S&W 1076について質問があります
セーフティが付いてない新バージョンの1076はハンマーがスライドに埋没していてDAオンリーになっていますが、スライドを引くとハンマーが露出しシングルアクションになるというちょっと珍しいメカニズムになっています。このメカニズムのメリット・デメリットをご教授願います。また、管理人さんはこのメカニズムについてどう思われますか?
メカニズムはありふれたものですが、ハンマー形状に特徴があります。
S&W 1076は1990~1993年に製造された10mmオート口径のDA-SA(ダブルアクション-シングルアクション)ピストルです。DAO(ダブルアクション・オンリー)ではなく、初弾はダブルアクションで発射し、次弾からシングルアクションで発射できる構造です。基本的にS&W 1066と同じスペックですが、1076にはSIGタイプのデコッキングレバーをフレームに装備し、トリチウム・ナイトサイトを装備した1076-NSも存在します。トリガーシステムは、ベレッタ92FSや、SIG P226と同じダブルアクションピストルであり、デコッキングが可能です。
S&W 1076は、ハンマースパーを削り取った、いわゆる「ボブハンマー」を装備しているため、ハンマーが落ちた状態から手動でハンマーを起こし難いデザインです。このデザインは、ホルスターから銃を抜く際に、ハンマースパーが衣服に引っかかることなくスムーズに抜けるメリットがありますが、一方、初弾から遠いターゲットを狙ったり、精密射撃を必要とする場合にはデメリットとなります。あくまでコンシールドキャリー(隠匿携帯)を前提とした、「近接戦」と「クイックドロウ(素早い銃の抜きやすさ)」に特化されたピストルといえるでしょう。
トリガーシステム自体は一般的なDAピストルと同じですが、ハンマーが引っ掛からないスナッグフリーな形状は上着の内側に携帯するなど、コンシールドキャリーに適した実用的なデザインだと思います。ドロウ直後の初弾からシングルアクションで撃てないからといっても、普段からダブルアクションに撃ち慣れていればデメリットは感じられないでしょう。
1076ですが、動画サイトを見ても通販サイトなどを見てもデコッキングレバーを装備した物しかありません。オリジナルの1076は淘汰されてデコッキングレバーを備え、手動安全装置がないモデルが主流になったのでしょうか?
また、1076の場合デコッキングレバーはあった方が良いと思いますか?
誤解されているようですが、1076は、S&Wの「1000シリーズ」と呼ばれる第三世代10mmピストルのラインナップのひとつであり、その中で「デコッキングレバー」「ストレートバックストラップ」「ボブハンマー」「4-1/4インチバレル」「0.304インチスムーストリガー」を装備したモデルが1076です。ですので、デコッキングレバーがない1076は存在しないと思います(カスタムではない限り)。また、淘汰されたわけではなく、あくまでシリーズ商品の中のひとつであって、消費者の選択肢を増やすためにそれぞれのモデルが差別化されているだけです。
>また、1076の場合デコッキングレバーはあった方が良いと思いますか?
DAOであれば不要ですが、一般的なダブルアクションである1076の場合、デコックが簡単かつ安全となるので、ある方が良いと思います。もし1076にデコッキングレバーがなければ、ハンマーをレスト状態にしたいときは、毎回チャンバーを空にしてから空撃ちすることになりますし、ボブハンマーなので手動で戻すにしても手間が掛かります。
S&Wの1000シリーズには以下のモデルがあります。口径はすべて10mmです。
(DA=ダブルアクション DAO=ダブルアクションオンリー)
モデル名 | バレル長 (インチ) |
ハンマー | デコッキングレバー | セイフティレバー | トリガー | 製造年 |
1006 | 5 | 通常 | スライド | あり | DA | 1990~1993 |
1026 | 5 | ボブ | フレーム | なし | DA | 1990~1991 |
1046 | 5 | ボブ | なし | なし | DAO | 1990~1992 |
1066 | 4-1/4 | ボブ | スライド | あり | DA | 1990~1992 |
1076 | 4-1/4 | ボブ | フレーム | なし | DA | 1990~1993 |
1086 | 4-1/4 | ボブ | なし | なし | DAO | 1991~1992 |
S&W 1076 FBIモデル
S&W 1076にはFBIモデルと呼ばれるバージョンが存在します。1986年、米国フロリダ州マイアミでFBIと銀行強盗との間で発生した銃撃戦を教訓とし、火力不足の反省からパワフルで多弾倉な10mmオート口径のS&W 1076が採用されました。この事件ではFBI捜査官2名と犯人2名が死亡し、5名が負傷しています。事件当時、FBI側はS&WのM13、M19、M36、M60、M459や、レミントンM870ショットガンを使用。容疑者側はS&W M3000ショットガン、スタームルガー・ミニ14ライフル、S&W M586等を使用し、死亡したFBI捜査官はいずれもミニ14ライフル(.223口径)で射殺されました。
FBIはS&Wと10,000丁のFBI仕様1076を契約しますが、後にFBIが製品の改善を求め、最終的に1993年に約2,400丁が納入されました。納入されなかった銃の一部は民間市場へ売却されたり、廃棄されたようですが、具体的な数は定かではありません。
FBI仕様ではリアサイトがツードットとなり、改良型トリガーグループと、11連、15連マガジンが用意されました。また、通常の1076にはマガジンを抜くとトリガーが機能しなくなる「マガジンセイフティ」が装備されていますが、FBIモデルでは廃止されています。(※民間市場のFBIモデルにはマガジンセイフティとナイトサイトを装備したモデルがあります。)
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