抗による減速が早く、有効射程はおよそ200メートルとされていますが、携行弾数を増やせる点が実戦上の利点です。
FN P90サブマシンガンやFN Five-seveNセミオートピストルなど専用火器に使用され、40か国以上の軍や法執行機関に採用されています。湾岸戦争やアフガニスタン紛争、イラク戦争でも実戦投入され、特殊部隊や要人警護任務での使用実績があります。民間市場でも限定的に販売され、射撃競技や護身用途として注目されています。
- 5.7×28mmを使用する銃の例:
- FN ファイブセブン(FN Five-seveN)
- FN P90
- FN PS90
- ルガー57(Ruger-57)
- CMMG バンシー 5.7(CMMG Banshee 5.7)
- ケルテック P50(Kel-Tec P50)
- AR57 カービン(AR57 Carbine)
- ダイアモンドバック DBX57(Diamondback DBX57)
- マスターピースアームズ MPA 57(MasterPiece Arms MPA 57)
4.6x30mm HK

| 弾頭重量 | 約23〜40 gr |
| 初速 | 約2,000〜2,400 fps |
| マズルエナジー | 約204〜512 ft-lbf |
| 薬莢長 | 30.50 mm |
HK 4.6×30mm弾は、ドイツのヘッケラー&コッホ社が開発した小口径高速弾で、主にPDW(個人防衛火器)向けに設計されています。従来の拳銃弾よりも高い貫通力と低反動を兼ね備えており、特にボディアーマーを着用した相手に対する有効性を重視して開発されました。1999年に登場し、主にH&K MP7に使用されています。
弾頭は軽量で高速、初速は約720~750 m/sに達し、近距離での貫通性能に優れています。また、反動が小さいため、連射時のコントロール性が高く、精度の向上にも寄与しています。弾薬の設計には、スチールコア弾やフルメタルジャケット弾など複数のバリエーションがあり、用途に応じて選択可能です。
NATO標準化を目指して5.7×28mm弾と競合しましたが、最終的には標準化には至りませんでした。それでも、特定の軍や法執行機関では採用されており、近年では特殊部隊などでの使用例も見られます。小型で軽量な設計は、携行性や装弾数の面でも利点があり、PDWの性能を最大限に引き出すための要素となっています。
- 4.6×30mmを使用する銃の例:
- H&K MP7
- ST キネティクス CPW(ST Kinetics CPW)
- CMMG フォーシックス(CMMG FourSix)
回転式拳銃(リボルバー)用弾薬
主にリボルバーで使用される、リム付きの弾薬です。
.38 スペシャル

| 弾頭重量 | 約125〜158 gr |
| 初速 | 約700〜900 fps |
| マズルエナジー | 約200〜300 ft-lbf |
| 薬莢長 | 29.3 mm |
.38スペシャル弾は1898年にアメリカのスミス&ウェッソンが設計した、リム付きセンターファイア式の拳銃弾です。主にリボルバーで使われますが、セミオートピストルやカービンにも使えることがあります。
元は.38ロングコルトを発展させたもので、当初は黒色火薬を用い、のちに無煙火薬へ更新されました。弾頭径は約.357〜.358インチ(約9.07mm)で、名称の「.38」は当時の「弾頭径=薬莢直径」を示します※。1920年代から1990年代初頭にかけて米国の警察で標準弾薬として広く採用されました。命中精度が良く反動がソフトなため、標的射撃や競技、護身、携行、ホームディフェンスや小動物狩猟まで用途が広いのが特徴です。
典型的な弾頭重量158グレイン弾を短めの銃身で発射すると、マズルエナジーは概ね200〜300ft-lbfの範囲になります。高圧仕様の「+P」や「+P+」も存在しますが、旧式リボルバーでは使用不可のため注意が必要です。.357マグナム口径のリボルバーであれば.38スペシャルを安全に発射できます。
日本では長年にわたり警察のリボルバー用弾薬として採用され、予算や治安事情の関係で継続使用されてきました。一部の特殊部隊や私服刑事には9mmセミオートピストルが導入されていますが、.38スペシャルは扱いやすさと実績から依然重要な役割を果たしています。
- .38スペシャルを使用する銃の例:
- スミス&ウェッソン M10(Smith & Wesson Model 10)
- スミス&ウェッソン M36(Smith & Wesson Model 36)
- スミス&ウェッソン M60(Smith & Wesson Model 60)
- スミス&ウェッソン M15(Smith & Wesson Model 15)
- コルト ディテクティブスペシャル(Colt Detective Special)
- コルト オフィシャルポリス(Colt Official Police)
- コルト コブラ(Colt Cobra)
- ルガー SP101(Ruger SP101)
- チャーターアームズ アンダーカバー(Charter Arms Undercover)
- ミネベア M360J サクラ
※.38スペシャルのサイズが昔と現在で異なる理由は、こちらの記事で解説しています。
.357 マグナム

| 弾頭重量 | 約125〜158 gr |
| 初速 | 約1,200〜1,500 fps |
| マズルエナジー | 約400〜700 ft-lbf |
| 薬莢長 | 33 mm |
.357マグナム弾は、1934年にスミス&ウェッソンが開発した強力な回転式拳銃用実包です。登場当時は「世界最強の拳銃弾」として知られ、その後も高圧仕様の拳銃弾として長く人気を保ち続けています。
弾頭径は約0.357インチ(9.07ミリ)で、高初速と貫通力により、軽度の遮蔽物やボディアーマーを貫く能力を持ち、護身から狩猟、メタリックシルエット射撃競技まで幅広く使われています。
.38スペシャル弾と比べると、.357マグナムは圧倒的に高いエネルギーと弾速を発揮し、中型獣の狩猟や高威力を求める状況に適しています。一方で、.357マグナム対応のリボルバーでは.38スペシャル弾も発射できるため、訓練や射撃練習に経済的な利点があります。
代表的な使用銃はスミス&ウェッソン・モデル27やルガーGP100など。最大圧は約35,000psiと高く、強固なフレーム構造を持つ銃のみが対応します。高い信頼性、ストッピングパワー性能、そして優れた精度を兼ね備えた実包として、.357マグナムは現在も世界中で高い評価を受けています。
- .357マグナムを使用する銃の例:
- スミス&ウェッソン M19(Smith & Wesson Model 19)
- スミス&ウェッソン M27(Smith & Wesson Model 27)
- スミス&ウェッソン M686(Smith & Wesson Model 686)
- コルト パイソン(Colt Python)
- コルト キングコブラ(Colt King Cobra)
- コルト トルーパー(Colt Trooper)
- ルガー GP100(Ruger GP100)
- ルガー SP101(Ruger SP101)
- タウルス M66(Taurus Model 66)
- チャーターアームズ マグパグ(Charter Arms Mag Pug)
.44 マグナム

| 弾頭重量 | 約180〜340 gr |
| 初速 | 約975〜1,700 fps |
| マズルエナジー | 約700〜1,500 ft-lbf |
| 薬莢長 | 32.6 mm |
.44マグナムは1950年代にエルマー・キースとスミス&ウェッソンが共同で開発し、1955年に実用化された強力なリボルバー用実包です。.44スペシャルの薬莢を延長して設計され、低威力の銃に誤装填できない安全性を確保しています。
弾頭径は約0.429インチ(約10.9mm)、薬莢長は約1.285インチ(約32.6mm)。特に中~大型獲物の狩猟やメタリックシルエット射撃競技での利用価値が高い実包です。
威力は大きい反面、発射時の反動とマズルブラストも相応に大きく、扱いには慣れが必要です。精度は良好で、適切な銃と弾薬の組み合わせにより優れた命中精度とエネルギー伝達を実現します。
運用はリボルバーが中心ですが、ライフルや一部のセミオートピストルに転用される例もあります。用途は護身から実猟、競技まで幅広く、強力な打撃力を重視する場面で今なお有力な選択肢となっています。
- .44マグナムを使用する銃の例:
- スミス&ウェッソン M29(Smith & Wesson Model 29)
- スミス&ウェッソン M629(Smith & Wesson Model 629)
- ルガー レッドホーク(Ruger Redhawk)
- ルガー スーパーレッドホーク(Ruger Super Redhawk)
- トーラス レイジングブル(Taurus Raging Bull)
- トーラス レイジングハンター(Taurus Raging Hunter)
- トーラス M44(Taurus Model 44)
- マグナムリサーチ BFR(Magnum Research BFR)
- ダン・ウェッソン モデル44(Dan Wesson Model 44)
- コルト アナコンダ(Colt Anaconda)
- アストラ M44(Astra Model 44)
.500 S&W マグナム

| 弾頭重量 | 約265〜740 gr |
| 初速 | 約1,500〜1,800 fps |
| マズルエナジー | 約2,000〜3,000 ft-lbf |
| 薬莢長 | 41.3 mm |
.500 S&W マグナムは2003年にスミス&ウェッソンとCor-Bonが共同開発した、市販される拳銃弾では世界最強レベルの弾薬です。弾頭径は0.500インチ(約12.7mm)で、弾頭重量はおおむね265〜740グレインまで幅があり、狩猟用途では325〜440グレイン級が一般的です。
高圧を前提とした設計で、SAAMI基準では最大で約60,000psiに達する仕様もある一方、多くの装弾は安全性と排莢の確実性を考慮し約50,000psi程度に抑えられています。薬莢形状はセミリムドとストレートウォールが用いられ、強固なシリンダーを持つ大型リボルバーでの運用を前提としています。
性能はライフル弾に匹敵するエネルギーと高い貫通力を示し、大型獣の狩猟や危険動物に対する護身用途で高い評価を受けています。反動とマズルブラストは非常に大きく、射手には相応の慣れが求められます。
弾頭はハードキャストやジャケッテッドホローポイントなど用途に応じた各種があり、貫通重視から拡張重視まで選択肢が豊富。日常携行向けではなく、狩猟や特殊用途向けに特化しています。
- .500 S&W マグナムを使用する銃の例:
- スミス&ウェッソン M500(Smith & Wesson Model 500)
- マグナムリサーチ BFR(Magnum Research BFR)
- トーラス レイジングブル(Taurus Raging Bull)
- トーラス レイジングハンター(Taurus Raging Hunter)
アサルトライフル用中間弾薬(標準口径)
現代のアサルトライフルで主流となっている、反動と威力のバランスに優れた弾薬群です。
5.56x45mm NATO

| 弾頭重量 | 約55~62 gr |
| 初速 | 約3,100 fps |
| マズルエナジー | 約1,300 ft-lbf |
| 薬莢長 | 44.70 mm |
5.56×45mm NATO(5.56 NATO)は、1970年代後半にベルギーのFN社で開発されたリムレス、ボトルネック型の中間弾薬で、1980年にNATOの標準小銃弾として採用されました。この弾薬は主に自動小銃、カービン、分隊支援火器などに使用され、現在はNATO諸国や日本、韓国、オーストラリア、イスラエルなど多くの国で採用されています。
5.56 NATOは.223レミントン弾を基に改良されたものですが、薬室サイズや圧力規格が若干異なるため、完全な互換性はありません。軽量・高速・低反動という特長があり、兵士がより多くの弾薬を携行でき、フルオート射撃でも制御しやすい利点があります。標準的なSS109/M855弾(62グレイン)は、鋼製ペネトレーターを持ち、比較的長距離での貫通力や精度が向上しています。一方で、実戦でのストッピングパワーや殺傷力をめぐる議論も多く、M4カービンのようなショートバレルモデルでは弾速低下に伴う殺傷力の減少が指摘されています。
近年は環境対策も進み、鉛を使わないM855A1弾や特殊部隊向け高威力弾(Mk262、Mk318など)も採用されています。さらに、5.56mmのストッピングパワー性能や障害物貫通力に不満を持つ動きから、より高威力な口径(例えば6.8mm弾や新しい6.8×51mm弾)への移行も進みつつあります。
- 5.56×45mm NATOを使用する銃の例:
- M16
- M4カービン(M4 Carbine)
- FN SCAR-L(FN SCAR-L)
- H&K G36(Heckler & Koch G36)
- H&K HK416(Heckler & Koch HK416)
- ステアー AUG(Steyr AUG)
- FAMAS F1(FAMAS F1)
- SIG SG 550(SIG SG 550)
- IWI タボール TAR-21(IWI Tavor TAR-21)
- CZ BREN 2(CZ BREN 2)
- 89式5.56mm小銃
- 20式5.56mm小銃
5.45x39mm

| 弾頭重量 | 約53~60 gr |
| 初速 | 約2,900~3,200 fps |
| マズルエナジー | 約1,000~1,200 ft-lbf |
| 薬莢長 | 39.82 mm |
5.45×39mm弾(5.45ミリ)は、1974年からソビエト連邦でAK-74用として正式採用されたリムレス・ボトルネック型の中間弾薬です。旧ソ連諸国やロシア連邦、ワルシャワ条約機構加盟国で広く使用され、現在も主要ライフル弾として多くの地域紛争や戦争で使用されています。開発者はM.サベルニコフら技術者チームで、従来の7.62×39mm弾よりも軽量・高速・低反動という特徴を持ち、兵士の携帯弾数増加やフルオート火器でのコントロール性向上に貢献しました。
有名な7N6弾(FMJ軟鋼芯)は、複雑な構造を持ち、先端の空間やコア(芯材)により命中時に弾の重心が後方に移動しやすく、殺傷力やヨー効果が高まります。これはアフガン戦争などで「poison bullet(ポイズンブレット/毒弾)」と呼ばれ恐れられました。運用開始後、貫通力強化やボディアーマー対応のために、7N6M(強化型)、7N10(貫通力強化)、7N22(AP/徹甲弾)、7N24・7N39(徹甲弾・タングステンコア)など様々なバリエーションが開発されています。
弾速は標準で約880~890m/s、マズルエナジーは1,300~1,400J前後。民間用ではAK-74クローンや一部のAR-15、タボール・ボルトアクションライフル等のバリエーションもあり、市場にはフルメタル・ジャケット弾やホローポイント弾、サブソニック(亜音速弾)/トレーサー(曳光弾)などの多様な弾種も流通しています。
近年、ロシアやウクライナなどでも生産が続けられ、アーマー貫通能力向上の新型弾登場、ボディアーマー対策の再評価等から、性能の進化・多様化が進む現代的な軍用小銃弾薬です。
- 5.45×39mmを使用する銃の例:
- AK-74
- AKS-74
- AK-74M
- AK-12
- RPK-74
- RPK-74M
- AKS-74U
- AN-94 アバカン(AN-94 Abakan)
- ヴェープル1V(Vepr-1V)
5.8x42mm

| 弾頭重量 | 約115~147 gr |
| 初速 | 約3,050~3,200 fps |
| マズルエナジー | 約1,100~1,770 ft-lbf |
| 薬莢長 | 42.2 mm |
5.8×42mm(DBP87)は、中国人民解放軍が採用しているリムレス・ボトルネック型の中間弾薬で、1987年に制式化されました。1970年代の米軍M16および5.56mm弾の運用を参考に、6mm口径前後・高初速・軽量・低反動・精度向上を目指して開発され、従来の7.62×39mm弾の代替ために設計されました。
標準のDBP87は4.15gの弾頭で930m/s、DBP88(重弾)は5g弾頭とより大きなスチールコアにより長距離・貫通能力が強化されています。以降もDBP95(装薬改良型)、DBP10(スチールコア強化型)、最新のDBP191(2019年登場、現行中国軍制式)のように発展を続けています。
弾頭径は6.00mm(.236インチ)、マズルエナジーは1,700~1,900J前後。新型弾は耐腐食性・高初速化、アーマー貫通力・長距離精度の強化を図り、最新型QBZ-191アサルトライフルやQBU-141狙撃銃など多様な5.8mm銃器に対応しています。5.56×45mm NATO、5.45×39mm(ロシア/旧ソ連)などと同様に、兵士が多くの弾薬を携行可能な「軽量・高初速・低反動」を特徴とします。
中国側は5.8mmがNATOの5.56mmやロシアの5.45mmよりボディアーマー貫通力や弾道特性が優れると主張しています。
- 5.8×42mmを使用する銃の例:
- 87式自動歩槍(Type 87 Assault Rifle)
- 95式自動歩槍(QBZ-95 Assault Rifle)
- 95B式自動歩槍(QBZ-95B Carbine)
- 95式班用機槍(QBB-95 Light Support Weapon)
- 88式狙撃歩槍(QBU-88 Sniper Rifle)
- 03式自動歩槍(QBZ-03 Assault Rifle)
- 88式通用機槍(QJY-88 General Purpose Machine Gun)
- QTS-11戦術歩槍(QTS-11 Tactical Rifle)
- 191式自動歩槍(QBZ-191 Assault Rifle)
7.62x39mm

| 弾頭重量 | 約120~154 gr |
| 初速 | 約2,300~2,400 fps |
| マズルエナジー | 約1,400~1,600 ft-lbf |
| 薬莢長 | 38.70 mm |
7.62×39mm弾は、第二次世界大戦直後の1940年代にソ連で広く採用された、リムレス・ボトルネック型の中間弾薬です。設計はN.M.エリザロフらによる技術委員会が担当し、AK-47やSKS、RPD/RPK軽機関銃など各種自動火器で運用されてきました。弾頭重量は主に7.9g前後で、弾速730m/s前後、マズルエナジーは2,000J超です。
AK-47の信頼性や生産性の高さも相まって、旧ソ連諸国や中国、中東、アジア、アフリカ等の軍・警察・民間で現在も広く使われています。弾丸設計は当初の大きな鉛芯から後に鋼芯(M43/PS弾)、高貫通力を狙ったBP弾、7N23 AP弾など多様化。中国製(五六式/Type56)やユーゴスラビア(M67)、西ドイツ(7.62×38mm)等、世界各国でも様々な派生型が生産され、軍用だけでなく、民間用としてFMJ・SP・HPなど豊富なバリエーションが存在します。
中距離での有効性に優れていますが、人体に命中した際は安定した直進性による貫通力が高く、旧型弾はヨー(着弾後の向きの変更)発生までに深く進入するため、殺傷効果の評価は議論があります。アサルトライフルを代表するAK-47とともに、世界中で最も普及した中間弾薬として、軍・民間・狩猟・スポーツに幅広く用いられている重要な弾薬です。
- 7.62×39mmを使用する銃の例:
- AK-47
- AKM
- RPK軽機関銃
- SKS
- 56式自動歩槍(Type 56 Assault Rifle)
- Vz. 58
- ツァスタバ M70(Zastava M70)
- ノリンコ NHM-91(Norinco NHM-91)
サブソニック(亜音速)中間弾薬
アサルトライフルで使用される中で、サプレッサー使用を前提とした亜音速の中間弾薬です。
.300 Blackout

| 弾頭重量 | 約110~220 gr |
| 初速 | 約2,200~2,375 fps 約1,050 fps(亜音速弾) |
| マズルエナジー | 約1,200~1,300 ft-lbf 約800 ft-lbf(亜音速弾) |
| 薬莢長 | 34.7 mm |
.300 AACブラックアウト(.300 AAC Blackout / 300 BLK)は米国のアドバンスド・アーマメント・コーポレーション(AAC)により2009年に開発され、AR-15/M4カービン用の7.62×35mm中間弾薬として2010年から生産されている弾薬です。母体は.221 Fireball/.223 Remingtonで、リムレス・ボトルネック型のケースを持ち、弾頭径は.309インチ(7.8mm)、標準弾頭重量は125gr(8g)で、亜音速弾では220gr(14g)など様々なタイプがあります。
5.56mm NATO弾とは異なり、銃身のみ交換すればAR系のマガジンとボルトを流用でき、特にショートバレル・サプレッサー使用時に優れる性能を発揮します。サブソニック(亜音速)弾は消音効果に優れ、高性能なCQB(近接戦闘)用、特殊作戦用、法執行機関にも人気です。
軍用ではオランダ、英国、米国特殊作戦軍、ドイツ(KSK/州警察)などで正式採用例があり、G39/SIG MCX/H&K HK437等の対応ライフルが運用中です。射撃競技でも高い命中精度を示し、民間でも狩猟・防衛・スポーツと幅広く利用されています。ただし、.223/5.56mm弾との混用は危険で、誤装填による破損事故に注意する必要があります。
.300 Whisper系と互換性が高く、様々な弾頭バリエーションを展開。マガジン容量を維持しつつ、亜音速・超音速・バリア貫通など目的に合わせて弾薬を瞬時に切り替え可能で、現代の多様なニーズに応える高汎用・高性能な中間弾薬です。
- .300 AAC ブラックアウトを使用する銃の例:
- AAC ハニーバジャー(AAC Honey Badger)
- ノベスキ N4-PDW(Noveske N4-PDW)
- ダニエル・ディフェンス DDM4 300S(Daniel Defense DDM4 300S)
- SIG MCX
- SIG ラトラー(SIG Rattler)
- APF 300 ブラックアウトアルファ(APF 300 Blackout Alpha)
- ラディカルファイヤーアームズ RF-15(Radical Firearms RF-15)
- CMMG レゾルート Mk4(CMMG Resolute Mk4)
- ダイアモンドバック DB15(Diamondback DB15)
- ブラックレインオードナンス Spec 15 SSP(Black Rain Ordnance Spec 15 SSP)
- プライマリーウェポンズシステムズ UXR(Primary Weapons Systems UXR)
9x39mm

| 弾頭重量 | 約245~278 gr |
| 初速 | 約1,050 fps |
| マズルエナジー | 約681 ft-lbf |
| 薬莢長 | SP-5: 38.76 mm SP-6: 38.78 mm |
9×39mm弾は、1980年代にソ連のツニートチマッシ(TsNIITochMash)で開発された特殊用途向けライフル弾です。7.62×39mmケースを基に拡大して9.2mm弾頭を使用し、主にスペツナズ(特殊部隊)やサプレッサー付き銃火器に用いられました。サブソニック設計のため弾速は300m/s前後、重量は16~18g(約250~278グレイン)で、400~530mの有効射程や最大10mm鋼板貫通力が特徴です。
代表的な弾種には、精度重視のSP-5、AP(徹甲弾/アーマーピアシング)のSP-6、廉価版のPAB-9(性能不足で廃止)、狙撃・貫通力強化のSPP/BP等があります。SP-6弾は500mで2mm鋼板、100mで8mm鋼板とGOST 3ボディアーマーを貫通可能な威力を持ちます。また命中時にヨー効果が高く、人体への損傷増大も特徴です。
民間版SP-6も存在し、ロシアのRSh-9やMTs-570等でも使用されています。米国では2018年以降民間流通が始まったものの、2021年のロシア制裁による輸入禁止で主にリロードや互換弾頭利用が主流となりました。対応銃器にはAS Val、VSS Vintorez、SR-3M、AK-9、OTs-14 Grozaなど多数があり、主に消音・特殊戦・近接戦闘分野で採用されています。
- 9×39mmを使用する銃の例:
- VSS ヴィントレス(VSS Vintorez)
- AS ヴァル(AS Val)
- SR-3 ヴィーフリ(SR-3 Vikhr)
- 9A-91
- VSK-94
- OTs-12 ティス(OTs-12 Tiss)
- OTs-14 グローザ(OTs-14 Groza)
- AMB-17
- RSh-9
特殊中間弾薬
アサルトライフルで使用される中でも、特殊な用途や性能を持つ中間弾薬です。
6.5mm Grendel

| 弾頭重量 | 約90~144 gr |
| 初速 | 約2,580 fps |
| マズルエナジー | 約1,818 ft-lbf |
| 薬莢長 | 38.7 mm |
6.5mm グレンデル(6.5mm Grendel)は、2003年に設計された中間ライフル弾薬で、AR-15プラットフォームの中~長距離射撃性能向上を主目的としています。母体は.220 Russian(5.6×39mm)で、リムレス・ボトルネック型。弾頭径は6.71mm(.264インチ)、全長57.5mm、最大圧力360MPa(52,000psi)です。
200~800ヤードの射撃で高精度・高エネルギー・低反動を両立し、5.56mm NATO・7.62mm NATO両者より広い用途を持ち、遠距離での運動エネルギーやボディアーマー貫通力でも優れた性能を発揮します。マガジン互換性がありSTANAGマガジンでも装弾数26発(5.56mmだと30発)で運用可能ですが、専用ボルトが必要です。
実戦運用はセルビア軍(Zastava M19など)、フランスの警察特殊部隊GIGNで採用例があります。AR系以外にもボルトアクションやAK派生モデルに展開し、近年は6.5mm口径の弾道特性・汎用性が再評価され、狩猟や競技・軍用での応用が拡大しています。6.5mm Creedmoor、6.8mm SPC、.224 Valkyrieなど関連規格との競合が進みつつある現代的な中間弾薬です。
- 6.5mm グレンデルを使用する銃の例:
- アレクサンダーアームズ AR-15 グレンデル(Alexander Arms AR-15 Grendel)
- CZ 527
- 豊和工業 1500 ミニアクション(Howa 1500 Mini Action)
- ウィルソン コンバット リコン タクティカル(Wilson Combat Recon Tactical )
- アレックス プロ ファイアームズ バーミント(Alex Pro Firearms Varmint)
- スタグ アームズ パースート ハンティング ライン(Stag Arms Pursuit Hunting Line)
- アレクサンダー アームズ タクティカル(Alexander Arms Tactical)
- アンダーソン ユーティリティ プロ(Anderson Utility Pro)
- ZROデルタ ゲーム レディLVOA(ZRO Delta Game Ready LVOA)
.366 TKM

| 弾頭重量 | 約170~231 gr |
| 初速 | 約2,030~2,657 fps |
| マズルエナジー | 約1,570~2,110 ft-lbf |
| 薬莢長 | 37.5 mm |
.366 TKM(9.55×39 mm)はロシアで生まれたライフル弾(スラッグ弾)で、使用される銃(改造AKやSKS)は法律上のショットガンという扱いです。7.62x39mmの薬莢を口径の大きい約9.55mmにネックアップ(口径拡大)して設計されています。
弾種はフルメタルジャケットやホローポイント弾などがあり、一部は実用射程を100メートル程度まで想定しています。メディアやゲームでは貫通力が低めに描かれることが多く、架空の装弾も登場します。
.366TKMが使用される銃には一般的なメトフォード型のライフリングではなく、銃口付近(約12cm区間)に楕円形のランカスターライフリングが備わっています。実務上はショットガンとライフルの中間を狙った設計で、民間の狩猟やスポーツ射撃の需要を満たす狙いがあります。
ロシアの銃規制では、民間人は安全講習や身辺調査を経て21歳以上で許可を得ます。初めに購入できるのは主にショットガンや空気銃で、ショットガンを5年間所持して初めてライフル購入の許可が下りる仕組みです。銃身長500mm未満の長銃(ライフルやショットガン)やバースト射撃、多弾数は原則禁止で、サプレッサーは別途許可が必要です。
.366 TKMはこの制度を回避する目的で生まれました。7.62x39mmの薬莢をネックアップ(口径拡大)した弾薬で、銃身の末端だけにライフリングを持つ設計により法的にスムースボア扱いとなります。そのため5年待つことなく改造AKやSKS系を所持でき、狩猟やスポーツ射撃の短距離運用(射程約100メートル)で人気を集めています。
- .366TKMを使用する銃の例:
- TG2マグナム(AK103)
- VPO-209(AKM)
- VPO-208(SKS)
- TR-3(AK-15)
- VSS Vintorez
7.62x36mm HK

| 弾頭重量 | 約495 gr(約32 g) |
| 初速 | 約590 fps(約180 m/s) |
| マズルエナジー | 約382 ft-lbf |
| 薬莢長 | 36 mm |
7.62x36mmという名称の弾薬は複数存在(例:7.62x36mmグレンデル)しますが、そのうちの1つがHK P11水中ピストル用弾薬です。HK P11水中ピストルの使用弾薬は2種類あります。1つは水中用の7.62×36mm DM101で、約10~11cmの針状タングステン合金弾頭を持ち、重量は10~32g、初速は180~117m/sとされます。弾頭は水流による安定飛翔を目的とし、射程10m(水深10mではエアタンク貫通が可能)です。銃身はスムースボアで、樹脂製5連装バレルクラスターに装填されます。

もう1つは大気中用(地上用)の7.62×36mm DM91で、タングステンコアの通常弾頭(8.6g)がプラスチックサボ付きで装填され、初速は190m/sです。これはライフルバレルから発射され、発射時にはサボが銃口でガスを閉じ込める構造となり、非常に静音な発射が可能です。どちらもバレルクラスターは工場でのみ装填・再装填可能で、実戦では交換式として運用されます。どちらの弾薬も電気式点火で発射される特殊設計です。
9.3x64mm ブレニキ

| 弾頭重量 | 約225~320 gr |
| 初速 | 約2,600~3,000 fps |
| マズルエナジー | 約3,000~4,000 ft-lbf |
| 薬莢長 | 64 mm |
9.3×64mm ブレニキ(9.3×64mm Brenneke)は、ドイツの銃器設計者ウィルヘルム・ブレニキによって1927年に設計されたリムレス・ボトルネック型の大型狩猟用ライフル弾です。標準的なマウザー98ボルトアクションライフルの機関部に適合するように設計され、アフリカ、アジア、ヨーロッパ、北米の中~大型獣狩猟に対応できる威力を持っています。
初期型は19.65g TIG、17g被甲弾など多彩な弾頭が開発され、後に鉛・銅・ブロンズ・フルメタルジャケット・TUG等さまざまな用途の特殊弾も投入されました。現行でもRWS(ドイツ)やA-Square(米国)が各種弾薬を供給し、ハンドロードでは10~21g(154~324gr)まで幅広い弾頭重量を利用可能です。
似た性能として.375H&H マグナムと比較されますが、よりコンパクトなサイズでスタンダードライフルに対応し効率的です。民間用設計のため、軍用弾薬が規制される地域でも利用でき、精度良好(1MOA以下)で危険な大型獣(クマ・バッファロー・ライオン等)の狩猟にも使われます。ロシア軍はドラグノフ SVDK向けに16.6gスチールコアFMJ(9SN)アーマーピアシング弾を開発し、距離600mでボディアーマーを貫通可能です。
この弾薬は標準サイズのマウザー98に無改造、またはわずかな改造で使用可能で、高威力が特徴のヨーロッパ伝統ビッグゲーム用ライフルカートリッジです。
- 9.3×64mmを使用する銃の例:
- SVDK
- タイガー(Tigr / SVD民間モデル)
- ザウアー202(Sauer 202)
- マウザー98系ボルトアクションライフル(カスタムモデル・ハンティング用途)
バトルライフル/汎用機関銃用弾薬(フルサイズ)
比較的口径が大きく、長距離での高い威力や貫通力を求められる銃器で使用される弾薬群です。
.30-06 スプリングフィールド

| 弾頭重量 | 約110~220 gr |
| 初速 | 約2,700~2,900 fps |
| マズルエナジー | 約2,600~3,000 ft-lbf |
| 薬莢長 | 63.3 mm |
.30-06スプリングフィールド弾(7.62×63mm)は、1906年に米国陸軍が制式化したリムレス・ボトルネック型ライフル弾薬です(「.30-60」の名称は「1906年に制式化した30口径弾」を意味する)。
先代の.30-03弾を改良し、150グレインの尖頭弾(スピッツァー)で初速約820m/s・マズルエナジー約3,293Jを実現。M1903スプリングフィールドなどのボルトアクションライフル、M1ガーランド、BAR、M1919機関銃等、米軍主力火器で採用されました。米軍制式ではM1906(150gr)、M1(173gr)、M2(152gr)などのバリエーションがあり、のちに7.62×51mm NATOと交代するまで50年近く軍用弾として活躍しました。
商用の弾頭重量は110~220gr(7.1~14.3g)、狩猟用途ではバイソンやクマなど大型獣にも対応できる強力なエネルギーと汎用性が特徴です。軍用ではAP徹甲(M2)、トレーサー、焼夷、マッチ弾等多用途の弾種が存在し、徹甲弾は100ヤードで12.7mm装甲を貫通可能。
.30-06はM1ガーランドをはじめ多くの世界的名銃に使用され、狩猟家や射撃競技でも定番です。優れた弾道特性と威力、豊富な弾頭選択肢によって「万能カートリッジ」とされ、現在も米国を中心に高い人気と生産が続いています。
- .30-06スプリングフィールドを使用する銃の例:
- スプリングフィールド M1903(Springfield M1903)
- M1ガーランド(M1 Garand)
- M1917エンフィールド(M1917 Enfield)
- ブローニング M1918(Browning Automatic Rifle M1918)
- レミントン 700(Remington Model 700)
- ウィンチェスター M70(Winchester Model 70)
- サベージ 110(Savage Model 110)
- モスバーグ パトリオット(Mossberg Patriot)
- ザウアー 101(Sauer 101)
- ティッカ T3x(Tikka T3x)
7.62x51mm NATO

| 弾頭重量 | 約147~175 gr |
| 初速 | 約2,750~2,800 fps |
| マズルエナジー | 約2,500~2,600 ft-lbf |
| 薬莢長 | 51.2 mm |
7.62×51mm NATO弾は、1954年にNATO制式化された米国発祥のリムレス・ボトルネック型ライフル弾で、.30-06スプリングフィールド弾等を基に開発されました。主にM14ライフル、FN FAL、G3などのバトルライフルや、M60・FN MAG・MG3などのGPMG(汎用機関銃)、M24・L129A1などの狙撃銃で使用され、現在もNATO諸国や世界の軍隊で広く使われています。
弾頭種類も豊富で、FMJ系(M80、SS77/1)、AP徹甲(DM151, P80/1)、トレーサー(M62, L78)、長距離用マッチ弾(M118、IMI 175gr等)、ブランク(空砲)、プラクティス(訓練用プラスチック弾)、特殊用途弾(スナイパー、グレネードランチャー用)等のバリエーションが各国ごとに存在します。米軍のM80A1弾は鉛フリー・貫通性強化型、ドイツ・ノルウェー・イスラエル等でも環境配慮型や高精度型が用意され、アーマーピアシング型が主力です。
.308ウィンチェスター(民生版)と互換性が高いですが、軍用規格(NATO)との圧力・寸法の違いがあるため混用には注意が必要です(7.62mmNATO仕様の銃に.308 winは使用不可)。弾道性能は.30-06に近く、現代では主に狙撃銃・GPMG・DMRとして精度や貫通力を活かし、NATO標準弾として世界中で運用されています。
- 7.62×51mmを使用する銃の例:
- FN FAL
- H&K G3
- M14
- SCAR-H
- H&K HK417
- AR-10
- SIG 716
- L129A1
- SR-25
7.62x54mmR

| 弾頭重量 | 約147~180 gr |
| 初速 | 約2,600~2,800 fps |
| マズルエナジー | 約2,300~2,700 ft-lbf |
| 薬莢長 | 53.72 mm |
7.62×54mmR(リムドカートリッジ)は1891年にロシア帝国で設計・採用された高威力なライフル弾で、現代でもロシア軍の狙撃銃(SVD、SV-98等)およびPKM機関銃などで使用されています。標準装弾は弾頭重量9.6~9.8g(148~151gr)で初速790~830m/s、マズルエナジーは3,300J超。
初期はラウンドノーズFMJでしたが、1908年に「L弾」(尖頭スピッツァー)へ改良。現在主流の弾種にはスチールコア(57-N-323S)、貫通力強化型(7N13)、AP焼夷(7BZ3)、精密狙撃銃用(7N1/7N14)、曳光弾(7T2)があります。
第一次世界大戦以降、各種戦争で大量に用いられ、モシン・ナガン、SVT-40、PSL、ウィンチェスターM1895など多数のライフル・機関銃に対応。高い貫通力や命中精度を持ち、現行ロシア軍ではボディアーマー貫通力も重視しています(AP弾は660mで6mm鋼板貫通)。民間でもハンティングライフル、スポーツ、競技用への流用が広く、派生弾種やハンドロードで幅広く発展しています。
7.62×54mmRは.30-06と近いパフォーマンスを持ち、旧ソ連・東欧・中国・北朝鮮など世界中で軍用・民生両面で長らく使用され続けている歴史的弾薬です。
- 7.62×54mmRを使用する銃の例:
- モシン・ナガン M1891/30(Mosin–Nagant M1891/30)
- ドラグノフ狙撃銃(Dragunov SVD)
- トカレフ SVT-40(Tokarev SVT-40)
- トカレフ AVT-40(Tokarev AVT-40)
- PKM機関銃(PKM Machine Gun)
- PKP ペチェネグ(PKP Pecheneg)
- SG-43(SG-43 Goryunov Machine Gun)
- DP-28軽機関銃(Degtyaryov DP-28 Light Machine Gun)
- SV-98狙撃銃(SV-98 Sniper Rifle)
- NDM-86狙撃銃(NDM-86 Sniper Rifle)
次世代・高圧ライフル弾薬
新しいコンセプトに基づいて開発された、高圧・高威力のライフル弾薬です。
6.8x51mm(.277 Fury)

| 弾頭重量 | 約135~150 gr |
| 初速 | 約2,700~3,000 fps |
| マズルエナジー | 約2,120~2,670 ft-lbf |
| 薬莢長 | 51.2 mm |
.277 Fury(6.8×51mm コモンカートリッジ)は、米SIG SAUERが2019年に設計し、アメリカ陸軍次世代分隊火器プログラム(NGSW)向けに開発された最新のライフル弾です。高圧対応(最大80,000psi/550MPa)「ハイブリッドケース」(ステンレス底部+真鍮胴部+アルミロックワッシャー)で、従来型弾薬の上限を大幅に超える内部圧力を安全に実現しています。弾頭径は7.06mm、薬莢長51.2mm、全長71.8mmで、.308 ウィンチェスター弾と同サイズですが、圧力・性能は大幅に向上しています。
代表的な弾種として、113gr(7g)ハイブリッドボール(初速980m/s/3,483J)、135gr(9g)ブラス・エリートボール(初速840m/s/3,074J)、140・150・155gr(9~10g)ハイブリッド系マッチ/ハンターチップド(最大初速910m/s/4,199J超)があります。弾頭形状はFMJ、マッチキングHPBT、狩猟用ノスラー・アキュボンドなど多様です。
米軍ではXM1186(一般用途)、XM1184(特殊用途)、XM1188(訓練用減装)、XM1192(空砲)、XM1188(トレーサー等)が公称弾種として用いられ、最新のM7ライフル(MCX SPEAR)やM250機関銃などに使用されます。高性能・高エネルギーにより、5.56mm NATO弾を代替し、最新のボディアーマーにも高い貫通力と遠距離精度を発揮。SAAMIでも「.277 SIG Fury」として民間認証され、SIG CROSS、MCX SPEAR等で商用展開しています。性能は6.5mmクリードモアよりも弾道性能に優れ、軍・民間の両市場で注目される次世代高圧ライフル弾です。
- .277 Furyを使用する銃の例:
- M7(SIG MCX Spear)
- M250(SIG LMG-68)
精密射撃・長距離狙撃用弾薬
長距離での高い精度とエネルギー維持を目的として設計されたライフル弾薬です。
.243 ウィンチェスター

| 弾頭重量 | 約55~105 gr |
| 初速 | 約3,100~3,600 fps |
| マズルエナジー | 約1,200~2,400 ft-lbf |
| 薬莢長 | 51.9 mm |
.243 ウィンチェスター(.243 Winchester / 6×52mm)は1955年に米国ウィンチェスター社が.308 ウィンチェスターをベースに設計したリムレス・ボトルネック型中口径ライフル弾です。弾頭径は6.2mm(.243インチ)、全長68.8mmで、豊富な装弾バリエーションを持ちます。
主な弾頭重量は55~115gr(3.6~7.5g)、市販モデルは58gr V-MAX(初速1,196m/s/2,690J)、80gr TTSX(1,020m/s/2,704J)、100gr BTSP(900m/s/2,637J)などがあり、軽量弾はバーミント(害獣・小型獣)狩猟や射撃競技、重量弾はシカなど中型獣にも広く用いられます。モノリシック銅弾80~85grや伝統的な鉛弾90~105grは拡張設計により中型獣狩猟に最適です。
反動は非常に軽く、初心者にも扱いやすい一方、高初速・フラットな弾道・高精度から有効射程300ヤード(約270m)超で、中型獣狩猟やターゲットシューティングに人気です。米国やイギリス他では狩猟法規制により.243はシカ狩りに使える最小口径とされており、世界的に定番の中口径弾薬です。ボルトアクション、セミオート、レバーアクション、ポンプアクションなど各種ライフルで使われ、.308系火器にも流用できます。ショートアクション設計により汎用性も高く、スポーツ・競技・狩猟に広く活用されています。
- .243 ウィンチェスターを使用する銃の例:
- レミントン M700(Remington Model 700)
- ウィンチェスター M70(Winchester Model 70)
- サベージ M110(Savage Model 110)
- モスバーグ パトリオット(Mossberg Patriot)
- ティッカ T3x(Tikka T3x)
- CZ 527
- ブローニング Xボルト(Browning X-Bolt)
- サコー 85(SAKO 85)
- 豊和工業 M1500(Howa Model 1500)
.338 ラプア マグナム

| 弾頭重量 | 約200~300 gr |
| 初速 | 約2,890~3,000 fps |
| マズルエナジー | 約4,600~5,000 ft-lbf |
| 薬莢長 | 69.2 mm |
.338ラプアマグナム(8.6×70mm/8.58×70mm)は、1989年にフィンランドのラプア社(Nammo Lapua Oy)が開発したリムレス・ボトルネック型ライフル弾です。軍用スナイパーライフル用として設計され、アフガニスタン戦争やイラク戦争以降、各国の軍・法執行機関・民間で広く採用されています。設計は.416リグビーを原型とし、弾頭径8.61mm(.339インチ)、薬莢長69.2mm、全長93.5mmです。
弾頭重量は12.96g(200gr)~19.44g(300gr)等のバリエーションで、初速880~1,023m/s、マズルエナジー6,700J超を発揮し、有効射程は1,500m超(最大1,750m)です。軍用・民間共にFMJやHPBTなどの高精度弾頭が多様に供給され、優れた弾道性能とボディアーマー貫通力(1,000m超)を持ちます。最長狙撃記録で約2,475m(イギリス軍)が報告されています。
通常のマグナムライフルよりも高圧対応の設計が必要で、強化ウェブ・肉厚薬莢、マグナムタイプの雷管が使われます。米軍やイギリス軍、カナダなど多くの国で制式採用され、Sako TRG-42、アキュラシーインターナショナル、バレット MRADなど多数のスナイパーライフルやカスタム競技銃でも使用されています。狩猟用途では大型獣にも十分対応できる火力を持つ一方、「ビッグファイブ(バッファローや象)」については安全確保のためにバックアップの利用が推奨されます。
.338ラプア・マグナムは.300 Win Mag~.50 BMGの間を埋める長距離高精度弾として、近年は.375 Swiss Pなど後継・派生規格やワイルドキャット型(改造バリエーション)が生まれるほど、大口径長距離狙撃のスタンダードとなっています。
- .338ラプアマグナムを使用する銃の例:
- アキュラシー・インターナショナル AXMC(Accuracy International AXMC)
- アキュラシー・インターナショナル AWM(Accuracy International AWM)
- サコー TRG-42(SAKO TRG-42)
- バレット MRAD(Barrett MRAD)
- デザートテック SRS-A2(Desert Tech SRS-A2)
- レミントン MSR(Remington MSR)
- サベージ 110 BA ステルス(Savage 110 BA Stealth)
.375 Cheytac

| 弾頭重量 | 約350~375 gr |
| 初速 | 約3,000~3,200 fps |
| マズルエナジー | 約6,700~7,200 ft-lbf |
| 薬莢長 | 76.91 mm |
.375 シャイタック(.375 CheyTac / 9.5×77mm)は、アメリカのCheyTac USAが2009年に.408 シャイタック弾をベースとして設計した、長距離狙撃用リムレス・ボトルネック型ライフル弾です。弾頭径は9.53mm(.375インチ)、薬莢長76.91mm。初速とマズルエナジーは24.3g(375gr)弾頭で930m/s・10,499Jと極めて高威力です。
2017年にCIP(欧州規格)で公式登録され、ワイルドキャット(非公式改造型)から正式規格となりました。重い弾頭重量と低抵抗設計により、優れた弾道特性と長距離での安定性を持ち、標準的な.338ラプア・マグナムを超える2,000m以上の有効射程を実現しています。実射性能として、2023年には3,865m(4,227yd)で命中する世界記録が樹立。ホーナディ390 gr A-Tip弾を使用し、発射から10秒後に約183cm大のターゲットに命中しました。
.375 シャイタックは主にSako TRG-62 A1やORSIS T-5000といった専用精密ライフルで運用され、軍用・民間両方の超長距離射撃・競技・タクティカル用途で使用されています。弾頭は金属ソリッド弾のほか、低抵抗・高BC(弾道係数)設計に特化したカスタム弾も豊富です。
- .375 シャイタックを使用する銃の例:
- シャイタック M200(CheyTac M200)
- シャイタック M300(CheyTac M300)
- ORSIS CT-20
- ORSIS T-5000
.408 Cheytac

| 弾頭重量 | 約305~419 gr |
| 初速 | 約2,850~3,000 fps |
| マズルエナジー | 約8,000~8,370 ft-lbf |
| 薬莢長 | 77.21 mm |
.408 シャイタック(.408 CheyTac / 10.36×77mm)は、米国CheyTac USAが2001年に開発した長距離狙撃用リムレス・ボトルネック型ライフル弾です。元となった.400 Taylor Magnumケースを基に設計されています。主な装弾例では19.44g(300gr)弾頭で1,006m/s・9,827J前後。高密度・低空気抵抗(高BC値)のソリッド金属弾頭を用い、超長距離(有効射程2,200m超)での弾道安定性に特化しています。
軍・警察・民間精密射撃競技で用いられ、シャイタック M200やSako TRG M10、アキュラシーインターナショナル等のスナイパーライフルに装填可能。弾頭は主にCNC削り出しのソリッド・ターゲット型が利用され、高精度・高貫通力(1,000m以上でボディアーマー貫通)を持つのが特徴です。欧州で公式にCIP登録されており、.375 シャイタックの原型でもあります。
弾道計算と専用ポータブル射撃解析装備(CheyTac Advanced Ballistic Computer)が開発時からセットで運用されており、世界最長射撃記録(最高約3,000m超)も樹立するなど、超長距離射撃分野で重要な現代狙撃用弾薬とされています。
- .408 シャイタックを使用する銃の例:
- シャイタック M200 (CheyTac M200 Intervention)
- シャイタック M300 (CheyTac M300 Praetorian)
- THOR M408
- EDM ウィンドランナー M96(EDM Windrunner M96)
- デザートテック HTI(Desert Tech HTI)
マグナム系狩猟・高性能ライフル弾薬
特に高い初速とエネルギーを持つ、ハンティングや長距離射撃を目的としたマグナム規格のライフル弾薬です。
.300 ウィンチェスター・マグナム

| 弾頭重量 | 約150~220 gr |
| 初速 | 約3,000~3,260 fps |
| マズルエナジー | 約2,800~3,500 ft-lbf |
| 薬莢長 | 67 mm |
.300 ウィンチェスターマグナム(.300 Winchester Magnum / .300 Win Mag)は、米国ウィンチェスター社が1963年に設計・発売したリムドカートリッジ弾薬で、.375 H&H マグナムをベースにショルダー位置を前進・ケース短縮・ネックダウンした7.62×67mmB弾です。弾頭径は7.8mm(.308インチ)、薬莢長67mm、全長85mm。市販の弾頭重量は150~220gr(9.7~14.3g)と幅広く、典型例は180gr弾頭で初速973m/s、マズルエナジー5,526J、200gr弾頭で初速923m/s、マズルエナジー5,548Jです。
ウィンチェスターマグナムは汎用性が高く、狩猟・競技射撃・軍警察・スナイパー用途まで世界的に人気です。中~大型獣狩猟(ムース、エルク、シカ等)や長距離競技で好まれ、弾道・エネルギーは30-06と比べ約20%高い一方、リコイルも30%大きくなります。多様なカスタム弾頭でフラットな弾道と風への耐性を実現。1,000m超の競技や1,370m射程の米軍スナイパー用弾薬(MK 248 MOD 1)にも用いられています。
スタンダードレングスアクションで運用でき、.300 ウェザビーマグナムや.30-378 ウェザビーマグナムより軽量な銃にも対応。軍用・法執行機関採用例も多く、G22(独)、AWM(英)、M2010(米)など専用ライフルに装填されます。精度・汎用性・装弾バリエーションの広さから、北米狩猟界・軍・射撃競技で定番となった「万能マグナム弾」です。
- .300 ウィンチェスターマグナムを使用する銃の例:
- レミントン M700(Remington Model 700)
- ウィンチェスター M70(Winchester Model 70)
- サコー TRG-42(Sako TRG-42)
- アキュラシー・インターナショナル AWM(Accuracy International AWM)
- バレット MRAD(Barrett MRAD)
- サベージ M110(Savage Model 110)
- モスバーグ パトリオット(Mossberg Patriot)
- ティッカ T3x(Tikka T3x)
- ブローニング Xボルト(Browning X-Bolt)
- バーガラ B14(Bergara B14)
.300 ノルマ・マグナム

| 弾頭重量 | 約190~230 gr |
| 初速 | 約2,900~3,100 fps |
| マズルエナジー | 約4,200~4,400 ft-lbf |
| 薬莢長 | 63.3 mm |
.300ノルマ・マグナム(.300 Norma Magnum/7.82×63mm)は、スウェーデンのノルマ・プレシジョン(Norma Precision)社が2012年に開発したリムレス・ボトルネック型マグナムライフル弾で、.338 ノルマ・マグナムの薬莢を.30口径(7.83mm)にネックダウンしたものです。薬莢長63.3mm、全長93.5mm。主な装弾は弾頭重量220gr(14g)マッチキング弾頭で初速915m/s・マズルエナジー5,971Jという高いパフォーマンスを持ちます。
.300 ノルマ・マグナムは、.308 ノルマ・マグナム(1960年設計)と区別され、長距離射撃分野や軍の狙撃用途で広く注目されています。特に米軍特殊作戦軍(USSOCOM)は、MK22(バレットMRAD)スナイパーライフルにこの弾薬を標準採用しており、M1163としての運用実績があります。その他、ブレイザー R8、Sako TRG M10、アキュラシーインターナショナルAXSR/AXMCなど多くの高精度ライフルで使用可能です。
重い弾頭重量・高速・フラットな弾道・優れた長距離精度から、1,500m超の超遠距離射撃や軍・法執行機関・射撃競技に適しています。同クラス弾薬として.338 ラプアマグナムや.300 ウィンチェスターマグナムと比較されることが多く、現代の長距離狙撃銃の定番規格として世界的に人気が高まっています。
- .300 ノルママグナムを使用する銃の例:
- バレット MRAD(Barrett MRAD)
- レミントン MSR(Remington MSR)
- サコー TRG M10(Sako TRG M10)
- デザートテック SRS-A2(Desert Tech SRS-A2)
- アキュラシー・インターナショナル AXMC(Accuracy International AXMC)
.300 レミントン ウルトラ マグナム

| 弾頭重量 | 約150〜220 gr |
| 初速 | 150 gr 約3,450 fps 180 gr 約3,200〜3,300 fps 190 gr 約3,130 fps 200 gr 約3,030 fps |
| マズルエナジー | 150 gr 約3,965 ft-lbf 180 gr 約4,094〜4,354 ft-lbf 190 gr 約4,134 ft-lbf 200 gr 約4,078 ft-lbf |
| 薬莢長 | 72.4 mm |
.300 レミントンウルトラマグナム(.300 Remington Ultra Magnum / .300 RUM / 7.62×72mm)は、1999年に米国レミントン・アームズ社が設計・発売したリムレス・ボトルネック型マグナムライフル弾です。ベースは.404 Jeffery弾で、弾頭径7.8mm(.308インチ)、ケース長72.4mm、全長91.4mmです。
独自のリベイテッドリム(リム径減少)によりレミントンM700のロングアクションに対応。「ベルトレス設計」でスムーズな装填を実現。高精度・耐久性向上が特徴です。.30口径市販弾薬中トップレベルのパワーを持ちますが、レミントン社はパワーレベルI(.30-06同等)、II(.300 Win Mag同等)、III(最大威力)の3種で展開しており、パワーの異なる.300 レミントンウルトラマグナムを選択可能となっています。
大型獣(ムース、エルク、ベア等)の長距離狩猟に最適化され、エネルギー保持力・弾道のフラットさは.30-378 ウェザビーマグナムに次ぐ性能です。軍用・ロングレンジ射撃競技でも利用されますが、高圧による銃身摩耗に注意が必要とされます。
万能な.30口径マグナムとして北米・世界のハンターや射撃愛好家から高く支持されています。
- .300 レミントンウルトラマグナムを使用する銃の例:
- レミントン M700(Remington Model 700)
- サベージ M110(Savage Model 110)
- ウィンチェスター M70(Winchester Model 70)
- ブローニング Xボルト(Browning X-Bolt)
- ティッカ T3x(Tikka T3x)
7mm レミントン マグナム

| 弾頭重量 | 約139〜175 gr |
| 初速 | 約3,150 fps |
| マズルエナジー | 約2,600~3,300 ft-lbf |
| 薬莢長 | 64 mm |
7mmレミントン・マグナム(7×64mm)は、1962年に米レミントン・アームズ社が設計・発売したリムレス・ボトルネック型マグナムライフル弾です。.375 H&H マグナムをベースとして、弾頭径7.2mm(.284インチ)、ケース長64mm、全長84mmです。弾頭重量110gr(7g)~175gr(11g)の幅広い弾頭に対応します。
誕生と同時に市場で.264 ウィンチェスターマグナムを淘汰し、以降.300 ウィンチェスターマグナムと人気を競う北米ハンティング界の定番となっています。弾道係数(BC)が高い.284径弾頭により、.30-06よりもフラットな弾道と良好な貫通力を確保。エルク、ムース、シカなど中~大型獣の遠距離狩猟に最適とされる一方、反動も比較的マイルドで初心者からベテランまで扱いやすい口径とされています。
米・加・欧・アフリカなど各地で狩猟に好まれ、近年は米シークレットサービスの各種スナイパーライフルにも採用例があります。長銃身(24~27インチ)が推奨され、短銃身利用時は弾速とエネルギー減少に注意が必要。幅広い用途に対応し、射撃精度・汎用性・パフォーマンスの高さから世界的に高い評価を受けています。
- 7mmレミントンマグナムを使用する銃の例:
- レミントン M700(Remington Model 700)
- ウィンチェスター M70(Winchester Model 70)
- サコー 85(Sako 85)
- サベージ M110(Savage Model 110)
- ブローニング Xボルト(Browning X-Bolt)
- モスバーグ パトリオット(Mossberg Patriot)
- ティッカ T3x(Tikka T3x)
- バーガラ B14(Bergara B14)
- クリステンセン アームズ メサ FFT(Christensen Arms Mesa FFT)
大口径・対物ライフル用弾薬
装甲車両や機材の破壊、長距離の対物狙撃を目的とした、極めて威力の高い弾薬です。
.50 BMG(12.7x99mm)

| 弾頭重量 | 約600〜800 gr |
| 初速 | 約2,800~3,000 fps |
| マズルエナジー | 約13,000~15,000 ft-lbf |
| 薬莢長 | 99.31 mm |
.50 BMG(12.7×99mm NATO)は、米国で1921年に制式化された重機関銃・対物ライフル用の超大型リムレス・ボトルネック型弾薬です。設計はジョン・ブローニング(M2 ブローニング機関銃用)によるもので、弾頭径12.98mm(.511インチ)、薬莢長99.3mm、全長138.4mmです。標準的な装弾は弾頭重量45〜52g(700〜800gr)の弾頭で、初速860〜930m/s、マズルエナジー18,000〜20,000J超という圧倒的な威力と長射程を誇ります。
軍用はM2重機関銃、バレットM82/107系などアンチマテリアルライフルに装填され、世界中の軍で運用。第二次大戦以来、対空・車両破壊・バンカー攻撃・長距離狙撃等で活躍し、コンクリート壁の貫通や車両エンジンの無力化が可能です。弾種は標準ボール弾(M33/M2)、AP徹甲・API焼夷・曳光・HEIAP(徹甲炸裂焼夷弾)・SLAP(タングステンコアサボット徹甲弾)まで多様。マッチグレード弾薬も存在し、精密射撃競技で最長3,540mの狙撃記録達成例もあります。
民間市場では競技・ロングレンジ射撃・大型獣狩猟用途で使われ、米・英・加など一部法規制あり。世界最大級のカートリッジとして極めて高い貫通力・射程・プラットフォーム適応力を兼ね備え、現代銃火器分野で唯一無二の存在感を持つ弾薬です。
- .50 BMGを使用する銃の例:
- バレット M82(Barrett M82)
- バレット M107(Barrett M107)
- バレット MRAD(Barrett MRAD)
- バレット M95(Barrett M95)
- バレット M99(Barrett M99)
- ブローニング M2重機関銃(Browning M2 Heavy Machine Gun)
- デザートテック HTI(Desert Tech HTI)
- ステアー HS .50(Steyr HS .50)
- マクミラン TAC-50(McMillan TAC-50)
- AK-50
12.7x108mm

| 弾頭重量 | 約745〜855 gr |
| 初速 | 約2,700 fps |
| マズルエナジー | 約11,980~13,737 ft-lbf |
| 薬莢長 | 108 mm |
12.7×108mm弾は、1935年に旧ソ連邦で設計・採用された大型リムレス・ボトルネック型重機関銃・対物ライフル用弾薬です。弾頭径12.98mm(.511インチ)、ケース長108mm、全長147.5mm。旧ワルシャワ条約諸国(ロシア・中国・イラン・北朝鮮など)で広く使われ、DShK、NSV、Kordなどの重機関銃やKSVK、OSV-96、QBU-10等の対物ライフルで運用されています。
弾頭タイプは、徹甲(B-30/32)、焼夷(BZT・BZT-44・BZF-46)、狙撃用(SN 7N34)、重装甲貫通(BS・BS-41)、デュプレックス(二重弾)、即発焼夷(MDZ)、ブランク・ダミーまで多様。標準徹甲弾(B-32)は20mm鋼板を500mで貫通。弾頭重量は約45〜59g(680〜914gr)、初速約770〜930m/s、マズルエナジーは16,000〜19,600J超と圧倒的な威力です。
役割は.50 BMG NATOと同等で、非装甲車輌や軽装甲車両の破壊、バンカー・外部装備の損耗、燃料着火、軽度のボディアーマーや装甲貫通等、多目的で幅広いターゲットに対応します。多くの戦争や紛争で運用されており、世界的な軍用ヘビーマシンガンおよびアンチマテリアルライフルで使用される代表格です。
- 12.7×108mmを使用する銃の例:
- DShK重機関銃
- NSV重機関銃
- Kord重機関銃
- OSV-96対物ライフル
- ASVK-M対物ライフル
- V-94対物ライフル
- QBU-10対物ライフル
- Snipex M100対物ライフル
- Laska K-2重機関銃
- 6P62ライフル
12.7×55mm STs-130

| 弾頭重量 | 約108〜509 gr |
| 初速 | 約950~1,033 fps |
| マズルエナジー | 約256~1,020 ft-lbf |
| 薬莢長 | 54.91 mm |
12.7×55mm STs-130は、ロシアが2002年に設計した特殊用途の大型ライフル弾です。.338ラプア・マグナムケースをベースとし、弾頭径13.01mm(.512インチ)、薬莢長54.91mm、全長97.3mmで、主にVKSブルパップ狙撃銃やShAK-12ライフル、RSh-12リボルバー等で使用されます。
弾頭重量は17.94~76g(277~1173gr)と幅広く、特に重い亜音速弾(STs-130PT系)は高貫通力・ボディアーマー対応・精密射撃(1MOA/690mまで高精度)に優れています。STs-130VPS弾は200mで16mm鋼板、100mでGOST 5A/NIJ IIIボディアーマーの貫通が可能です。
この弾種群は用途ごとに設計が異なります。
有効射程はVKS用最大690m、ShAK-12/RSh-12用で100~300m。用途ごとに弾頭長・設計が異なり、互換性は限定的です。
この弾薬は特殊部隊によるハードターゲット貫通、静音狙撃、近距離戦闘など多様な任務に対応し、防弾装備・障害物貫通性・特殊射撃性能を重視したロシア発のハイブリッド特殊ライフルカートリッジです。
- 12.7×55mmを使用する銃の例:
- RSh-12(リボルバー)
- VKS Vykhlop(狙撃銃)
- ShAK-12(バトルライフル)
まとめ
この記事では、代表的な拳銃弾とライフル弾を用途別に整理し、それぞれの特徴や性能を比較しました。弾薬の種類は多岐にわたり、用途や設計思想によって性能も大きく異なります。
セミオートピストル用の9×19mmパラベラムや.45ACPなどは、汎用性と信頼性を兼ね備え、現在も世界各国で標準的に使われています。これに対し、.357SIGや10mmオートのような高圧弾は、貫通力やストッピングパワーを重視する特殊用途(狩猟や野生動物からの護身用など)に適しています。
また、ライフル弾では5.56×45mmNATOや7.62×51mmNATOが軍用の定番として広く採用され、6.8×51mmや.338ラプアマグナムのような新世代・高性能弾も登場しています。こうした弾薬の発展は、任務や戦術環境の変化に対応して進化を続けてきました。
本記事が、銃と弾薬の関係を知る手がかりになれば幸いです。
- センターファイア式弾薬:雷管が薬莢中央部に配置される現代の主流な弾薬の点火方式
- ブローバック式自動拳銃:反動のみで閉鎖と解除を行う比較的単純な構造の自動拳銃の作動方式
- コンシールドキャリー:拳銃などを衣服の下などに隠して携行する用途や行為
- ストッピングパワー:弾丸が目標に命中した際、対象を行動不能にする能力・威力
- SAAMI規格:アメリカの弾薬メーカーが定める、弾薬の寸法や圧力に関する業界標準規格
- CIP規格:ヨーロッパの弾薬メーカーが定める、弾薬の寸法や圧力に関する業界標準規格
- リムレス弾薬:薬莢の底のリム(縁)が胴部とほぼ同じで、出っ張りのない弾薬
- ストレート型弾薬:薬莢の胴部が真っ直ぐで、弾頭に向かって絞られていない形状の弾薬
- ボトルネック型:薬莢の胴部から先端にかけて急激に口径が絞られている(首が細くなっている)弾薬の形状
- スチールコア:弾頭の内部に鋼鉄などの硬い芯(コア)が埋め込まれた、貫通力を高めた弾種
- NATO標準弾薬:北大西洋条約機構(NATO)の加盟国間で共通使用が定められた弾薬
- +P(プラスピー)弾:標準的な弾薬よりも高い内部圧力で装填された、高威力の弾種
- 弾頭重量:弾丸単体(薬莢に詰められる部分)の重さで、「グレイン(gr)」で表記
- 初速:弾丸が銃口を離れた瞬間の速度で、「フィート毎秒(fps)」や「メートル毎秒(m/s)」で表記
- マズルエナジー:弾丸が銃口を離れた時点の運動エネルギーで、威力の指標の一つ
- ボディアーマー:弾丸や破片などから着用者を防護するために使用される防弾装備
- リベーテッドリム:薬莢の底のリム(縁)部分が、薬莢胴部よりも直径が小さい形状
- メタリックシルエット射撃競技:遠距離の動物形金属標的を撃ち倒す精密射撃の競技
- タンブリング:弾丸が目標に命中した後、回転または横転を起こして進む現象
- ハーグ条約:軍事目的でのダムダム弾など、人体内で拡張・扁平化しやすい弾丸の使用を禁止した条約
- 個人防衛火器(PDW):後方部隊の兵士などが携行する、小型で高い貫通力を持つ銃器
- リム付き弾薬(リムドカートリッジ):薬莢の底にあるリム(縁)が、薬莢胴部よりも直径が大きくなっている弾薬
- 無煙火薬:燃焼時にほとんど煙を出さない火薬で、現代の弾薬で広く使われるもの
- 中間弾薬:拳銃弾とフルサイズライフル弾の中間に位置し、アサルトライフルなどで使用される弾薬
- 分隊支援火器:分隊レベルで運用される、持続的な射撃能力を持つ機関銃などの火器
- 亜音速弾(サブソニック弾):音速(約340m/s)よりも遅い初速で発射される、消音効果が高い弾薬
- サプレッサー:銃の発射音を低減するために銃口に装着される装置(消音器)
- CQB(近接戦闘):建物内部などの非常に近い距離で行われる戦闘(Close Quarters Battle)
- メトフォード型ライフリング:銃身の内側に施された、弾丸を回転させて安定させる溝(ライフリング)の形状
- ランカスターライフリング:楕円形や多角形の形状をした、特殊なタイプのライフリング
- ハイブリッドケース:異なる金属素材を組み合わせ、高圧に耐えるよう設計された薬莢
- マッチ弾:射撃競技での精密な命中を目的として、高い精度で製造された弾薬
- バーミント狩猟:小型の有害鳥獣(害獣)の駆除または狩猟
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- BulkMunitions — 7.62×25mm 解説記事, .32 ACP 解説記事
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- FN America — SS197SR 製品情報(5.7×28mm)
- Ammoman — 5.7×28mm 弾道表
- GunPrime — 5.7×28mm 解説記事
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- Ultimate Reloader — 4.6×30mm 比較テスト
- AlienGearHolsters — .357 SIG 記事
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- その他多数の資料





