ショートリコイルとは何か? ロングリコイルとの違いを解説

HKVP9ピストルカッタウェイ画像

この記事の要約:

  • ショートリコイルは、発射時にバレルとスライド(またはボルト)が“短距離だけ一緒に後退”してから分離する閉鎖方式で、現代の9mm級オートの主流。
  • 高圧ガスが抜けるまで薬室を閉鎖したままにできるため、安全かつ確実な排莢が可能で、反動も軽減できる。
  • ロングリコイルは古い方式で、銃身とボルトが長距離後退するため構造が複雑・反動が大きく、現代ではほぼ廃れた。

ショートリコイルとは何でしょうか?

本記事は、ショートリコイルロングリコイルの違いについて解説します。

目次

リコイルとは?

リコイルエナジーとマズルエナジー解説図

リコイル(Recoil)とは、「反動」や「後退」を意味します。

銃を発射すると、弾頭が前進する力と、銃が後退する力が発生します。

弾頭の進行方向とは反対の方向に発生する力をリコイルと呼びます。

ショートリコイルとは?

1911ピストル各部名称図

銃身(バレル)とブリーチブロックが同時に短い距離を後退する機構をショートリコイルと呼びます。

ブリーチブロック(Breech Block)とは、薬室の後端(銃身の後端)を閉鎖し、発射ガスの圧力を受け止める部品です。

発射後に後退して空薬きょうを排出し、次弾の装填サイクルに関与。多くの自動式ピストルでは、スライド内部に組み込まれた金属ブロックとして存在します。

ブリーチ(Breech)は、銃身の「後端部分」です。 現代の銃はほぼすべてブリーチ側から弾を入れる「後装式」を採用しています。

つまり、ブリーチの蓋がブリーチブロックです。

以下、ショートリコイルを採用するVP9ピストルを例に構造を解説します。

発射

HKVP9ピストルカッタウェイ画像
ショートリコイル解説イメージ画像

トリガーを引くと発射されます。

このとき装薬の燃焼によるガス圧によって「弾頭を前方に押す力」と「薬莢を後方へ押す力」が発生しています。(作用反作用の法則)

銃身とスライドが同時に後退

ショートリコイル解説イメージ画像

薬莢の底がスライドを後方へ押しますが、銃身とスライドはロックされているため、薬室閉鎖状態のまま銃身とスライドが同時に短い距離を後退します。

スライドだけが後退し排莢

ショートリコイル解説イメージ画像

銃身が完全に後退するとロックが解除され、スライドだけが慣性で後退を続けて薬室を開放し排莢します。

9x19mmなど高圧なピストル弾を利用する場合、発射と同時に薬室を開放すると高圧ガスが噴出し危険な状態となり、排莢不良の原因にもなります。

しかし、ショートリコイルを利用すると薬室を開放するまで時間を要するため、その間に銃身内の圧力が低下し、安全かつスムーズに排莢することが可能になります。

ショートリコイル方式はコルト M1911(ピストル)や、ベレッタ92FS(ピストル)、ブローニングM2(ヘビーマシンガン)などで利用されています。

ロングリコイルとは?

銃身とブリーチブロックが同時に長い距離を後退する機構をロングリコイルと呼びます。

フロマーストップピストルイメージ画像

以下、ロングリコイルを採用するフロマーストップ・ピストルを例に構造を解説します。

フロマーストップではボルトがブリーチブロックに該当するパーツです。

発射

ロングリコイル解説イメージ画像

発射準備完了状態です。

銃身とボルトが同時に後退

ロングリコイル解説イメージ画像
ロングリコイル解説イメージ画像

発射により薬莢がボルトを後方へ押しますが、薬室は閉鎖状態を維持します。

ショートリコイルと同様に銃身とボルトが同時に後退しますが、ショートリコイルより長い距離を後退します。

銃身だけが前進

ロングリコイル解説イメージ画像

ボルトと銃身が最後まで後退すると、次に銃身のみが前進し薬室が開放されます。

このとき銃身が前進する力を利用して薬莢を突き、排莢します。

最後にボルトが前進

ロングリコイル解説イメージ画像

銃身の前進が完了すると続けてボルトが前進。

マガジン内の次弾を薬室内へ送り込んで薬室を閉鎖し、発射準備完了となります。

ロングリコイル方式はブローニングA5(ショットガン)、フランキ 48AL(ショットガン)、IWS 2000(ライフル)などで採用されています。

ショートリコイルとロングリコイルの利点と欠点

ロングリコイル方式は19世紀に発明された古い作動機構で、主にショットガンやマシンガンなどで採用されてきました。この方式の大きな利点は安全性にあります。薬室が開放されるまでの時間が非常に長いため、エジェクションポート(排莢口)から高圧ガスが噴出することがなく、作動が比較的スムーズです。

一方で、ロングリコイルには欠点もあります。銃身とブリーチブロックを前進させるために2つのスプリングを必要とする複雑な構造であり、作動サイクルが遅くなる傾向があります。また、銃身がフルストロークで後退するため、射手が感じる反動が大きい点もデメリットです。こうした理由から、現代の銃器ではロングリコイル方式はほとんど採用されなくなり、事実上廃れた設計となっています。

これに対し、ショートリコイル方式はシンプルな構造でありながら作動が確実で、現在のセミオートピストルの主流となっています。かつては .380ACP のような低圧弾薬ではショートリコイルを必要とせず、ストレートブローバック方式が一般的でした。しかし近年では、.380ACP でもショートリコイル方式を採用するモデルが増えています。

ショートリコイル方式を採用することで、

  • スライドを引く際に必要な力が軽減される
  • 反動が抑えられる
  • スライド重量を軽量化できる

といった利点が得られます。

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この記事を書いた人

・1998年:実銃解説サイトを開設
・2001年~2007年:米国に居住し実弾射撃を学ぶ
・エアガンメーカー勤務経験や実銃経験を活かした情報を発信中

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