
ライフル射撃は、正しい姿勢と操作を身につけることで精度と安全性が大きく向上します。
本記事では、ネイビーシールズやデルタフォース、グリーンベレーなど特殊部隊の訓練法、さらに米軍教範に基づく知識をもとに、射撃の基本をわかりやすく解説します。
紹介する内容は専門的な戦闘技術ではなく、スポーツ射撃や狩猟、サバイバルゲームにも応用できる基礎的なものです。初心者から経験者まで、幅広い読者に役立つ実践的なポイントをまとめています。
各部名称
ライフルの撃ち方を説明する前に、知っておく必要がある各部名称を確認します。
アサルトライフル(M4A1)の各部名称

- リアサイト(照門):銃の後方にある照準器。フロントサイトと合わせて狙いを定める。
- フロントサイト(照星):銃の前方にある照準器。リアサイトと一直線に合わせて標的を狙う。
- ストック(銃床):銃の後端部分。肩に当てて銃を安定させる。
- チャージングハンドル(槓桿):ボルト(遊底)を後退させて薬室に初弾を装填するための操作部品。
- ピストルグリップ(銃把):引き金を操作するための握り部分。片手でしっかり保持できる。
- トリガー(引金):指で引いて発射を行う部品。
- マガジンリリース(弾倉止め):マガジンを銃から外すためのボタン。
- マガジン(弾倉):弾薬を収納し、銃に供給する部品。
- ハンドガード(被筒):銃身を覆う部分。手で保持するための保護材で、熱から守る役割もある。
- バーチカルフォアグリップ(VFG):銃前方に垂直に取り付ける補助グリップ。保持を安定させるための部品。

照準マーク全体(上図の赤い部分)をレティクル(照準線)といいます。
形状は、クロスヘア(十字線)、ドット(点)、サークル(円)、など多様に存在します。
ボルトアクションライフル(M700)の各部名称

- スコープ(光学照準器):レンズで目標を拡大し、照準線で正確に狙えるようにする装置。
- リアサイト(照門):銃の後方にある照準器。フロントサイトと合わせて狙いを定める。
- フロントサイト(照星):銃の前方にある照準器。リアサイトと一直線に合わせて標的を狙う。
- ストック(銃床):銃の後端部分。肩に当てて銃を安定させる。
- セーフティレバー(安全器):射撃の可否を切り替えて暴発を防ぐための装置。
- ボルトハンドル(槓桿):ボルト(遊底)を後退させて薬室に初弾を装填するための操作部品。
- トリガー(引金):指で引いて発射を行う部品。
- フロアプレートキャッチ(弾倉底板止め):、弾倉底部のプレートを開放して弾薬を一括排出するための部品。
- フロアプレート(弾倉底板):内蔵弾倉の底部を覆い、開放して弾薬を一括排出できる板状部品。
レミントンM700は内部にフィクスドマガジン(固定弾倉)が収まっていますが、着脱式のマガジンが備わっているバリエーションも存在します。特に現代の軍用ボルトアクションライフルでは着脱式が主流です。
操作手順
アサルトライフル(M4A1)の操作手順
基本的な操作手順を説明します。

- マガジンを銃に挿入します。
- チャージングハンドルを引いて離します。内部ではハンマー(撃鉄)が起こされ、同時にバネの反発力でボルトが前進し、マガジン内の弾薬が薬室内に装填されて発射準備が完了します。
- セレクターレバーを回転させて発射モードを選択し、トリガーを引いて発射します。図のM4A1カービンでは、セーフティ(安全)、セミオート(単発)、フルオート(連発)を選択可能です。
- 新しいマガジン交換後にボルトキャッチを押すと、後退状態で保持されたボルトが解放され、マガジン内の弾薬を薬室に装填し、発射準備が完了します。

マガジン内の弾薬はマガジンフォロワーが押し上げる構造です。マガジン内の弾薬が無くなるとマガジンフォロワーがボルトキャッチを押し上げ、最終弾発射後にボルトが後退状態を維持(ホールドオープン)する仕組みです。
ボルトが前進している「薬室閉鎖状態」では、ボルトキャッチを押しても動作しません。ボルトキャッチはボルト後退時のみ動作可能です。

AK系など、ホールドオープン機能やボルトキャッチを有しないライフルも存在します。これらのライフルでは、常にチャージングハンドル(ボルトハンドル)を操作して薬室装填します。
ボルトアクションライフル(M700)の操作手順

- ボルトハンドルを押し上げ、そのままボルトを後退させ開放します。
- 開口部に露出した固定マガジンに弾薬を1発ずつ装填します。レミントンM700では弾薬の種類によって3~5発、着脱式では10~20発装填可能です。
- セーフティレバーを前進させると安全装置が解除され、発射可能になります(セーフティはモデルによって操作方法が異なります)。
- トリガーを引き発射。ボルトハンドルを前後させて排莢と次弾装填を行います。
- トリガーの前方に配置されたフロアプレートキャッチを押すとフロアプレートが開放され、マガジン内に装填されている弾薬が下部から排出されます。
基本姿勢と構え方
基本姿勢
銃は片足立ちでも撃てますが、反動を軽減し命中精度や機動性を向上させるには安定した姿勢が重要です。
推奨される射撃姿勢は、ボクシングや格闘技のファイティングポーズに近いです。

- 足は肩幅に開く。
- (右利きの射手は)右足を後ろに置き、右足のつま先はターゲットに対して斜め45度の角度に向ける。
- つま先を軽く曲げ、膝を前に出し、かかとを地面に固定。
- 胸・首・頭は動かさず、腰から前傾する。
- 腰と両肩をターゲットに向ける。

体重は両足の母指球(親指の付け根)に乗せ、腰を前に押し出します。
ターゲットに対して体を斜めに向けるのは「ブレード」と呼ばれ、正面を向くのは「スクエア」と呼ばれます。どちらか一方に偏るのではなく、自然で無理のない中間姿勢が理想です。
膝を軽く曲げて腰を落とし、前後の足に均等に重心を分散させることで安定性と柔軟性を保つことができます。膝を曲げると姿勢が安定する他、ダッシュなど次の行動に移しやすい利点があります。
この姿勢は、ハンドガン、ライフル、ショットガン、マシンガンの全てに対応します。
また、床材(タイル、草、アスファルト、カーペットなど)によって制動力が変わるため、日常的にデータを収集し、即応できる姿勢を取ることが重要とされます。
保持方法

ストック付きの銃(ライフルやショットガン)は、肩、頬、右手、左手の4点で保持します。この支点の多さがハンドガンよりもライフルの命中精度が高い理由のひとつです。
右利き射手の左手(左利き射手の右手)は「サポートハンド」と呼ばれ、ハンドガードを支えます。基本的に銃の制御はサポートハンドで行い、銃を視線上に移動させてターゲットを補足します。
意外に思われるかもしれませんが、反動軽減はサポートハンドが主役です。発射後に銃が跳ね上がるのを「引き戻す」動作を意識します。
正しく構えるには以下の点に注意します。
- サポートハンドで銃を肩へ強く引き込み、「遊び」を無くす。
- 肩を過度に上げて力むと疲労が早いため、肩をリラックスさせて自然に構える。
- 胸筋を緊張させると銃が大きく跳ねやすくなるため注意。
- 頭はできるだけ直立させ、横に傾けたり、眉の下から覗き込むような姿勢は避ける。
- 右脇を締め、右肘は体に近づけて被弾面積を減らす。(装備が多い場合、肘を張ると仲間とぶつかるため、肘は体に密着させる)
体格よりも「正しいフォームと反動制御」が結果を左右します。
ストックの肩当て位置
水平方向のストック位置

英語表現では「ショルダーポケット」と呼ばれ、これは大胸筋と三角筋の間の窪み部分を指します。
- ストックはショルダーポケットに入れて左右にズレないように固定するのが基本。
- ストックは肩の外側ではなく、胸の中心寄り(右胸の筋肉部分)に当てる。
- プレートキャリア(防弾装備)着用時はストックが滑らないように銃をしっかり体に押し付ける。
垂直方向のストック位置
ストックを肩のどの高さに当てるべきか?
最適な高さは射撃の目的や状況によって変わります。

反動は銃身軸上、つまり銃口の高さで発生します。支点がこの力点より低い位置にあると、反動によって銃口が跳ね上がりやすくなります。そのため、理想的には銃口の反対側を肩でしっかり支えることが望ましいといえます。

ただし、前傾姿勢でストックを低い位置に構える場合、速射性や命中率の向上につながる一方で、即応性が下がり、長時間の射撃では疲労が蓄積しやすいという欠点があります。

逆に、ストックを高い位置に構えると、肩への接触面が小さくなるため安定性や精度は低下します。しかし、即応性が高まり素早い射撃が可能になり、広い視野を確保できるという利点があります。近距離射撃では、この方法でも十分な命中精度を得られます。
結論として、ストックを肩に当てる高さはターゲットまでの距離や状況に応じて「精度を重視するか、即応性を重視するか」によって使い分けるのが最適です。

一方、ボルトアクションライフルは目的が異なり、近距離で使用されるライフルではないため、ストックをしっかりと確実に肩へ当て、反動処理と精度を両立させます。
頬当ての位置

ライフルの命中精度や反動処理を追求すると、行き着くのは頬によるストックの固定で、重要な役割があります。
ストックを当てる位置は、頬骨が基本です。
頬骨でストックを上から抑えるようにして保持し、以下の点に注意します。
- 顎を先にストックへ当て、そこから頬を落とすように位置決めする。
- 柔らかい頬ではなく顎の骨をストックに当てることで安定させる。
- 頬で押し付けるが、首に無理な力はかけない。
また、ストックを顎に当てるテクニックも存在します。

画像出典:US Marine Corps Training Command, Public domain, via Wikimedia Commons
光学サイトには、メインとサブで上下に並んだタイプが存在し、これらは「ピギーバックマウント」「オフセット/セカンダリサイト」「デュアルオプティクス」などと呼ばれています。
これらを使用する際、上段サイト使用時にストックを顎に当て、下段サイト使用時に頬骨に当てて銃を安定させます。
サポートハンドの位置

サポートハンドの位置は、射手の好みや状況によって使い分けられます。
ハンドガードの先端を掴むのも良いですし、マグウェル(マガジンが挿入されている部分)を掴むのも良いです。
例えば、近距離戦闘時やスピード重視の射撃競技など、銃を素早く振り回す必要がある場合は先端を保持する方がコントロールしやすいですが、長時間腕を伸ばすのは疲労します。
それぞれにメリットとデメリットがあるため、状況に応じた使い分けが必要です。
もし狙点よりも右上に着弾したら、次の点を確認してください。
- 無意識にサポートハンドが銃を右上に押し上げている可能性があります。その場合は、サポートハンド側の肘の高さを少し上げることで改善することがあります。
- ストックを当てる位置が悪い可能性があります。銃を自分に引き寄せたとき、銃口が右側へ振らないか確認し、銃口が振れない位置を探します。
Cクランプグリップの方法

近距離のスピード重視では、Cクランプグリップが有効です。
ハンドガードを親指と人差し指で上下から挟み、マズルジャンプ(銃口の跳ね上がり)を抑制します。
握力だけでは不十分なため、レバレッジ(てこの原理)を活用します。
- 3本指を後方に引き、親指を前方に押し出す。
- 手首をロックして関節の可動を止める。
これにより銃が上下に振られず、安定した制御が可能になります。
Cクランプを利用する場合、サポートハンドの肘を上げ、水平にすると反動を処理しやすくなります。
「コスタ撃ち」って、どうなの?
Costa Ludusの創設者クリス・コスタは、動的で戦闘志向のライフル射撃技術を提唱しています。特徴はスピード、反動制御、ターゲット間の素早い移行で、特にARプラットフォームやレバーアクション式の銃に適しています。狩猟よりも、タクティカルシューティングやディフェンス状況に適したスタイルで、流れるような動きを重視します。

コスタはサポートハンド(左手)の親指を銃身の直上に配置する「Cクランプグリップ」を推奨しています。
- サポートハンドをハンドガード前方に置き、親指を上部レールに沿わせ、指を下に巻き込む。銃を肩のポケットに強く引き込み、銃口の跳ね上がりを抑える。
- 姿勢はブレードスタンス(足を前後にずらし、体を標的に対してやや斜めに構える)。膝を軽く曲げ、右肘は下向きにして「チキンウィング(肘を横に張る)」を避ける。これにより素早い旋回と連射時の安定性を確保。
- 頬付けにより銃を安定させ、照準の再調整を最小限にする。
メリット
デメリット
フォアグリップの利点と欠点

フォアグリップはライフルの操作性やコントロール性を向上させる場合がありますが、必ずしも「精度が上がる」わけではなく、銃に重量やかさばりを加える要素にもなります。
フォアグリップの利点
- バーチカル(垂直)型やアングル型のフォアグリップは、サポートハンドに支点を与え、反動やマズルジャンプを抑え、連射時の安定性を高めます。特に軽量カービンや大量発射の訓練時に有効です。
- 手首や腕を自然な角度で保持でき、前腕の緊張を減らし、熱くなったレールに直接触れずに済むため、長時間の射撃や動的訓練で一貫性を維持しやすくなります。
- 固定されたグリップ位置により、毎回同じ持ち方ができ、ハンドストップやアクセサリー類のテープスイッチの基準点としても機能します。
フォアグリップの欠点
- バーチカルフォアグリップは銃の前方でかさばり、装備や植生に引っ掛かりやすく、銃口側に重量が増すため取り回しに影響することがあります。
- プローンやベンチレストなどのゆっくりした精密射撃では、フォアグリップが精度を高めることは少なく、逆に不安定化させる入力を加える場合もあります。
- 大型ではハンドガードのスペースを消費し、ライトやバイポッドと干渉する可能性があります。
フォアグリップで銃を安定させる方法
サポートハンドで前方へ押し、利き手で後方へ引く「プッシュ&プル」を加えることで、銃をより安定させることができます。さらに、フォアグリップを左方向へ、ピストルグリップを右方向へ回すように力を加える「カウンタートルク」を取り入れると、左右のブレを抑える効果があります。
小口径のアサルトライフルは反動が小さいため、フォアグリップによるリコイル軽減効果はあまり感じられません。しかし、大口径ライフルやショットガンなど反動の強い銃、あるいは発射速度の速い銃では、これらのテクニックが有効です。
射撃姿勢の種類

スタンディング(立射)・ニーリング(膝射)・シッティング(座射)・プローン(伏射)は、それぞれ安定性・素早さ・障害物越しの視認性に違いがあります。
一般的に、最も安定するのはプローン、次にシッティング、その次がニーリング、そしてスタンディングは最も不安定ですが、最も速く機動性に優れています。
| 姿勢 | 安定性 | 素早さ | 障害物越しの視認性 |
|---|---|---|---|
| スタンディング | 最も不安定 | 最も速い | 高い (遮蔽物の上から撃ちやすい) |
| ニーリング | やや不安定 | 速い | 中程度 |
| シッティング | 安定 | 中程度 | やや低い |
| プローン | 最も安定 | 遅い | 低い (姿勢が低く視界が限定される) |
スタンディング(立射)

スタンディング(Standing Stance)では、標的に対して直角またはやや斜めに立ち、足を肩幅に開き、膝を軽く緩めてバランスを取ります。

米軍の教範によると、反動に対処するため過剰なほどの前傾姿勢を推奨していますが、5.56mmNATO弾を使用するアサルトライフルでは、そこまで強く前傾になる必要はありません。
また、軍の現場では防弾プレートや弾薬などの装備(重量20kg以上)が体重に加算されるため、反動が軽減されやすくなります。

前傾姿勢の度合いは、銃や装備品の種類によっても異なります。最終的には、臨機応変に対応させると良いでしょう。
ニーリング(膝射)
ニーリング(Kneeling Position)では片膝を地面につけ、体を斜めに構え、サポートハンドの肘を膝に乗せて支えます。
骨格で銃を支えるため、立射より安定し、伏射より素早く構えられる中間的な姿勢です。
プレートキャリア(防弾プレート)を着用している場合、ストックをプレートと上腕二頭筋の間に当てて安定させます。
姿勢の作り方

- 足のかかとに腰を乗せ、前傾姿勢。体重を前にかける。
- 背骨を積み上げるようにまっすぐ。前かがみにならず、頭を上げて視線を保つ。
- ストックの位置は鎖骨に当ててから後方へ引き込み、肩の凹みに固定。 これにより頭を下げずに照準できる。
- ストックを低く構えると首が折れ、視線が目の上端からになるため不安定。ストックは高めに、顔をターゲットと平行に保つ。
- 足の角度は、膝を90度にせず、太ももとふくらはぎを密着させる。
- 肘の位置は膝の上ではなく、上腕(三頭筋)を膝に乗せる。
- マガジンを前腕に当てて安定させる。
- サポートハンドは手前(マグウェルの近く)でハンドガードを支える。
射撃時の注意
- 体重は前へ。尻をかかとに乗せるが、後ろに倒れないよう「尻=タイヤ」「かかと=車止め」と意識。
- 目を閉じて呼吸後に開き、照準がずれていれば前足を少し動かして修正。
- サイトは呼吸で揺れるのが自然。無理に止めず、呼吸後に安定した瞬間に射撃する。
修正・バリエーション

高さが足りない場合や足を伸ばすのが辛い場合は、つま先立ちで座ります。

伏射ほど安定はしませんが、これでも十分に安定した姿勢になります。
集弾はやや広がるものの、正しいフォームにより安定性を確保できます。
練習の際は、伏射と膝射でターゲットを分けるのがおすすめです。集弾がずれる場合は頬当ての位置が変わっている可能性があるため要確認です。
シッティング(座射)
シッティング(Sitting Position)では、肘を膝に乗せて安定させます。
クロスレッグ(Cross-Leg Sitting Position)
スリングがあれば肩に固定してさらに安定性を高められます。

姿勢の作り方
- 脚を交差させる。
- 両肘を膝の間(太ももとふくらはぎの間)に入れる。

肘の位置をずらすことで高さを調整できます。
クロスアンクル(Cross-Ankle Sitting Position)

姿勢の作り方
- 脚を広げて足首をロック。
- 体を少し回し、膝を上げてマガジンとピストルグリップの間に膝を入れる。
- 足首で圧力をかけ安定させる。
右利きは通常「右足が上」ですが、「左足を上」にすると高くなり、銃の高さを上げることができます。
オープンレッグ(Open-Leg Sitting Position)

姿勢の作り方
- 両脚を前方に大きく開き、安定した基盤を作る。
- 利き手側の肘は、同側の太ももの内側に乗せて銃を支える。
- サポートハンド側の肘も太ももの内側に乗せるが、膝の上には置かないよう注意。
- ハンドガードまたはフォアグリップをしっかり握り、銃の前方を安定させる。
- 射手は銃と標的を結ぶ直線に対して約30度の角度を取ることで、自然な姿勢と安定性を両立。
座射の中でも比較的安定度が高く、長時間の観測や射撃に向いています。
プローン(伏射)
プローン(Prone Position)は最も安定する姿勢です。
姿勢の作り方

- 伏射では腹ばいになり、両肘を地面につける。
- 支える側の肘は銃の真下に置き、ストックを頬に密着させて骨格で安定させる。

体は銃に対して正面またはやや斜めに構え、利き手側の脚を曲げても構いません。

伏射は筋力に頼らず、長距離射撃に最も適した姿勢です。
ただし、草木に遮られて視界が制限されることや、構えるまでに時間がかかる欠点があります。

画像出典:U.S. Navy photo by Mass Communication Specialist 2nd Class Michelle Kapica, Public domain, via Wikimedia Commons
快適で再現性のあるプローン姿勢が命中精度を高める
プローンでは、一貫性を保つことが命中精度の鍵となります。毎回同じ動作を繰り返すことで、安定した結果を得ることができます。

銃に身体を合わせるのではなく、快適で安定した姿勢を作り、その姿勢に銃を合わせることが大切です。
右利きの場合は、右手を左手の前に置き、頭を左に向けてうつ伏せになるようにして、昼寝できるほど楽な姿勢を作ります。その後、銃を肩に当てて射撃姿勢に移行します。

銃を構えた際には、首や筋肉に負担がかからないようにすることが重要です。チークレストを調整し、頭の重みを自然に預けられるようにすれば、首の筋肉を使わずにリラックスした状態で射撃できます。
正しい位置にあるかどうかは、銃を肩に当て、右手をグリップに、左手をストック後方に置き、頭をまっすぐ上げて下ろすことで確認できます。無理なく銃(スコープ)の真後ろに位置できれば、正しい姿勢です。
もし10分ほどで疲れたり震えたりする場合は、姿勢が正しくない証拠です。射撃前には必ず自分の姿勢を確認し、銃を自分に合わせて快適で再現性のあるポジションを作るように心がけます。
照準の基本
照準方法

照準時、首を傾げません。
首・肩は自然体を保ち、頭を下げず銃を目の高さに持ち上げます。
サイトを追うのではなく、視線にサイトを入れるイメージです。
スピード重視の場合、銃を構えてからサイトを覗くのではなく、サイトでターゲットを捉えてからストックを肩に当てます。
できるだけ両目は水平を保ち、頭部を立てた状態が推奨されます。
頭を銃に寄せるのではなく、銃を頭に寄せる構え方を優先します。
サイトアライメント

アイアンサイトを正しく使うには、フロントサイトをリアサイトの中央に水平に配置する必要があります。
フロントサイトの上端をリアサイトの上端と揃え、左右の間隔を均等に保つことで横方向の誤差を防ぎます。
サイトピクチャー
サイトピクチャーとは、銃のフロントサイト(照星)とリアサイト(照門)を正しく一直線に並べ、標的と重ね合わせた「照準状態」のことです。射撃において正確な弾道を得るための基本的な視覚イメージです。

サイトが正しく揃ったら、フロントサイトポスト(フロントサイトの中央の棒)をターゲットの狙点に重ねて照準図を作ります。
焦点の扱い
実際には以下のように狙います。

目の焦点はフロントサイトに合わせます。
フロントサイトは鮮明に見え、ターゲットとリアサイトは少しぼけている状態が理想です。

スコープを使用する場合も同様に、レティクル(十字線)に焦点を合わせます。レティクルの焦点が合わない場合は、接眼レンズを回して、レティクルが「くっきり見える位置」を探します。
一度視線を外してから再度覗き、瞬時にシャープに見えれば正しく調整できています。人間の目は自動的にピントを合わせようとするため、長時間覗いていると「合っているように錯覚」します。調整は「短時間の目視の繰り返し」で行うのがポイントです。
また、命中精度を高めるコツは、できるだけ小さく狙うことです。
ターゲットの中心付近を狙うのではなく、ターゲットの中心点を狙います。
10x10cmの範囲を狙うよりも、1x1cmの範囲を狙う方が精度が高くなります。

近距離で高い確率で命中可能な場合はターゲットに焦点を合わせます。慣れていればサイトを使用せず感覚的に銃口を向けて射撃する「ポイントシューティング」が可能です。

M16/M4のフロントサイトポスト幅は、距離200~300メートルで肩幅に近くなります。
ターゲット(幅約32~48cm)がサイトポストの幅より大きく見えたら距離は約300メートル以内と推定され、命中率が高くなります。
以下の表はおおよその目安です。
| 項目 | M16 | M4 |
|---|---|---|
| MOA | 約4 MOA | 約5.5 MOA |
| 100 mでの幅 | 約11.6 cm | 約16.0 cm |
| 200 mでの幅 | 約23.3 cm | 約32.0 cm |
| 300 mでの幅 | 約34.9 cm | 約48.0 cm |
MOA(Minute of Angle)は射撃で使う角度の単位で、100ヤードで約1インチの広がりに相当します。距離が伸びるほど比例して広がり、銃の精度やスコープ調整の基準として用いられます。

呼吸法の基礎
呼吸でストックが動かされるため、発射の瞬間は呼吸を止める必要があります。
通常時の呼吸法
ゼロイン作業や、時間に余裕がある場面では、自然な呼吸の「間」で発射します。
ゆっくり息を吐き切り、次に吸う前の静かな状態が最も安定するタイミングです。
不快感を覚える前に射撃を終えることが大切です。
- 息を吸う
- 息を吐く
- 呼吸の「間」に入る
- 息を軽く止める
- トリガーをゆっくり引く
- 発射
- 呼吸を再開
タイミングが限定される状況での呼吸法
射撃のタイミングが制限される素早い射撃では、狙いを定めてトリガーに触れる直前で呼吸を止めます。
呼吸を止める時間は短くし、発射後はすぐに呼吸を戻します。
- 息を吸う
- 息を吐く
- 再び吸う
- 目標を捉える
- トリガーに触れる直前で呼吸を止める
- 発射
- 呼吸を再開
トリガー操作の基本

トリガーの引き方の要点は以下のとおりです。
- トリガーは「引く」というより「押し込む」ように、一定の圧力を加えていきます。急激な動作は銃口を揺らし、照準を崩します。
- 人差し指の「腹」をトリガーに当てるのが基本。指先や関節で操作すると力が不均一になり、横方向のブレを生みます。
- 呼吸を整え、最も安定した瞬間(呼吸を止めた直後など)にトリガーを引くと、銃の揺れが最小化されます。
- 弾が発射される瞬間を意識しすぎず、自然に「いつの間にか発射された」感覚(サプライズブレイク)を目指します。これにより余計な「力み」を防ぎます。
- 発射後もすぐに指を離さず、銃を保持したまま照準を維持することで、安定した射撃姿勢を習慣化できます。
注意点と改善方法
- よくある失敗
- 引き金を「叩く」ように急に引く
- 指の位置が浅く、横方向に力がかかる
- 発射の瞬間を意識しすぎて体が硬直する
- 改善法
- ドライファイア(空撃ち)でトリガー操作を繰り返す
- 照準が乱れないかを確認しながら、スムーズな圧力を習得する
- 実射でも「サプライズブレイク」を意識する
マガジン交換
マガジンを地面に落とす?

実戦では射撃を止めないことが最優先されます。そのため、緊急時(エマージェンシーリロード)の際には空のマガジンを地面に落とすことが一般的です。マガジンを保持するのは、戦闘の合間や遮蔽物の後ろで余裕がある場合に限られます。
- 緊急リロード(スピードリロード)
- マガジンが空で戦闘が続いている場合は、即座にマガジンリリースを押し、空マガジンを落として新しいマガジンを素早く装填します。
- 空マガジンをしまおうとする行為は「悪い癖」とされ、命取りになる可能性があります。
- 戦術的リロード(タクティカル/リテンションリロード)
- 遮蔽物の後ろや戦闘の合間には、部分的に残弾のあるマガジンを保持しつつ新しいマガジンを装填します。
- 弾薬を節約できますが、動作は遅く複雑になります。
現代の軍や警察の訓練では、複数のマガジンを携行することを前提とし、マガジンを「消耗品」として扱います。そのため、数秒でも時間を節約することがより重要とされています。
射撃競技で見られる「マガジンを優先的に保持する習慣」は、実戦では危険とされます。緊急時には空のマガジンを即座に捨て、新しいマガジンを素早く装填する訓練が推奨されています。
一方で、長期戦や補給が限られる部隊では、可能な限り残弾のあるマガジンを保持するよう指導されます。その際にはダンプポーチやポケットを活用し、迅速に再利用できるようにします。
また、都市部など戦闘後に回収が容易な環境では、戦闘終了後に落としたマガジンを拾うこともあります。ただし、戦闘中に状況認識を犠牲にしてまで拾うことはありません。
地面に落とさないマガジン交換方法
パラレル方式(Parallel Method)

- マガジンが空になるまで目標へ射撃します。
- ひざをつきます。
- 銃を45度の角度に構えます。マガジンハウジング(弾倉の挿入口)は内側へ向け、銃口は安全な方向へ向け、ストックは右ひじのくぼみに当てます。
- 非射撃側の手をハンドガードに沿ってレシーバーまで滑らせ、マガジンキャッチを押します。
- 非射撃側の手の指2本と親指で満装弾のマガジンをつかみます。
- 新しいマガジンの上部をマガジンハウジングに向け、空のマガジンの横に並べて平行に構えます。
- 非射撃側の手で空のマガジンを引き抜き、新しいマガジンを差し込みます。
- ボルトリリースを押します。
- 空のマガジンをマガジンポーチに収納します。
L字方式(L-Shaped Method)

- マガジンが空になるまで目標へ射撃します。
- ひざをつきます。
- 銃を45度の角度に構えます。マガジンハウジングは内側へ向け、銃口は安全な方向へ向け、ストックは右ひじのくぼみに当てます。
- 非射撃側の手をハンドガードに沿ってレシーバーまで滑らせ、マガジンキャッチを押します。
- 非射撃側の指2本と親指で満装弾のマガジンをつかみます。
- 新しいマガジンの上部を後方へ向け、空のマガジンの横に直角に並べ、L字の形を作ります。
- 非射撃側の手で空のマガジンを引き抜きます。続けて、新しいマガジンの上部をマガジンハウジングへ向けるように回し、そのまま差し込みます。
- ボルトリリースを押します。
- 空のマガジンをマガジンポーチに収納します。
まとめ
本記事では、ライフル射撃の基礎を体系的に解説しました。
射撃の精度を高めるには「安定した姿勢」「正しい照準」「呼吸のタイミング」「滑らかなトリガー操作」が必須です。また、状況に応じたマガジン交換の判断も重要です。
これらの基本を理解し、繰り返し練習することで、安全かつ正確な射撃スキルを身につけることができるでしょう。スポーツ射撃や狩猟、サバイバルゲームなど、さまざまな場面でご活用ください。
- Green Beret vs Navy SEAL – US Military
- Green Beret vs Navy SEAL: A Deep Dive into Elite Forces – NavySeal.com
- Focus: Why the US Green Berets are the World’s Most Unique Special Forces Unit – Army Recognition
- Delta Force vs Navy SEALs: Unmasking the Differences – US Military
- What’s the Difference Between Navy SEALs, Delta Force, and Green Berets? – YouTube
- Green Beret teaches Navy SEALs 1-Man CQB @GBRSGroup – YouTube
- A Green Beret Shows You How to Shoot an AR-15 – YouTube
- U.S. Army Green Berets & Marine Recon Forces Train Rifle Techniques – YouTube
- Special Forces Check Drill | Tactical Rifleman – YouTube
- Navy SEAL does Combatives Shooting Drill – YouTube
- How Civilian Shooting Matches Make Better Green Berets – YouTube
- Special Forces Shoot Out! | Green Beret Drill – YouTube
- Delta Force Operator Explains the Real Difference – John McPhee – YouTube
- Learn to Shoot with a Navy SEAL – YouTube
- Army Firearms Specialist Rates Gun Technique in Movies – YouTube
- American Special Ops – Weapons and Training Resources (website)
- GoArmy.com – Special Forces Career and Training Overview
- Military.com – Navy SEAL Weapons Training Insights
- SOFREP – Delta Force Rifle Training Explained
- Task & Purpose – How Green Berets Train Rifle Skills
- Warrior Poet Society – Rifle Drills with Special Forces Veterans
- Black Rifle Coffee Company – Range Day with Navy SEALs
- Tactical Rifleman – Green Beret Rifle Drills
- GBRS Group – Advanced Rifle Manipulation
- Fieldcraft Survival – Rifle Shooting with Former Special Operations Soldiers
- Shooting Sports USA, Trigger Control Tips for Rifle Shooters
- Savage Arms Blog, How to Pull a Trigger For Consistent Accuracy
- The Marksman’s Journal, What Trigger Control Technique Stops Pulling Rifle Shots?
- USuckAtShooting, Exploring the Spectrum of Trigger Manipulation
- Black Ash Tactical, Mastering Trigger Control: Tips for Better Accuracy
- その他、多数の資料
米軍教範
- FM 3-22.9 – Rifle Marksmanship (M16-/M4-Series Weapons)
- TC 3-22.9 – Rifle and Carbine
- FM 3-23.10 – Sniper Training
- FM 3-21.8 – Infantry Rifle Platoon and Squad
- Ranger Handbook – Rifle Employment Sections


