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防弾装備の「貫通阻止力」を解説! ソフトアーマーとハードアーマーの違い

ボディーアーマーイメージ画像

防弾装備(アーマー)を選ぶ際、「どの弾丸を防げるか」といった防弾レベルや着用時の重量と快適性を考える必要があります。

この記事では、防護性能を理解するため、拳銃弾を防ぐ「ソフトアーマー」とライフル弾を防ぐ「ハードアーマー」の構造と防弾原理を解説します。

さらに、装備の信頼性を示すNIJ(米国)やVPAM(国際)といった世界の防弾規格を詳しくご紹介します。

防弾の仕組み

アーマーは柔軟な素材のソフトアーマーと、セラミックやポリエチレン製のハードプレートに分かれます。前者は拳銃弾向けで長時間の装着に適し、後者はライフル弾を防ぎますが重くなります。(両者を組み合わせたタイプもあります)

ソフトアーマーとは?

レベルIIIAボディアーマー画像
レベルIIIAボディアーマー 画像出典:PMullahaa, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons

ソフトアーマーは、拳銃弾からの防護を目的とした、柔軟性軽量性が特徴の防護材です。

  • 構造: アラミド繊維などの高強度繊維を重ねた布状のシートが備わっています。
  • 原理: 繊維の網で弾頭を「捕獲」し、摩擦抵抗を利用して運動エネルギーを広範囲に拡散・吸収することで貫通を防ぎます。
  • 特徴: 身体の動きを妨げにくく、衣服の下に着用可能です。

ハードアーマー(ハードプレート)とは?

セラミックプレート画像
7.62x54Rが被弾したセラミックプレート 画像出典:User:VitalyKuzmin, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons

ハードアーマーは、主にライフル弾などの高速・高エネルギー弾からの防護を目的とした硬質プレートです。

  • 構造: 表面にセラミックや金属などの硬質層、裏側に繊維製のバッキング材を組み合わせた複合構造が備わっています。
  • 原理: 表面の硬質層で高速弾の弾頭を破砕し、運動エネルギーを散乱させます。その残骸を裏側のバッキング材が吸収することで貫通を阻止する、二段構えのシステムです。
  • 特徴: 重量があり、主に専用のプレートキャリアなどに挿入して使用します。

アフガニスタンで戦闘中、米軍のダニエル・マルム軍曹は敵狙撃兵の弾を2発受けましたが、防弾プレート「ESAPI(強化小火器防護板)」が弾丸を止め、命を救いました。衝撃で肋骨が折れたものの、数か月後には現場に復帰しています。

アーマープレート画像
 
画像出典:Sgt. Daniel Malm (According to the US Army news article), Public domain, via Wikimedia Commons

事件後、マルム軍曹の損傷したプレートは技術分析のためバージニア州フォートベルボアへ送られ、防護性能の検証に使われました。この結果は次世代防弾装備の改良に活かされ、新型ボディアーマー「モジュラースケーラブルベスト」の開発にもつながっています。

のちに、分析を担当したキャシー・ブラウン中佐らがプレートを本人に返還する式が行われ、マルム軍曹は妻とともに出席しました。彼は「ボディーアーマーは重いと言う人もいるが、私はこれで命を救われた」と語り、装備の重要性を示す実例となりました。

防弾規格の種類

防弾装備の規格は国ごとに定められ、どの弾薬に耐えられるかを示しています。

規格ごとに特徴や試験条件が異なり、特定の地域でのみ想定される弾薬も含まれることがあります。

以下のような規格が存在します。

  • VPAM(国際規格)
    • レベル1〜14で、1〜5がソフトアーマー、6〜14がハードアーマー。
    • 3発命中後の裏面変形(BFD)が25 mm以内であることが条件です。
    • 拳銃弾から大口径ライフル弾や徹甲弾までカバーします。
  • TR(ドイツ)
    • SK L〜SK 4の5段階で、耐刃保護仕様もあり、VPAMに基づく試験が主。
    • NIJ(アメリカの規格)より多くの特殊弾や至近距離射撃シナリオを評価します。
  • HOSDB(イギリス)
    • HG1/A〜RF2、SG3までのクラスがあり、拳銃弾からライフル弾、ライフルスラッグ弾まで対応。
    • 裏面変形はHG1/Aで44 mm、それ以外は25 mm以内です。
  • GOST(ロシア)
    • 旧規格はレベル1〜6A、新規格はBR1〜BR6。
    • 拳銃弾からライフル弾、徹甲焼夷弾まで対応。
    • 裏面変形は16 mmで固定。
  • NIJ(アメリカ)
    • 2024年以前はレベルIIA〜IVで拳銃弾から徹甲弾まで対応。
    • 2024年4月以降はHG(ハンドガン)、RF(ライフル)の分類に変更され、コンディショニングアーマー※の試験も導入されました。耐刃は最大7 mm。
  • 米軍規格
    • NIJ規格とは独立しており、ソフトアーマーやSAPI/ESAPI/XSAPIプレートで拳銃弾から徹甲弾まで対応。
    • 裏面変形は44 mm以内です。

各規格は想定する弾薬や試験条件が異なるため、防護力を比較する際には対応弾薬や裏面変形制限を確認する必要があります。

コンディショニングとは、NIJ(全米司法研究所)の防弾試験で用いられる前処理のことです。防弾装備のサンプルを温度変化、湿度、曲げやねじりといった機械的ストレスにさらし、その後に弾道試験を行います。これにより実際の使用や経年劣化を再現し、装備が新品の状態だけでなく使用後も規格を満たすかを確認できます。

NIJ規格の防弾レベル分類

NIJ(全米司法研究所)の防弾レベルは、想定される弾種と速度に応じて防護性能を分類した規格です。

Level IIA(ソフトアーマー)

Level IIAは、低速度の拳銃弾を主に想定した防護レベルです。日常的な軽度の拳銃弾に対応します。

  • 対応弾薬の代表例
    • 9mm FMJ RN(124 gr)
      • 初速:約373 m/s(約1,224 ft/s)
      • マズルエナジー:約412 ft-lbf
    • .40 S&W FMJ(想定例 180 gr)
      • 初速:約352 m/s(約1,155 ft/s)
      • マズルエナジー:約533 ft-lbf
  • 想定用途
    • 日常的な警備業務や一般職務、安価で軽量な個人防護を必要とする場面
  • 制限事項
    • 高威力拳銃弾やライフル弾には対応できません。
    • 耐刃性や多発命中時の性能は製品ごとに差があります。

交通機動や機動性を優先する場面には向いていますが、屋外でライフル弾による脅威が想定される場合は上位レベルを選択する必要があります。

Level II(ソフトアーマー)

Level IIは、中〜高速の拳銃弾に対応するソフトアーマーの一段上の防護レベルです。警察や保安、私設警護など、やや高エネルギーの拳銃弾が想定される業務に適しています。

  • 対応弾薬の代表例
    • 9mm FMJ RN(124 gr)
      • 初速:約398 m/s(約1,305.8 ft/s)
      • マズルエナジー:約470 ft-lbf
    • .357マグナム JSP(想定例 158 gr)
      • 初速:約436 m/s(約1,430.4 ft/s)
      • マズルエナジー:約718 ft-lbf
  • 想定用途
    • 警察・保安・私設警護など、やや高エネルギーの拳銃弾使用が想定される業務での着用を想定します。
  • 制限事項/備考
    • .44マグナム級や一部の極高威力拳銃弾、ライフル弾には対応できません。
    • 多発被弾時の耐性や耐刃性は製品により差があります。

衝撃吸収により裏面での非致死的損傷(打撲など)が生じる場合があるため、着用時はフィット感を適切に調整します。

Level IIIA(ソフトアーマー)

Level IIIAは、ソフトアーマーとしては最高レベルで、ほとんどの非徹甲拳銃弾とサブマシンガンに用いられる高圧の拳銃弾に対応する防護レベルです。市街地でのハイリスク任務や近接戦闘に適しています。

  • 対応弾薬の代表例
    • .357 SIG FMJ(想定例 125 gr)
      • 初速:約448 m/s(約1,469.8 ft/s)
      • マズルエナジー:約600 ft-lbf
    • .44 マグナム SJHP(想定例 240 gr)
      • 初速:約436 m/s(約1,430.4 ft/s)
      • マズルエナジー:約1,091 ft-lbf
  • 想定用途
    • 高リスクの市街地任務、個人護衛、SWAT的な近接対処任務などでの柔軟性重視の防護
  • 制限事項/備考
    • .50口径や一部の極超高エネルギー拳銃弾、徹甲弾には対応できません。
    • 至近距離での散弾や高エネルギーライフル弾には適しません。

体の可動域を維持しつつ最大限の保護を得るには、ポケットにハードプレートを挿入する併用を検討すると良いです。ただしソフトアーマー本来の快適性や可動性は低下します。

Level III(ハードアーマー)

Level IIIは、ハードプレートを用いることで非徹甲のライフル弾を阻止することを目的とした防護基準です。野外や戦術行動でのライフル弾に対応する用途に適しています。

  • 対応弾薬の代表例
    • 7.62×51mm NATO FMJ(M80、147 gr)
      • 速度:約847 m/s(約2,778.9 ft/s)
      • マズルエナジー:約2,521 ft-lbf
  • 想定用途
    • クリアリング、野外任務、ライフル弾使用が現実的に想定される状況でのプレートキャリア運用を想定しています。
  • 制限事項/備考
    • Level IIIは非徹甲ライフル弾を前提としているため、徹甲弾(AP)や一部の高性能ライフル弾には対応できません。
    • 重量が増すため長時間運用では疲労が蓄積します。
    • プレート破損時は防護性能が低下するため、定期的な点検と交換が必要です。

胸部への一撃の阻止が主要目的ですが、スプレッドショットやマルチヒット(多発被弾)では裏面での破片侵入や二次ダメージが発生する可能性があります。側面や腹部の防護も検討し、運用時には可動性と防護力のバランスを考慮する必要があります。

Level III+(ハードアーマー、業界非公式)

Level III+は、NIJ(全米司法研究所)の正式な区分には含まれない、業界で使われる用語であり、Level IIIの基準を上回るがLevel IVには達しない強化型ハードプレートを指します。

メーカーが独自試験や民間ラボ試験で「5.56×45mm NATO M855(グリーンチップ)」など、通常のLevel IIIでは信頼性が低い高初速・貫通力のある弾種に対処できる性能を検証したプレートに対して用いる表現です。

  • 対応弾薬の代表例(例示)
    • 7.62×51mm NATO FMJ(M80、147 gr)
      • 速度:約847 m/s(約2,778.9 ft/s)
      • マズルエナジー:約2,521 ft-lbf
    • 5.56×45mm NATO M855(グリーンチップ、62 gr)
      • 速度:約921 m/s(約3,020 ft/s)
      • マズルエナジー:約1,256 ft-lbf
    • 5.56×45mm NATO M193(FMJ、55 gr)※一部のIII+仕様で想定される高初速弾
      • 速度:約991 m/s(約3,250 ft/s)
      • マズルエナジー:約1,290 ft-lbf
  • 想定用途
    • 標準的なライフル弾に加え、M855のような高初速で貫通傾向のある中間弾を想定した任務や警護、治安任務に適しています。
  • 制限事項/備考
    • Level III+はNIJの公式区分ではなく、認証制度の対象でもありません。したがって「III+」と表記された製品はメーカーや第三者機関の試験結果に基づいた性能表示であり、メーカーごとに試験条件や想定弾種が異なります。購入時にはメーカーの試験報告書を確認してください。
    • 徹甲弾や.50 BMG、.338 ラプアマグナムなどの大口径徹甲弾に対しては引き続き脆弱です。製品によってはM855を想定していても、他の徹甲仕様弾には耐えられません。
    • 強化性能を得るために重量や厚み、価格が増す場合があります。運用時は可動性とのバランスを考慮する必要があります。また、プレートの経年劣化や使用時の損傷により性能が低下するため、定期的な点検とメーカー推奨の使用期間内での交換が必要です。

Level III+は「より高い実戦的脅威」に備えるための業界的な目安であり、有効性は製品ごとの試験内容に依存します。NIJ公式のLevel III/IVと比較すると位置づけが明確でない点があるため、導入の際は試験条件、ヒット数、環境試験の有無などを確認し、想定する脅威に対して十分な検証がなされているかを確認することが重要です。

Level IV(ハードアーマー)

Level IVは、最も高い防護レベルで、アーマーピアシング(徹甲)ライフル弾を単発で阻止することを基準とした装甲です。特殊部隊や重武装状況での防護を想定しています。

  • 対応弾薬の代表例
    • .30-06 M2 AP(166 gr、徹甲弾)
      • 速度:約878 m/s(約2,880.6 ft/s)
      • マズルエナジー:約3,059 ft-lbf
  • 想定用途
    • 耐徹甲が必要な特殊部隊任務、戦術的突入、重武装が予想される戦場環境での使用を想定します。
  • 制限事項/備考
    • Level IVは徹甲弾1発の阻止を基準としているため、複数発の連続被弾やより高性能な徹甲弾に対しては限界があります。
    • 非常に重量が増すため、可動性や持久力に大きく影響します。
    • 定期的な点検と、損傷が疑われる場合の即時交換が必要です。

プレートの損傷やクラックは防護性能を著しく低下させるため、落下や衝撃を避け、使用前後の点検を徹底する必要があります。

NIJ規格比較

弾薬名Level IIALevel IILevel IIIALevel IIILevel IV
9mm FMJ阻止阻止阻止阻止阻止
.40 S&W FMJ阻止阻止阻止阻止阻止
.357マグナム JSP貫通阻止阻止阻止阻止
.357 SIG FMJ貫通貫通阻止阻止阻止
.44マグナム SJHP貫通貫通阻止阻止阻止
5.56mm(非徹甲)貫通貫通貫通阻止阻止
.50 AE貫通貫通貫通阻止阻止
.500 S&W貫通貫通貫通阻止阻止
7.62×51mm NATO FMJ貫通貫通貫通阻止阻止
.30-06 M2 AP(徹甲弾)貫通貫通貫通貫通阻止
.50 BMG貫通貫通貫通貫通貫通
  • 補足事項
    • ソフトアーマー(IIA、II、IIIA)は主に可動性と着心地を重視しており、日常業務やそれに準ずる任務で有効です。一方、ハードアーマー(III、IV)は高エネルギー弾薬に対処しますが重量と運動性のトレードオフがあります。
    • 防弾プレートの寿命は5〜7年程度であり、劣化すれば性能が低下します。
    • マズルエナジーの数値は試験条件や弾薬の実測値により変動します。ここで示したエネルギーは代表的な試験値を基に計算した概算(単位:ft-lbf)です。
    • 最新規格や各国の互換性については規格更新が行われるため、購買や運用前にメーカー認証書とNIJ最新版の確認を行う必要があります。
    • 特殊用途(爆発物片、防刃耐性、複数発被弾)など、NIJレベルだけではカバーできない運用要件があります。必要に応じて追加の試験結果や製品仕様を確認します。

NIJの新規格(2024年4月以降)

NIJは2024年4月に規格を改定し、試験手順を定める「NIJ Standard‑0101.07」と防護レベルを定める「NIJ Standard‑0123.00」を採用し、旧規格(0101.06)を更新しました。

HGはハンドガン、RFはライフルを対象とする分類です。

  • HG1(旧Level II相当)は拳銃弾阻止を想定しています。
    • 代表例:
      • 9mm ルガー FMJ
        • 弾頭重量:124 グレイン(約8.0 g)
        • 初速:約1,305 ft/s(約398 m/s)
        • マズルエナジー:約469 ft-lbf
      • .357 マグナム JSP
        • 弾頭重量:158 グレイン(約10.2 g)
        • 初速:約1,430 ft/s(約436 m/s)
        • マズルエナジー:約718 ft-lbf
  • HG2(旧Level IIIA相当)は高エネルギー拳銃弾阻止を想定しています。
    • 代表例:
      • 高速度9mm(HG2試験条件例)
        • 弾頭重量:124 グレイン(約8.0 g)相当
        • 初速:約1,470 ft/s(約448 m/s)
        • マズルエナジー:約595 ft-lbf(目安)
      • .44 マグナム JHP
        • 弾頭重量:240 グレイン(約15.6 g)
        • 初速:約1,430 ft/s(約436 m/s)
        • マズルエナジー:約1,090 ft-lbf
  • RF1(旧Level III相当)はライフル弾阻止を想定しています。
    • 代表例:
      • 7.62×51mm NATO M80 FMJ
        • 弾頭重量:147±3 グレイン(約9.5 g)
        • 初速:約2,780 ft/s(約847 m/s)
        • マズルエナジー:約2,523 ft-lbf
      • 7.62×39mm MSC(代表値)
        • 弾頭重量:約123 グレイン(約8.0 g)代表値
        • 初速:約2,400 ft/s(約732 m/s)
        • マズルエナジー:約1,574 ft-lbf(代表値)
      • 5.56×45mm NATO M193
        • 弾頭重量:56±2 グレイン(約3.6 g)
        • 初速:約3,250 ft/s(約990 m/s)
        • マズルエナジー:約1,314 ft-lbf
  • RF2(RF1にM855を追加)はRF1基準に加え5.56mm M855を含みます。
    • 代表例(追加):
      • 5.56×45mm NATO M855
        • 弾頭重量:61.8±1.5 グレイン(約4.0 g)
        • 初速:約3,115 ft/s(約950 m/s)
        • マズルエナジー:約1,332 ft-lbf
  • RF3(旧Level IV相当)は徹甲弾阻止を想定しています。
    • 代表例:
      • .30‑06 M2 AP
        • 弾頭重量:165.7±7 グレイン(約10.7 g)
        • 初速:約2,880 ft/s(約878 m/s)
        • マズルエナジー:約3,053 ft-lbf
弾薬名
(弾頭重量・弾種)
HG1HG2RF1RF2RF3
9mm(124gr FMJ)阻止阻止阻止阻止阻止
.357 マグナム(158gr JSP)阻止阻止阻止阻止阻止
.44 マグナム(240gr JHP)貫通阻止阻止阻止阻止
5.56×45mm NATO M193(56gr)貫通貫通阻止阻止阻止
7.62×39mm スチールコア貫通貫通阻止阻止阻止
7.62×51mm NATO M80(147gr FMJ)貫通貫通阻止阻止阻止
5.56×45mm NATO M855(61.8gr)貫通貫通貫通阻止阻止
.30-06 M2 AP(165.7gr AP)貫通貫通貫通貫通阻止

NIJ規格は主に法執行機関向けの基準であり、米軍装備は必ずしもNIJ試験を受ける必要はありません。

ソフトアーマー(繊維系アーマー)は貫通抵抗だけでなく、着用者へ伝わる衝撃エネルギーも評価されます。

まとめ

本記事では、防弾装備の「貫通阻止力」を理解するための基礎知識として、ソフトアーマーとハードアーマーの構造と防護原理、そして世界の主要な防弾規格について解説しました。

防弾装備の選択で重要なポイント

  • ソフトアーマー(NIJ Level IIA〜IIIA、新規格HG1〜HG2)
    • 柔軟性と軽量性が特徴で、主に拳銃弾からの防護を目的としています。
    • 日常的な警備や高リスクの市街地任務に適しています。
  • ハードアーマー(NIJ Level III〜IV、新規格RF1〜RF3)
    • 硬質プレートを使用し、ライフル弾や徹甲弾(Level IV/RF3)などの高エネルギー弾からの防護を目的としています。
    • 重量が増すため、可動性とのトレードオフを考慮する必要があります。
  • 世界の主要規格
    • 防護性能はNIJ(米国)、VPAM(国際)などの規格によってクラス分けされており、想定弾薬や裏面変形制限(BFD)が異なります。
    • 特にNIJは2024年4月にHG/RF分類に改定され、試験要件がより厳格化されています。
  • 規格の確認と運用
    • 防弾性能は、規格が定める対応弾薬だけでなく、多発被弾耐性、防刃性能、そして装備の経年劣化(寿命約五~七年)やコンディショニング(使用環境を再現した前処理)の有無も考慮して総合的に判断することが重要です。

軽量な装備は動きやすく疲れにくいですが、防御力はやや下がります。重い装備は防御力に優れますが、長時間の装着には不向きです。

装備を選択する際は、ご自身の「想定される脅威」と「任務における機動性の要求」を明確にし、そのバランスに基づいた最適な防護レベルの製品を選ぶ必要があります。購入や運用前には、最新の規格情報とメーカーの試験報告書をご確認ください。

  • 弾頭:銃弾の先端部分で、標的に衝突してエネルギーを伝える主要部分です。
  • フルメタルジャケット(FMJ):弾頭全体が金属被膜で覆われ、変形しにくく高い貫通力を持つ弾薬です。
  • ホローポイント:弾頭先端が空洞化され、着弾時に膨張して標的内でエネルギーを放出する弾薬です。
  • ソフトポイント:弾頭の先端に鉛芯が露出し、標的命中時に変形しやすく威力を内部で発揮する弾薬です。
  • 徹甲弾(AP弾):硬質コアを備え、装甲板などを貫通できるよう設計された弾薬です。
  • フラグメンテーション:弾頭が標的に命中した際に破片化し、複数の破片が飛散する現象です。
  • タンブリング:弾頭が標的内で横転し、不規則な動きをすることでエネルギーを放出する現象です。
  • 裏面変形(BFD):防弾装備が弾丸を止めた際に、着弾面の裏側にできる変形の深さを示す指標です。
  • コンディショニング:防弾装備を試験前に温度変化や湿度、曲げなどのストレスにさらす前処理です。
  • ソフトアーマー:繊維素材を用いた柔軟な防弾装備で、主に拳銃弾に対応します。
  • ハードアーマー:セラミックや金属を使用した硬質プレートで、ライフル弾や徹甲弾に対応します。
  • セラミックプレート:セラミック材で作られたハードアーマー用防弾プレートで、破砕によって弾頭のエネルギーを吸収します。
  • VPAM(国際規格):レベル1〜14に分かれる国際的防弾規格で、拳銃弾から徹甲ライフル弾までを評価します。
  • TR(ドイツ規格):ドイツの防弾規格で、SK L〜SK 4の区分を持ち、VPAMに基づく試験を採用します。
  • HOSDB(イギリス規格):イギリスの防弾規格で、HG1/A〜RF2などの区分を持ち、拳銃弾からライフル弾までを対象とします。
  • GOST(ロシア規格):ロシアの防弾規格で、旧規格は1〜6A、新規格はBR1〜BR6に分類されます。
  • NIJ(アメリカ規格):全米司法研究所による防弾規格で、従来のLevel IIA〜IVから2024年以降はHG・RF分類に移行しました。
  • 米軍規格:米軍独自の防弾規格で、SAPIやESAPIプレートを含み、拳銃弾から徹甲弾までを対象とします。
  • Level IIA:低速度の拳銃弾に対応するソフトアーマー基準です。
  • Level II:中速〜高速の拳銃弾に対応するソフトアーマー基準です。
  • Level IIIA:ソフトアーマーとして最高水準で、高圧拳銃弾に対応します。
  • Level III:非徹甲ライフル弾に対応するハードアーマー基準です。
  • Level III+:NIJ非公式の業界用語で、Level IIIを上回るがLevel IV未満の強化型ハードアーマーです。
  • Level IV:徹甲ライフル弾に対応する最上位のハードアーマー基準です。
  • M870:レミントン社製のポンプアクションショットガンです。
  • ベレッタ92:イタリア・ベレッタ社製の9mm口径セミオートピストルです。
  • .44マグナム:高威力のリボルバー用拳銃弾で、代表的なマグナム弾薬の一つです。
  • グロック(Glock):オーストリアのグロック社製セミオートピストルの総称で、世界中で採用されています。