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中折れ式リボルバーが衰退した理由とは?強度の課題と歴史的背景

ウェブリーフォスベリー画像

19世紀から20世紀初頭にかけて活躍した「中折れ式リボルバー」は、素早い装填が可能なため人気がありました。

しかし、時代とともにその構造の欠点が浮き彫りになり、現代の「スイングアウト式」リボルバーに取って代わられる形で衰退していきました。

本記事では、中折れ式リボルバーがなぜ現在ではほとんど製造されなくなったのか、その理由と歴史的背景を解説します。

中折れ式リボルバーの構造

ウェブリーフォスベリーの再装填構造

中折れ式リボルバー(Top-Break / Tip-Up)には、銃を半分に折り曲げることで、素早く弾薬を交換できる利点がありました。

特に、1890年代には多くの銃器メーカーがこの構造を採用し、多様なモデルが登場しました。

中折れ式には、以下の2つのタイプがあります。

  • トップブレイク式
  • チップアップ式

トップブレイク式

銃の画像
画像出典:johnnyringo.net

銃を「ハの字」に折り、シリンダーが露出して一度に複数の弾薬を交換できる方式。

トップブレイク(またはブレイクトップ)リボルバーは、バレルとシリンダーがフレームにヒンジで取り付けられており、銃を「折り開く」ことで装填と排莢ができます。

主な特徴は以下の通りです。

  • ヒンジ構造:シリンダーの前方下部にヒンジがあり、ラッチを解除しバレルを押し下げて開く。
  • 自動排莢:ほとんどのモデルでは、銃を折り開くと使用済みの薬莢が自動的に排莢される。
  • 高速リロード:初期の固定シリンダーのリボルバーと比べると装填が速い。
  • 歴史:19世紀後半から20世紀初頭に人気があり、S&W モデル3やウェブリーリボルバーなどが有名。

チップアップ式

銃の画像
S&W No2 画像出典:potofgoldestate.hibid.com

チップアップは、銃口を「逆ハの字」に折り上げて、シリンダー(回転式弾倉/薬室)へのアクセスが可能になる方式です。

ベレッタ86B 画像出典:modernfirearms.net

チップアップ構造は一部のセミオート・ピストルでも見られますが、リボルバーにも存在します。

チップアップの特徴は以下の通りです。

  • バレルのヒンジ:バレル(銃身)がシリンダーの上部にヒンジで取り付けられており、上向きに折る(チップアップする)ことで装填と排莢を行う。
  • シリンダーの取り外し:一部のチップアップモデルでは、シリンダーを取り外して装填可能。
  • 設計:トップブレイクやスイングアウトタイプと比べ、チップアップ・リボルバーは一般的ではない。

数多くの中折れリボルバーを製造したS&W社を例に挙げると、S&W社はトップブレイク・リボルバーを1870~1940年に製造し、チップアップ・リボルバーを1857~1881年に製造していました。

こうした中折れリボルバーは現在では復刻モデルを除きほとんど製造されていませんが、1800年代後半から多く製造され、スイングアウトタイプのリボルバーに追いつく勢いで製造された時期がありました。

S&W社のモデルをベルギーがコピーし、そのコピーをロシアがさらにコピーするなど、コピーのコピーが生まれる事例も多くありました。

中折れリボルバーで有名なものにはイギリスのエンフィールド社や、ウェブリー&スコット社、プライス社、アメリカのS&W社、アイバージョンソン社などの製品があります。

中折れ式リボルバーが衰退した理由

1. 強度の問題

銃の画像

中折れ式リボルバーは、フレームとバレルを連結する「ラッチ」で銃全体の強度を支えています。

このラッチが経年劣化や使用によって緩みやすいという問題があり、次第に閉鎖状態を保持できなくなり、衝撃を受けた際に事故のリスクが増大します。

現代の弾薬は高圧で強力なため、古い設計の中折れ式リボルバーでは耐久性が追いつかず、破損のリスクが高まります。

2. 火薬の進化と圧力の増加

中折れリボルバーが主流だった時代に使われていた火薬は、現在よりも低圧な「ブラックパウダー(黒色火薬)」が主流でした。

これに対し、現在の「スモークレスパウダー(無煙火薬)」ははるかに高圧で発射エネルギーが強いため、中折れ式の構造では十分に対応しきれません。

例えば、当時の.22~.44口径の弾薬の初速は650fps(198m/秒)程度で、現代の同口径弾薬と比較すると低速です。

このため、現代の高圧な弾薬に耐えうるスイングアウト式リボルバーが、結果的に主流となりました。

3. ライフリングと腔圧の関係

画像出典:Wikipedia

一部の中折れ式銃は、ショットガンのようにライフリングのないスムースボア銃身を採用していました。

ライフリングがない銃身では、発射時の腔圧が低いため中折れ式でも問題なく発射可能です。

しかし、ライフリングを持つ銃身では腔圧が上がり、特にピストルやライフルのように精密射撃を目的とする銃には負荷がかかるため、次第に中折れ構造の限界が露わになりました。

もちろん、肉厚のあるパーツを使用して閉鎖機構を強固にすることも技術的には可能ですが、携帯性が重視されるハンドガンにおいては重さのデメリットが大きくなります。

中折れリボルバーの代表的なモデルと衰退の歴史

中折れ式リボルバーの有名なモデルには、イギリスのエンフィールド社やウェブリー&スコット社、アメリカのS&W社などの製品があります。

特にウェブリー&スコットのリボルバーは、イギリス軍の制式拳銃として採用されるほど信頼性が高かったものの、結局はスイングアウト式のリボルバーに置き換えられる運命にありました。

S&W社は多くの中折れリボルバーを製造していましたが、これらのモデルはスイングアウト式リボルバーの登場とともに生産が縮小し、現在では一部の復刻モデルやコレクター向けの限定品としてのみ流通しています。

最後までお読みいただきありがとうございます。

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