銃弾の「ソリッドブレット」と「AP弾(徹甲弾)」の違いとは?

AP弾イメージ画像

この記事の要約:

  • ソリッドブレットは単一素材で作られ、素材の特性によって貫通力や変形のしやすさが決まる弾頭。
  • AP弾は硬化金属コアを銅ジャケットで包んだ構造で、装甲や防弾装備を貫通するために設計された軍用弾。
  • 両者は見た目が似ていても目的・構造・法規制が大きく異なり、ソリッドは狩猟向け、APは装甲貫通専用。

銃弾にはさまざまな構造がありますが、その中でも混同されやすいのが「ソリッドブレット」と「AP弾(徹甲弾)」です。どちらも貫通力を重視した弾薬という印象を持たれがちですが、実際には目的も構造もまったく異なります。

本記事では、それぞれの特徴と歴史的背景を踏まえながら、その違いを整理します。

目次

ソリッドブレットとは?

カッパーブレット画像
画像出典:barnesbullets.com

ソリッドブレットは、弾頭が単一の素材だけで構成された銃弾を指します。銅や真鍮、鉛などを一種類だけ用いて成形され、素材の性質がそのまま弾頭の挙動に反映されます。

現代では、大型獣の狩猟に銅や真鍮のソリッドブレットがよく使われます。これらの金属は鉛よりも変形しにくく、象の頭蓋骨のような厚い骨を貫通する能力に優れています。一方、歴史的には鉛100%のソリッドブレットが主流でした。鉛は加工しやすい反面、柔らかいため着弾時に大きく変形し、高速弾では砕け散ることもあります。また、融点が低いため銃身内で溶けて付着する「レッディング」を引き起こし、命中精度を損なう原因にもなります。

そのため、鉛のソリッドブレットは黒色火薬銃やハンドガンのように弾速が比較的遅い銃で使用されます。高速ライフルで鉛弾を使う場合には、鉛を銅合金で包んだジャケッテッドブレットが選ばれ、銃身の保護と安定した弾道を両立させています。

ソリッドブレットの歴史的背景

プリチェット弾ととミニエー弾 画像出典:svartkrutt.net

ソリッドブレットの歴史は火器の黎明期にまでさかのぼります。16〜18世紀の火縄銃や前装式ライフルでは、鉛の球形弾が一般的で、まさに「鉛100%のソリッド」でした。鉛は鋳造しやすく、黒色火薬の低圧力とも相性が良かったため、長く主要な素材として使われ続けました。

19世紀半ばにはミニエー弾やプリチェット弾が登場し、弾頭は球形から円筒形へと進化しますが、素材は依然として鉛が中心でした。20世紀に入ると狩猟文化の発展に伴い、大型獣に対して十分な貫通力を持つ弾頭が求められるようになり、銅や真鍮を用いた現代的なソリッドブレットが登場します。こうして「サファリ用ソリッド」と呼ばれるカテゴリーが確立していきました。

AP弾(徹甲弾)とは?

12.7mm AP BZT44 画像出典:gunrf.ru

AP弾は、装甲や防弾装備を貫通するために設計された軍用弾薬です。内部には熱処理で硬化させた鉄やタングステンなどの硬い金属コアがあり、その外側を銅合金のジャケットで覆っています。硬い金属をそのまま銃身に通すとライフリングを急速に摩耗させてしまうため、外側に柔らかい金属を被せる構造が不可欠です。

この構造により、AP弾は非常に高い貫通力を発揮します。車両の装甲板やボディアーマーを貫通することを目的としているため、狩猟用途で使われることはありません。多くの国で法規制も厳しく、一般の射手が使用できる場面は限られています。

AP弾の歴史的背景

AP弾が登場したのは20世紀に入ってからです。第一次世界大戦では戦場の装甲化が急速に進み、従来の鉛弾では貫通できない標的が増えました。これに対応するため、各国は硬化鋼やタングステンを用いた硬いコアを弾頭内部に組み込み、外側を銅合金で包む構造を開発します。これが現代のAP弾の原型です。

第二次世界大戦では航空機のエンジンや装甲車両を破壊するためにAP弾が大量に使用され、タングステン不足が戦略資源問題として取り沙汰されるほどでした。戦後もボディアーマーの発達に合わせて改良が続き、現在ではタングステン合金や炭化タングステンを用いた高性能AP弾が軍用として広く採用されています。

歴史から見える両者の本質的な違い

ソリッドブレットは、火器が生まれたころから使われてきた、基本的な弾頭の形です。素材を一種類だけ使うというシンプルな構造ですが、その選び方によって狩猟や精密射撃など、さまざまな用途に対応してきました。

一方で、AP弾は20世紀の戦争の中で必要とされた、装甲を貫くための軍用弾です。硬い金属のコアを内部に持つ独特の構造は、まさに軍事的な要求から生まれたものです。

ぱっと見では似ていることもありますが、実際には生まれた背景も目的も大きく違います。ソリッドブレットは「素材そのものの特性を活かす弾頭」、AP弾は「装甲を破るために工夫された複合構造」と考えると、それぞれの役割がよりわかりやすく感じられるでしょう。

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この記事を書いた人

・1998年:実銃解説サイトを開設
・2001年~2007年:米国に居住し実弾射撃を学ぶ
・エアガンメーカー勤務経験や実銃経験を活かした情報を発信中

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