ご質問をいただきました。
9mmのホローポイント弾が及ぼす瞬間空洞についてです。
拳銃弾程度の威力の弾丸が及ぼす瞬間空洞は大したことはなく、永久空洞の方が大事と聞きました。ホローポイントを使った場合もそのようなことが言えるのでしょうか?
また、9mmが及ぼす瞬間空洞にはどのくらいの威力があるのでしょうか?
周りの臓器は瞬間空洞によってどうなりますか?
瞬間空洞と永久空洞の影響について解説します。
瞬間空洞と永久空洞とは?
弾が着弾し体内に侵入すると、臓器や血液といった流体を押しのけて進み、瞬間的に大きな空洞を形成します。
これを瞬間空洞(テンポラリーキャビティー)といいます。
瞬間空洞は着弾の瞬間のみに存在し、弾が停止または貫通し、瞬間空洞が失われて弾の直径に近い空洞が残ります。
これを永久空洞(パーマネントキャビティー)といいます。
池の中に同じ速度で槍と石を投げ込んだとき、槍より大きな石の方が大きな水飛沫を発生させるように、衝突時に抵抗が大きい方が周囲に押し出す力が強くなります。
臓器の特性とダメージ
人体に命中した場合はバリスティックゼラチンの実射結果とは異なり、命中した場所によって損傷の程度が異なります。
筋肉や肺といった弾性のある細胞組織に命中したとき、これらは収縮に強いため瞬間空洞によるダメージは比較的小さくなります。
その一方で、脳、腎臓、肝臓といった弾性の小さい細胞組織に命中すると、瞬間空洞と永久空洞の両方が大きなダメージを生じさせます。
9mmといった(ライフル弾より低速な)拳銃弾は瞬間空洞による影響はほとんどないことが研究によって知られていますが、このような弾性の小さい臓器に対しては拳銃弾でも致命的な効果があります。
腎臓や肝臓といった弾性の小さい臓器は、瞬間空洞を元に戻す力が弱く、損傷を受けた臓器は機能不全となり致命傷になる傾向があります。
人体に対するダメージの効果は、実際には「当たり所(ショットプレースメント)次第」といえますが、失血やショックによる心不全の他、精神的ショック(被弾による精神的ショックによる死亡など)によるものなど、行動不能となる原因には様々なケースがあります。
人体に与えるダメージが大きくなる条件
同じ弾薬で毎回同じ効果が得られるとは限らず、条件によってダメージの大きさが異なります。
人体に対するダメージの大きさは弾頭の設計、弾速、弾頭重量、口径などの条件によって異なりますが、なかでも弾頭の設計と弾速は大きく影響します。
ホローポイント弾やソフトポイント弾といった着弾と同時に拡張する弾頭は、軍用弾であるフルメタルジャケット弾よりダメージが大きくなります。
しかし、軍用弾でも利用される着弾時にタンブリング(弾頭の横転)を起こす設計のライフル弾は、タンブリングによって大きな永久空洞を形成し、致命的なダメージを生じさせます。
勿論、拳銃弾もタンブリングが発生する場合がありますが、ライフル弾は弾頭の全長が長く、高速である点が大きく影響します。
AK74で使用される5.45x39mmはAK47で使用される7.62x39mmより人体に対して大きなダメージを与えますが、これは5.45x39mm(初速約3100fps)が7.62x39mm(初速約2300fps)より高速で、かつ着弾直後から速い段階でタンブリングが発生するためです。
着弾後人体を貫通、または停弾するまでにタンブリングを起こしている状態(距離)が長いほど運動エネルギーを消費し、細胞組織を破壊し人体に対して大きなダメージを与えます。
また、付随する効果としては、骨や歯などに命中すると弾頭や骨の破片が散弾のように散ることで細胞組織に大きなダメージを与えます。
特に高速なライフル弾ではフラグメンテーション(弾頭の破砕)が起こることでダメージが大きくなり、フラグメンテーションとタンブリングは大きな殺傷力を生じる原因となります。
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