ハンマーレスのピストルにはハンマー内蔵式とストライカーシステムの二種類がありますが、これらの違いは一体なんですか?
ストライカー方式はハンマーを使用せず、スプリングの力でストライカー(撃針)を弾薬のプライマー(雷管)に当てて撃発します。
一方、ハンマー方式はスプリングで内蔵したハンマーを動かし、ハンマーで叩かれたファイアリング・ピン(撃針)を弾薬のプライマーに当てて撃発します。
ストライカー方式の構造
ストライカー方式はセミオートマチックのピストルや、ボルトアクション・ライフルで多く利用されています。
ストライカー方式では、スプリングの力でストライカー(撃針)を前進させ、弾薬の底にあるプライマー(雷管)を叩いて撃発します。
トリガーを引くとトリガーと連結したトリガーバーがストライカーを僅かに後退させ、トリガーを最後まで引き切るとトリガーバーとストライカーの接触が断たれてストライカーが解放され前進します。
ストライカー方式の利点
- ボアアクシス(銃身軸)を低く配置しやすいため、銃口の跳ね上がり(マズルジャンプ)を抑制し、速射時にコントロールしやすく命中率の高いピストルを設計しやすい。
- 部品点数が少ないモデルが多い。
- 小型で軽量なピストルを設計しやすい。
- クリーニングなどメンテナンスが容易。
- 製造コストを低く抑えやすい。
ストライカー方式の欠点
- 手動でストライカーを前進させるデコック機能を持つモデルが少なく、デコックにはトリガーを引く必要がある。(ワルサーP99やトーラスOSSなどデコック機能を持つモデルを除く)
- ストライカーの位置が外見から分からない、または分かりづらい。(コックされているのか分からない)
- ピストルではトリガープルに切れがなく、粘りの感じられるトリガープルが多い。
- スライドを引くのに強い力を必要とする。(リコイルスプリングとストライカースプリングの力が加わるため)
- ダブルアクショントリガーを持つモデルが少ない。
- ピストルではマニュアルセイフティを持つモデルが少ない。
ハンマー方式の構造
ハンマー方式はピストル、リボルバー、ライフル、サブマシンガン、マシンガンなど、様々な銃器で利用されており、歴史が古く信頼性の高い撃発システムです。
ハンマー方式では、トリガーを引くとシアー(黄色のパーツ)がハンマーを解放します。
そしてハンマーがファイアリング・ピン(撃針)を叩くとファイアリング・ピンが前進し、弾薬のプライマーを叩いて撃発します。
画像はチェコのVz58ライフルの構造を表しています。
このライフルでは前後に移動するリニアハンマーが備わっており、回転式ハンマーとは異なり、スプリングの力でハンマーが前進してファイアリング・ピンを叩き撃発します。
ハンマー方式の利点
- 手動でハンマーを落とすデコック機能を持つモデルが多い。
- 露出したハンマーではハンマーの位置を視認できるため、より安全に使用できる。
- シャープなトリガープルを持つモデルが多く、命中率の高さを期待できる。
- 露出したハンマーでは手動でハンマーを起こしておくとスライドを楽に引ける。
- シングルアクションとダブルアクションを選択できるモデルが多い。
- ダブルアクショントリガーを持つモデルが多い。
ハンマー方式の欠点
- ハンマーとグリップが干渉しやすいため、ボアアクシス(銃身軸)を低く配置しにくい。
- 部品点数が多くなりやすい。
- ストライカー方式と比較するとクリーニングなどメンテナンスに手間がかかりやすい。
ストライカーとファイアリング・ピンの違いとは?
ストライカーとファイアリング・ピンはどちらもプライマーを叩くため、一見すると同じ機能を持つように見えますが、その内容は異なっています。
ストライカーは重量が重く、スプリングの力とストライカーの慣性力によりプライマーを叩きます。
一方でファイアリング・ピンは軽量で、ハンマーの慣性力をプライマーに伝える役割があります。
もしファイアリング・ピンが重ければ、銃を落下させた際にファイアリング・ピンの自重でプライマーを叩いてしまう事故が起こりやすくなります。そのため、軽量なファイアリング・ピンを利用したり、ファイアリング・ピン・ブロックセイフティといった安全装置が備わっていることが望ましいといえます。