ハンドガンにマニュアルセーフティは必要? 手動安全装置がない拳銃が増えた理由

マニュアルセーフティとパッシブセーフティの比較画像

この記事の要約:

  • マニュアルセーフティがないハンドガンでも、複数のパッシブセーフティによって安全性が確保されています。
  • マニュアルセーフティ付きには追加の機械的防護なしには操作の単純化という利点があります。
  • どちらが適するかは、銃の構造、用途、携帯方法、ホルスター、経験、訓練頻度によって異なります。

近年のハンドガンでは、マニュアルセーフティを持たないモデルが広く普及しています。

では、マニュアルセーフティは不要になりつつあるのでしょうか。

本記事では、その役割やトリガーセーフティとの違い、セーフティ付き・なしの利点を解説します。

目次

マニュアルセーフティは廃れる?

SFP9マニュアルセイフティ 画像出典: H&K

マニュアルセーフティがなくなる可能性は低く、「廃れる方向に進んでいる」とはいえません。

現代のストライカー式ピストルでは、マニュアルセーフティを持たず、トリガーセーフティやファイアリングピンセーフティ、ドロップセーフティなどのパッシブセーフティを組み合わせる方式が広く普及しています。グロックが代表例です。

グロックセイフアクション
セーフアクション 画像出典: Glock

グロックのセーフアクション・システムには、トリガーセーフティ、ファイアリングピンセーフティ、ドロップセーフティの3種類があり、いずれも射手がレバーを操作する必要のない自動式です。トリガーを引く過程で順番に解除され、トリガーを戻すと再び作動します。

ただし、「マニュアルセーフティなし」が業界全体の標準になったわけではありません。SIG SAUER P365のように、同じシリーズでマニュアルセーフティ付きとセーフティなしを選択できるモデルがあります。スプリングフィールド・アーモリーヘルキャット(Hellcat)にもマニュアルセーフティ仕様があり、ルガーMAX-9などにも同様の構成があります。

また、1911系ピストルのように、銃の作動方式や携帯方法とマニュアルセーフティが結びついている設計もあります。したがって、マニュアルセーフティの必要性は単純な新旧の違いではなく、銃の構造や用途によって変わります。

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マニュアルセーフティとトリガーセーフティは役割が違う

マニュアルセーフティ有無チャート

マニュアルセーフティとトリガーセーフティは、どちらも安全装置ですが、同じ役割を持つわけではありません。

マニュアルセーフティは、射手がレバーなどを操作して発射機構を機械的に停止させる安全装置です。作動方式は銃によって異なり、トリガーやシア、ハンマー、ファイアリングピンなどの動作を制限します。

一方、グロックなどに採用されるトリガーセーフティは、トリガー中央のレバーを押さなければトリガーが後退しない仕組みです。落下や横方向から力が加わった場合などにトリガーが不用意に後退することを防ぎます。

しかし、トリガーセーフティを含めてトリガー全体が後方へ押された場合には解除されます。そのため、指や衣服、異物などがトリガーガード内に入り、トリガーを十分に押せば発射する可能性があります。マニュアルセーフティが作動している銃では、このようなトリガー操作に対する追加の防護となる場合があります。

マニュアルセーフティがある銃の利点

ベレッタ92FS セイフティ
  • 意図しないトリガー操作に対する追加の防護になる:セーフティが作動していれば、指や異物によってトリガーが動いても発射機構が作動しない設計があります。
  • 薬室に装填した状態で携帯するときの安全性を補助できる:トリガーガードを完全に覆う適切なホルスターや正しい取り扱いに加え、機械的な安全装置をもう一段追加できます。
  • 一部の作動方式では安全機構になる:1911系ピストルのように、ハンマーをコックした状態で携帯することを想定し、サムセーフティを含めてシステムが設計されている銃があります。
  • 銃を奪われた場合に発射を妨げる可能性がある:相手がその銃の操作方法を知らなければ、セーフティの存在が発射までの時間を延ばす場合があります。ただし、これは確実な安全対策ではありません。

なお、マニュアルセーフティがあるから落下に強いとは限りません。現代のピストルでは、落下時の意図しない発射を防ぐ役割をファイアリングピンセーフティやストライカーブロック、ドロップセーフティなどの内部機構が担当することが一般的です。

たとえばベレッタ92FSは、スライド上のレバーがマニュアルセーフティとデコッカーを兼ねていますが、それとは別にオートファイアリングピンブロック(AFPB)セーフティを備えています。マニュアルセーフティとドロップセーフティは分けて考える必要があります。

マニュアルセーフティがない銃の利点

グロックAFPBS
  • 発射前にセーフティを解除する操作が不要:銃を抜いたあとに行う操作を減らせるため、緊急時にセーフティを解除し忘れる可能性がありません。
  • 操作方法を単純化できる:セーフティのオン・オフ状態を管理する必要がなく、基本操作を統一しやすくなります。
  • 左右の操作差を減らせる:片側だけにセーフティレバーを備える銃と比較すると、利き手による操作性の違いが生じにくくなります。
  • 適切な訓練では素早く使用できる:発射直前に別の操作を追加する必要がありません。ただし、マニュアルセーフティ付きの銃でも十分な訓練を行えば、解除動作をドロー動作に組み込むことができます。

マニュアルセーフティがない銃にも安全装置はある

ハンドガンのセーフティの種類

「マニュアルセーフティがない銃=安全装置がない銃」ではありません。

現代のピストルでは、トリガーセーフティ、ファイアリングピンセーフティ、ストライカーブロック、ドロップセーフティなど、射手が操作しなくても常時作動するパッシブセーフティが広く使用されています。

反対に、マニュアルセーフティが付いていても、それだけで安全になるわけではありません。安全装置は機械部品であり、正しい銃口管理、トリガーから指を離すこと、適切なホルスターを使用することなど、安全な取り扱いの代わりにはなりません。

結局どちらが優れている?

マニュアルセーフティの有無だけで、どちらが優れているとは断定できません。

判断には、銃の作動方式、携帯方法、用途、ホルスター、射手の経験、訓練頻度などが関係します。多くのメーカーは、マニュアルセーフティの有無を選択する際には、法執行、護身、家庭での保管、射撃場、競技などの用途や、経験、訓練、ホルスター、携帯方法を考慮するよう説明しています。

現代のハンドガンでは、マニュアルセーフティを省略して複数のパッシブセーフティを組み合わせる設計が一般化した一方、マニュアルセーフティを必要とするユーザーや組織も存在します。そのため、今後も「マニュアルセーフティ付き」と「マニュアルセーフティなし」の両方が用途に応じて使い分けられると考えるのが妥当です。

よくある質問

マニュアルセーフティがないハンドガンは危険ですか?

マニュアルセーフティがないから危険とは限りません。現代のハンドガンには、トリガーセーフティ、ファイアリングピンセーフティ、ドロップセーフティなど、射手が操作しなくても作動するパッシブセーフティが広く採用されています。ただし、どの方式でも適切なトリガー管理と安全な取り扱いが必要です。

トリガーセーフティとマニュアルセーフティの違いは何ですか?

マニュアルセーフティは、射手がレバーなどを操作して発射機構を制限する安全装置です。一方、トリガーセーフティはトリガーに設けられた自動式の安全装置で、正しくトリガーを押さなければ後退しない仕組みです。両者は目的や作動方法が異なります。

グロックにはマニュアルセーフティがないのですか?

一般的なグロックの市販モデルには、射手が操作する外部マニュアルセーフティは搭載されていません。その代わり、トリガーセーフティ、ファイアリングピンセーフティ、ドロップセーフティからなるセーフアクション・システムを採用しています。※法執行機関ではマニュアルセーフティを追加した特別仕様を採用することがあります。

マニュアルセーフティがあれば落下時の暴発を防げますか?

マニュアルセーフティの有無だけで落下安全性は決まりません。現代のハンドガンでは、ファイアリングピンセーフティやストライカーブロック、ドロップセーフティなどの内部安全装置が、落下や衝撃による意図しない発射を防ぐ役割を担っています。

マニュアルセーフティ付きとなしでは、どちらが優れていますか?

一概にどちらが優れているとはいえません。銃の作動方式、用途、携帯方法、ホルスター、経験、訓練頻度などによって適した方式は異なります。操作手順を単純化したい場合はセーフティなし、発射操作に追加の機械的な制限を設けたい場合はセーフティ付きが選ばれることがあります。

マニュアルセーフティは今後なくなりますか?

完全になくなる可能性は低いと考えられます。マニュアルセーフティを持たないストライカー式ピストルが広く普及する一方、同一シリーズでセーフティ付きとなしを選べるモデルや、マニュアルセーフティを前提とした設計のハンドガンも引き続き存在します。今後も用途や使用者の要求に応じて両方が使い分けられると考えられます。

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