
エアガンと聞くと、おもちゃの銃を思い浮かべる方が多いかもしれません。
しかし、一口に「エアガン」といっても、その種類は多岐にわたり、「エアソフトガン」「BBガン」「ペレットガン」「空気銃」「準空気銃」など、様々な呼び方があります。
これらは見た目が似ていても、その機能、用途、法的な扱いが大きく異なります。
「エアガン」と「エアソフトガン」の違いとは何でしょうか?
「BBガン」や「ペレットガン」は、日本で所持が許されているのでしょうか?
この記事では、それぞれの特徴、違い、そして日本国内と海外(米国)での法規制について解説します。
エアガンの種類
「エアガン」とは、「BBガン」「ペレットガン」「エアソフトガン」など、圧縮空気やガスを使用して弾を発射する銃の総称です。
広義で「エアソフトガン」は「エアガン」と省略されることがありますが、語義として「エアソフトガン」は「エアガンの一種」です。
エアガンの種類 | 説明 | 法規制 (日本) |
---|---|---|
エアソフトガン | プラスチック製の弾丸を圧縮空気やガスで発射する低威力エアガン | 玩具として合法 |
BBガン | 軽量な金属製の弾丸を圧縮空気やガスで発射する中威力エアガン | 原則違法(後述) |
空気銃(ペレットガン) | 重い金属製の弾丸を圧縮空気やガスで発射する高威力エアガン | 所持許可が必要 |
エアソフトガンとは?

エアソフトガンとは、プラスチックなど、非金属製の球形の弾を圧縮空気やガスを使用して発射するエアガン(玩具空気銃)です。
日本の模型店などで販売されているエアガンは、エアソフトガンです。
世界には様々な口径のエアガンが存在しますが、日本には直径6mmのBB弾が輸入されたことから、国内では6mm口径のエアソフトガンが一般的となっています。
銃身にライフリングはありません。
命中精度が低く、飛距離が短い特徴があります。
日本の法律では、6mmBB弾で0.989ジュールを超えるパワーを持つエアガンは違法です。
特徴 | エアガン (非エアソフトガン) | エアソフトガン |
---|---|---|
弾丸 | 金属製の弾丸(BB弾やペレット)を使用 | プラスチック製の弾丸(BB弾)を使用 |
用途 | 射撃の趣味、コレクション、狩猟などに使用 | サバイバルゲームやコレクション、戦術訓練などに使用 |
威力 | 比較的高く、なかには実銃と同等のパワーがあるモデルも存在 | 低い威力で、安全に使用できるよう設計されている |
射程距離 | 長い | 短い |
命中精度 | 高い | 低い |
規制 | 国や地域によって実銃と同様の扱いを受ける場合がある 日本では実銃として扱われる | 非実銃として扱われる |
銃身 | ライフリングが備わっているモデルが多い | ライフリングはなく、滑らかな銃身が一般的 |
BBガンとは?

BBガンとは、軽量な金属球「BB」を圧縮空気やCO2ガスを使用して発射するエアガンです。
ポンプ式、スプリング式、ガス式などを利用して発射し、射撃練習や小動物狩猟などに用いられます。
威力はエアソフトガンよりも強力ですが、エアガン全体のなかでは相対的に低威力です。
銃身にライフリングはありません。
元々「BB」とは直径約4.6mmのショットガン用散弾を指す規格ですが、1900年頃にエアガンメーカーのデイジー社が散弾用とエアガン用を区別するために直径4.5mmの弾を普及させ現在に至ります。
本来なら直径4.5mmの弾を「BB」とは呼びませんが、今も呼ばれているのは当時の名残りです。
現在は複数サイズのBB弾が流通しています。
日本の法律ではBBガンは金属製弾丸を使用することから所持禁止です。
特徴 | BBガン | エアソフトガン |
---|---|---|
弾丸 | 軽量な金属製の弾丸(BB弾)を使用 | プラスチック製の弾丸(BB弾)を使用 |
用途 | 射撃練習や小動物狩猟に使用 | サバイバルゲームやコレクション、戦術訓練などに使用 |
威力 | エアソフトガンよりも高いが、エアガンのなかでは低威力 | 低い威力で、安全に使用できるよう設計されている |
射程距離 | エアソフトガンよりも長いが、エアガンのなかでは短い | 短い |
命中精度 | 低い | 低い |
規制 | 国や地域によって実銃と同様の扱いを受ける場合がある 日本では実銃や準空気銃として扱われる | 非実銃として扱われる |
銃身 | ライフリングはなく、滑らかな銃身が一般的 | ライフリングはなく、滑らかな銃身が一般的 |
ペレットガン(空気銃)とは?

ペレットガンとは、球形ではない金属製の弾「ペレット」を発射するエアガンです。
かつて日本で流通した「つづみ弾」に似た、「てるてる坊主」のような形状が多く利用されます。
銃身にライフリングがあるものと、ないものがあります。
ペレットガンは日本では「空気銃」と呼ばれており、日本の法律では所持に公安委員会の許可が必要です。
特徴 | ペレットガン (空気銃) | BBガン |
---|---|---|
弾丸 | 重い金属製の弾丸(ペレット)を使用 | 軽量な金属製の弾丸(BB弾)を使用 |
用途 | 射撃練習や狩猟に使用 | 射撃練習や小動物狩猟に使用 |
威力 | 威力が高く、実銃と同等のパワーを持つものもある | エアソフトガンよりも高いが、エアガンのなかでは低威力 |
射程距離 | エアソフトガンやBBガンよりも長い | エアソフトガンよりも長いが、エアガンのなかでは短い |
命中精度 | エアソフトガンやBBガンよりも高い | 低い |
規制 | 日本の法律では所持に公安委員会の許可が必要 | 国や地域によって実銃と同様の扱いを受ける場合がある 日本では実銃や準空気銃として扱われる |
銃身 | ライフリングが備わっている | ライフリングはなく、滑らかな銃身が一般的 |

私がアメリカで所持していたGAMO PT80というペレットガンは、ライフリングが備わっており、ペレット弾とBB弾の両方を発射可能でした。
エアソフトガンと空気銃の違いとは?

エアソフトガンと空気銃は、どちらも空気やガスを利用して弾丸を発射する銃ですが、その用途や法的規制には大きな違いがあります。
項目 | エアソフトガン | 空気銃 |
---|---|---|
定義 | 圧縮空気やガスを使用して弾を発射する玩具銃 (省略して「エアガン」とも呼ばれる) | 空気やガスの圧力を利用して金属製の弾丸を発射する銃 (狩猟や射撃競技に使用される) |
用途 | 主に遊戯用(サバイバルゲームなど)で使用される | 狩猟や射撃競技に使用される |
法規制 | 玩具として扱われ、威力制限が設けられている | 日本では実銃として扱われ、所持には公安委員会の許可が必要 |
威力 | 殺傷能力はない | 高い威力を持ち、狩猟や競技に適している |
空気銃の種類
空気銃には以下のような種類があります。
発射方式 | 特徴 |
---|---|
プレチャージ式 | 空気をハンドポンプやエアタンクで充填する方式。 充填した空気を使って連続して発射可能。 高い精度と安定した威力が特徴。 |
スプリング式 | スプリングの圧力を使って弾丸を発射する方式。 操作がシンプルでメンテナンスが比較的容易。 発射音が小さい場合が多い。 |
ポンプ式 | 本体に付属のポンプを使用して空気を圧縮する方式。 ポンプの回数に応じて威力が変わる。 初速や威力にばらつきが生じることがある。 |
ガスカートリッジ式 | ガスカートリッジ(主にCO2)を使用して弾丸を発射する方式。 CO2カートリッジを交換することで連続して発射可能。 発射音が大きく、威力も高め。 |
準空気銃とは? なぜ禁止されたのか

定義と規制
準空気銃(じゅんくうきじゅう)は、玩具空気銃(エアソフトガン)のうち、弾丸の運動エネルギーが人を傷害し得るとして法令で定める値以上となるものを指します。
2006年の銃砲刀剣類所持等取締法(銃刀法)改正によって規制対象に加えられ、所持が禁止されています。
規制の背景
エアソフトガンは1970年代中頃から販売され始め、1980年代のサバイバルゲームの流行と共に市場で大きなシェアを占めるようになりました。
しかし、高威力エアソフトガンや改造用部品の販売が問題となり、2000年代に入るとこれらを用いた傷害事件や器物損壊事件が多発。
これを受けて、2006年に銃刀法が改正され、準空気銃の所持が禁止されました。
日本におけるエアガン(エアソフトガン)の法的扱い

日本におけるエアガンの扱いは、「銃砲刀剣類所持等取締法」(銃刀法)や「青少年育成条例」によって規定されています。
以下に、エアソフトガンに関する主要な法的ポイントをまとめます。
エアソフトガンの威力規制
エアソフトガンのパワーには上限が設けられており、これは2006年の銃刀法改正によって明確に定められました。
具体的には、6mmBB弾使用時に0.98ジュール以下でなければなりません。
この値は「人にほとんど傷害を与えない威力」と定義されています。
対象年齢 | 大きさ | 重さ | 初速 | ジュール |
---|---|---|---|---|
18歳以上用 | 6 mm | 0.2 g | 98 m/s | 0.98 J |
18歳以上用 | 6 mm | 0.25 g | 88 m/s | 0.97 J |
18歳以上用 | 6 mm | 0.3 g | 81 m/s | 0.98 J |
18歳以上用 | 8 mm | 0.27 g | 110 m/s | 1.63 J |
18歳以上用 | 8 mm | 0.34 g | 98 m/s | 1.63 J |
18歳以上用 | 8 mm | 0.4 g | 90 m/s | 1.62 J |
また、18才未満を対象したエアソフトガンは、各都道府県の「青少年育成条例」により、0.135ジュール以下と定められています。
エアソフトガンの初速は、気温やガスの温度などによって変化するため、「規制値をギリギリ下回るからOK」と思わずに、威力には余裕を持たせるよう注意しましょう。
対象年齢 | 大きさ | 重さ | 初速 | ジュール |
---|---|---|---|---|
10歳以上用 | 6 mm | 0.2 g | 36 m/s | 0.13 J |
10歳以上用 | 6 mm | 0.25 g | 32 m/s | 0.13 J |
10歳以上用 | 6 mm | 0.3 g | 29 m/s | 0.13 J |
10歳以上用 | 8 mm | 0.27 g | 31 m/s | 0.13 J |
10歳以上用 | 8 mm | 0.34 g | 28 m/s | 0.13 J |
10歳以上用 | 8 mm | 0.4 g | 25 m/s | 0.13 J |
違法となるエアソフトガンの条件:
エアソフトガンが違法とされる条件には以下のようなものがあります。
規制項目 | 規制内容 |
---|---|
威力が規制値を超える場合 | 6mmBB弾で0.989ジュールを超えるパワーを持つエアガンは準空気銃となり違法 8mmBB弾で1.64ジュールを超えるパワーを持つエアガンは準空気銃となり違法 |
金属製のパーツを使用している場合 | 金属製のスライドやフレームを持つハンドガンは違法と判断されることがある |
模造拳銃の所持 | 金属で作られ、拳銃に著しく類似する形態を有するものは「模造拳銃」として所持禁止 |
金属製の弾丸を使用 | 金属製の弾丸を発射するものは実銃として扱われます |
コイルガン(電磁石銃)は禁止
2024年6月14日に公布された改正法により、電磁石銃(コイルガン)が「銃砲」に追加指定され、一定の条件を満たす場合は原則として所持禁止となりました。
アメリカのエアガン規制

アメリカにおけるエアガンに関する法規制を解説します。
アメリカには連邦法と州法があり、以下の違いがあります。
連邦法によるエアガン規制
連邦法では、エアソフトガンは銃器として分類されません。
販売または輸送される際には、銃口に1/4インチのオレンジ色の先端が必要です。
購入者はエアソフトガンを購入するために18歳以上でなければなりません。
エアガンについては、アルコール・タバコ・火器及び爆発物取締局(ATF)は、エアガンが圧縮空気を使用して弾を発射するため、銃器とは見なされないとしています。
ただし、エアガンが実際の銃のフレームやレシーバーを使用して製造されている場合、連邦法の下では銃器として分類される可能性があります。
分類 | 説明 |
---|---|
エアソフトガン | 銃器ではない。 販売や輸送には、銃口先端1/4インチをオレンジ色にする必要がある。 購入には18歳以上の年齢制限あり。 |
エアガン | 銃器ではないが、実銃のフレームやレシーバーを使用している場合は銃器と判断される場合がある。 |
州および地方のエアガン規制
規制の内容は各州や地域によって異なります。
エアソフトガン規制
地域 | 規制内容 |
---|---|
カリフォルニア州 | 18歳未満の者による購入は禁止。 エアソフトガンには明確または明るい色のマーキングが必要で、公共の場での露出は禁止。 |
ニューヨーク州 | 公共の場でエアソフトガンを所持または振り回すと、処罰の対象になる。 エアソフトガンにはオレンジ色の先端が必要で、透明または明るい色のプラスチック製が必須。 |
テキサス州 | エアソフトガンは人々を驚かせるような方法で公共の場で露出してはならない。 学校の敷地内では所持禁止。 |
フロリダ州 | 16歳未満の未成年者がエアソフトガンを所有するには親の許可が必要。 公共の場での露出は禁止。 |
ニュージャージー州 | エアソフトガンは銃器として扱われ、実銃と同様のライセンスと許可が必要。 未成年者はエアソフトガンを購入不可。 |
イリノイ州 | シカゴではエアソフトガンは違法。 その他の地域では、オレンジ色の先端が必要で、未成年者への販売は禁止。 |
エアガン規制(非エアソフトガン)
地域 | 規制内容 |
---|---|
ニューヨーク市 | 違法 |
ワシントンD.C. | 違法 |
ニュージャージー州 | 違法 |
フィラデルフィア州 | 違法 |
イリノイ州 | 0.18口径以上で700FPS以上の威力を持つエアガンは銃器として扱われる。 購入には実銃と同様の資格とバックグラウンドチェックが必要。 |
カリフォルニア州 | 実銃と見なされ、銃器に関するすべての法律が適用される。 |
ミシガン州 | 大口径および高威力のエアピストルは州法で銃器と見なされる。 オレンジ色のフラッシュハイダーが必須。 |
一般的な規制内容
内容 | 規制内容 |
---|---|
年齢制限 | 多くの州では、エアソフトガンを購入するには18歳以上である必要がある。 未成年者は大人の監督が必要な場合が多い。 |
輸送 | エアソフトガンおよびエアガンは、未装填で弾薬と別々にケースやコンテナに保管して輸送する必要がある。 |
公共での使用 | 市内や特定の公共エリアでのエアガンの発射は多くの場合禁止。 具体的な制限については、各州や地域によって異なる。 |
狩猟 | エアガンを使用した狩猟に関する規則は州によって異なる。 特定の種類の獲物をエアガンで狩猟することが許可されている州もある。 |
エアガンと実銃の違いを巡る裁判の事例

「ファイアーアームズ(Firearms)/ファイアーアーム(Firearm)」は日本語で「銃」「鉄砲」「火器」などと訳されますが、「エアガン」とは訳されません。
英英辞書でも、「銃はガンパウダー(火薬)の力で飛翔体を発射する小火器」と説明されています。
ところが、アメリカでは「ファイアーアーム」の法解釈を巡って、「エアガンはファイアーアーム(実銃)なのか?」と議論になりました。
2013年、ミネソタ州のデイビッド・リー・ヘイワードが銃の不法所持で逮捕されました。
ヘイワード容疑者は2005年に麻薬で有罪判決を受けており、アメリカでは重罪で有罪判決を受けた場合、銃(ファイアーアーム)を合法的に所持することができないため、銃を所持すれば罪に当たります。
しかし、当時ヘイワード容疑者が所持していた銃はエアガン(BBガン)だったため、彼は裁判所で「エアガンはファイアーアームではない。辞書にも、”銃は火薬や爆発物を使用して弾を発射させる武器”と書かれている」と無罪を主張。
これを受け、州最高裁裁判所は再審理に同意しました。
控訴裁判所の主張は、過去の判例から、
・・・と主張していました。
しかし、ここで疑問がひとつ。
もしエアガンが銃だと法解釈されたら、エアガンショップは銃の違法販売店になってしまうのでは??
アメリカで銃を商売として販売する者はFFL(フェデラル・ファイアーアームズ・ライセンス)という免許が必要です。
無免許で銃を販売すれば逮捕されます。
しかし、エアガンの販売にFFLは不要です。
1968年制定の銃規制法(GCA1968)には、次のように書かれています。
「エアガンは圧縮空気を使用しており、爆発物を使用して飛翔体を発射しているのではないため、実銃のフレームやレシーバーを使用して製造されない限り連邦法下では銃ではない」
“air guns, because they use compressed air and not an explosive to expel a projectile, do not constitute firearms under Federal law — unless they are manufactured with the frames or receivers of an actual firearm.”
GCA1968
ヘイワード容疑者が所持していたエアガン(BBガン)は正確にはウマレックス・ワルサーCP99でした。
これはワルサーP99に似せた正規商品です。
CO2ガスを使用し、パワーが強いため日本では実銃扱いとなり所持できません。
まとめ
エアガン、エアソフトガン、BBガン、ペレットガンはそれぞれ異なる特徴と用途を持つエアガンの一種です。
エアガンは圧縮空気やガスを使用して弾を発射する銃の総称で、エアソフトガン、BBガン、ペレットガンもこのカテゴリに含まれます。
種類 | 特徴と用途 |
---|---|
エアソフトガン | プラスチック製の弾丸を使用し、主にサバイバルゲームや戦術訓練で使用。 日本では、威力が制限されており、安全に使用できるよう設計。 |
BBガン | 直径4.5mmの金属球を発射し、主に射撃の趣味やコレクションに使用。 発射威力はエアソフトガンよりも高く、一部の国や地域では厳しい規制がある。 |
空気銃(ペレットガン) | 球形ではない金属製の弾を発射し、高精度の射撃が可能。 用途は狩猟や射撃競技に向いている。 日本では実銃として扱われるため、所持には公安委員会の許可が必要。 |
法的規制については、日本ではエアソフトガンの威力に制限があり、6mmBB弾で0.98ジュールを超えるものは違法とされます。
アメリカでは、エアガンは連邦法の下で銃器として扱われないものの、州や地方自治体によって異なる規制が存在します。(アメリカで販売されているエアガンは、モデルによってはペレットと球形の弾の両方を使用できる製品もあります)
アメリカのエアガンのなかには、実銃と同等のパワーを持つものも存在しており、実銃との差が曖昧な部分もあります。