リボルバーにサプレッサーは無意味? ガス漏れ構造と例外銃を紹介

サプレッサー付リボルバーイメージ画像

この記事の要約:

  • リボルバーはシリンダーと銃身の隙間からガスが漏れるため、サプレッサーを付けても減音できない。
  • 例外として、シリンダーギャップを密閉する特殊構造のリボルバーが歴史上いくつか存在する。
  • Peters PSDR や ナガンM1895 など、実際に消音を目的として設計されたモデルも紹介。

リボルバーにサプレッサー(サイレンサー)を装着しても、ほとんど減音されません。その理由は、リボルバー特有の「シリンダーギャップ」という構造にあります。

本記事では、なぜ一般的なリボルバーは消音できないのか、どんな危険があるのか、そして例外的に「サプレッサー対応」として開発された特殊モデルまで、専門的な視点でわかりやすく解説します。

目次

リボルバーでは減音しない?

サプレッサー内部構造
画像出典:gundigest.com

サプレッサーは、発射時に銃口から噴き出す高温・高圧のガスを内部で捕捉し、減速することで、銃声の主因である「マズルブラスト」を抑える仕組みです。リボルバーでも銃口側のガスは通常どおりサプレッサーに導かれるため、ライフルや自動式拳銃と同様に一定の消音効果が得られます。

リボルバーでは、弾丸が前進する際にシリンダーとバレルの間にわずかな隙間が生じ、この「バレル・シリンダーギャップ」からガスが漏れます。

銃の画像
ルガースーパーレッドホーク.44マグナム 画像出典:Wikipedia

この漏れたガスが二次的な爆風やフラッシュを生み、サプレッサーを完全に通らずに外へ逃げてしまいます。そのため、消音効果は大きく損なわれ、一般的には10〜20dB程度の低減にとどまることが多いとされています。密閉性の高い自動式拳銃では20〜35dB低減する例もあるため、差は明確です。

シリンダーギャップから放出される高温高圧のガスは危険なため、指をシリンダーギャップに近づけないよう注意する必要があります。

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サプレッサー対応リボルバー

一般的なリボルバーにサプレッサーを装着しても減音効果はありません。しかし、過去にはサプレッサーを使用するリボルバーが製造されたことがありました。

ピーターズPSDRリボルバー

銃の画像
Peters PSDR III 画像出典:modernfirearms.net

ドイツのガンスミス、ジョー・ピーターによって開発されたピーターズPSDRリボルバーはS&W625(.45ACP)をベースとし、シリンダーをカバーで覆うことで減音を試みました。

このリボルバーはドイツ警察特殊部隊(SEK)に採用された実績がありますが、再装填に時間が掛かるといった難点があります。

ナイツ・サプレッサー内蔵リボルバーライフル

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ナイツ・サプレッスド・リボルバー 画像出典:modernfirearms.net

アメリカのナイツ・アーマメント社は.44マグナムのルガー・レッドホークをベースとしたサプレッサー内蔵リボルバー・ライフルを製造し、口径7.62mmの特殊弾が使用されました。

銃の画像
画像出典:forum.cartridgecollectors.org

この専用弾は先端部分がアルミで覆われており、ブリーチ(銃身後部)に先端を接触させることでシリンダーギャップを埋めて銃声の原因となるガスの噴出を防いでいます。

また、最大の減音効果を得るために亜音速になるよう調整されています。

歴史的に実際の使用実績は不明ですが、アメリカ政府機関の依頼により製造され、薬莢が証拠として残らないように「排莢しないサプレッサー付ライフル」を求められた結果、この様な形で完成しました。

命中精度が高く、200mの距離でヘッドショットが可能な精度を有するとされています。

ナガンM1895

銃の画像
ナガン1895リボルバー 画像出典:imgur.com

なかには、シリンダーギャップからのガス漏れがないリボルバーも存在します。

ロシアのナガンM1895はユニークな構造を持ち、トリガーを引くと同時にシリンダーが押されて前進し、銃身にシリンダーが押しつけられてガス漏れを防ぎます。

このメカニズムはサプレッサーを利用するためのものではなく、発射ガスを無駄なく利用する目的で設計されました。

当時使用されていた弾薬は現代の弾薬ほど高圧ではなかったため、使用弾薬を7.62mmと小口径にすることで必要とされる弾速を得ていました。

そして、この特徴を利用してサプレッサーを装着したモデルも製造されています。

SIONICS コルトリボルバー

サイオニクスリボルバー画像
サイオニクス製サプレッサーとコルト製リボルバー 画像出典:smallarmsreview.com

サイオニクス社(Sionics)が製作したサプレッサー付き .38口径コルトリボルバーは、量産品や制式採用品ではなく、1960年代半ばにごく少数のみ試作されたモデルです。

通常のコルト製 .38口径リボルバーをベースに、外付けのサプレッサーや付属装備を組み合わせた構成で、ナガンのようなガスシール機構を備えていたわけではありません。サイオニクスが軍や法執行機関向けに進めていたサプレッサー研究開発の一環として製作されたものと考えられています。

当時の記録や写真によれば、シリンダーギャップから漏れるガスや破片に対処するため、ビアンキ製のアスベスト内張りホルスターが用意されていたとされています。このホルスターは、シリンダーギャップを機械的に密閉するのではなく、漏れ出るガスをホルスター内部で受け止めて遮蔽するという発想に基づいていました。つまり、ホルスターに収納した状態で発射する仕様です。

1966年前後のベトナム戦争における「トンネルラット」任務など特殊用途を想定した「概念試作」として語られることが多く、実際に配備された記録はありません。

サイオニクス社(SIONICS)とは?

サイオニクスは、1960年代にOSS(戦略諜報局)出身のミッチェル・ワーベル三世によって設立された、冷戦期アメリカを代表するサプレッサー専門企業です。現在では「MAC‑10計画」や、ベトナム戦争期における消音兵器の開発で広く知られています。社名は「Studies in the Operational Negation of Insurgents and Counter‑Subversion(反乱勢力および破壊工作の作戦的無力化に関する研究)」の頭字語であり、民間向けではなく、対ゲリラ戦や秘密作戦を主眼に置いた組織であったことを示しています。ベトナム戦争期には、軍や情報機関、特殊作戦部隊向けに、サプレッサーや関連する装備を専門的に提供していました。

ワーベルはOSSでの経験を活かし、1960年代前半から中盤にかけてサイオニクスを立ち上げました。特にM16をはじめとする当時の制式小銃に適した、効率的でコンパクトなサプレッサーの開発に力を注いでいます。M14用のM14SS‑1など、初期のライフルサプレッサーはベトナムで試験的に使用され、限定的に実戦投入もされましたが、正式採用には至りませんでした。

同社のサプレッサーは、積層バッフルと交換式エラストマー製ワイプを組み合わせる方式が特徴で、耐久性を犠牲にする代わりに非常に高い初期減音性能を発揮しました。寿命は数百発程度と短いものの、当時としては画期的な性能を備えていたと評価されています。また、一部のライフル用モデルには、フルオート射撃時のバックプレッシャーを抑えるためのガスリリーフバルブやポートが組み込まれており、これも当時の技術水準を大きく上回る先進的な設計でした。

MAC10画像
MAC10 画像出典:wikipedia.com

1967年から69年にかけて、ワーベルは銃器設計者ゴードン・イングラムと提携し、イングラムの小型サブマシンガンにサイオニクス製サプレッサーを統合しました。この組み合わせが、後に象徴的な存在となるMAC‑10のコンセプトへと発展していきます。さらに、銃とサプレッサーを一体のシステムとして量産・販売するため、サイオニクスは新会社「ミリタリーアーマメントコーポレーション(Military Armament Corporation / MAC)」へと統合され、MAC‑10およびMAC‑11の商業展開を担う組織へと姿を変えました。

その後、企業再編が続く中でワーベルは経営権を失い、元のサイオニクスは1970年代半ばには事実上消滅しました。しかし、短命であったにもかかわらず、サイオニクスの設計は現代サプレッサー技術の発展に大きな影響を与えています。

サプレッサー不使用の静音リボルバー

サプレッサーを使用せずに静音化を実現したリボルバーも存在します。

OTs-38

OTs-38リボルバー画像
OTs-38リボルバー 画像出典:mafes.hut.ru

ロシアのOTs-38は、特殊部隊向けに開発された一体型消音機構を備えるダブルアクション・リボルバーです。SP-4特殊カートリッジを使用することで、一般的なサプレッサーでは得られない「完全消音」に近い性能を実現します。

シリンダー下部の薬室から発射する独特の構造を採用しており、ボアアクシス(銃身軸)を大幅に低く抑えています。その結果、マズルジャンプが少なく、精度と発射速度が向上しています。

銃身上部にはフレーム内蔵式のレーザーサイトが搭載されています。外形寸法を変えずに組み込まれているため、衝撃に強く、携行性も損ないません。レーザーサイトは銃を正確に構えなくても狙いをつけられるため、隠匿状態での射撃に有効です。

レーザーサイトのオン・オフボタンはグリップ付近に配置され、操作性にも配慮されています。さらに、フロントサイトとリアサイトにはホワイトインサートが施され、暗所でも照準しやすくなっています。

OTs-38は、リボルバーとしては珍しいマニュアルセーフティを備えています。このセーフティはハンマーが起きている時のみ作動し、倒れた状態では安全装置をかけられません。これにより、ダブルアクションでの即応射撃とシングルアクション時の安全確保を両立しています。

空薬莢の排出時には、シリンダーが銃身軸に対して下方へ回転し、その動きの中で薬莢が事前に引き抜かれます。これにより迅速で確実な再装填が可能です。装弾は5発をまとめたムーンクリップ方式で、特殊弾薬でもスムーズに扱えます。

SP4弾イメージ画像

高い静粛性は、サプレッサーではなくSP-4弾のピストン構造によって生み出されます。発射ガスが薬莢内に完全に閉じ込められるため、マズルブラストやフラッシュ、発射音が外部に漏れません。実射音が空撃ちとほぼ同じとされ、薬莢が落下しないため音を出さない点も隠密行動に理想的です。

携行性にも優れ、全長はわずか191mm。レーザーサイトを内蔵しながら、一般的な小型拳銃と同等のサイズに収まっています。

OTs-38は、著名な銃器設計者イーゴリ・スチェッキン(ステーチキン)がトゥーラのKBP設計局で開発し、2002年に制式採用されました。スチェッキンの最後の作品となりましたが、その設計思想は現在も高く評価されています。

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この記事を書いた人

・1998年:実銃解説サイトを開設
・2001年~2007年:米国に居住し実弾射撃を学ぶ
・エアガンメーカー勤務経験や実銃経験を活かした情報を発信中

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