
日本におけるエアガンの所持や使用は、「銃砲刀剣類所持等取締法(銃刀法)」および各都道府県の「青少年保護育成条例」によって管理されています。
規制の対象は威力だけではありません。材質や構造、年齢区分、使用方法まで含めて判断されます。
本記事では、特に誤解されやすいエアガンの威力規制を中心に、違法となる基準や確認方法、注意点を整理します。
エアガンの威力規制とは

エアソフトガンの威力には上限が設けられており、この基準を超えると玩具ではなく「準空気銃」として扱われます。現在の数値基準は、2006年の銃刀法改正によって明確化されました。
6mmBB弾を使用するエアガンの場合、銃口エネルギーはおおむね0.98ジュール以下である必要があります。
- 6mmBB弾:0.989J未満が合法範囲
- 8mmBB弾:1.64J未満が合法範囲
これらの数値は、単純な初速ではなく、弾の重さを含めたエネルギーで評価されます。
準空気銃と判断される基準

銃刀法では、人に傷害を与えるおそれがある威力を持つ遊戯銃を「準空気銃」と定義しています。
判断基準は、以下の条件で測定された威力です。
- 気温20〜35度の室内環境
- 銃口から水平距離1mの位置
- 威力が3.5J/cm²以上
この基準をBB弾の断面積に当てはめた結果が、6mmで約0.989J、8mmで約1.64Jという上限値になります。
一般に「0.98J」と表記されるのは、安全側に配慮した実務上の表現です。
威力(ジュール)の計算方法
エアガンの威力は、次の計算式で求められます。
J=1/2 × m × v²
mは弾の質量(kg)、vは初速(m/s)です。測定では平均値ではなく、複数回計測した中の最大値が判断材料となります。
例として、0.20g(0.0002kg)のBB弾を90m/sで発射した場合、威力は約0.81Jとなり、規制値以内です。
18歳未満向けエアガンの威力制限

18歳未満を対象とするエアガンは、各都道府県の青少年保護育成条例により、さらに低い威力に制限されています。
一般的な基準は0.135ジュール以下です。
この区分は玩具としての安全性を重視したもので、18歳以上用エアガンとは明確に別扱いされています。
自分のエアガンが規制値以内かを確認する手順

エアガンの所有者は、自分の持つ個体が法令を満たしているかを把握しておきたいところです。
以下は、法律に触れない範囲で行える一般的な確認手順です。
1. メーカー仕様を確認する
まずは、取扱説明書やメーカー公式サイト、パッケージ記載のスペックを確認します。
ASGK、JASG、STGAなどの認証マークがある国内メーカー製品であれば、出荷時点で規制値以内に調整されています。
2. 弾速計で測定する
必要に応じて、市販の弾速計を使って測定します。
BB弾の重さを確認し、屋内で複数回測定した最大値を把握します。
算出方法は前述の計算式に従います。
3. 改造の有無を確認する
銃刀法では、現在の威力だけでなく、容易に規制値を超えられる構造も問題となります。
内部パーツ交換、スプリング強化、ガス圧変更、バレル加工などが行われていないかを確認します。
4. 専門店で確認する
不安がある場合は、エアガンショップで弾速測定を依頼する方法があります。
法規制に詳しいスタッフによる確認は、判断材料として有効です。
5. 規制値ギリギリは避ける
ガスガンは気温によって威力が変動します。
特に夏場やCO2ガンでは上昇しやすいため、余裕を持った数値であることが重要です。
材質に関する規制

エアガンの材質も重要な判断要素です。
外観や構造が実銃に近い金属製エアガンは、「模造けん銃」と判断され、原則として所持が禁止されています。
適法とされるには、白色または黄色への着色、銃腔の完全閉塞など、外観と機能の両面で条件を満たす必要があります。
違法と判断される代表例
- 基準値を超える威力を持つもの
- メーカーが回収・改修対象とした未改修品
- 実銃と同等と判断された構造のもの
- スライドやフレームが金属製のハンドガン
過去には、タナカワークス製ガスリボルバー「カシオペア」が構造上の問題から実銃と認定された事例もあります。
カシオペア事件とは、2008年にタナカワークスが発売したガスリボルバー「カシオペア」シリーズが、日本の銃刀法上で“実銃”と認定されたことから起きた騒動です。 このシリーズは、BB弾とガスをカートリッジ内部に注入する蓄圧式カートリッジ方式を採用しており、その構造が実銃に近いとして問題視されました。
「カシオペア」は S&W M500 と コルトSAA .45 をモデルにした製品でした。 過去にも、コクサイM29やアサヒファイアーアームズM40A1など、蓄圧式カートリッジを使う玩具銃が「実弾発射の可能性あり」と指摘された例があります。
警視庁がカシオペアを検査したところ、改造したカートリッジを使用すると4mmのベニヤ板を貫通する威力が出ると判断され、実銃相当と認定されました。
警察の科学捜査研究所は、カートリッジを強化し、火薬や特殊弾を装填した状態でテストを実施。 その結果、殺傷能力があると結論づけられました。
これを受けてタナカワークスは銃刀法違反容疑で捜査を受け、ASGK(日本遊戯銃協同組合)でも、カシオペアの扱いを巡って新たなカテゴリの必要性が議論されました。
タナカワークスは カシオペア全モデルの製造・販売を中止し、同じ方式を採用したガスショットガンも自主回収しています。
事件以降、蓄圧式ガスガンの新規開発はほぼ停止。 玩具銃業界では、安全性と法規制のバランスをどう取るかが大きな課題となり、開発方針にも影響を与える出来事となりました。
威力が合法範囲内であっても、使用方法によっては別の法律に抵触します。
- 動物を撃つ行為は動物愛護法違反
- 他人や公共物を破損させた場合は器物損壊罪
まとめ
- 6mmBB弾は約0.98J以下、8mmBB弾は約1.64J以下が合法範囲
- 18歳未満向けエアガンは0.135J以下
- 威力、材質、構造、使用方法のすべてが規制対象
エアガンは正しい知識と節度ある扱いが前提となる趣味です。法令を理解し、安全な範囲で楽しむことが求められます。
参考文献・法令資料
- 銃砲刀剣類所持等取締法
- (昭和33年法律第6号)
- ※ 準空気銃の定義および所持規制の根拠
- 第2条、第22条、第31条の2
- 銃砲刀剣類所持等取締法施行令
- (昭和33年政令第33号)
- ※ 威力判定および測定条件に関する補足規定
- 警察庁生活安全局通達
- 平成18年改正銃刀法関係通達
- ※ 3.5J/cm²基準およびエアソフトガンの取り扱いに関する解釈
- 各都道府県青少年保護育成条例
- (例:東京都青少年の健全な育成に関する条例 等)
- ※ 18歳未満対象玩具類の規制根拠
- 日本玩具協会・業界自主基準資料
- エアソフトガンの安全基準
- ※ 年齢区分別威力基準(0.135J等)の実務上の根拠
- 過去の警察判断事例資料
- 模造けん銃・準空気銃に関する行政判断例
- ※ いわゆる「カシオペア事件」を含む



























