
この記事の要約
- ストックは銃床全体を表す広い名称で、肩に当てる後部はバットまたはバットストックと呼びます。
- コム、チークピース、ヒール、トウなどはバットストックの各部名称で、レングス・オブ・プルやドロップは銃床の寸法を表します。
- ストックの名称は部品構成、グリップ形状、コム形状、前床の長さ、可動方式、用途など異なる基準から付けられます。
ライフルや散弾銃のストックには、バットストック、フォアエンド、コム、チークピースなど、部位ごとに異なる名称があります。また、ストレート、モンテカルロ、サムホール、マンリッヒャー、ビーバーテイルなど、形状を表す名称も多く使われます。
この記事では、ストック各部の名称、代表的な形状、フィッティングに使われる寸法用語を解説します。
ライフルのストック各部名称
ストック(Stock / 銃床)(下図の青で囲んだ部分)とは、射手が銃を保持するための銃床部分を広く表す名称です。
一体式のライフルでは、前方のフォアエンドから後方のバットストックまでが一つの部品としてつながっています。

- リコイルパッド(Recoil Pad / 反動緩衝パッド):バットストック後端に取り付けられる弾性部品で、肩に伝わる反動の感触を和らげます。
- バットプレート(Butt Plate / 床尾板):バットストック後端を覆い、ストックの保護や補強を行う部品です。
- バットストック(Buttstock / 床尾):ストックのうち肩に当てる後部です。厳密にはストック全体と同義ではありません。
- グリップ/リスト(Grip / Wrist / 銃把):射撃時に利き手で握る部分です。ライフルやショットガンではストックと一体になっています。
- フォアエンド(Forend / 前床):ストックの前方にあり、射撃時に支持する手で保持する部分です。
バットストック各部の名称

- コム(Comb / 上面部):バットストック上部の稜線または上面で、射撃時に頬を当てる部分。コムの高さや傾斜は、射手の眼とサイトの高さ関係に影響します。
- チークピース(Cheekpiece / 頬当て):バットストック側面に設けられた盛り上がりで、射手の頬をより広く支持する部分。すべてのストックに備わるわけではなく、固定式や高さを調整できるタイプがあります。
- ヒール(Heel / 床尾上端):バットストック後端の上側を指します。
- トウ(Toe / 床尾下端):バットストック後端の下側を指します。
ショットガンのストック各部名称


- バットストック/ストック(Buttstock / Stock / 床尾・銃床):本来はバットストックがストック後部、ストックが銃床全体を表します。ただし、前方に独立したハンドガードを持つ現代のライフルでは、バットストックだけを「ストック」と呼ぶこともあります。
- フォアエンド/フォアアーム(Forend / Forearm / 前床・先台):どちらも銃の前方を支持する部分を表します。一体式ストックの前部をフォアエンド、前後が分離したストックの前部をフォアアームと区別する場合がありますが、実際には両方の名称が重なって使われています。
- 先台(Forearm / さきだい):中折れ式ショットガンなどで、バットストックとは独立した前方の部品を表す日本語名称。
- 前床(Forend / 前床):主に一体式ストックの前方部分を表す日本語名称。

フォアグリップ(Foregrip / 前方グリップ):ハンドガードなどに追加される独立した握り部分です。フォアエンドやフォアアームの別名ではありません。
ストックの寸法とフィッティング用語

- ドロップ・アット・ヒール(Drop at Heel / ヒール落差):銃身上面のリブが作る照準面を後方へ延長した仮想線から、ヒールまでの垂直距離です。ドロップ・アット・コムと合わせて、バットストック上面の高さや傾きを表します。
- ドロップ・アット・コム(Drop at Comb / コム落差):銃身上面のリブが作る照準面を後方へ延長した仮想線から、コムまでの垂直距離です。肩付けしたときの射手の眼と照準面の高さ関係に影響します。
- レングス・オブ・プル(LOP / Length of Pull / 引金から床尾までの長さ):トリガー中央からバットプレートまたはリコイルパッド中央までの距離です。LOPとも略され、ストック全体の長さではなくトリガーを基準として測定します。
- ピッチ(Pitch / 床尾角度):銃を横から見たときの、バットプレートまたはリコイルパッド面の傾きを表す寸法。ヒールからトウへ続く床尾面が、銃身軸に対してどの角度で配置されているかを示し、肩に当たる面の角度に関係します。

- キャスト・オフ(Cast-off / 右偏位):銃身軸の中心線に対して、バットプレートまたはリコイルパッドの中心が右側へずれている状態です。右利き用のショットガンでよく用いられ、床尾を右へ偏位させることで、肩付け時の眼と照準線の位置関係を調整します。
- キャスト・オン(Cast-on / 左偏位):銃身軸の中心線に対して、バットプレートまたはリコイルパッドの中心が左側へずれている状態です。左利き用のショットガンで用いられることが多く、床尾を左へ偏位させて射手の体格や構えに合わせます。
ストックの代表的な種類

| 名称 | 主な特徴 | 分類基準 |
|---|---|---|
| ワンピース・ストック | バットから前床まで一体となった銃床 | 部品構成 |
| ツーピース・ストック | バットストックとフォアアームが別部品 | 部品構成 |
| ストレート・ストック | 握り部の下方への湾曲が小さい | グリップ形状 |
| ピストルグリップ・ストック | 握り部が下方へ湾曲または突出する | グリップ形状 |
| モンテカルロ・ストック | 高いコムを備える | コム形状 |
| サムホール・ストック | グリップ部分に親指を通す穴を設ける | グリップ形状 |
| マンリッヒャー・ストック | 前床が銃口付近まで延びる | ストック全体の構成 |
| フォールディング・ストック | ヒンジを利用して折り畳める | 可動方式 |
| テレスコピック・ストック | 前後へスライドして長さを変更できる | 可動方式 |
| スケルトン・ストック | 中央部を大きく開放した骨格状の形 | 構造・形状 |
| ターゲット・ストック | 標的射撃向けに設計されたストック | 用途 |
| ベンチレスト・ストック | ベンチレスト射撃向けに設計されたストック | 用途 |
銃床には、ワンピース・ストック、モンテカルロ・ストック、サムホール・ストックなど、さまざまな名称があります。ただし、これらは同じ基準で分類されたものではありません。
たとえば、ワンピース・ストックとツーピース・ストックは「部品構成」、ストレート・ストックやサムホール・ストックは「グリップ形状」、モンテカルロ・ストックは「コムの形状」、ターゲット・ストックやベンチレスト・ストックは「用途」を表す名称です。
一つの銃床が「ワンピース・ストックであり、サムホール・ストックであり、さらにモンテカルロ型のコムを備えたターゲット・ストック」ということもあります。
また、同じ形状でも天然木、積層木、樹脂、ガラス繊維強化複合材、炭素繊維複合材、アルミニウムなど、使用される素材によって重量、剛性、耐候性、触感などが変わります。
ここでは代表的な銃床について、それぞれの構造、用途、メリット、デメリットを解説します。
ワンピース・ストック

ワンピース・ストックは、バットストックからグリップ、機関部周辺、フォアエンドまでを一体化した銃床です。ボルトアクション・ライフルでよく見られる構造で、天然木だけでなく、積層木、樹脂、繊維強化複合材などでも製造されています。「ワンピース」という名称は用途ではなく部品構成を示しているため、細身の狩猟用から大型の精密射撃用まで、さまざまな形状があります。
前床からバットまでが連続しているため、グリップ、頬当て、前床などの位置関係を一体的に設計しやすいのが特徴です。素材の選択肢も多く、軽量な狩猟用から高剛性の標的射撃用まで幅広く対応できます。一方、天然木で製作する場合は長い材料が必要になり、大きく破損した場合には前床やバットだけでなく、銃床全体の交換が必要になることがあります。また、前部と後部を独立して交換するモジュラー構造にはあまり向きません。
なお、ワンピース構造だから精度が高いとは限りません。実際の性能は、素材、剛性、機関部との取り付け状態、寸法、射手との適合などによって変わります。
ツーピース・ストック


ツーピース・ストックは、後方のバットストックと前方のフォアアームが別々の部品になっている銃床です。上下二連や水平二連などのブレークアクション、レバーアクションなどでよく見られ、機関部を挟んで前後に銃床が配置されます。
銃の構造上、前床とバットを分離する必要がある機構と相性がよく、それぞれを独立して製造・交換できるのが特徴です。木製の場合は、ワンピース・ストックほど長い材料を必要としません。また、前床を取り外して分解する構造では、ツーピース方式を機構に組み込みやすいという利点があります。
一方、前床からバットまでが連続した一体構造にはならず、木製の場合は前後の木目や色を揃えるために材料選びが必要になることもあります。ただし、ツーピース構造だから剛性や精度が低いという意味ではありません。機関部そのものが主要な構造体となる銃では、ワンピース・ストックとは異なる構造を前提として設計されています。
ストレート・ストック

ストレート・ストックは、グリップ部分の下方への湾曲が比較的小さい銃床です。ここでいう「ストレート」はストレート・グリップを意味し、銃身とバットを直線的に配置したインライン構造や、直線的なコムとは異なります。トリガーを操作する手は、垂直型のピストルグリップより横に寝た角度になります。
レバーアクション、散弾銃、スポーツライフルなどでよく見られる形状で、素早い肩付けや持ち替えを行う用途と相性があります。グリップ部分の突出が少ないため外形がすっきりしており、握る位置を多少前後させやすいのも特徴です。また、左右対称に設計しやすいため、利き手に依存しにくい銃床もあります。
一方、伏射やベンチ射撃のようにトリガー側の手首を立てて構える姿勢では、垂直寄りのグリップより手首が曲がりやすくなることがあります。また、グリップによる手の位置決めが比較的弱いため、毎回同じ握り方を再現するにはある程度の慣れが必要です。ストレート・ストックでは、実際に肩付けした状態で手首が不自然な角度にならないかを確認する必要があります。
ピストルグリップ・ストック

ピストルグリップ・ストックは、グリップ部分を大きく下方へ傾斜させ、トリガーを操作する手を垂直に近い角度で保持する銃床です。独立したピストルグリップを取り付ける構造だけでなく、木製や樹脂製の銃床そのものに垂直寄りのグリップを形成したタイプも含まれます。
伏射、ベンチ射撃、精密射撃などでは、トリガー側の手首を比較的まっすぐ保ちやすく、手を置く位置も一定にしやすいのが特徴です。そのため、トリガーへ指を伸ばす位置を繰り返し再現しやすくなります。調整式の競技用銃床には、グリップの位置や形状を射手の手やトリガー位置に合わせて調整できるものもあります。
一方、グリップが大きく突出したタイプは外形がかさばり、ストレート・ストックほど握る位置を前後へ自由に変えにくくなります。また、グリップの角度や太さが手に合わない場合は、かえって窮屈に感じることがあります。垂直に近いほど優れているわけではなく、立射、伏射、ベンチ射撃では腕や手首の位置が異なるため、使用する射撃姿勢に合った角度を選ぶことがポイントです。
サムホール・ストック

サムホール・ストックは、グリップ付近に開口部を設け、そこへ親指を通して握る銃床です。一般的な一体型銃床のバットとグリップを連続させながら、ピストルグリップに近い垂直寄りの握り方を可能にしており、狩猟用ライフルから標的射撃用ライフルまで幅広く使用されています。
親指を開口部へ通すことで手を置く位置が自然に決まりやすく、同じ握り方を再現しやすいのが特徴です。また、独立したピストルグリップを設けなくても、垂直寄りのグリップ形状を一体型の銃床に取り入れられます。
一方、親指を開口部へ通す構造のため、ストレート・グリップほど自由に手を動かすことはできません。開口部が小さい場合やグリップが太い場合は、大きな手や厚い手袋では窮屈に感じることがあります。また、左右非対称のチークピースやグリップ形状を備えた製品では、反対側の手で構えにくくなる場合があります。選ぶ際は、開口部の大きさだけでなく、グリップの太さやトリガーまでの距離も確認するとよいでしょう。
モンテカルロ・ストック

モンテカルロ・ストックは、銃床上面のコムを高くした形状です。特に光学サイトのように照準線が高くなる装備を使用するとき、頭を大きく浮かせずに頬を銃床へ載せられるよう設計されています。典型的なモンテカルロ型では、頬を載せる部分を高くしながら、肩に当たるヒール部分をそれより低い位置に残すことで、頬の高さと肩への当たり方を両立させています。
コムの高さが適切であれば、光学サイトを覗いたときに目の位置を合わせやすく、毎回似た位置へ頭を置きやすくなります。一方、固定式のコムが高すぎると、低い機械式サイトを使用するときに目を十分下げられない場合があります。また、サイトを交換して照準線の高さが大きく変わった場合にも、固定式では対応しにくくなります。
そのため、現代の精密射撃用では、モンテカルロ形状に加えて高さを変更できる調整式チークピースを備えた銃床も多く見られます。モンテカルロ・ストックには共通したコム高の規格があるわけではないため、実際に使用するサイトを覗いたときの目の高さとの相性で判断します。
マンリッヒャー・ストック

マンリッヒャー・ストックは、一般的な銃床よりフォアエンドを長くし、銃口付近まで延ばした形状です。「フルストック」と呼ばれることもあり、狩猟用ライフルやカービンでよく見られます。特に短めの銃身と組み合わせたクラシックな外観で知られています。
前床が長いため、支持する手を置ける範囲が広く、銃身の広い部分を銃床で覆うことで、携行中に手や周囲の物が銃身へ直接触れる機会を減らせます。一方、同じ素材と基本設計で比較した場合、通常の短いフォアエンドより多くの材料を使用するため、重量が増える要因になります。
木製では、長い前床の寸法安定性にも注意が必要です。温度や湿度によって木材が変化すると、銃身との接触状態が変わることがあります。銃身に接触すると外部からの力を受けやすくなるため、命中精度低下のリスクがあります。また、銃身を広い範囲で覆うため、清掃や水分の確認が必要になる箇所も増えます。マンリッヒャー・ストックだから精度が高い、あるいは低いと一括りにはできず、銃身と銃床を接触させる設計か、隙間を設ける設計かによっても特性は異なります。
フォールディング・ストック

フォールディング・ストックは、ヒンジを使ってバットストックを横、上、下などへ折り畳める銃床です。射撃時には通常の長さまで展開し、運搬や保管時には折り畳むことで銃全体を短くできます。
大きな利点は、肩付けに必要なバットストックの長さを保ちながら、収納時だけ全長を大幅に短縮できることです。大型の頬当てや調整機構を備えた銃床でも、折り畳み機構と組み合わせることができます。
一方、固定式には存在しないヒンジやロック機構が加わるため、摩耗、ガタ、固定状態など確認すべき部分が増えます。また、機構の追加によって重量が増える場合があり、折り畳む方向にボルトハンドルやその他の装備があると干渉することもあります。なお、フォールディング・ストックとテレスコピック・ストックは構造が異なり、フォールディング型は銃床を「折り畳む」のに対し、テレスコピック型は前後へ「伸縮」させて長さを調整します。
テレスコピック・ストック

テレスコピック・ストックは、バットストックを前後方向へスライドさせ、複数の位置で固定できる伸縮式銃床です。単に銃全体を短くするだけでなく、射手の体格や射撃姿勢に合わせてLOPを調整できるのが特徴です。
複数の射手が同じ銃を使用する場合や、厚い衣服や装備を着用する場合、立射と伏射で肩付けの位置が変わる場合などに対応しやすく、縮めれば運搬時の全長も短くできます。そのため、携行性と寸法調整を一つの機構で両立できます。
一方、固定式にはないスライド部分とロック部分が加わるため、製品によっては部品間の隙間によるわずかな動きを感じることがあります。また、LOPを変更すると頬を載せる位置まで変化する設計では、設定によって構えたときの感触が変わる場合があります。調整段数の多さだけで判断せず、自分に必要なLOPを確保できるかどうかを見ることがポイントです。
スケルトン・ストック

スケルトン・ストックは、銃床内部を完全に埋めず、大きな開口部を設けた骨格状の銃床です。木、樹脂、鋼、アルミニウムなどさまざまな材料で作られており、現代の精密射撃用ではアルミニウムを機械加工した骨格構造も見られます。
荷重をほとんど負担しない部分を省き、必要な部分を梁やフレームとして残すことで、材料を効率的に配置できるのが特徴です。また、開口部を利用してチークピースやバットプレートなどの調整機構を組み込みやすく、精密射撃用ではLOPに加えて、チークピースの高さ・左右位置・傾き、バットプレートの高さや角度などを細かく調整できる製品もあります。
一方、スケルトン構造だから必ず軽量になるとは限りません。厚い金属部品や多数の調整機構を備えれば、単純な樹脂製銃床より重くなることもあります。また、頬や肩が接触する部分を別部品として設ける構造が多く、可動部が増えるほど構造や清掃も複雑になります。そのため、外観だけでなく、実際の重量、頬当ての形状、LOP、バットパッドの大きさや調整範囲などを含めて比較する必要があります。
ターゲット・ストック

ターゲット・ストックは、特定の一つの形状を指す名称ではなく、標的射撃で同じ射撃姿勢を繰り返し再現しやすくするために設計された銃床の総称です。現代のターゲット・ストックでは、垂直寄りのグリップ、高さ調整式チークピース、LOP調整機構、多方向に動かせるバットプレートなどが組み合わされています。
伏射、立射、膝射、支持射撃、長距離精密射撃など、想定する種目によって適した構造は大きく異なります。そのため、同じターゲット・ストックでも、立射向けとベンチ上で使用するものでは形状や重量配分が異なります。調整式チークピースでサイトと目の高さを合わせれば頭の位置を一定にしやすくなり、LOPやバットプレートを調整すれば、肩や腕に無理な力をかけずに構えやすくなります。また、垂直寄りのグリップは、トリガーを操作する手の位置を再現しやすくするのに役立ちます。
一方、多数の調整機構を備えると、重量、価格、部品数が増える傾向があります。設定項目が多いため、各部を頻繁に変更すると、かえって姿勢を一定にしにくくなる場合もあります。また、大型のチークピースやバットプレートを備えた競技専用モデルは、軽量な狩猟用銃床ほど携行には向きません。ターゲット・ストックでは、調整箇所の多さだけでなく、自然に構えたときに目と照準線が合うか、肩へ無理なく当たるか、トリガーへ指が自然に届くかといった適合性が判断材料になります。
ベンチレスト・ストック

ベンチレスト・ストックは、ベンチ上のフロントレストやバッグなどで銃を支持する射撃を前提として設計された銃床です。一般的なライフルでは手で握りやすいようフォアエンドを細くすることがありますが、ベンチレスト用では幅広く平坦なフォアエンドが多く使われます。
広い底面によってフロントレストとの接触面積を確保し、銃を一定した状態で支持しやすくするのが特徴です。後部もリアバッグとの接触を考慮した形状に設計されることが多く、「手で持ちやすいか」よりも「支持具の上で毎回同じ状態を作りやすいか」が優先されます。
一方、幅広いフォアエンドは手持ち射撃では握りにくく、携行時にもかさばります。重量配分もベンチ上での使用を重視しているため、立射や狩猟用としては扱いにくい場合があります。また、ベンチレスト競技ではクラスごとに銃床幅や銃全体の重量などが規定されており、前床幅を最大約76ミリとする例もありますが、この数値がすべての競技に共通するわけではありません。競技用として使用する場合は、参加する競技団体とクラスの規則に合った銃床を選ぶ必要があります。
グリップの種類
ストレート・ハンド(Straight Hand)

ストレート・ハンドは、グリップ部分を下方へ大きく湾曲させず、バット側へ滑らかにつないだ形状です。「ストレート・イングリッシュ・グリップ」とも呼ばれます。ピストルグリップと比較すると細身で、握る位置を前後へ移動させやすいのが特徴です。
水平二連散弾銃(サイドバイサイド・ショットガン)で多く見られ、特にダブルトリガーとの組み合わせが知られています。前側のトリガーから後ろ側のトリガーへ指を移す際、手全体をわずかに後方へ動かしやすいためです。ただし、ストレート・ハンドがダブルトリガー専用というわけではなく、シングルトリガーでも採用されています。
プリンス・オブ・ウェールズ(Prince of Wales)

プリンス・オブ・ウェールズは、ストレート・ハンドより下方へ湾曲しながら、フル・ピストルほど深く曲がらないグリップです。長く緩やかに開いたカーブを描く形状が代表的で、ストレート・ハンドとフル・ピストルの中間的な性格を持っています。
握る位置にはある程度の自由がありながら、ストレート・ハンドより手首を支えやすいため、ゲームガンや高級な中折れ式散弾銃で見られます。ただし、形状を定める共通の寸法規格はなく、メーカーによってはセミ・ピストルとほぼ同じ意味で使われることがあります。
名称は、後に英国王エドワード7世となる当時のプリンス・オブ・ウェールズが、この形式の銃床を使用したことに由来します。
セミ・ピストル(Semi-Pistol)

セミ・ピストルは、ストレート・ハンドとフル・ピストルの中間程度に湾曲したグリップを表す名称です。「ハーフ・ピストル」と呼ばれることもあり、メーカーによっては「ラウンド・ノブ」などの名称が使われます。
特定の一種類の形状を示す厳密な規格というより、「フル・ピストルほど深く湾曲していないピストルグリップ」を広く表す言葉として使われる場合があります。そのため、プリンス・オブ・ウェールズとの境界も明確ではありません。プリンス・オブ・ウェールズが長く開いたカーブを持つスタイルを指すことが多いのに対し、セミ・ピストルは中間的な湾曲を持つグリップ全般を表す名称として理解すると区別しやすくなります。
フル・ピストル(Full Pistol)

フル・ピストルは、グリップ部分を大きく下方へ湾曲させた形状です。拳銃のグリップに近い角度で握ることができ、ストレート・ハンドやセミ・ピストルと比較すると、トリガー側の手の位置が一定になりやすい特徴があります。
シングルトリガーの散弾銃や競技用散弾銃などで広く見られる形状です。グリップ末端が平坦なもの、丸みを持つもの、グリップキャップを装着したものなど、細部の形状にはさまざまな種類があります。同じフル・ピストルでも湾曲の深さや太さは一定ではないため、実際の握り心地はモデルによって異なります。
フォアエンドの種類
ビーバーテイル(Beavertail)

ビーバーテイルは、幅広く膨らみ、銃身の左右側面を部分的に覆うフォアエンドです。その幅広く平たい外観がビーバーの尾を連想させることから、この名称で呼ばれています。
細身のスプリンターと比較すると、支持する手が接触する木部の面積が大きく、しっかり握りやすい形状です。また、木部が銃身の側面まで広く覆うため、射撃によって温度が上昇した銃身へ手が直接触れにくくなる利点もあります。サイド・バイ・サイドだけでなく、オーバー・アンダーやクレー射撃向けの散弾銃でも広く使用されています。
セミ・ビーバーテイル(Semi-Beavertail)

セミ・ビーバーテイルは、細身のスプリンターより太く、フルサイズのビーバーテイルほど幅広くない中間的なフォアエンドです。スプリンターの細身の外観と、ビーバーテイルの広い握り面の中間にあたる形状と考えると分かりやすいでしょう。
ただし、セミ・ビーバーテイルには共通の幅や断面寸法が定められているわけではありません。同じ名称でも、先端の幅、側面の張り出し、銃身を覆う高さなどはメーカーやモデルによって異なります。そのため、形状名だけで具体的な太さを判断することはできません。
スプリンター(Splinter)

スプリンターは、細く小ぶりなフォアエンドで、特に水平二連散弾銃で代表的な形状です。木部の量が少なく、銃身の左右が大きく露出するため、ビーバーテイルと比較すると非常に細身に見えます。
もともと中折れ式散弾銃のフォアエンドは、支持する手全体を載せる大きな握り部というだけでなく、銃身を機関部へ固定する機構やエジェクター機構を収める役割も持っています。スプリンターはその構造を最小限の木部でまとめた形状といえます。細身で軽快ですが、支持する手が銃身へ触れやすいため、多数の射撃を続けた場合には銃身の熱を感じやすくなります。
シュナーベル(Schnabel)

シュナーベルは、フォアエンドの先端を外側へ張り出させ、ふくらみや鉤状の形を持たせたデザインです。名称はドイツ語で「くちばし」を意味し、先端が突き出した特徴的な形状に由来します。
もともと散弾銃だけに使われる名称ではなく、ドイツやオーストリア系のライフルなどでも伝統的に見られる銃床デザインです。ビーバーテイルやスプリンターが主にフォアエンド全体の太さを表すのに対し、シュナーベルは先端部分の形状を表します。そのため、細身のフォアエンドにも太めのフォアエンドにもシュナーベル型の先端を設けることができます。
その他のフォアエンド形状・用途名

ラウンド(Rounded)は、フォアエンドの底面や側面に丸みを持たせた外形を表す名称です。一方、スクエア(Square)は、側面や底面を比較的平坦にし、ラウンドより角張った輪郭を持たせた形状を表します。どちらもスプリンターやビーバーテイルのような明確な形状分類とは限らず、メーカーによって断面全体、底面、側面、先端など、どの部分の形状を表すかが異なる場合があります。また、丸みや平坦さを定める共通の寸法規格もありません。
ターゲット(Target)は、ラウンドやスクエアとは分類の基準が異なり、主として標的射撃やクレー射撃などの競技用途を想定したフォアエンドに使われる名称です。「フル・ターゲット・フォアエンド」などと呼ばれることもあり、一般にはフィールド用より大きく、支持する手を置く面積を広く取った形状が見られます。ただし、特定の断面形状を示す名称ではないため、ターゲット用途のフォアエンドがビーバーテイル型やラウンド型などの特徴を併せ持つこともあります。
よくある質問
- ストックとバットストックは同じ意味ですか?
-
厳密には異なります。ストックは銃床全体を表す広い名称で、バットストックはそのうち肩に当てる後部を指します。ただし、現代のライフルでは後部だけを「ストック」と呼ぶ場合もあります。
- フォアエンドとフォアアームは何が違いますか?
-
ワンピース・ストックの前部をフォアエンド、ツーピース・ストックの前部をフォアアームと区別する定義があります。ただし、実際には両語が重なって使われることもあります。
- フォアグリップはフォアエンドの別名ですか?
-
通常は別の名称として考えます。フォアグリップは、バーティカル・フォアグリップのような前方の独立した握り部を指す場合が多く、フォアエンド全体の単純な同義語ではありません。
- ストックのコムとはどこですか?
-
バットストック上面の稜線部分です。射撃時に頬を当てる付近で、目とサイトの高さを合わせる際に関係します。
- レングス・オブ・プルとは何ですか?
-
トリガーの中央からバットプレートまたはリコイルパッドの中央までの距離です。略してLOPとも呼ばれます。
- マンリッヒャーはフォアエンドの形ですか?
-
フォアエンド先端だけの形を示す名称ではありません。マンリッヒャー・ストックは、前床が銃身に沿って銃口付近まで延びるフルレングス型のストック構成を指します。
- ビーバーテイルとスプリンターの違いは何ですか?
-
ビーバーテイルは幅広く保持面積の大きいフォアエンドで、スプリンターは細身で小ぶりなフォアエンドです。両者の中間的な形をセミ・ビーバーテイルと呼ぶ例もあります。
- 中折式散弾銃は、フォアアーム(先台)を外すと射撃できなくなりますか?
-
必ずしも射撃不能になるわけではありません。フォアアームはモデルによっては銃身の保持、撃発機構の再コック、エジェクターの作動などにも関与します。
一方で、外部ハンマー式など、フォアアームがコッキングに関与しない構造もあります。また、すでに撃発機構がコックされている場合は、フォアアームを外しても作動するモデルがあります。
「フォアアームを外せば必ず射撃不能になる」とは言えず、安全装置の代わりとして扱うこともできません。
まとめ
| 分類 | 主な名称 |
|---|---|
| 銃床全体 | ストック、ワンピース、ツーピース |
| 銃床後部 | バット、バットストック、コム、チークピース、ヒール、トウ |
| 銃床前部 | フォアエンド、フォアアーム、先台 |
| グリップ形状 | ストレート、ピストルグリップ、サムホール、プリンス・オブ・ウェールズなど |
| コム形状 | モンテカルロなど |
| ストック構成 | マンリッヒャー、フォールディング、テレスコピック、スケルトンなど |
| フォアエンド形状 | ビーバーテイル、セミ・ビーバーテイル、スプリンター、シュナーベルなど |
| 主な寸法 | LOP、ドロップ、キャスト、ピッチ |
参考資料
- Association of Firearm and Tool Mark Examiners(AFTE)
AFTE Glossary 6th Edition - Sporting Arms and Ammunition Manufacturers’ Institute(SAAMI)
SAAMI Glossary - Browning
How do you determine the proper fit of your shotgun stock? - Westley Richards
The Stock Grip Options for Shotguns - Westley Richards
The Fine Art of the Gun Fit - American Rifleman
Beretta 471 Silver Hawk Side-By-Side Shotgun - American Rifleman
A Pleasant Surprise: Sovereign Shotguns By Barrett - Daniel Defense
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