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ホローポイント弾とソフトポイント弾の違いとは?それぞれの特徴と適した用途を解説

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ホローポイント弾とソフトポイント弾は、どちらも着弾時に弾頭が裂けたり大きく潰れることで標的に対して大きなダメージを与えることを目的に設計されています。

どちらが有効であるかは使用対称によって異なるため、一概にどちらが効果的とはいえません。

この記事では、ホローポイント弾とソフトポイント弾の違いについて詳しく解説します。

弾丸の構造と設計

ホローポイント弾

.40S&Wホローポイント弾画像
.40S&W ホローポイント弾 画像出典:Oleg Volk (en:User:Olegvolk), CC BY 2.5, via Wikimedia Commons

ホローポイント弾は弾頭の先端に穴が空いています。

人体などの軟組織(流体)に着弾すると穴が拡張され、弾頭直径が2倍近く大きくなります。

これにより抵抗が生じ、標的に対して大きなダメージを与えます。

銃の画像
フェデラルHST 画像出典:handgunsmag.com

拡張後ホローポイント弾画像
着弾後のホローポイント弾(.38スペシャル)

ホローポイント弾は、個人の護身用としてや、警察などで広く利用されています。

鉛のコア(弾芯)と銅のジャケット(被甲)で構成されたホローポイント弾は、JHP(ジャケッテッド・ホロー・ポイント)と呼ばれ、ホローポイント弾の主流となっています。

ソフトポイント弾

銃の画像
画像出典:rebelgunworks.com.au

ソフトポイント弾は、鉛のコアの周りを銅のジャケットで覆っており、弾頭先端部分だけコアの鉛が露出しています。

鉛は柔らかく変形しやすいため、着弾時には大きく変形し拡張します。

しかし、ホローポイント弾よりも拡張速度が遅いため、着弾直後から停弾するまで時間を要し、貫通力が高くなります。

ソフトポイント弾は体内を進みながら潰れてキノコ状になる「マッシュルーミング」が発生し、ジャケットとコアは比較的分離しにくい傾向があります。(着弾時の衝撃で分離すると貫通力が低下するため、弾薬メーカーは分離しにくい設計を採用します)。

鉛のコアと銅のジャケットで構成されたソフトポイント弾は、JSP(ジャケッテッド・ソフト・ポイント)と呼ばれ、ソフトポイント弾の主流となっています。

製造工程としては、フルメタルジャケット弾とは逆で、先端に開口部を設けてそこから鉛を注入して作られます。

1890年頃にホローポイント弾と並行して開発され、終末効果(ターミナル効果)※を向上させる目的がありました。

終末効果(ターミナル効果)とは、弾丸が標的に命中した後に発生する物理的影響を指します。

具体的には以下の3点が主な要素です。

  • 拡張(変形):弾頭が広がって大きな創傷を与える。
  • 貫通:弾丸が体内をどれだけ深く進むか。
  • エネルギー伝達:弾丸が標的にどれだけ運動エネルギーを与えるか。

これらが組み合わさることで、目標に対するストッピングパワー(対象を無力化する力)や致死性が影響します。

用途別の使い分け

護身用や警察用ではホローポイント弾

ホローポイント弾は、着弾直後から瞬時に拡張される傾向があるため貫通力が低くなります。

特に都市部においては、弾が標的を貫通して人や物を傷つける「オーバーペネトレーション」が大きな懸念材料となっており、二次被害を防ぐ目的から、軍や警察ではホローポイント弾の利点が人質や仲間を守るために必要とされます。

一方、ソフトポイント弾を「対人用」として使用した場合、弾頭が完全に拡張する前に貫通する可能性があります。

貫通弾は運動エネルギーを標的内で消費しきれないため、ストッピングパワーの効果が低くなるほか、貫通後も弾頭が殺傷力を維持しやすく、危険です。

標的射撃用ホローポイント弾

EBRライフル画像

一部のホローポイント弾は、競技用に設計されています。

弾頭の先端に空洞を持つことで重心が後方に移動し、飛翔安定性と精度が向上します。

特に、ホローポイント・ボートテール(HPBT)弾は、先端の面積が小さく、流線形状とテール部の傾斜によって空気抵抗を抑え、高い弾道係数※を実現しており、長距離射撃に優れた性能を発揮します。

弾道係数(Ballistic Coefficient, BC)とは、弾丸が空気抵抗をどれだけ受けにくいかを示す数値です。

この値が高いほど、以下の利点があります。

  • 空気抵抗を受けにくい。
  • より遠くまで飛ぶ。
  • 弾道がフラット(直進的)になる。
  • 風の影響を受けにくくなる。

高い弾道係数を持つ弾丸は、長距離射撃に有利です。

弾道係数は、弾頭の「形状」「質量」「構造」によって左右されます。

狩猟ではソフトポイント弾

ライフル画像

ソフトポイント弾は「対人」よりも「狩猟」で多く利用されます。

大きな獲物は、皮膚から致命傷となる臓器(心臓など)までの距離が長いため、一定の貫通力を必要とされます。

バリスティックゼラチン画像
バリスティックゼラチン 画像出典:Armorpiercer, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons

ソフトポイント弾の貫通力の高さから、イノシシやクマなど、頑丈で深部に重要臓器がある大型獣にも有効です。

また、ホローポイント弾に比べて肉の損傷が少ないため、ウサギやリスなどの小型獣にも使いやすいとされています。

一方、ホローポイント弾は強力なストッピングパワーを持ちますが、組織損傷が大きく、食肉目的の狩猟には不向きといえます。

まとめ

ホローポイント弾とソフトポイント弾は、目的によって適正が異なります。

ホローポイント弾は自衛用(護身用)や法執行機関用において、最大のエネルギー伝達と最小の貫通リスクを必要とする場面に最適です。

一方、ソフトポイント弾は狩猟など多目的に対応でき、拡張と貫通力のバランスに優れています。

比較項目ホローポイント弾ソフトポイント弾
構造弾頭先端に空洞あり。弾頭先端に鉛芯が露出。
拡張特性命中時に急激に拡張。ゆっくり拡張。
貫通深度急激な拡張により貫通は浅め。拡張が緩やかで、より深い貫通が可能。
エネルギー伝達短距離で大きなエネルギーを伝達。エネルギーを徐々に伝達。
狩猟肉の損傷が大きく食用には不向き。貫通力に優れ、大型獣から小動物まで幅広く対応。
自衛・警察高いストッピングパワーにより護身や警察に最適。貫通弾による二次被害のリスクあり。
競技一部は高精度で長距離射撃対応。主に狩猟用であり、競技用としての使用は少ない。
軍事での規制ハーグ条約により軍用での規制あり。ハーグ条約により軍用での規制あり。
民間での規制多くの地域で狩猟、自衛、競技目的で合法。多くの地域で狩猟、自衛、競技目的で合法。